都市部で一戸建ての新築を検討している方であれば、限られた敷地をできるだけ有効活用したいと思われていることでしょう。広い庭を設けたいものの、居住空間を優先するとスペースの確保が難しく、泣く泣く諦めた方もいるのではないでしょうか。
限られた敷地を活かす方法のひとつとして挙げられるのが「屋上のある家」にすることです。この記事では、屋上のある一戸建てを新築する際に気になるメリットやデメリットについて解説します。
屋上とは? テラスやベランダ、バルコニーとの違いは?
「屋上」とは、平坦に施工した屋根のことを指します。下の階の屋根部分を活用した空間「ルーフバルコニー」も建物の屋根を兼ねた空間で、どちらも屋上として認識している方が多いのではないでしょうか。
「ベランダ」は2階以上に設けられた、家から外側に張り出した屋根のある空間です。屋根があるので、雨風や日差しを凌ぎやすいことが特徴です。「バルコニー」はベランダ同様、2階以上に設けられた家から外側に張り出した空間ですが、屋根がないことがベランダとの違いです。
「テラス」は建物の1階から張り出した部分に作られた空間のこと。庭に面しています。「デッキ」も1階から張り出した部分に作られた空間ですが、リビング・ダイニングに隣接した間取りが一般的で、室内の床と同じ高さで作られることが特徴。ウッドデッキを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
ちなみに、屋上やベランダ、バルコニーはいずれも、建築基準法施行令の第126条で「屋上広場または2階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが1.1メートル以上の手すり壁、柵または金網を設けなければならない」と定められています。ただし、第117条で手すりの高さ制限が適用される建築物を定めていて、その中に「階数が3以上である建築物」とあるので、2階建ての場合は手すりなどの設置義務の対象とはなりません。
一戸建てに屋上を設けるメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・庭の代わりに利用できる ・布団や洗濯物を干せる ・アウトドアリビングとして活用できる ・眺望を楽しめる |
・雨漏り対策などメンテナンスが必要 ・落下のリスクを避ける対策が必要 ・落ち葉などの掃除にやや手間がかかる ・建築コストが高くなる |
屋上を設けると、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
一戸建てに屋上を設けるメリット
庭の代わりに利用できる
せっかく一戸建てを新築するのであれば、庭のある家で暮らしたいと思う方は多いでしょう。しかし、限られた土地面積の中で「家はできるだけ広く」「駐車場も必要」などと考えると、思うようなスペースを確保できないこともあります。屋上があれば、子ども用のプールを出したり、家庭菜園やガーデニングをしたり、ペットを遊ばせたり、BBQをしたりと、庭でやりたかった様々なことを実現できます。ハンモックを吊るしたり、テントを張ったりして「おうちキャンプ」を楽しむ方も。夢が広がります。
布団や洗濯物を干せる
日差しを遮るものがなく風通しの良い屋上は、布団や洗濯物を干すのに絶好のスペースです。洗濯物が多い家庭でもゆとりをもって干せますし、シーツやカーテンといった大きなものも干すことができます。家の中に干すと生活感が出て雑然としてしまいがちですが、屋上であればそうした心配もありません。家の中よりも早く乾きやすいことも魅力です。
アウトドアリビングとして活用できる
「アウトドアリビング」とは、リビングと室外空間を一続きにすることで、第2のリビングとして利用できるようにした空間のことです。LDKとひと続きの空間となっていれば、キッチンで作った料理を室外に運ぶのも簡単です。テーブルとイスを設置し、空や太陽の光、風を感じながら食事を楽しむことができます。コロナ禍の生活を機に、家にいながら手軽にアウトドア気分を楽しめる「おうちキャンプ」が人気を集めていますが、テントを張ったり、キャンプ飯を作ったりするにも、アウトドアリビングは最適です。
