旅行ジャーナリストに聞く! withコロナ時代の家族旅行と「旅育」の考え方

2020年から新型コロナウイルスが流行し、これまでのように気軽に旅行ができない状況が続きました。withコロナ時代となった今でも「不安で出かける気になれない」「旅を楽しめないかも?」……と考える方がまだまだ多いのではないでしょうか。しかしwithコロナ時代の旅行には、今までと違った意義やメリットがあるそうです。そこで、旅行ジャーナリストで旅育コンサルタントの村田和子さんに、withコロナ時代の家族旅行について、アドバイスをいただきました。

旅行ジャーナリスト・村田和子のプロフィール
村田和子 プロフィール
旅行ジャーナリスト・旅育コンサルタント
トラベルナレッジ代表

「旅行者・地域・社会が旅を通じて元気になる」をモットーに、人生や日常を豊かにする旅の提案を行う。「家族旅行・旅育」「ヘルスツーリズム」「記念日旅行」「クルーズ」などをテーマに、雑誌やwebへの寄稿、テレビ・ラジオへ出演。
旅育メソッド🄬を提唱し、著書に「家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ~旅育BOOK(日本実業出版社 )」。旅育をコンセプトとしたイベント監修や講演も行う。
公式ブログ:https://www.murata-kazuko.com/
家族deたびいく:http://tabi-iku.jp/

旅行ジャーナリストの村田和子です。新型コロナウイルスの蔓延によって、私たち大人はもちろんのこと、子どもたちからも多くの機会が奪われました。一方で、あたり前だと思っていたことが当たり前ではないと気づき、感謝したり、家族で考えるチャンスにもなったりしたのではないかと思います。旅行に関しても「なぜ今、旅に出るのか?」「安全に旅をするためにはどうしたらいいのか?」などを家族で考え、話し合うことが大切で、工夫次第で子どもの成長につなげることができます。今回はwithコロナ時代の家族旅行、そして私の提唱する「旅育」の考え方についてお話しますので、皆様の参考となれば幸いです。

withコロナ時代の旅行とは? 価値観の変化と子どもの成長

withコロナ時代の旅行とは? 価値観の変化と子どもの成長

旅に対するイメージは、コロナ禍の2年間でガラリと変わったように感じます。以前は「現地で楽しんでおしまい」といったレジャー要素の強いものでした。それに比べて今は、旅はそれ自体が楽しいのはもちろんですが、“心身の健康に必要なもの”、“学びへ発展する機会として重要“だと考えられるようになってきています。

子どもは自分が接する世界がすべてだと考えがちにもかかわらず、今の子どもたちは、マスクを取ったクラスメイトの顔を知らなかったり、オンライン授業により人との距離感がうまく取れなかったりと、社会との接点が希薄になってしまいました。コロナ禍によって狭くなってしまった子どもの視野を広げるためにも、今こそ旅は必要だと考えます。

非日常体験での刺激は、やる気ホルモンのドーパミンや幸せホルモンのセロトニンの分泌が活性化するという調査結果もあり、旅は心身の健康や心の安定に良い影響があるとされています。いろいろな人と出会い、言葉や習慣などの違いを体験することで多様性を意識するきっかけにもなるでしょう。そして、体験にはタイミングが重要です。コロナにより社会との接点が希薄になった2年間は、日々成長する子どもへの影響も大きいと考えられます。コロナ禍で封印されていた子どもたちの好奇心を目覚めさせ、経験から学ぶ楽しさを育むためにも、感染者数が落ち着きつつある今、改めて家族旅行の意義を考えてみてはいかがでしょうか。

飛新幹線でもしっかりと換気は行われている

また、コロナ禍では旅の移動手段として車を選ぶ方が増えました。人との接触を最小限に留めることができるので、感染対策として有効ですし、子どもがぐずっても周囲に迷惑がかかりにくいというメリットがあります。一方で、駐車場不足や渋滞といった新たな問題も出てきており、環境への影響も懸念されていますね。飛行機や新幹線は窓が開かないので密閉されているように感じるかもしれませんが、実は飛行機は2〜3分、新幹線は6〜8分で、内部の空気は外気と入れ替わっているんです。しっかり換気されているので、過度に心配する必要はありません。電車などに乗ることは、子どもの経験値や社会性アップにもつながるので、アフターコロナにむけて、公共交通機関の利用を検討することも重要となるでしょう。

