地震に備えるマイホーム(2)「耐震研究所」で最新設備を実体験!

埼玉県八潮市にある「耐震研究所」は、学識経験者・設計事務所・地域工務店・資材メーカー・システム会社から構成された非営利一般社団法人「工務店フォーラム」が監修し、2018年に開設した施設です。地震に強い家づくりに興味がある人に向けて、世界でも珍しい室内専用地震動シミュレーターで実際の地震の揺れを体験できる他、地震や災害に強い家などについての定期開催セミナーなど、地震に強い家作りのための知識を学ぶことができます。実際にどのような体験や学習ができるのか、現地に足を運び説明を伺ってきました。

地震に強い家づくりを支える「耐震研究所」

地震に強い住宅や地震に関する研究拠点である耐震研究所
地震に強い住宅や地震に関する研究拠点である耐震研究所

「耐震研究所」は、地震に強い住宅や地震に関する研究拠点であるとともに、より多くの方々と情報を共有し、住宅を耐震化することへの理解を広めるための拠点として、これまでに起きた大規模地震と同等の揺れや、これから建てる住宅の強度を体感できる施設となっています。

洗面台やバスルームの見本
洗面台やバスルームの見本
水まわり商品のカタログなど
水まわり商品のカタログなど

イデアホームの見本などが展示され、これから建てる家のイメージを膨らませることができるようになっています。

耐震研究所内のキッズルーム
耐震研究所内のキッズルーム

耐震研究所の中にはキッズルームも完備されていますので、小さなお子様連れで訪れても安心して見学・体験することが可能です。

地震に強い家とは?

地震大国と言われる日本で地震に強い家をつくるには、家が建っている土地により揺れ方が変わってくるため、その建築地ごとに細かい検証を重ねる必要があります。阪神淡路大震災と同じ規模の地震が起きた場合、どこでどのくらいの揺れになるのかは地盤により異なります。同じ地震の力でも地盤が硬いとあまり揺れませんが、地盤が軟弱だと2~3倍も揺れると想定されます。「耐震研究所」ではそうした研究を独自に進め、家を建てる土地について地盤の状態からその場所で起こる地震を想定・検証することを勧めています。

「耐震研究所」内の施設を体験!

さっそく「耐震研究所」内を見学していきます。まず、世界でも珍しい装置である室内専用地震動シミュレーターを体験しました。

室内専用地震動シミュレーター

室内専用地震動シミュレーターの入り口
室内専用地震動シミュレーターの入り口

室内専用地震動シミュレーターでは、阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震といった大地震のデータを元に再現した揺れを体験できます。直下型地震や海溝型地震、長周期地震動など、様々なタイプの地震を体感できます。正面のスクリーンには揺れにより家具が転倒する室内の映像や「wallstat(ウォールスタット*)」によるシミュレーション映像と連動するので、よりリアルに地震を体験できます。

筆者も様々な大地震を体験しましたが、どの地震にも共通して感じたことは「いざ地震が発生してしまったら、その間は何もできない」ということ。身動きが取れず、揺れが収まるまでジッと耐えるしかないことに、改めて気づかされました。

室内専用地震動シミュレーターを体験している様子
室内専用地震動シミュレーターを体験している様子

また、体験する地震データによって地震の揺れ方も、揺れる時間の長さも異なるのだと実感しました。東日本大震災は実際の半分の時間で体験できますが、それでも他の地震と比べて揺れる時間が長く、何の気構えもなく地震の揺れに見舞われたらどれだけ怖いだろうと痛感しました。

*wallstatとは
京都大学 生存圏研究所 准教授 中川貴文氏が研究開発された倒壊解析ソフトウェアです。 パソコン上で木造住宅をモデル化し、振動台実験のように地震動を与え、最先端の計算理論に基づいたシミュレーションを行うことで、変形の 大きさ、損傷状況、倒壊の有無を視覚的に確認することができます。

次は、VR体験です。

平面図をVRで体験

IDEA VR System-平面設計図から3Dを作成、VR体験
IDEA VR System-平面設計図から3Dを作成、VR体験

こちらは、検討中のプランから3Dを作成できるサービスです。平面図上でしか確認できなかった設計プランを、VRにより室内を歩いて回るような感覚を体験できます。(イデアホームのサービスとなります)

制震ダンパーなどを展示

制震ダンパー「ミューダム®」の展示コーナー
制震ダンパー「ミューダム®」の展示コーナー

戸建て住宅に使用する柱や梁などの構造体が展示されているコーナーでは、後述の地震に強い規格住宅「タフハウス+」に使用されている制震ダンパー「ミューダム®」を展示しています。ミューダム®が伸び縮みして「金属流動(アルミと鋼材が摩擦を受けながら摩耗することなく、鋼材よりも柔らかいアルミが軟化して動き始める現象)」を起こすことで、地震エネルギーが熱エネルギーに変換されて揺れを減らします。

