マンションで騒音トラブルに見舞われないために。騒音の種類や音のレベル、騒音対策も解説

「せっかく夢のマイホームを手に入れたのに、騒音問題に悩まされている」「子どもの声や足音がうるさいと苦情がきてしまった」といった経験のある方は少なくないでしょう。特に、一戸建て住宅と比べてマンションは隣や上下階の住民と距離が近く、騒音トラブルが発生しがちです。どのような音が騒音と判断されやすいのでしょうか。そして、どうすれば騒音トラブルを回避できるのでしょうか。騒音の種類や騒音トラブルを防ぐための対策について解説します。

目次
1.マンションで感じる騒音の種類
2.マンションで感じる騒音のレベル
3.マンションに住むなら考えたい騒音対策
4.マンションで感じる騒音 まとめ

マンションで感じる騒音の種類

マンションで暮らしていると、両隣や上の階などから生活音やペットの鳴き声などが聞こえてくることがあります。まったく音を立てずに暮らすことは不可能ですが、日常生活に支障をきたすような大きな音や不快な音であれば「騒音」と感じるでしょう。まずは、騒音にはどのような種類があるのか、具体的に見ていきましょう。

マンションで感じる騒音の種類1―空気伝搬音

マンションで感じる騒音の種類1―空気伝搬音

空気の振動によって伝わる音が「空気伝搬音(伝播音)」です。人の話し声やテレビをはじめとするスピーカー類から出る音などが代表的です。動物の鳴き声や風の音、外で車の行き来する音なども、空気伝搬音に含まれます。 空気伝搬音は、隙間から音漏れすることで騒音と感じます。その原因となりやすい窓や壁、ドアなどの隙間を塞いだり、防音材や吸音材を使用したりすることで、比較的容易に騒音を低減することができます。

マンションで感じる騒音の種類2―固体伝搬音

マンションで感じる騒音の種類2―固体伝搬音

床や壁の振動によって伝わる音が「固体伝搬音(伝播音)」です。上の階で床を歩き回る音や、ピアノやドラムのような床に設置する楽器を演奏する音などが代表的です。ドアを開閉するときや椅子を引いたときの音、トイレを流したときのような給排水設備が発する音もこちらに分類されます。ちなみに、空気伝搬音と固体伝搬音が同時に発生するケースもあります。例えば、スピーカーから直接出る音は空気伝搬音ですが、スピーカーから床に伝わる重低音に関しては固体伝搬音だと言えます。

固体伝搬音は、壁や床を隔てていてもそれらを振動させることで遠くまで音が伝わってしまいます。マンションでは建物の構造体に音が伝わると、あっという間に広がってしまうので空気伝搬音と比べて騒音対策が難しい特徴があります。

固体伝搬音のなかでも、床に振動が伝わることで発生する音を「床衝撃音」と呼びます。床衝撃音は衝撃特性の違いにより「軽量音」と「重量音」に分類できます。

マンションで感じる床衝撃音の種類1―軽量音

マンションで感じる床衝撃音の種類1―軽量音

床衝撃音のなかでも、スリッパで床を歩いたときのパタパタという音や食器など小さなものを落としたときのコツンという音、椅子を引いたときのガタンという音などを「軽量音(軽量床衝撃音)」と言います。そう大きな音ではないので音を出したほうは騒音の認識が無い場合があります。軽く高い音が発生しますが、カーペットを敷くなど吸音性を高めることで騒音対策がしやすい音です。

マンションで感じる床衝撃音の種類2―重量音

マンションで感じる床衝撃音の種類2―重量音

子どもが飛んだり跳ねたり駆けまわったりしたときのドンドンという音や、転んで尻もちをついてしまったときやダンベルのような重いものを落とした時に発生するドスンという音などを「重量音(重量床衝撃音)」と言います。重く鈍い音で、構造躯体を通じて床や壁から伝わりやすく、音を防ぐためにはコンクリートを厚くすることで振動を軽減しなければなりません。後からの騒音対策が難しい音です。

床衝撃音の遮音性能

マンションの床衝撃音レベルに対する適用等級
適用等級 軽量音の目安 重量音の目安
特級
(遮音性能上、特に優れている)
L40 L45
1級
(遮音性能上、優れている)
L45 L50
2級
(遮音性能上、標準的)
L55 L55
3級
(遮音性能上、やや劣る)
L60 L60
日本音響学会誌「床衝撃音遮断性能基準と居住者の生活実感の対応(P185)」をもとに作成

床衝撃音の遮音性能を「L値」という単位で表します。等級の数値が小さければ遮音性能が高く、床衝撃音が伝わりにくいということです。マンションの床材として使用されることが多いフローリングにはL値が表記されていて、軽量音はLL~、重量音はLH~と記載され、遮音性能の基準となっています。ただし、床の遮音性能は躯体(マンションの場合は概ねコンクリートスラブ)の厚みにより異なります。そのため、L値で示す遮音性能は、一定の条件下で測定した数値をもとにした「推定値」であることに注意が必要です。

また、防音性能における新しい表示方法として「ΔL(デルタエル)等級」があります。軽量音はΔLL~、重量音はΔLH~で表記され、L値とは逆に等級の数値が大きいほど音に対する低減性能が高いことを表します。L値は躯体を含めた床全体で評価しますが、ΔL等級は床単独の性能を評価しています。