知っておくべき旅の新常識

知っておくべき旅の新常識

感染の落ち着きとともに欠航や運休も減り、夏休みには飛行機の増便も発表され、旅がしやすい環境になってきています。ただし、感染状況の変化によっては急な変更もあり得ますので、しばらくは欠航や運休のリスクや対応も頭の片隅に置き、余裕をもたせた旅計画を心がけると良いでしょう。

JRの新幹線や特急では状況に応じて運行を決定し、指定席の販売をするので、予約ができれば基本的に安心して大丈夫です。気を付けなくてはいけないのは、飛行機の場合。予約ができても予約率が低いと直前に運休となることがあります。その場合は前後の便への変更や払い戻し対応となるので、旅行の計画に影響がでてしまうでしょう。また、JRや航空会社などの交通機関は、緊急事態宣言やまん延防止対策法に関わるキャンセル料は無料ですが、宿泊先などは施設によって異なるので注意が必要です。

ちなみにコロナ禍では旅の情報収集をしていなかった方も多いかと思いますが、旅行業界ではコロナでお客様がいない間に、新たなサービスや取り組みも始まっています。たとえばファミリー向けなら、東海道新幹線のお子様連れ専用車両がGW前後の週末も拡大して運行されました。JR西日本では乗り放題のきっぷを多数発売し、子ども料金は一律と破格です。小田急電鉄ではファミリー世帯の呼び込みのために、子ども運賃を一律50円にしたというニュースもありましたね。

チェックインなどの手続きは機械で自動化している宿泊施設が多くなっている

宿泊先では「おもてなし」が変化しました。チェックインなどの手続きは機械で自動化にしたり、荷物は宿泊者自らが部屋へ運んだりなど、有人対応を必要最小限にしている宿泊施設が増えています。以前と比べて不便に感じることがあるかもしれませんが、これも感染対策を考えたおもてなしのかたちです。小さなお子様と宿泊するときなど、荷物を自分たちで運ぶのが難しい場合はスタッフに相談しましょう。声をかければお手伝いしてくれるところが多いですよ。

その他、旅先の施設やイベントなどが予約制になっているパターンや営業時間の変更、飲食店も感染状況によって、営業状況が変わっているケースがあります。ホームページの記載が間に合っていないこともあるので、SNSで最新状況を確認したり、電話で聞いたりして、事前にチェックするようにしましょう。

急な発熱時に備えて小児救急電話相談の番号を覚えておく

旅行中の体調不良についても、コロナ禍前後で対応が変っています。そのなかでも気を付けたいのが、発熱の症状。旅先でお子様が急に発熱してしまったことを想定して、「小児救急電話相談」の番号を覚えておきましょう。すぐに受診が必要かなど判断に困ったとき、小児科医や看護師に無料で相談できるサービスです。全国どこからでも「#8000」にかければ所在の自治体に相談できて、通話料のみかかりますが、お子様の症状に応じた対処方法や受診する病院などのアドバイスを受けられます。発熱時の対応は宿泊先によって異なるため、心配なら事前に確認しておくとより安心できるでしょう。

県民割・ブロック割などお得な情報の調べ方

withコロナの観光支援事業として、都道府県別の県民割や地域ブロック割のように旅行費用がお得になるキャンペーンも始まっています。先日も県民割の地域の拡大検討が発表されましたし、新たなGoToトラベル事業など、今後もさまざまな施策の実施が予想されます。旅を検討している方は割引をうまく活用できるように日頃からアンテナを張っておきましょう。旅行クーポンサイトの「県民割全まとめ」などが便利ですね。

また、県民割やGoToトラベルの利用時にはワクチン接種証明の掲示が必要になります。証明書は紙でも良いのですが、忘れたり紛失したりする可能性があるので、アプリで発行しておくのがオススメです。マイナンバーと暗証番号があれば、新型コロナワクチン接種証明書アプリをダウンロード可能。5分ほどの手続きで簡単に取得できるので、旅行の前に準備しておきましょう。

ママ&パパのための赤ちゃんと行くリフレッシュ旅もオススメ

ママ&パパのための赤ちゃんと行くリフレッシュ旅もオススメ

子どもがまだ赤ちゃんのとき、親は知らず知らずのうちにストレスを溜め込みがち。とくにコロナ禍では心身ともに負担が大きかったと思うので、パパやママのリフレッシュ旅行もぜひ検討してみてください。私も息子の首が据わった生後4ヶ月のときに心身のメンテナンスのために温泉へ出かけ、ゆっくり過ごせたおかげで、帰宅後は元気に家族と向き合うことができました。

