
光熱費の請求額を見て、「なんでこんなに高いの!?」と驚いた経験はありませんか? 光熱費の高騰が続いている現在、できるだけ節約をしたいご家庭は多いと思います。しかし、「光熱費が高い理由がわからない」「省エネになる節約術をいろいろ試したけどあまり変わらない」という方もいらっしゃることでしょう。そこで、情報番組や雑誌などさまざまなメディアで暮らしに役立つ情報を発信されている節約アドバイザーの和田由貴さんに、光熱費の節約術について伺いました。光熱費節約のポイント、省エネ家電の選び方、エアコンの節約テクニックなどをご紹介します。すぐにできる、目からウロコな節約ポイントを盛りだくさんでお届けしますよ!

節約アドバイザー
消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。私生活では2人の子を持つ母で現役の節約主婦でもあり、日常生活に密着したアドバイスを得意とする。「節約は、無理をしないで楽しく!」がモットーで、耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。著書は『即実践!即効果!節約のプロがおしえる家計防衛術100』など多数。
和田由貴Official site
節約アドバイザーの和田由貴です。電気やガスなどは生活に欠かせない大切なライフラインですが、昨今の高騰により家計を圧迫する一因となってしまいました。そのため、生活をするうえでの快適さは保ちつつ、少しでも光熱費を安く抑えたいという方は多いのではないでしょうか? しかし、電気やガス、水道は、食材や日用品のようにひとつひとつの値段がわからないため、どこから手を付けて良いのかもわかりにくいものです。また、巷で飛び交う光熱費に関する節約術のなかには、あまり効果のないものもあり、実践しても節約にならなかったという方もいることでしょう。では、本当に光熱費が安くなる節約術とは、どういったものなのでしょうか? まずは光熱費の節約についての根本からお話するので、うまく取り入れて快適な節約生活を送りましょう!
目次
1.光熱費の節約ポイントは「家電&照明・給湯・暖房」
2.電気代の節約ならエアコンより冷蔵庫!? 省エネ家電・照明の賢い選び方
3.節水ならぬ“節湯”! 節約のコツをアドバイザーが解説
4.エアコンの冷暖房費を節約するなら「窓」に注目! 「断熱性」を上げる根本的な方法とは?
5.電気代・ガス代・水道代節約の考え方が変わる! プロが教える光熱費の節約術 まとめ
光熱費の節約ポイントは「家電&照明・給湯・暖房」

光熱費の節約について、電気代、ガス代、水道代と請求ごとに考えている方は少なくありません。しかし、光熱費はエネルギー別に考えるよりも、用途別で考えたほうが効率良く節約できるんですよ。資源エネルギー庁の「令和4年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2023)」を見てみると、一般家庭における光熱費の用途割合は、「動力・照明ほか(家電など)」「給湯」「暖房」の3項目が大きく、それぞれ約3割を占めます。つまり、この3つを重点的に節約していくのが最も効果的なわけです。

また、家電・照明や給湯、暖房の使い方を工夫するほうが、ほかの節約術をたくさん実践するよりも実は効率的なんですよ。節約術のなかには効果が薄いものや逆効果になるものさえあるからです。たとえばスマホの充電。スマホをフル充電してかかる電気代は1円程度で、回数を減らしたところで節約にはならないでしょう。「家電のプラグをこまめに抜く」という節約術も、家中を全部やろうと思えばキリがありませんし、最近の家電は省エネ性能が高くてほとんど意味がないうえ、逆に故障の原因になってしまうことも。そういった細かいことをいくつもやるよりかは、節約効果が大きい部分に焦点を当て、重点的に節約術を実践しましょう!
それでは、一般家庭における光熱費の用途割合の第1位、「動力・照明ほか」の節約術から解説していきます。
電気代の節約ならエアコンより冷蔵庫!? 省エネ家電・照明の賢い選び方

「動力・照明ほか」の“動力”とは、家電などを指します。環境省の調査によると、家電のなかでもエアコン ⇒ 冷蔵庫 ⇒ 照明器具の順で電力の使用割合が大きく、この3つだけで家電全体の消費電力量の約4割以上を占めると言われています。そのため、エアコン・冷蔵庫・照明器具に重点を置いて節約していくと良いでしょう。
なかでも注目すべきは、“冷蔵庫”の省エネ性。「省エネと言えばエアコンなのでは?」と思うかもしれませんが、エアコンは15年ほど前のものでも省エネ性能が高く、少々古くても電気代にさほど影響はありません。一方で、15年くらい前の冷蔵庫を使っている場合、最新のものに買い替えるだけで年間電気代の差が1万円ほどになることも。古い家電を買い替えるなら、冷蔵庫を優先的に検討するようにしましょう。

