記録的な猛暑となった2020年夏、「エアコンの室外機に水をかけると電気代が抑えられる」といった都市伝説が話題となりました。ほかにも、巷には耳を疑うような家電に関する都市伝説が数多く出回っています。
では、これらの真偽は一体、どうなっているのでしょうか? さまざまなメディアで活躍する人気家電ライター兼アドバイザーの藤山哲人さんに、家電にまつわる都市伝説の真相を思い切って尋ねてみました。驚愕の真実が明らかに⁉︎
お話を伺った藤山哲人さん プロフィール
家電の紹介やしくみ、選び方や便利な使い方などを紹介するプロの家電ライター。独自の測定器やプログラムを開発して、家電の性能を数値化(見える化)し、徹底的に使ってレビューするのをモットーとしているため「体当たり家電ライター」との異名も。「マツコの知らない世界」(番組史上最多の6回出演)や「アッコにおまかせ」、「NHKごごナマ」などをはじめ、朝や昼の情報番組に多数出演。現在、インプレスの「家電Watch」「PC Watch」や「文春オンライン」「現代デジタル」などのWeb媒体、ABCラジオで連載やコーナーを持っている。
家電ライターの藤山哲人です。今回は家電にまつわる都市伝説の数々をプロの目線から真面目に解説してみたいと思います。一度は聞いたことのある話がきっとあると思いますので、ぜひ、真相を確かめてみてください。
Q.「夏場、エアコンの室外機に水をかけると電気代が抑えられる」というのはホント?
A.ホントです。ただし、水道代がかさみます。
室外機は部屋のなかに溜まった熱を外に排出する役割を持っています。しかし、室外機が直射日光を浴び続けて高温になると、排熱をスムーズにできなくなり、その分、必要な電力、つまり電気代は高くなります。なので、室外機に水をかけて冷ますという考え方自体は間違っていません。
ただし、水をかけると言っても、日中に数回程度では全く意味がないです。エアコンを稼働させている間、延々と室外機にホースの水を垂らす必要があります。エアコン自体の節電にはなりますが、全体の水道光熱費で考えると割高なので、水をかけるという方法はオススメできません。
手軽に節電となるのは、室外機の置き場所を日陰にすることやタープなどで直射日光を遮ること、または室外機のファンの前から余計なモノをどけて、風通りをよくすることです。高温になる原因を少なくすることで、室外機が本来持つ排熱性を発揮しやすくなります。
Q.「冬場にエアコンの室外機から白い煙が出るのは故障の予兆」というのはホント?
A.ウソです。壊れている訳ではなく、「霜取り運転」をしています。
エアコンの暖房機能を使うと、室外機から白い煙が出ることはありますが、壊れているわけではありません。白い煙が出る理由は、「霜取り運転」というエアコンが自動で行う機能が関係しています。
外気温が低い日に暖房運転をすると、室外機の熱交換器のまわりに霜が付着することがあります。熱交換器に霜が付くと、空気吸い込み口から外気を吸い込みづらくなり、効率的な熱交換ができず、暖房機能低下の原因となるわけですね。ときには機器の損傷にもつながります。それを防止するのが、エアコンの「霜取り運転」。
冬場、一時的にエアコンから冷気を感じたことはありませんか? そのようなときは大抵、霜取り運転をして霜を溶かしています。つまり、冬場にエアコンの室外機から出る白い煙の正体は、霜が溶けた時に発生する“湯気”です。壊れているわけではないので安心してください。
Q.「外出時、エアコンは付けっぱなしの方が電気代を抑えられる」というのはホント?
A.半分ホントです。30分以内であれば付けっぱなしの方が電気代を抑えられます。
エアコンは、電源のスイッチを入れてから設定温度に近づけるまでの過程で、一番電力を消費します。反対に、設定温度に達したらそれを維持するエネルギーだけで済むので、あまり電力を必要としません。なので、30分程度の外出であれば、わざわざ消すよりも、付けっぱなしの方が電気代を安く抑えることができます。たとえば、近所のコンビニへ買い物に行ったり、洗濯物を取り込んだりするときは、付けっぱなしでOKです。車で大型スーパーまで買い物に出かけたり、家族で外食したりする場合はオフにします。
スイッチのオンオフが面倒だと感じる方は、人体感知センサーを搭載したエアコンを導入するといいでしょう。自動運転モードに設定しておくことで、室内に人がいないと探知したら、自ら運転を止めてくれる機能があるのでオススメです。
Q.「Wi-Fiルーターをアルミホイルや金属製ボウルで覆うと電波が強くなる」というのはホント?