赤ちゃん連れの宿泊には子どもウェルカムな宿を選ぶのがポイント

赤ちゃん連れの宿泊には、子どもウェルカムな宿を選ぶのがポイント。ミキハウス子育て総研の「ウェルカムベビーのお宿」では、赤ちゃん・子ども連れでも安心して過ごせると認定された宿泊施設が掲載されています。赤ちゃんが滞在することを前提とした細やかなサービスがあったり、パパやママが寛げるように工夫されていたりする宿ばかりです。星野リゾートのリゾナーレは、「大人のためのファミリーリゾート」がコンセプト。離乳食の用意があるほか、夫婦でゆっくり食事ができるように、メインダイニング利用時には無料の託児がある施設もありますよ。

子どもが帰りたくなくなるトマムの託児所
子どもが帰りたくなくなるトマムの託児所

高速道路のSAやPAなどでも、赤ちゃん旅を応援する環境が整っている施設が増えています。感染状況が気になる方は、近場を日帰りで旅したり、部屋風呂や貸し切り風呂のある温泉などを選んだりするのも良いでしょう。近場で交通費がかからない分、ちょっとリッチな宿や部屋で過ごすのもオススメですね。

withコロナだからこそ家族旅行を検討! 子どもの「旅育」を考える

withコロナだからこそ家族旅行を検討! 子どもの「旅育」を考える

これから子どもたちが生きていく未来は、変化の激しい予測不可能な世界です。そんな未来を生きるために何が必要だろうと考えると、心身が健康であることに加えて「自分らしく、豊かで幸せな人生を送ること」、そして「夢や理想を持ち、それに向かって進むこと」だと思います。

私が「旅育」を意識するようになったきっかけは、息子が旅先で出会う“はじめて”に目をキラキラと輝かせ、興味や関心を抱く姿でした。日常とは違う景色やさまざまな価値観と接することで、新しい世界が彼のなかで広がっていくのを感じたんです。息子が興味を持ったこと、「なぜ?」「なに?」「どうして?」に真摯に向き合い、子どもが答えを見つけるようにサポートしたり、一緒に考えたりすることで「知ること、学ぶことが楽しい」ということを体感。そういった積み重ねは、好奇心や探求心を育み、夢や理想を持つきっかけとなります。また、そのときの親子のコミュニケーションも、前向きに自分らしく人生を歩むための礎になったと思います。今では息子も大学生となりましたが、「学ぶのが楽しい」というのが自然になっていて、親から見てもうらやましいと感じることも。変化の激しい時代に自ら考え歩むためには、旅での学びは欠かせないものだったと感じますね。

withコロナだからこそ気付きや学びにつながることもある

現在はコロナ禍から復興へ向かう過渡期で、旅に出るかどうか悩む方も多いかと思います。しかし、withコロナだからこそ気付きや学びにつながることもあります。旅に出るかどうか? その意味やリスクなどを子どもと一緒に考えたうえで旅を楽しむことができれば、それは大きな成功体験になることでしょう。たとえ行かない選択をした場合も、その理由や「どうなったら我が家は旅を再開するのか?」が共有できれば、それも学びや目標になります。

人生において回避できないリスクは多々ありますが、先行きが不透明な現代社会だからこそ自分を肯定して生き抜く力を身に付けることはとても重要です。そして自分を肯定するためには、成功体験を重ねることが大切。コロナ禍の2年間は、学校行事や修学旅行が次々と中止になり、子どもたちが新たなことに挑戦し、成長する機会が奪われました。人との関わりが少なかった分、子どものコミュニケーション力や自己肯定力が育まれる機会も少なかったように思います。

その機会を補うためには、誕生日や入学、卒業、進級などを祝う旅、「祝旅」から始めるのがオススメです。どんなお祝いかを宿泊予約時に伝えておくと、施設スタッフからメッセージをいただけたり、サプライズな演出をしてくれたりと、たくさんの人に祝福してもらえることが多くあります。「おめでとうございます」というプラスの言葉のシャワーを浴びることで、子どもはもちろん、親御さんも自分を肯定することができるはず。旅を通じて初めて会う人とのコミュニケーションも生まれます。この2年間を埋める体験をするのは容易なことではありませんが、「旅育」はそのきっかけや手段になり得ますし、家族の関係性にもプラスに働くことでしょう。