省エネ家電を選ぶポイントは、「統一省エネラベル」です。家電販売店などで製品近くに掲示してあり、省エネ性能がひと目でわかるので、チェックすると良いでしょう。さらに、環境省のサイト「しんきゅうさん」を使えば、新旧製品を詳しく型番比較できて便利です。「しんきゅうさん」では、とくに消費電力量が大きい冷蔵庫・エアコン・テレビ・温水洗浄便座・照明器具を簡単に比較できるため、家電に詳しくない方にも心強いツールですよ。たとえば、温水洗浄便座の温水シャワーには「瞬間式」と「貯湯式」があり、お湯を常に保温しておく貯湯式よりも瞬間式のほうがランニングコストはかかりません。このような違いを知らなくても、「しんきゅうさん」ならパターン比較も簡単にできるので、買い替え前にチェックするのがオススメです。
また、冷蔵庫やエアコンなど、古いものを買い替える際に補助金が出るケースがありますから、購入前に調べてみると良いでしょう。受給対象かどうかは、各自治体のホームページや、家計簿アプリZaimのサイト「私の給付金 2025年」などで確認してくださいね。
照明はLEDがオススメ! リビングなど長時間使う部屋はLED交換で省エネ&節約

照明器具も意外と電気代がかかるので、LEDに変えていきましょう。LEDの消費電力は、なんと白熱球の約10分の1、寿命は約40倍にもなります。本体価格が高くても長期的に見ればかなりお得! 蛍光灯は点けたり消したりすると寿命が縮んでしまいますが、LEDならその心配がない点もメリットです。
LEDの普及率は60〜70%とそこまで浸透しておらず、家中がLEDのお家はまだまだ少ないのが現状です。できれば、使用時間が長いリビングだけでもLEDに変えると良いですね。まずはリビングから始めて、段階的にお家全体をLEDに交換してみてはいかがでしょうか。
節水ならぬ“節湯”! 節約のコツをアドバイザーが解説

家庭で使われるエネルギーで、2番目に大きいのが「給湯」です。お風呂や食器洗いなど、いつも何気なくお湯を使っている方は多いと思いますが、水とお湯では3倍近くコストが違うんです。毎日朝晩15分間、お湯で食器を洗うと、光熱費の差額が年間約3万円になることも……。キッチンや洗面所のように、水栓レバーの位置によって無意識にお湯を使っているケースもありますから、お湯を必要以上に使わないよう意識することが大切です。ちなみに、“節水”と言うとトイレや洗濯をイメージしがちですが、これらはお湯を使わないのであまり気にしなくてOK。お湯を使うお風呂や炊事で、日々の“節湯”を心掛けましょう。
節水しているつもりが無駄遣い……お風呂の効果的な節約術とは?

「光熱費が馬鹿にならないからシャワーで我慢する」「節約のために給湯の設定温度を下げている」という方も少なくないようですが、浴槽に180リットルのお湯を張ると1回あたり約120円。設定温度を1℃下げるとだいたい4円弱の節約、1ヶ月で見ても約110円の節約にしかなりません。それよりも、シャワーの使い方を見直したほうが節約につながります。使用時間を1日1分短くするだけで年間約3,000円は節約できるので、流しっぱなしにせず、こまめにシャワーを止めるなど工夫して入浴しましょう。

オススメの節約術は、止水ボタンが付いた節水シャワーヘッドへの交換です。シャワーは15〜16分間出しっぱなしにすると、浴槽1杯分のお湯になってしまうんですよ。家族が3人以上であれば、シャワーだけよりも湯船と併用したほうが経済的というわけです。
また、お風呂が冷めたからと毎日のように追い焚きしていると、年間7,500円ほどかかる場合も。まずはできる限りお風呂が温かいうちに、間隔を開けないで続けて入るようにしましょう。それでもお湯がぬるくなってしまったら追い焚きを、かなり冷めてしまった場合は高温差し湯をしてください。浴槽の設定温度との差が大きいほど追い焚きにコストがかかるので、高温差し湯とうまく使い分けましょう。浴槽の温度を維持する節約術として、カーペットの下に敷くような断熱シートを浴槽サイズに切って浮かべるのも効果的ですよ。
エアコンの冷暖房費を節約するなら「窓」に注目! 「断熱性」を上げる根本的な方法とは?