柱や筋かいなどの展示
柱や筋かいなどの展示

工務店フォーラムの独自のしくみ「地震あんしんシステム」

「地震あんしんシステム」は、微動探査、wallstatによるシミュレーション、構造計算の結果にもとづいた設計、住宅内に設置した地震計を生かした損傷解析と復旧計画等の技術で耐震性を高めるしくみです。
この「地震あんしんシステム」を採用した規格住宅があります。

「地震あんしんシステム」採用/工務店フォーラム監修 の規格住宅「タフハウス+」

地震に強い規格住宅「タフハウス+」
地震に強い規格住宅「タフハウス+」

https://myhomemarket.jp/plp/masuda-inc

こちらの「タフハウス+」は工務店フォーラムの監修による耐震対策に非常に優れた規格住宅です。工務店フォーラムが開発した次世代優良住宅耐震システム「地震あんしんシステム」を採用しています。「タフハウス+」は、地盤の特性を知ることからはじまる地震に強い安心な家づくりを追求しています。「タフハウス+」はオンラインで見学可能なバーチャル住宅展示場「MY HOME MARKET」に出展しています。

「微動探査」で地盤の揺れやすさを計測

微動探査システム「地震eye®」
微動探査システム「地震eye®」

「地震あんしんシステム」の一つである微動探査システムでは、地盤の揺れやすさを確認することができます。従来地盤の強さは何十万円もかけてボーリング調査を行わなければ分からないものでした。そのためビル建築の際などは確認されていましたが、木造の戸建てなどを建てる際には確認されていませんでした。しかし、こちらの微動探査システム「地震eye®」により、ボーリング調査無しで地震による地盤の揺れやすさを調べることが可能になりました。深層部の地盤の強度を非破壊で計測し、地盤ごとの揺れやすさを把握できます。

地盤の調査ではいきなり微動探査を行うのではなく、まず情報収集によりリスクの把握と硬軟を確認します。情報収集は、地盤の強弱をはじめとした様々な地盤情報を閲覧できるマップシステム「地盤安心マップ®PRO」を参照します。地盤のビッグデータにより、災害リスクを事前に把握できます。次に表層部10メートルについて、一般的な「SWS試験(スエーデンサウンディング試験)」により地盤の硬軟を測定し、地盤改良工事の必要性を調査します。最後に、微動探査システム「地震eye®」で深層部30メートルまでの地盤構造を解析し、地盤の揺れやすさを測定します。地震時の地盤リスクを把握することで、どのような構造の住宅を建てるべきか指針を立てることができます。

超高層ビルに使う構造計算「時刻歴応答解析」を実施

超高層ビルに使う構造計算「時刻歴応答解析」を実施
wallstatによる3Dアニメーションの図。損傷が大きい部分が赤やオレンジ、黄色で表示されます。

建物を建てる時には、地震や台風などの災害時も倒壊しないよう「構造計算」を行う必要がありますが、2階建て以下かつ500㎡以下の木造住宅は例外的に、構造計算をしなくても家を建てることができます。そのため、木造2階建てを新築する場合は構造計算を省略するケースが一般的です。しかし「地震あんしんシステム」では、超高層ビルの構造適合判定に使う構造計算方法「時刻歴応答解析」を実施し、想定した地震に耐えるかを確認します。

通常、耐震性能は振動台の上に実際の家を建てて行う「実大振動台実験」で確認しますが、実施するには1回で数千万円の費用が発生してしまいます。そこで、検証は木造住宅が地震発生時に損傷や倒壊する可能性を評価できるシミュレーションソフト「wallstat」で行います。シミュレーション結果はわかりやすい3Dアニメーションで表示されるため、目視で確認することが可能です。大きな地震に耐えられるのか建てる前に確認して対策が取れるので、地震に強い家を作ることができ、将来にわたって住宅の資産価値を守ることができます。

「許容応力度計算」

「地震あんしんシステム」では、大きな地震でも倒壊しない建物の構造を検証する「時刻歴応答解析」に加えて、小規模な建築物に用いられる「許容応力度計算」も実施します。柱の太さや梁の断面寸法、接合部の金物の強度、基礎の鉄筋やコンクリートの強度などの必要データを計算で算出し、荷重や地震に対して柱や梁などが十分に耐えられるかどうかを検証します。「時刻歴応答解析」と合わせて2つの構造計算を行うことで、長い年月が経っても耐えうる仕様にします。