旅行を検討するだけでも効果アリ? 旅育のアドバイス

旅行を検討するだけでも効果アリ? 旅育のアドバイス

withコロナ時代では、旅行に行くかどうかを子どもと話すこと自体が旅育になります。今の状況でやりたいことはあるか? それを叶えるにはどんな場所に行けば良いのか? その場ではどうやって感染症対策をするか? などを一緒に検討することで、お子様が自分の考えを話せるようになったり、新たな学びがあったりするはずです。

旅育は「どこへ行くかよりも何をするか」が重要なので、遠出が心配なら、近場へ日帰り旅行という選択肢もあります。たとえばキャンプをしたい場合、『○○県 キャンプ』と調べてみると、わざわざ遠くに行かなくても意外と近くにあるかもしれません。地元のイベントや講演会などに参加するのも良いですね。外出自体が不安ならオンライン旅行を検討するのも良いでしょう。たとえ旅に行かないという選択をするにしても、非日常の世界に触れる意識を持つことが大切です。

オンライン旅行の学びと楽しみ方

オンライン旅行の学びと楽しみ方

コロナ禍でなかなか旅行に出られない状況が続いたとき、旅行業界で生まれたのが「オンライン旅行」です。実際の旅と同様に非日常感が味わえ、オンラインならではの体験も子どもにとって良い刺激になります。たとえば動物園で飼育員しか入れない場所を見られたり、空から観光地を見られたり……実際の旅ではできない体験も待っているので、旅育ツールのひとつとして、ぜひご活用ください。私が好きな「かみね動物園」もYou Tubeチャンネルをはじめましたが、休園中に配信を始めた動物園や水族館など、お家にいながらさまざまなスポットをリアルタイムで体験できるものも増えています。

旅行会社などが主催する有料のオンライン旅行も見逃せません。アフリカのサファリツアーに飼育員の解説付きで参加したり、世界一周したりと、実際に行くのが難しいような旅行でもオンラインなら数千円ほどで体験できるのです。オンライン旅行を選ぶポイントは、リアルタイム配信を選ぶこと。遠く離れた異国の人とも同じ時間を共有でき、質問や会話もできるので、自宅にいながら非日常感たっぷりの刺激を味わうことができます。なかには事前に食材が送られてくる体験型のものもあり、五感で楽しめるのでオススメです。さまざまなオンライン旅行のプランがありますので、お子様と一緒に選ぶのも、旅の計画のワクワク感が感じられていいと思います。

オンライン旅行とリアル旅行を組み合わせることで旅育効果がさらに高まる

また、オンライン旅行とリアル旅行を組み合わせることで旅育効果がさらに高まります。旅行の下準備として、オンライン体験はお子様のモチベーションアップにぴったりですし、実際に訪れたときに違った視点で土地や生き物を見ることができて、新たな学びにもつながることでしょう。

村田和子さんオススメのオンライン旅行サイト

●HIS
キッズ向けオンライン体験ツアー
オンライン体験ツアーが豊富。国内から海外まで幅広く扱われており、旅のテーマも面白いものばかり。価格も手頃なツアーが多く、1端末で複数名が参加できるものもありますよ。

●アソビュー!
沖縄離島オンライン体験
日本全国のレジャー施設やアクティビティ体験のチケットを販売する会員制サービスです。オンライン旅行では、サトウキビの魅力丸かじり体験のように「体験キット」が事前に送られてきて、栽培体験や黒糖づくりが体験できるツアーもあります。

withコロナ時代の家族旅行と「旅育」の考え方 まとめ

コロナを体験して、考えたことが2つあります。ひとつは「コロナだからこそ出会えたことや人もいること」、そしてもう一つが「過去は変えられないが未来は変えられる」ということ。子どもが将来振り返ったときに「コロナは大変だったけれど、今の自分があるのはコロナ禍を体験したからこそ」と思えるように、今できることを大切に、将来に向けて歩んでほしいと思います。そして旅に出たら、さまざまなものに触れ、子どもたちが自ら考える機会をサポートしていきましょう。そうやってコロナ禍を乗り切ったことは、大きな成功体験になるはずです。

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