
総務省「令和5年住宅・土地統計調査(P8)」によると、全国にある持ち家は3,387.6万戸で、全世帯に対する持ち家比率は60.9%。6割を超える世帯が持ち家で暮らしています。「そろそろ家を買いたい」と考えている方も多いと思いますが、まずは何から検討すれば良いのか途方に暮れている方もいるのではないでしょうか。この記事では、家を買う前に考えておきたいポイントを紹介します。
目次
1.家を買う前に考えること―購入するタイミング
2.家を買う前に考えること―資金計画
3.家を買う前に考えること―物件の種類
4.家を買う前に考えること―立地
5.家を買う前に考えること まとめ
家を買う前に考えること―購入するタイミング
住宅購入を漠然と思い描いている段階であれば、まずは「いつ買うべきか」決めたいところです。ここでは、家を買う平均年齢や購入のタイミングを判断するために考えたいことを見ていきましょう。
家を買うタイミング―購入時の平均年齢

まずは、一般的に何歳くらいで家を買う人が多いのか、国土交通省が実施した「令和5年度住宅市場動向調査(P44)」をもとに見ていきましょう。2023年度に初めて住宅を取得した「一次取得者」を見ると、建て替えを除く注文住宅を建てた人の平均は40.1歳、分譲戸建住宅購入者の平均は36.6歳、マンションなどの分譲集合住宅は平均39.9歳、中古戸建住宅は平均43.1歳、中古マンションなど中古集合住宅は44.2歳と、30代後半から40代前半に家を買っていることが分かります。年代ごとの割合を見ても、物件種別を問わず最も多いのは30代、次いで40代となっています。
家を買うタイミング―ライフステージ

結婚や出産、子どもの成長、独立や転職、転勤、定年退職など、人生の節目にはライフスタイルや家族構成が変わります。「もっと広い家に住みたい」「庭のある暮らしがしたい」「部屋数を増やしたい」「職場の近くに引っ越したい」といった気持ちが、家を買うきっかけになった方は多いでしょう。
とはいえ、家は大きな買い物ですから、ライフステージごとに買い替えることは難しく、そのときの住みやすさや利便性だけでなく、10年先・20年先の暮らしも想定しながら家を買うタイミングを見極める必要があります。「老後は一戸建て住宅からマンションに引っ越したい」といった将来のビジョンがある場合は、いつ頃に住み替えたいのか、元の住まいをどうしたいのかも含めてイメージをしておきましょう。
家を買うタイミング―金利や税制

家を買う人の多くが、住宅ローンを利用しています。近年、住宅ローン金利は低水準のまま推移していましたが、2024年3月に日銀のマイナス金利政策が解除されて以降、政策金利は上昇傾向にあり、連動するように住宅ローン金利も少しずつ上がっています。この傾向は今後も続くと予測されますから「少しでも住宅ローン金利が低いうちに購入したい」と考えるのは当然のことでしょう。
住宅ローンの金利とともにチェックしておきたいのが、補助金や減税といった優遇措置制度です。所得税や住民税を減額できる「住宅ローン減税(控除)」をはじめ、住宅性能に応じて利用できる制度や、子育て世帯を対象とした制度もあります。住宅ローン減税については過去記事「住宅ローン控除(減税)を利用できるのはどんな人?必要な要件や手続き方法を解説」を、住宅購入時に利用できる制度に関しては「【2024年版】新築一戸建て住宅を購入するなら知っておきたい!活用できる補助金や減税・優遇措置制度を解説」を確認してください。
家を買う前に考えること―資金計画