「クラウド型地震計」で損傷がないかチェック

「地震あんしんシステム」では、見えないところも含めた地震による損傷個所を把握することが可能です。完成した住宅の1階と2階に「クラウド型地震計」を設置。地震計と連動した損傷解析システムにより損傷判定を行うことができるので、地震発生時には構造体に損傷がないか速やかに確認が可能です。損傷が生じても、蓄積したデータをもとに迅速な地震保険の請求が可能です。

工務店フォーラム理事の鈴木強さんに聞く「タフハウス+」の魅力

工務店フォーラム理事・鈴木強さん
工務店フォーラム理事・鈴木強さん

「タフハウス+」の特徴や魅力をより深く知るため、一般社団法人工務店フォーラム理事の鈴木強さんにお話をうかがいました。

「タフハウス+」を提供することになった経緯を教えてください。

工務店フォーラムでは、耐震性能の見える化や「地震あんしんシステム」を広めるための活動を続けてきました。その中で、ウッドステーションが展開する大型パネルを採用し、規格型住宅として販売する取り組みを形にした商品が「タフハウス+」です。 工場で柱や梁、断熱材、サッシなど工場で一体化した大型パネルを製作。ユニット化したものを上棟しますので、大工の力量に左右されず、工業化による高い精度と品質を保った家づくりができます。また、一般的な在来工法と異なり、大型パネルを現場に搬送した後は風雨にさらされる間もなく1日で上棟でき、木の膨張・収縮などのリスクを軽減。品質の維持に繋がっています。

「タフハウス+」が他のハウスメーカーの住宅と異なる特徴を教えてください。

「タフハウス+」は「耐震等級3」をクリアするのはもちろんのこと、阪神淡路大震災の2倍に相当する地震でも倒壊しないほどの耐震性能を備えた規格住宅です。自由設計の注文住宅のようにフレキシブルな間取りではありませんが、耐震性能を確かなものにするため、壁の量やバランスに配慮した成型の形状で規格化しました。「地震あんしんシステム」の取り組みとともに、耐震性能に特化した家づくりを実現しています。

「タフハウス+」の耐久性について教えてください。

地震に対する強さを重視すると、できるだけシンプルな成型の家が理想です。「タフハウス+」は、どこから力がかかってもバランスよく丈夫な正方形の平面形に、耐力壁をバランスよく配置しています。

バランスの取れた形状

https://myhomemarket.jp/plp/masuda-inc

「タフハウス+」はバルコニーの損傷も考え設計されています。
バルコニーは壁から突き出しているので本来、地震が発生した際には損傷しやすい箇所です。また、通常の構造計算は「主要構造部」のみを対象として行うので、バルコニーは主要構造部に含まれず、構造計算で危険を察知することができません。しかし、「タフハウス+」はバルコニーを袖壁の下から支えることで耐久性を高めながら、ゆとりあるスペースを確保しています。

バルコニーが強い

https://myhomemarket.jp/plp/masuda-inc

耐震性能以外の特徴も教えてください。

耐震性能以外のタフハウスの特徴を説明する鈴木さん
耐震性能以外のタフハウスの特徴を説明する鈴木さん

快適に過ごせるように、断熱性能にも配慮しています。断熱性能はUA値で判断し、数値が低いほど、断熱性に優れているということになります。基準値は地域により異なり、例えば東京都のUA基準値は0.87です。それに対し、タフハウス+は標準仕様でUA値0.49~0.51【ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)対応】となっております。 高断熱オプションプランの場合はUA値0.28~0.31と、いずれも基準を大きく上回る断熱性能です。
また、石膏ボードは、健康に有害な物質のホルムアルデヒドを吸収分解するハイクリンボードを全面に使用。通常の住宅と比べて建築中や建築後の空気環境に配慮しています。
防腐・防蟻処理には殺虫剤を使わず、効果が長持ちし、シロアリには効果を発揮しつつ人体には害のないホウ酸防蟻処理を行っていることも特徴です。

今後のビジョンを教えてください。

「タフハウス+」は耐震性能を突き詰めた住宅ですが、今後はデザイン性を重視した規格型住宅を開発中です。開口部が大きな家など、バリエーションを増やしていく予定です。耐震性を究極まで追求するか、デザインにもこだわりたいかなど、家を建てる方々の希望に合わせて選んでいただければと思います。

まとめ

鈴木強さん
鈴木強さん

「耐震研究所」の室内専用地震動シミュレーターは、小学生以上の方が利用可能です。体験したい方は耐震研究所に連絡の上、事前予約が確実です。地震に強い家づくりに興味がある方は、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

▼新築戸建て規格住宅 株式会社マスイデア「タフハウス+」の詳細はこちら

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