冷暖房費の節約術には、設定温度を変えるなどいろいろな方法がありますよね。しかし、節約術に取り組む前にぜひ知っていただきたい根本的な対策があるんです! その理論を詳しく解説しましょう。
冷房と暖房を比べると、暖房のほうがよりエネルギーを使います。理由は、夏に比べ冬は外気温との差が大きく、エネルギーを多く消費するからです。夏の外気温が35℃だとすると、環境省が推奨するエアコンの設定温度28℃との差は7℃。冬は外気温が5℃で設定温度は20℃とすると、その差は15℃。夏と冬では倍以上違いますから、寒い季節は光熱費が高くなってしまうわけです。

それでは暖房の光熱費を抑えるにはどうしたら良いのでしょうか? 見直すべきは“お家の断熱性”です。どれだけ暖房器具の使い方を工夫しても限界がありますので、お家に出入りする熱を意識して、暖かい空気を逃さないように「断熱性」を上げましょう。熱は温度の高いほうから低いほうへ移動する性質があるので、夏場は外からお家の中へ、冬場は外へ逃げます。もちろん換気をすると熱は移動しますが、何もしなくても壁や床、窓、天井などを伝って出入りしてしまうんです。とくに窓からの熱移動は大きく、冬は6割、夏は7割にもなるので、光熱費を節約するには窓の断熱対策が必須です。
冬は室内、夏は屋外から! 窓の断熱対策を節約アドバイザーが解説

では、どのように窓の断熱対策をすれば良いのでしょうか? 最も効果的なのは、二重サッシや複層ガラスに交換することです。これから新築やお家のリフォームを計画している方は、必ず採用してほしいと思います。しかし、サッシなどの交換はかなり費用がかかりますから、お金をかけず、すぐに実践できる断熱対策もご紹介しましょう!

冬は、熱を逃さないようにカーテンを厚手にし、丈の長いものを選ぶようにします。今お使いのカーテンが床まで届いていない場合は、冬の間だけフックの長さを調整したり、クッションやタオルを置いたりして、カーテンと床の隙間を埋めるようにしましょう。カーテンの裾に両面テープなどで布を継ぎ足すだけでも部屋の温度がキープできますよ。ほかにも、レースカーテンとドレープカーテンの間に、シャワーカーテンを取り付ける方法も効果があります。ドレープカーテンを部屋側、シャワーカーテンを窓側にすれば、見た目も気になりません。窓に直接断熱シートを貼ったり、断熱パネルを置いたりするのも良いですね。ホームセンターにはいろいろな断熱グッズがありますから、ぜひ活用しましょう。100円ショップにも売ってはいますが、厚みやバリエーションが違うので、断熱グッズはホームセンターで購入するのがオススメです。

一方で夏は、お家の中からではなく外から対策をします。窓に日光が直接当たると窓自体が熱源になってしまうため、遮光カーテンでは防げません。そこで、窓の外に「よしず」を立て掛けましょう。よしずは、窓と少し離して空気の通り道をつくるように設置するのがポイント。窓からの輻射熱が部屋に入りにくくなり、部屋の温度が上がりにくくなるんですよ。ベランダでも同様に、よしずが活躍します。すだれのようなまっすぐなものを吊り下げると、窓だけでなく床も熱源になってしまいますから、ベランダにもよしずを斜めに立てかけましょう。使い方次第で温度に違いが出てしまうので、熱がこもらないよう空気の通り道を意識しながら設置してくださいね。
部屋の温度を均一にして快適に過ごすなら……エアコンとサーキュレーター・扇風機を併用

夏の暑い時期・冬の寒い時期は部屋の中で温度差が生じやすく、とくに天井付近と床付近で大きく変わってしまうことがあります。日常生活では床に座ったりソファーに座ったりと、床に近いところで過ごす時間が多いので、部屋の低い位置を快適にしたいところですが、なかなかうまくいかないことも。そこで、サーキュレーターや扇風機を使って、天井付近に集まった温かい空気と下に溜まった冷たい空気を撹拌しましょう。冷房時も暖房時も、エアコンの対角線上にサーキュレーターなどを置き、風向きを上に向けるだけでOK。天井の高いお家は、とくに上下の寒暖差が減って、効果を実感しやすいと思います。
冬は加湿が必須! 湿度が上がれば体感温度もアップ

