一戸建て住宅の外観を決めるとき、大きな影響を与えるのが屋根の形です。一昔前まで、一戸建て住宅と言えば、雨が流れ落ちやすいように傾斜を付けた、いわゆる三角屋根が主流でした。しかし、最近は建築技術の進化により、さまざまな形の屋根が見られるようになりました。なかでも近年増えているのが、モダンでスタイリッシュな外観のフラットルーフです。フラットルーフの屋根は、どのような特徴があるのでしょうか。この記事では、フラットルーフ屋根の特徴とメリットやデメリットを解説します。
目次
1.一戸建て住宅の屋根の種類
2.一戸建て住宅の屋根の形―フラットルーフとは?
3.一戸建て住宅の屋根の形―フラットルーフのメリット
4.一戸建て住宅の屋根の形―フラットルーフのデメリット
5.フラットルーフの一戸建て住宅 まとめ
一戸建て住宅の屋根の種類
一戸建て住宅の屋根の形状にはいろいろな種類があるのをご存じですか?昔からよく見る2枚の屋根を合わせた典型的な三角形の屋根「切妻屋根」や、一枚の屋根を斜めに設置する「片流れ屋根」、正面と背面に加え、両側面にも屋根を設置する「寄棟屋根(よせむねやね)」などが主流ですが、近年は地面とほぼ水平に屋根を設置する「フラットルーフ(陸屋根・ろくやね)」を採用する家も増えています。
一戸建て住宅の屋根の形―フラットルーフとは?
フラットルーフとは、その名の通り水平な屋根を意味します。「陸屋根」とも呼ばれており、すっきりとしたスタイリッシュなフォルムが特徴です。日本の一戸建て住宅は木造住宅が多く、木造は鉄骨に比べ雨漏りのリスクが高いため、雨水が流れやすいように傾斜のある屋根の設置が一般的でした。しかし、木造でなく鉄骨造やRC造の一戸建て住宅が増加してきたことや、木造住宅の防水技術の進化により屋根をフラットルーフにすることが可能になったことから、近年はフラットルーフ屋根がひとつの選択肢として考えられるようになってきています。
一戸建て住宅の屋根の形―フラットルーフのメリット
フラットルーフを採用することで、見た目の美しさ以外にもさまざまなメリットがあります。フラットルーフにはどのような特徴があるのか、順に見ていきましょう。
フラットルーフのメリット1―屋根の上の空間を活用できる
屋根が平らなフラットルーフであれば、屋根の上部分をマンションのように屋上やバルコニーとして活用することができます。都市部の狭小住宅ではスペースの問題で庭を設けることができないケースがありますが、屋上があればガーデニングスペースにしたり、遊具を出して子どもの遊び場にしたり、アウトドア用品を出してBBQやグランピングを楽しんだりすることも可能です。また、太陽光パネルを設置したい場合にも、設置する向きや角度を調整しやすく向いています。もちろん、洗濯物を干すスペースとしても最適で、ライフスタイルに合わせてフレキシブルに利用できます。
フラットルーフのメリット2―室内の天井を高くとれる
屋根の形状は室内環境にも影響します。屋根がフラットルーフでなく斜めの場合、最上階の天井を屋根の形状に合わせて斜めに作る勾配天井とするか、天井の低い屋根裏部屋として収納スペースなどに利用するケースが一般的です。フラットルーフであれば、屋根の勾配を考慮する必要がなく、天井高を最大限にとり、ゆったりと開放感のある室内空間を確保できます。室内空間を少しでも広くしたい方には、大きなメリットと言えます。
フラットルーフのメリット3―風の影響を受けにくい
日本では、毎年多くの台風が発生します。突風や暴風などに見舞われたとき、通常の勾配がある屋根形状は風に接する面が大きいため、屋根瓦が飛んだり、剥がれたり、飛来物により屋根が破損してしまったりするなどのリスクが高くなります。フラットルーフであれば風の影響を受けづらいので、風による被害が発生するリスクを軽減できます。
ただし、風雨にさらされることにより防水機能が低下するので、定期的な点検やメンテナンスは欠かせません。とはいえ、一般的な勾配屋根のように足場を組まなくても屋上に出られるため、工事が必要になっても仮設工事の費用はかかりません。
一戸建て住宅の屋根の形―フラットルーフのデメリット
フラットルーフを採用することでたくさんメリットがある反面、注意しなければならないポイントもあります。どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