これから分譲マンションを購入するにあたり、床衝撃音を低減して騒音トラブルを回避したいと考えるのであれば、床(躯体)の素材や厚みとともに、L値やΔL等級といったフローリングの遮音等級を確認しておきましょう。

マンションで感じる騒音のレベル

マンションで感じる騒音のレベル

マンションで感じる騒音にはさまざまな種類があることが分かりましたが、どこからが許容できる生活音で、どこからが騒音なのか、判断が難しいところです。音がうるさいと感じる基準は人それぞれですが、騒音のレベルを「デシベル(dB)」に換算することで、判断基準としています。

環境省が定める騒音の環境基準によると、一般的な住宅地の騒音基準は、昼間(6:00~22:00)が55デシベル以下、夜間(22:00~6:00)が45デシベル以下となっています。昼間が55デシベル、夜間が45デシベルを超えれば「騒音」であると言えます。

マンションで感じる騒音のレベル―生活騒音レベルの目安

〇デシベルと言われても、それがどのくらいの大きさの音なのかピンとこない方も多いでしょう。よくある生活音のレベルは、以下の通りです。

日常的に発生する生活音のレベル目安
日常的な生活音の種類 音の大きさ
エアコン 約41~59 デシベル
換気扇 約42~58 デシベル
洗濯機 約64~72 デシベル
掃除機 約60~76 デシベル
ピアノ 約80~90 デシベル
テレビ 約57~72 デシベル
犬の鳴き声 約90~100 デシベル
人の話し声(日常) 約50~61 デシベル
人の話し声(大声) 約88~99 デシベル
東京都環境局「生活騒音」をもとに作成

環境省による騒音基準は前述の通りですが、同じ大きさの音でも静かな環境で聞けばより気になりますし、音に対する感じ方は人それぞれです。マンションで発生する騒音を法的に規制するようなルールもないので、自分がどのくらいの音を出しているのか、周囲にどの程度影響を及ぼしているのか、主な生活行動で発生する音のレベルを参考にしながら、自主的に対策をするしかありません。

マンションに住むなら考えたい騒音対策

マンションに住むなら考えたい騒音対策

マンションは一戸建て住宅と比べ、隣の住居と壁や床が隣接しており、音が伝わりやすい環境です。騒音トラブルを回避するには、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。

家族構成をチェック

「小さな子どもがいて大きな音を立ててしまいそう」と心配な方は、ファミリー世帯向きのマンションを選ぶことで、うるさくしてしまっても「お互い様」と感じ、トラブルに発展する可能性を軽減できます。入居後にご近所づきあいをして親しくなっておくことも大切です。また、ペットを飼っている場合も、同じようなペットを飼っている人が多いマンションを選ぶことでトラブルを避けやすくなります。事前に管理規約を確認しましょう。

部屋の位置を選ぶ

階下へ足音が響いて騒音トラブルになることを避けたければ、1階の住戸を選びましょう。1階が駐車場や店舗などになっている場合は、2階の住戸を選びます。逆に「他人の足音を気にせず静かに暮らしたい」という方は、エレベーター近くの住戸を避けるとともに最上階の住戸を選びましょう。

また、角部屋は隣接する住戸が少ないので、生活音を気にせず暮らしやすいでしょう。

間取りにも配慮する

隣の住戸の間取りを確認しておきましょう。例えば、隣の住戸の寝室がこちらのトイレと隣接していれば、トイレのモーター音や振動、ドアを開け閉めする音などが頻繁に漏れ、ストレスを与えてしまうかもしれません。逆に、静かに過ごしたい場所なのに隣の住戸の水回りが隣接しているという場合は、壁にタンスや本棚のような大きく厚みのある家具を設置して音漏れを軽減するなどの対策が可能です。

遮音性能を高める

マンションを購入する際は、床の厚さや素材、フローリングの遮音等級を確認しましょう。マンションの床は主に「直床」か「二重床」が採用されていて、コンクリートの躯体に直接床材を貼る直床の場合は特に、遮音性能の高い床材が施工されているか確認が必要です。防音対策が不十分だと感じた場合は、カーペットを敷くなど対策を検討しましょう。天井も同様に「直天井」と「二重天井」があります。直天井の場合、上階の床がどのような施工になっているかにより、遮音性能が変わってきます。自衛するのであれば、天井に遮音材や吸音材を貼る方法もあります。静かな環境を重視している場合は注意しておきたいポイントです。

また、室内の音が外に漏れるのを防ぎたいのであれば、防音カーテンを使用することもある程度の効果があります。

マンションで感じる騒音 まとめ

マンションで発生する騒音に対し、法的な規制こそありませんが、住民同士のトラブルが発生し、場合によっては訴訟に発展したケースもあります。 騒音をゼロにすることはできませんが、騒音に配慮したマンションを選ぶこと、騒音トラブルが発生しづらい環境を選ぶことでリスクを軽減できます。また、「室内は静かに歩く」「ドアや窓の開け閉めは丁寧にする」「楽器演奏やテレビ鑑賞時はヘッドホンを使用する」といった日々の心がけも大切です。マンションで発生する騒音の数々を知り、適切な対処をすることで、自分も周囲の人もストレスのない毎日を送りたいものですね。

住宅ライター 斎藤 若菜
住宅ライター 斎藤 若菜

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。

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