A.ほぼウソです。ただ、奇跡が起これば電波が強くなります。
アルミホイルや金属製ボウルを使った自作のパラボラアンテナが、Wi-Fiの電波を強くするという噂はよく耳にします。ただ、そんな簡単に上手くいく筈はないのです。その試み自体、理論上は間違ってはいませんが、実際のパラボラアンテナと同様の効果を得るには、アルミホイルやボウルの置く位置や角度、大きさ、端末との距離など、すべての要素が奇跡的に噛み合ったときくらいで、可能性はかなり低いでしょう。
Q.「家電の故障は連鎖する」というのはホント?
A.半分ホントです。同じ時期に家電を揃えると、電源回路内の“時限爆弾”が同時に作動することがあります。
定額給付金の給付時や税金が上がる特需のタイミングなどで家電を一斉に買い替えた場合、同じ時期に壊れることは確かにあります。その理由として考えられるのが、どの家電にも必ず入っている「コンデンサ」が同時期に壊れることです。
コンデンサは電源回路上にあり、電気を蓄えたり、放出したりする役割がある、家電のなかでとても重要な部品のひとつ。そのコンデンサですが、時間が経つと“時限爆弾”が爆発するかのように、いきなり壊れてしまいます。ほとんどの場合は爆発することなどありませんが、極稀に本当に爆発することがあります。
コンデンサが壊れる原因は、なかに入っている「電解液」という液体の蒸発。電解液はゴムに密閉されて入っているものですが、時間が経つと徐々に蒸発しはじめて、最後はカラカラになるまで乾燥してしまいます。電解液が少なくなると、コンデンサが機能しなくなり、やがて電源が付かなくなって家電は壊れてしまうのです。家電を形作るパーツの寿命はまちまちですが、電解液そのものの寿命は大差ないというわけですね。
ただし、通気口にホコリなどが詰まってうまく排熱できない状態で家電を使うと、家電内部の温度が高くなり、コンデンサの電解液は蒸発しやすくなります。通気口などをたまに掃除してあげるだけでも、家電は長持ちするので、やってみてください。
Q.「待機電力を消費しない家電がある」というのはホント?
A.ホントです。一部の家電は待機電力を消費しません。
待機電力がかからない家電はたしかに存在します。待機電力とは、コンセントに挿しっぱなしにしているだけで消費する電力のことですが、扇風機やオーブントースターなど、スイッチをバチン! と手動で操作するようなアナログな家電は待機電力を消費しません。
一方、テレビやパソコンなどの電子機器は電源を入れていなくても、コンセントに挿しているだけで待機電力が発生することが多いです。ほかにも、機器の電源をオフにしているにもかかわらず、ほんのりACアダプターが暖かくなるものは、待機電力を消費している証拠なので、不要であれば抜いておくと良いでしょう。また、スマホの充電器のように、充電していないときはほとんど熱を持たないACアダプターもあります。この場合はさほど待機電力を消費しないので、アダプターをコンセントに挿しっぱなしにしてもかまいません。ただし、スマホの過充電は避けるようにしましょう。
Q.「家電はネット通販よりも量販店の方が安く買える」というのはホント?
A.半分ホントです。一番安く買えるのは、家電量販店が運営するネット通販です。
家電量販店が運営するネット通販は人件費などの経費がかかっていないので、家電、特に大型家電を安く購入したいのであれば一番オススメです。ただし、実際に家電量販店に行って、現物を見ないと家電のサイズ感が分からないこともあるので注意しましょう。
ネットで購入したあと、「置きたい場所に置けなかった」という経験はありませんか? たとえば、ヨドバシカメラのネット通販であれば、事細かに必要事項を入力する必要があるので、購入後にサイズの問題で困ることはほとんどありません。
Q.「冷蔵庫は大きいほうが節電になる」というのはホント?
A.ある意味ホントです。庫内の風まわりが良くないと、電気代が高くなります。
単純に大きい冷蔵庫と小さい冷蔵庫の消費電力を比べた場合、大きい冷蔵庫の方が高い消費電力になることは間違いありません。ただし、小さい冷蔵庫に食材がパンパンに詰められている状態だと、庫内の風まわりが悪くなることで、冷却にかかる電力を必要以上に使用している可能性があります。
なので、現在使っている冷蔵庫に空きスペースがほとんどないという方は、スペースを空けるか、今より容量が100リットルほど大きい冷蔵庫に変えると節電につながるでしょう。冷蔵庫に入れる食材の目安を容量の7割から8割程度に抑えると、冷却効率が高まります。ちなみに、冷蔵庫の容量の目安は、家族1人あたり100リットルです。買い置きをする場合は、プラス100リットルあるのがオススメです。
Q.「電子レンジで調理すると食べ物の栄養価が落ちる」というのはホント?