フラットルーフのデメリット1―雨漏りや積雪の対策が必要
屋根の形状がフラットに近いので、他の屋根と比較して水はけが悪く、経年劣化しやすくなっています。一般的に、フラットルーフにはゆるやかな勾配を設け、雨水が排水溝に集まるように設計されていますし、防水処理が施されています。しかし、月日が経って幾度もの大雨などに晒されているうちに防水層が剥がれ、雨漏りが発生してしまうリスクがあります。
また、屋根の傾斜が少ないことで雪が積もりやすいことにも注意が必要です。重い雪に耐えることができる強度を保つとともに、積雪が多い地域であれば、融雪設備を設置するなど対策を行ないましょう。ただし、融雪設備はランニングコストがかかるので、予想される降雪量などを考慮したうえで導入することをおすすめします。
フラットルーフのデメリット2―日射による影響を受けやすい
一般的に、フラットルーフの家は屋根裏にあたるスペースがないので、傾斜がある屋根の家と比べて屋根に当たる日射熱の影響を受けやすくなります。LDKが2階の間取りにした場合など、夏の暑さがつらく感じるかもしれません。後悔することのないよう、通常の住宅以上に断熱性や気密性に配慮し、快適な室内環境を保てるように配慮しましょう。
フラットルーフのデメリット3―定期的なメンテナンスが必要
フラットルーフは水平に近い形状なので雨水が溜まりやすくなっています。また、紫外線の影響も受けやすい環境です。しっかりと防水工事をすることで雨漏りのリスクを軽減できますが、防水性能を維持するためには前述の通り、定期的なメンテナンスが必要です。一般的に、防水層の耐用年数は工法によって異なりますが、概ね10~15年程度です。耐用年数に満たなくても、色褪せやひび割れ、剥がれ、表面の膨らみ、塗膜が劣化して表面を触ると粉のようなものが付着する「チョーキング現象」といった症状を見つけたら要注意です。防水工事が必要か、早めにチェックしましょう。
防水工事の種類
種類 | ウレタン防水 | シート防水 | FRP防水 | アスファルト防水 |
---|---|---|---|---|
施工方法 | ウレタン樹脂を塗り重ねる | 防水のシートを貼り付ける | FRPシートを貼りトップコートを塗る | アスファルトを重ね塗りする |
特徴 | 複雑な形状でも施工しやすい | 広範囲でも一気に施工可能 | 軽量で丈夫だが広範囲には向かない | 重量があるのでRC造住宅向き |
コスト | 安 | 安 | 高 | 高 |
防水工事にはさまざまな施工方法があり、それぞれに特徴があります。
ウレタン防水
ウレタン樹脂による液状の防水材を厚みが出るまで塗り重ねる工法です。液体なので、屋根の形状が複雑に入り組んでいても施工しやすく、さまざまな住宅に採用されています。塗装した後に乾かす時間が必要なので、工期がやや長くなりやすい工法です。
シート防水
塩化ビニルやゴムでできたシート状の防水材を貼る工法です。広範囲に施工しやすく、液体ではないので乾かす時間がかかりません。コストも工期も短縮しやすい工法ですが、複雑な形状の屋根には施工しづらいことに注意が必要です。
FRP防水
シート状のFRP(ガラス繊維で強化されたプラスチック)を敷き、そのうえにポリエステル樹脂を塗装する工法です。FRPは浴槽などによく使用される素材で防水性能が高く、耐久性があり、軽量です。工期が短いことも魅力ですが、かかる費用がやや高額で、広範囲に施工したい場合はあまり向きません。
アスファルト防水
液状のアスファルトを重ね塗りする工法で、高い防水性と耐久性が期待できます。メンテナンス頻度を減らしたい方におすすめですが、アスファルトは重量があるので、屋根全体が重くなってしまうことが最大のデメリットです。木造住宅にはあまり向きません。主にRC住宅で用いられることが多い工法です。
フラットルーフの一戸建て住宅 まとめ
一戸建て住宅の屋根をフラットルーフにすると、洗練された外観デザインに加えて屋根の上のスペースをさまざまな用途で活用できます。天井が高くゆったりとした室内空間の実現など、ライフスタイルや立地環境によっては住まいに大きな魅力をプラスすることもできます。フラットルーフは台風など風には強いのですが、雨水の排水や防水性能や断熱性能を保つ必要があります。フラットルーフの家づくりを検討されている方は、断熱性能やメンテナンスの期間や費用なども含め考えておくといいでしょう。