家を買うのであれば、収入や貯蓄に見合った資金計画を立てることが大切です。無理のない予算を決めて、身の丈に合った家探しをするために、家を買うために必要となる費用について知っておきましょう。
住宅購入時の平均購入資金と借入金額、自己資本比率
購入資金 | 借入金額 | 自己資本比率 | |
---|---|---|---|
注文住宅 (土地代を含む) |
5,811万円 | 4,126万円 | 29.0% |
分譲戸建住宅 | 4,290万円 | 2,985万円 | 30.4% |
分譲集合住宅 (新築マンション) |
4,716万円 | 2,437万円 | 48.3% |
中古戸建住宅 | 2,983万円 | 1,573万円 | 47.3% |
中古集合住宅 (中古マンション) |
2,793万円 | 1,456万円 | 47.9% |
上記の表は、国土交通省の「令和5年度住宅市場動向調査(P49)」による、物件種別ごとの購入金額とそのうちの借入金額、自己資本比率の平均値です。例えば、土地の購入金額を含めた注文住宅の購入資金は平均5,811万円で、そのうちの借入金額は4,126万円、自己資本比率は29.0%となっています。新築の戸建て住宅は注文・建売ともに購入代金の約3割、新築マンションや中古住宅、中古マンションは購入代金の5割弱を自己資金でまかなっていることが分かります。自己資本比率を高めることで住宅ローンの借入金額を抑え、返済に対する不安やリスクを軽減することができます。
住宅購入時に必要な諸費用

家を買うときには、建物や土地にかかるお金に加え、諸費用がかかります。具体的には、不動産取得税や印紙税といった税金や登記費用、住宅ローンを利用する場合は保証料や事務手数料などがかかります。 一般的に、諸費用は住宅購入時に必要な費用の1割程度がかかるケースが多く、住宅ローンの対象外となることが多いため、事前の準備が必要です。手元に現金を残しておくか、諸費用ローンなどの利用を検討しましょう。詳しくは過去記事「注文住宅を建てるのに必要な諸費用や付帯工事費は?」を確認してください。
家を買う前に考えること―物件の種類

購入時期と予算の目途がついたら、具体的にどのような家を買いたいのか検討しましょう。一戸建て住宅とマンション、新築住宅と中古住宅の違いをそれぞれ見ていきましょう。
物件の種類―一戸建て住宅とマンション
一戸建て住宅 | マンション | |
---|---|---|
メリット | ・プライバシーを保ちやすい ・庭や駐車スペースを確保しやすい ・落ち着いた住環境で暮らしやすい |
・防犯・セキュリティ面の安心感 ・気密性や断熱性が高い傾向 ・共有施設を活用できる |
デメリット | ・階段や段差が生じやすい ・メンテナンスや修繕の計画が必要 ・ご近所づきあいを求められやすい |
・プライバシーを確保しづらい ・敷地内の駐車場は有料が主流 ・管理費や修繕積立金がかかる |
一戸建て住宅とマンションを比較すると、一戸建て住宅の方が広い床面積を確保しやすく、隣との距離も保ちやすいため、落ち着いた環境でゆったりと過ごせます。庭や駐車スペースを確保したい人にもおすすめで、子育て世帯や庭でペットを飼いたい人などにとって、特に住みやすいでしょう。
マンションは、防犯カメラやオートロックなどの防犯・セキュリティが標準で備わっています。RC造やSRC造が一般的なため、気密性や断熱性が高い傾向にあること、共用スペースを活用できることも魅力です。24時間ごみ出しができる環境などもマンションの特徴で、少しでも便利に暮らしたい人に向いています。
一戸建て住宅とマンションの比較について、詳しくは過去記事「一戸建てVSマンション、あなたはどちらを買う?メリット・デメリットを比較!」を確認してください。
物件の種類―注文住宅と規格住宅、建売住宅
注文住宅 | 規格住宅 | 建売住宅 | |
---|---|---|---|
メリット | ・自由に設計できる ・建てる様子を確認できる ・コスト調整がしやすい |
・コストパフォーマンスが高い ・打ち合わせ時間を短縮できる ・完成イメージを想像しやすい |
・完成イメージを想像しやすい ・短期間で購入~入居が可能 ・抑えたコストで購入できる |
デメリット | ・手間も時間も必要 ・住宅ローン契約が煩雑になりがち ・完成した家を想像しづらい |
・注文住宅と比べて自由度が低い ・構造にかかわる箇所は原則変更できない ・土地形状に合わない場合がある |
・自分の好みを設計に反映できない ・オプション費用が嵩みやすい ・建築途中の確認ができない |
新築の一戸建て住宅を希望する場合、自由設計の「注文住宅」、完成済み、もしくは完成予定の土地と建物をセットで購入する「建売住宅」、その間の選択肢と言える「規格住宅」のいずれかを選択することになります。
注文住宅は間取りもデザインも設備も自由に選べますが、何度も打ち合わせを重ねながら詳細を決めていくため、時間がかかります。施工にも時間がかかり、その費用は数回に分けて支払うことになるので住宅ローンも煩雑になりがちです。 建売住宅は注文住宅と比べてリーズナブルで、既に完成している場合もあり、短期間で入居が可能ですが、自分の好みを設計に反映させることはほとんどできません。
規格住宅はある程度決まっているプランをもとに、好みの設備やデザインを反映させてカスタマイズできます。注文住宅よりも短い時間・抑えた予算で一定の希望を叶えることができ、コストパフォーマンスを重視したい人におすすめです。
注文住宅と規格住宅、建売住宅の違いについて、詳しくは過去記事「夢のマイホーム - 新築一戸建て住宅の購入方法 - 建売住宅・注文住宅・規格住宅、それぞれの特徴は?」を確認してください。
物件の種類―新築住宅と中古住宅
新築住宅 | 中古住宅 | |
---|---|---|
メリット | ・最新の設備を利用できる ・アフターサービスや保証が大きい ・税制の優遇措置を受けやすい |
・抑えたコストで購入できる ・完成している家を確認できる ・家に合わせた家具を揃えやすい |
デメリット | ・中古住宅と比べて価格が高い ・完成した家をイメージしづらい ・完成までに時間がかかる |
・旧耐震基準の建物は注意が必要 ・経年劣化などの修繕が必要 ・住宅ローンの利用が制限される |
「せっかく買うのであれば真新しい家がいい」という人は少なくありません。新築住宅であれば最新の設備を利用できますし、中古住宅と比べて住宅ローン控除の適用範囲が広く、固定資産税や登録免許税、不動産取得税といった税制の優遇も手厚くなっています。ハウスメーカーなどのアフターサービスや保証が付きやすいことも特徴です。
中古住宅の魅力は何といっても、新築住宅と比べて抑えたことコストで購入できることです。限られた予算でより広い家や、立地条件の良い家を選択できるかもしれません。購入前に家を確認できるので「思い描いていたマイホームとイメージが違った」という心配がないことも安心材料です。ただし、築年数やメンテナンス状況によっては住宅ローンの借り入れ対象から外れてしまったり、大規模なリフォームが必要になったりする恐れもあります。心配であれば、購入前にホームインスペクションの利用を検討しましょう。
家を買う前に考えること―立地

