木造住宅を中心とした一戸建て住宅を建てる際に注意したいことのひとつが、シロアリの発生です。シロアリ被害に遭うと、柱や梁といった住宅の基礎部分に被害が生じやすく、建物の強度が弱まってしまいます。耐震性能の低下にもつながるため、新築の段階からシロアリ対策が必要です。この記事では、シロアリ予防工事が必要な理由やシロアリ発生を予防するための対策を解説します。
目次
1. 新築一戸建て住宅でシロアリは発生する?
2. 新築時にシロアリ予防工事が必要な理由
3. 新築時に実施しておきたいシロアリ対策
4. 新築時に考えておきたいシロアリ発生予防 まとめ
新築一戸建て住宅でシロアリは発生する?
シロアリは北海道の一部を除き、日本全国で生息しています。被害の多くは、湿った木材を食べるヤマトシロアリと新しい木材を好むイエシロアリです。シロアリが発生しやすいのは築年数が経過した木造住宅という認識の方が多く「新築ならシロアリのことまで考えなくても良いのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、シロアリが好む湿気が溜まりやすい環境であれば、築年数が浅くてもシロアリの被害に遭う可能性はあります。元々は水田だったところを造成した場合など、湿気が溜まりやすい立地の場合は新築でも特に注意が必要です。
木造住宅であっても、古くからある工法の「布基礎」と比べて湿気が建物に伝わりにくい「ベタ基礎」を採用すれば、床下を厚い鉄筋コンクリートで覆うためシロアリ被害を防ぎやすいと言われています。それでも、基礎に隙間があった場合などシロアリが発生する可能性はゼロではありません。
新築時にシロアリ予防工事が必要な理由
シロアリの被害を未然に防ぐには、新築時のシロアリ予防工事が有効です。なぜ工事が必要なのでしょうか。
シロアリは地下に巣を作ります。シロアリ予防工事をせずに一戸建て住宅を新築した場合、気づかないうちにシロアリが繁殖し、被害に遭うリスクが高まります。シロアリ被害に遭えば、住宅の基礎が劣化して耐震性能も低下します。自分の住まいだけでなく近所の家々にも被害が拡大してしまう恐れがありますし、場合によっては倒壊する可能性もあります。シロアリから大切な家を守るため、新築時にはシロアリ予防工事をおこないましょう。
また、建築基準法第三章「構造強度」の第三節「木造」第四十九条には「構造耐力上主要な部分である柱、筋交いおよび土台のうち、地面から1メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、シロアリその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない」とあり、防腐・防蟻の対応が必要であることが分かります。
新築時に実施しておきたいシロアリ対策
シロアリの被害を防ぐにはさまざまな方法がありますが、シロアリ予防工事以外にも、新築時だからこそ可能な対策があります。順に見ていきましょう。
新築時に実施しておきたいシロアリ対策1―シロアリの侵入を塞ぐ
まずは、シロアリが入り込みづらい家づくりを心がけましょう。前述の通り、布基礎と比べてベタ基礎にすることでシロアリ侵入のリスクを軽減できます。また、基礎と土台の間や配管部分は隙間が生じやすく、そこからシロアリが侵入しやすくなっています。継ぎ目や隙間は徹底的に塞ぎましょう。
新築時に実施しておきたいシロアリ対策2―シロアリが住みにくい環境を作る
万が一シロアリが侵入しても住み着きにくい環境を作ることも大切です。シロアリは湿気が多いところを好むので、床下が乾燥した状況を保つことでシロアリの繁殖を防げます。また、建材の樹種などによってもシロアリの住み着きやすさが変わります。柔らかく、含水率が高い木を好むので、同じ木材でも丸太の中心部にあたる心材よりも外側の水分量が多い辺材の方がシロアリ被害に遭いやすい傾向があります。また、ヒノキやヒバなど香りが強く固い木材はシロアリに比較的強いと言われています。
新築時に実施しておきたいシロアリ対策3―シロアリ予防工事をおこなう
シロアリ予防工事は「防蟻処理(ぼうぎしょり)」と言われることも多く、主に住宅の基礎部分に専用の薬剤を散布する方法が取られます。シロアリが発生する前におこなう工事であり、新築後におこなうことも可能ですが、新築時であれば基礎部分の隅々まで徹底的に散布できます。効果は5年程度ですので、5年毎に再施工するといいでしょう。
なお、薬剤を散布する方法は「バリア工法」と呼ばれていますが、この他にも毒エサを家の周辺に設置する「ベイト工法」という方法もあります。時間はかかりますが、シロアリを巣ごと駆除したい場合などに有効です。また、新築時だからこそできる工事に「シート工法」があります。防蟻・防湿効果があるシートを床下に敷設することで、床下からシロアリが侵入するのを防ぐことができます。ベイト工法やシート工法は薬剤をその場で散布せずにシロアリを防ぐことができるので、人体への影響や土壌汚染が心配な方におすすめです。
新築時に実施しておきたいシロアリ対策4―床下点検がしやすい家づくり
どれだけシロアリに配慮した家づくりをしても、築年数の経過とともに劣化が進み、シロアリ被害のリスクは高くなります。シロアリは床下の木部など見えない部分に侵入するため、定期的に点検し、もしシロアリが発生していたら速やかに駆除することが大切です。そのために、新築の段階で点検しやすい家づくりを進めましょう。床下に潜って点検できるよう、あらかじめ点検口を設置します。また、シロアリは侵入時に「蟻道(ぎどう)」と呼ばれるトンネルのような空洞を作ります。床下だけでなく、外側の基礎や外壁に蟻道ができていないかチェックすることが大切です。ウッドデッキや物置などの陰になり、蟻道を見逃してしまうことがないように考えて設計してもらいましょう。
また、シロアリは木材だけでなく段ボールも好みますので、引っ越しなどで使用した段ボールを家の近くに置いておくのは絶対にやめましょう。
築時に考えておきたいシロアリ発生予防 まとめ
一戸建て住宅の新築時は、決めることがやまほどあるためシロアリ対策まで気が回らないこともあると思います。建築基準法で定められていますので、まったく無いことはないと思いますが、家を長持ちさせることにつながりますので、よく確認しておきたいですね。新築時に床下の点検をしやすくしておくこと、シロアリ予防工事をおこなっておくことで、住宅の基礎が劣化するリスクを軽減し、耐震性などの安全性を確保できます。住宅に長く住み続けるためにも、資産価値を保つためにも大切なことですし、将来、シロアリ被害に遭って予定外の費用が発生することも防げます。これから一戸建て住宅を新築する方は、シロアリの発生を未然に防ぐために、新築時だからできるシロアリ予防対策と、その後のメンテナンスをはじめから考えておくといいでしょう。
ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。