「パッシブ設計」の家とは?一戸建てを建てるときに考えたい、パッシブ設計の5つの要素

最近、私たちの暮らしでは「省エネ(省エネルギー)」がキーワードになっています。一戸建てマイホームの購入にあたり家づくりについて調べる中で、省エネ住宅の補助金制度や住宅ローンの金利優遇、省エネ家電の購入に対する自治体の補助などを知った人も多いのではないでしょうか。私たちの生活に欠かせない、石油や天然ガスといった地球上のエネルギー資源は有限です。将来的に枯渇してしまうことのないよう、私たちは地球環境問題に向き合い、省エネ化に取り組む必要があると言われています。
省エネを実現できる家づくりの方法のひとつに、自然のエネルギーを上手に取り入れながら実現する設計手法「パッシブ設計」があります。パッシブ設計の家とはどのような建物なのか、5つの要素やパッシブ設計の家を建てる際の注意点を紹介します。

目次
1.パッシブ設計とは?
2.パッシブ設計の5つの要素
3.パッシブ設計の家を建てる注意点
4.パッシブ設計の一戸建て まとめ

パッシブ設計とは?

パッシブ設計とは?

省エネ住宅を実現する設計概念は主に「パッシブデザイン」と「アクティブデザイン」に分類できます。パッシブは受動的という意味で、対義語のアクティブは能動的という意味です。

パッシブデザインが光や風、熱といった自然の力を取り入れるのに対し、アクティブデザインは太陽光発電や、電気でお湯を沸かす「エコキュート」、都市ガスの供給時にお湯と電気を作る「エネファーム」といった機械の力を積極的に活用します。アクティブデザインを実現すれば省エネ効果が大きな家づくりを実現できますが、機械を導入する初期費用やメンテナンスコストがかかります。
対して、パッシブデザインによる家づくり「パッシブ設計」は、5つの要素「断熱性能」「日射熱利用」「日射遮蔽(しゃへい)」「通風」「昼光利用」を取り入れ、自然の力をコントロールしながら快適な住まいづくりを目指します。

パッシブ設計の5つの要素

前述の通り、パッシブ設計を考えるにあたっては「断熱性能」「日射熱利用」「日射遮蔽」「通風」「昼光利用」という5つの要素を押さえる必要があります。順に見ていきましょう。

一戸建てのパッシブ設計の要素1―断熱性能

一戸建てのパッシブ設計の要素1―断熱性能

高気密・高断熱の家づくりを行うことで断熱性能が高まり、外気の影響を受けづらく、室内の温度を一定に保ちやすくなります。断熱性能が高いと冷暖房効率が高まるので電気料金の節約になりますし、快適な環境で過ごせます。
具体的には、壁や屋根・天井、窓の断熱性能を高めることが大切です。断熱性能は、どのくらい熱が逃げにくい家なのかを表す「Q値(熱損失係数)」や、外壁や屋根、開口部などを通じてどのくらいの熱量が建物の外部に逃げやすいのかを表す「UA値(外皮平均熱貫流率)」をチェックすることで判断でき、数値が小さいほど断熱性能が高いと判断できます。詳しくは、過去記事「一戸建ての寒さ対策-コロナ禍の冬は『部屋を暖めながら換気』で快適に」からご確認ください。

一戸建てのパッシブ設計の要素2―日射熱利用

一戸建てのパッシブ設計の要素2―日射熱利用

日射熱とは漢字のとおり太陽の熱のことで、断熱性能を高めた家に太陽の熱を取り込むことで、寒い冬でも室内を暖かくすることができます。具体的には、南側を中心に大きな窓を設けることで「集熱」し、日射熱を逃さないように「断熱」するとともに、日中に取り込んだ日射熱を温度が下がる夜まで持ち越せるよう「蓄熱」します。
南側に設ける窓は一般的に、該当する部屋の床面積の20%以上と言われていますが、多ければ良いという訳ではありません。窓が多過ぎると高い断熱性能を保つことが難しくなりますし、壁が少ないと家具の配置にも苦労するので注意が必要です。
また、木造住宅の基礎に使用されるコンクリートは、熱を物質内に蓄える「蓄熱性」が高い素材です。コンクリートの床やコンクリートブロックの腰壁などを採用し、蓄熱性を高める工夫をしている家もあります。