「どこに住むのか」も、家を買う前に決める大切なポイントです。電車で通勤や通学をするのであれば、最寄り駅からどの路線を利用できるのか、職場や学校までかかる時間や乗り換えの有無は最初にチェックしたいところです。また、最寄り駅までの距離も大切ですが「家から駅までの道のりがフラットなのか」「車の交通量はどの程度か」「夜間の街灯は十分か」など経路の状況も確認します。
周辺環境も重要で、スーパーなどの日常的な買い物スポットや役所、図書館といった公共施設、病院の場所も事前に見ておきましょう。子育て世帯であれば、学校や公園がどこにあるのかも調べておきます。
災害に対するリスクも事前に確認しておきましょう。地域ごとのハザードマップを見て想定される被害を予測することで、家を建てる段階で対策を講じたり、火災保険の加入時に補償を手厚く設定したりすることができます。
家を買う前に考えること まとめ
家を買うことを決めたら、購入のタイミングを見極めるとともに、収入や貯蓄をもとに無理のない資金計画を立てることが大切です。住宅ローンの借入可能額を目いっぱい借り入れるのではなく、諸費用など通常の住宅ローンではまかなえない家以外にかかる費用も踏まえた上で、無理のない返済計画を立てましょう。また、物件の種類によってかかる費用や住み心地、メンテナンスの手間や頻度も変わってきますし「どこに住むのか」という選択も、マイホームでの暮らしを大きく左右します。利便性を重視するのか、落ち着いた環境で暮らしたいのかなど家族で話し合って優先順位を決め、納得のいく家を買えるようにしましょう。