A.ウソです。むしろ栄養価を維持できるのでオススメです。
電子レンジで調理する際、放出される電波が食材に悪影響を与える、という噂を耳にしたことはありますか? それは間違いです。むしろ、野菜を茹でたり、煮込んだりして調理するよりも本来の栄養素を維持することができます。水につけて調理すると、「水溶性ビタミン」と呼ばれるビタミンB群やビタミンCは溶けて水のなかで分解されてしまいます。一方、電子レンジでの調理は、これらの栄養価を逃すことなく加熱ができるわけです。
Q.「家電の調子が悪いとき、叩くとなおる」というのはホント?
A.半分ホントです。コネクタが多い家電は叩くと正常に起動することがあります。
コネクタとは、電子機器の電線と電線を接続するための部品のこと。コネクタが多い家電の調子が悪いときは、接続不良になっているケースが多いです。昔の話ですが、真空管テレビやファミコンにはコネクタが多く使われていたので、ある意味、叩いてなおすという手段が有効だったわけです。ただ、現在の液晶テレビはコネクタがケーブルにつながれており、上手く噛み合っている状態なので叩くことに意味はありません。むしろ壊れる危険があるのでやめましょう。
また、意外に思われるかもしれませんが、現代の家電のなかで叩くと一番なおりやすいのはパソコンです。USBやHDMI、拡張カードなどの接触が悪いときは、接続部分を軽く叩くと正常に作動することがあるので、あくまでもトントンと指で叩いてみるのはアリでしょう。
Q.「ドライヤーのマイナスイオンは効果がない」というのはホント?
A.半分ホントです。効果があるドライヤーはごく一部です。
マイナスイオンを放出するだけのドライヤーでは、髪の潤いやツヤをキープするのにあまり効果はありません。個人的にマイナスイオンを売りにしたドライヤーで効果があると思えるのは、パナソニックの「ナノイー」搭載のドライヤー、もしくはシャープの「プラズマクラスターイオン」を搭載したドライヤーくらいです。
パナソニックのナノイーは、マイナスイオンの約1000倍の水分量を持つので、水分が髪の毛に浸透するといった効果が期待できます。また、シャープのプラズマクラスターイオンを搭載したドライヤーは、プラスイオンとマイナスイオンの2つのイオンが含まれているので、髪の毛の静電気を除去して、パサつきを防ぐ効果があります。
Q.スマホのバッテリーは充電すればするほど寿命が短くなるってホント?
A.半分ウソです。スマホバッテリーの寿命はどれくらい熱を与えたかによって決まります。
スマホのバッテリーの寿命は充電した時間ではなく、正確にはどれくらい熱を与えたかによって決まります。最近では過充電防止などの機能も発達して、バッテリーの寿命自体は長くなりましたが、熱を与えれば与えた分だけ、寿命が短くなることに変わりはありません。
バッテリーを長持ちさせたいのであれば、一日中、充電ケーブルに挿しっぱなしにして、熱を与える状態は避けた方が良いでしょう。また、直射日光が当たるところにスマホを置いておくと、結果的に熱を与えていることになるので、気をつけてください。
Q.「スマホやPCの電波で精子が減る」というのはホント?
A.ホントの可能性があります。
極端な話、人間が電子レンジのなかに入ると、電波の影響で体内の水の分子が加熱されて、爆発してしまいます。なので、電子レンジに近い周波数の2.4GHzを放出するスマホやパソコンが人体に無害と言いきることはできないようです。
明確な医学的エビデンスがある訳ではないですが、ポケットや膝の上にスマホ、パソコンを置くのは、なるべく避けた方が良いかもしれません。また、普及が進もうとしている5Gは周波数が高く、4Gよりも強力な電波を放出しているため、精子に悪影響を及ぼすとも言われています。こちらもまだ実証化されている訳ではないですが、技術革新によって未来に良いことばかりが起きるとは言い切れないのではないでしょうか。どんな技術も「諸刃の剣」と思ってください。利便性と危険性の両方を持ちます。
家電にまつわる都市伝説のウソ? ホント? まとめ
家電にまつわる都市伝説を、自分なりに解説させていただきました。少しでも面白いと思ったり、役に立ったりしたのであれば幸いです。