一戸建てのパッシブ設計の要素3―日射遮蔽

一戸建てのパッシブ設計の要素3―日射遮蔽

日射遮蔽とは、日射熱の利用とは反対に太陽の日差しを遮ることです。日射遮蔽により、夏は日差しをできるだけ遮って涼しく、冬は自然光を取り入れ暖かく過ごせる環境を作ります。室内に入る熱量を少なくするための断熱性能や気密性も重要ですが、最も大切なのは窓から入る日差しを防ぐことです。
YKKAPの算出によると、太陽熱の74%が窓から入ってきます。サッシ・ガラスの性能を高めること、ブラインドやすだれなどを使用することで日射遮蔽のレベルを上げることができます。

一戸建てのパッシブ設計の要素4―通風

一戸建てのパッシブ設計の要素4―通風

同じ気温でも風があると涼しく感じると思います。住宅の中も自然の風を取り入れることで、暑い夏も冷房の使用を最小限に抑えながら快適に過ごせるようになります。風を効果的に取り入れるには、地形や周辺環境に合わせてどの方向から風が吹きやすいのか予測し、風の流れに合わせたサイズ・配置に窓を設ける必要があります。
お住まいの地域で特定の季節に頻繁に起こる風向きの風「卓越風」を意識することや、「立体通風」で上下方向に風が流れるようにすること、縦すべり出し窓などを設置することで風を取り入れる「ウインドキャッチャー」や、天井近くの壁に設ける窓「高窓(ハイサイドライト)」などを組み込むことで風を効果的に取り入れます。

一戸建てのパッシブ設計の要素5―昼光利用

一戸建てのパッシブ設計の要素5―昼光利用

昼間は明るいので、それを利用するのが昼光利用です。自然光の取り入れ方をコントロールすることで、日中は人工照明に頼ることなく、明るい空間で過ごせるようになります。昼光利用の手法としてまず挙げられるのが、窓を設ける「採光手法」です。LDKのような長い時間を過ごす場所は2面以上の窓を設け、その他の部屋にも窓を設けることが基本です。ただし、方角や窓のサイズによっては明る過ぎてしまう、まぶしさを感じることもあります。カーテンやブラインドを活用しながら、時間帯に合わせて調節できるようにしましょう。
もうひとつの手法として、家の中へ自然光を導く「導光手法」があります。代表されるのが吹き抜けで、上の階から入った光を下の階へ導くことができます。また、天窓や高窓、隣の部屋の光をもたらすガラス扉や欄間などを設けることで、光が通る道を作ることができます。

パッシブ設計の家を建てる注意点

パッシブ設計の家を建てる注意点

パッシブ設計は、自然の力をコントロールして快適性を高める設計手法です。そのため、立地や周辺環境により、ベストな設計プランが異なります。光や風、熱をいかに取り入れるか、省エネルギーと居住性能を両立するか、設計者の手腕が大きく関わります。パッシブ設計の家づくりを求めるのであれば、はじめからそうした実績がある、経験豊富な施工会社や設計者を選ぶようにしましょう。

また、すべての土地がパッシブ設計に向いている訳ではありません。例えば、日本海側沿岸部など一部地域は日射量が少ない傾向にありますし、都市部の高い建物に囲まれたエリアも光や風を遮られてしまいがちです。狭小地の場合も、パッシブ設計の要素を満たすことができない可能性があります。新築を予定している土地で何ができるのか、省エネと居住性のバランスも見てパッシブ設計によるメリットを享受できそうか確認し、事前によく検討しましょう。

パッシブ設計の一戸建て まとめ

自然の力を最大限に活用することを目指したパッシブ設計の家は、従来と比べて冷暖房の使用を減らしても快適に過ごせます。冷暖房の使用頻度を抑えることでCO2排出量が減り、地球環境に優しい上、光熱費を節約することもできます。温度を一定に保ちやすくなることで、住む人の健康維持にも、建物を長持ちさせることにも繋がります。
「夏は涼しく、冬は暖かく過ごしたい」「電気料金をできるだけ抑えたい」「陽だまりの暖かさや自然の風の心地よさを感じながら過ごしたい」という方は、一戸建て住宅の新築時にパッシブ設計を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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