暖かい・寒いと感じるのは、温度の問題だけではありません。同じ室温でも、服装や風当たりなどによって体感温度は変わりますが、とくに影響が大きいのが“湿度”です。冬はそもそも空気が乾燥していますが、エアコンなどの暖房器具を使うと部屋の空気中に含まれる水分量がどんどん下がり、さらに乾燥していきます。乾燥していると多湿のときより寒く感じるので、体感温度を上げるためには加湿器を上手に使って、湿度を40〜60%まで上げましょう。
加湿器には「スチーム式」「超音波式」「気化式」「ハイブリット式」の4タイプがあり、違いは空気中に水分を放出する方法です。加湿量・価格・お手入れ・電気代などトータルでオススメなのは「ハイブリッド式」ですが、長時間使うなら電気代が安い「気化式」が良いと思います。加湿器のタイプにはそれぞれメリット・デメリットがあるので、ご自身にあったものを選んでくださいね。
湿度対策として、部屋に洗濯物を干す方法もありますが、そこまで湿度が上がらないうえ、適湿をキープするのが難しいので加湿器の使用をオススメします。エアコン以外の暖房器具のなかには、石油ストーブのように燃焼して水蒸気が発生するものもありますから、そういった暖房器具を使うのもひとつの手ですね。エアコンは加湿効果がないどころか、どんどん湿度が下がるので使用時には必ず加湿するようにしましょう。
イメージで節約すると逆効果に!? 状況に合った暖房器具の選び方

暖房器具の選び方によっても節約度は変わってきます。部屋の人数など状況に合わせて使い分けることがとても重要なんです。暖房器具には「対流式」「輻射式」「伝導式」の3つがあります。
「対流式」はエアコンやファンヒーターなど温風を出して部屋全体を暖めるもので、ひとりで使うには非効率的、リビングなど家族が集まる部屋で使うのがオススメです。電気ストーブやハロゲンヒーターなどの「輻射式」は、部屋全体を暖める能力はないけれど、キッチンの足元など必要なところだけのスポット暖房として使うのに適しています。「伝導式」はホットカーペットや電気毛布のことで、空気を暖めることはできませんが、電気代が安いのでひとりで暖まるのに向いています。それそれの特徴を知り、状況に合わせて上手に使い分けることで光熱費の節約につながりますよ。
気を付けていただきたいのは、暖房器具の節約をイメージでやらないこと。たとえば、セラミックファンヒーターは、「温風がたくさん出るエアコンに比べて、ちょっとしか風が出ないから電気代が安いのでは?」と思うかもしれません。しかし、セラミックファンヒーターはスポット暖房用のため、電気代が高いんです。「エアコンはもったいない!」からとセラミックファンヒーターを使用するのは逆効果で、節約どころか電気を浪費してしまうことに……。湯たんぽも同様に、「お湯だから電気代がかからない」と勘違いしがちですが、お湯を沸かすエネルギーは電気毛布よりも高いんです。光熱費を抑えようという意思と努力を無駄にしないため、節約はイメージでおこなわないように気を付けてくださいね。
電気代・ガス代・水道代節約の考え方が変わる! プロが教える光熱費の節約術 まとめ
今回は、すぐにできて効率的な光熱費の節約術を解説しました。光熱費の節約は、電気代、ガス代、水道代とエネルギー別に考えるよりも、用途別に考えましょう。家電・照明や給湯、暖房を重点的に節約したほうが結果は出やすいので、古い家電、とくに冷蔵庫は買い替えを検討する、照明はLEDに変えて、節水よりも節湯を意識すると良いですね。そして暖房は、お家の断熱性に注目し、利用人数や用途を考えて適した暖房器具を使用すること。根本的な部分を改善して節約に取り組むことで、より光熱費のコストを抑えることができますよ。テレビや雑誌、SNSなどにはいろいろな節約術が溢れていますが、手当たり次第ではなく、効果の大きい部分を節約するのがオススメです。今回お伝えした光熱費の節約術を参考に、少しでも光熱費を節約して、自分や家族にとって使いたい部分にお金を使えるようにしてくださいね。
節約につながるエアコンの選び方とは?
電気代が安い暖房器具は? 冬を乗り切るコツと省エネ家電をプロ家電ライターが解説
高気密・高断熱住宅のメリットをご紹介
「高気密・高断熱」のお家とは? 女性一級建築士がメリットとデメリットを解説
LEDへの交換はいつまでにするべき?
蛍光灯が生産終了!? LEDへの交換は必須? これから訪れる暮らしの変化をプロが解説