眺望を楽しめる
屋上は、家の中で一番高く見晴らしの良い場所です。周囲に高い建物がなければ、圧倒的な開放感と眺望を楽しめるでしょう。近隣で花火大会が行われる、お祭りが見える位置にある、風光明媚なロケーションにあるといった場合は、屋上の設置を積極的に考えたいところです。
一戸建てに屋上を設けるデメリット
屋上は、防水塗料を塗る「ウレタン防水」や、塩化ビニールやゴムでできた防水シートを貼る「シート防水」などの防水工事を定期的に行う必要があります
雨漏り対策などメンテナンスが必要
一般的な一戸建ては勾配屋根なので、雨が降ると水が自然と落ちていきます。しかし、屋上がある家は勾配のない水平な屋根「陸屋根(ろくやね)」なので、勾配屋根と比べて水が溜まりやすい状況にあります。雨漏りを防ぐためには、屋上に防水シートを貼るなどの防水工事をしっかりと行う必要があります。施工後も雨風による劣化を防ぐため、定期的なメンテナンスを心がけましょう。
落下のリスクを避ける対策が必要
屋上は落下事故のリスクがあります。小さな子どもがいる場合やペットを遊ばせる予定がある場合は特に注意をしたいところです。壁や手すりなどを設置し、子どもが小さな間は転落防止用のネットを張るなどの対策も行うと万全です。
また、万が一高い場所から物を落としてしまい、人に当たってしまえば大事故となります。植木鉢などを置く際は、風で落下することがないよう、柵の近くには置かないなどの配慮が必要です。
落ち葉などの掃除にやや手間がかかる
掃除する場所が増えることも、留意しておきましょう。落ち葉の掃き掃除やコケ・カビの除去、排気ガス汚れの除去は、美観を保つだけでなく防水層を長持ちさせるためにも必要です。
建築コストが高くなる
屋上を設ける場合、通常の工事に加え、前述の防水工事や、「屋上で食事を楽しみたい」「プール遊びをしたい」といった希望があれば水道・電気工事も生じます。天井の補強や、屋上に上がるために内階段などを設ける工事も必要です。そのため、通常の建築費用にプラスして100万円から数百万円程度の追加費用がかかることを考慮した上で計画を立てましょう。
屋上を設ける際の注意点
一戸建てを新築する際に屋上を設ける場合、いくつかの注意点があります。
プライバシーを守る対策が必要
オーニングテントを設置することで、プライバシーに配慮しつつ日よけにもなります
屋上の魅力は圧倒的な開放感ですが、開放的ゆえ周りの視線が気になります。自宅が周辺で最も高い建物であれば良いのですが、近くに高層の建物がある場合は、上から丸見えになってしまうため、特に対策が必要です。フェンスや柵の設置とともに、収納できる可動タイプのテント「オーニングテント」などで上からの視線を遮る工夫をしましょう。
居住環境などにより、屋上の設置が不向きな場合も
極端に暑い日や寒い日は、屋上で快適に過ごすことが難しいでしょう。雨や雪の日、花粉症の方であれば春先は外で過ごすことが辛いと感じる可能性もあります。また、雪国の場合は数ヶ月の間ずっと、雪が屋上に降り積もったまま残ってしまうことが考えられます。その間は屋上を利用できませんし、屋上が雪の荷重に耐えられるか、防水対策は万全か、他の地域以上に強度や耐水性が求められることになります。自分の住むエリアの環境を見極めた上で、屋上を設置するか判断しましょう。
まとめ
屋上を設置することで、プール遊びやガーデニング、アウトドアリビングなど家にいながら楽しめることや便利になることが増えますが、建築コストやメンテナンスなど負担となる部分もあります。新築する住まいでどのような暮らしをしたいのか見極め、後悔のない選択をしてくださいね。
新築時に考えておきたい庭や災害対策などについては次の記事もご覧ください。
庭木で四季を楽しむ! 作庭家が教える一戸建ての庭づくりのポイント
安心して住める一戸建ての条件は? 一級建築士が教える災害に強い家づくりのポイント