新型コロナウイルスの感染予防策として「換気」の重要性が私たちの耳に届くようになりました。しかし、お家の換気方法や、そもそも換気とは何を意味するのかについては、まだ具体的に浸透していないのではないでしょうか。そこで、正しいお家の換気方法とメリットを一級建築士のしかまのりこさんに解説していただきました。
COLLINO(コリーノ)一級建築士事務所代表
「~地球にやさしい 家族にやさしい~」をコンセプトに、延べ5,000件以上の住戸の設計・検査・審査に携わる。また、これまで300軒以上のリビング・寝室・子ども部屋の模様替えをおこなった実績から、模様替えのスペシャリストとして、日本テレビ「ZIP!」、テレビ朝日「グッド!モーニング」、扶桑社「住まいの設計」、小学館「週刊 女性セブン」などのテレビ・雑誌でも活躍中。
書籍「狭くても快適に暮らす、家具配置のルール」(2021年2月彩図社より発売予定)
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一級建築士のしかまのりこです。今回はお家での換気方法やメリット、室温や湿度を維持しながら換気をおこなうためのポイントについて解説します。コロナ禍で迎えるはじめての冬を乗り越えるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
お家の「換気」とは?
「換気」とは、屋内の古い空気を新鮮な空気に入れ替えることです。呼吸によって排出される二酸化炭素が多くなると、倦怠感や頭痛、耳鳴り、息苦しさなどの健康被害が生じやすくなるため、適度に換気をして屋外の新鮮な空気を取り入れる必要があるのです。
新鮮な空気を取り入れる換気方法は、窓を開ける方法や「24時間換気システム」を使う方法などがあります。誤解されている方もいるようですが、空気清浄機はウイルスやハウスダストは除去できても、空気の入れ替えをしているわけではないので、換気の役割は果たしていません。
換気のメリット①インフルエンザや新型コロナウイルスの感染予防策として有効
密閉された空間にインフルエンザや新型コロナウイルスに感染している人と一緒にいた場合、その人の咳やくしゃみによって飛ばされた飛沫は、しばらく空気中に漂います。その飛沫を吸い込むと感染してしまう恐れがあるのですが、換気をして空気を入れ替えることで、ウイルス濃度を下げることができます。 密閉は3密のひとつに該当するので、こまめに換気すれば感染を予防する効果が期待できるでしょう。
換気のメリット②結露の発生やカビ・ダニの繁殖を抑えることができる
結露は、湿度が60%から80%程度、室温が20度から30度くらいのジメジメした環境で発生しやすいです。結露を放っておくとカビやダニが繁殖する原因になりますので、浴室やトイレなどの湿気が溜まりやすい場所はこまめに換気して、水分を多く含んだ空気を室外に出すことが重要です。
換気のメリット③仕事や勉強の作業効率がアップする
室内が密閉された状態だと、二酸化炭素濃度が高まって頭が十分に働かなくなります。そのため、仕事や勉強をしている最中に頭がぼんやりしてきたと感じたら、換気をして二酸化炭素を室外に出し、酸素を取り込むようにしましょう。
お家の換気方法は全体換気と局所換気の2種類
全体換気とは?
全体換気とは、部屋全体の空気を入れ替える換気方法です。窓を開けることや24時間換気システムによる換気がこれにあたり、コロナ禍において重要だとされています。基本的に、24時間換気システムをきちんと動かしていれば、化学物質やウイルス、二酸化炭素やハウスダストなどを取り除くことができるので、設置されているお家であれば常時稼働させておきましょう。 お家のなかのドアなどを閉めていても、空気が通れるようにドアの下がアンダーカットされているので、家中の換気ができています。電気代を気にされる方も多くいらっしゃいますが、月に数百円程度なので、それほど家計に負担が掛かることはないかと思います。
局所換気とは?
局所換気とは、お風呂の湿気や各所の臭いを除去するために設けられた局所的な換気設備のことで、トイレや浴室天井の換気扇、キッチンにあるレンジフードなどを指します。この局所換気ですが、換気量が大きいため、調理などで換気扇を一時的に使うと、サッシがヒューヒュー鳴ることがあります。 それは、換気扇の使用により室内が一時的に負圧となり、サッシなどお家のあらゆる隙間から空気が入ろうとするからです。そのため、換気扇の使用時には、負圧にならないよう必ず部屋の給気口をあけましょう。
24時間換気システムは全部で3種類
24時間換気システムは、給気と排気をどのような方法で行うかによって、3種類に分けられています。それぞれの特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。
第1種換気方式のメリット・デメリット
第1種換気方式とは、給気と排気の両方を換気専用のファンで行う方法です。大手ハウスメーカーでは標準装備として導入されていることが多く、システムで管理されたファンが自動的に換気をしてくれるため、安定した換気効果が見込めるというメリットがあります。
また、第1種換気方式には、「全熱交換器」というタイプもあります。このタイプは、冷暖房や加湿器で快適にした室温や湿度をキープしたまま換気が可能です。夏の熱い空気や冬の冷たい空気が室内に入ってくるのを防ぎながら、十分な換気ができるわけです。
全熱交換器を導入する際は、天井裏にダクトを取り付けて給排気する「ダクト式」と、専用の機械で給排気する「ダクトレス式」の2種類から選ぶことになります。
ダクト式は、1台の設備で家全体の給排気ができるほか、壁に空ける穴が最小限で済むので、お家の外観を損なわないというメリットがあります。ただ、イニシャルコストが高くなることや、メンテナンスを気軽にできないというのがデメリットです。
一方、ダクトレス式は、ダクト式に比べて施工費用がリーズナブルというメリットがあります。しかし、各部屋に1台ずつ設置が必要なことから、壁に開ける穴の数が多くなり、施工によっては雨漏りが起きやすくなるというデメリットがあります。とは言え、最近はコスト面を重視して、ダクトレス型を選ぶ方が増えているようです。
第2種換気方式のメリット・デメリット
第2種換気方式は、給気は換気専用のファンから、排気は自然換気口から行う方法です。基本的に一般の住宅では使われておらず、クリーンルームや手術室などで導入されることが多いです。ファンで強制的に給気し、排気は自然換気口から行うので、室内の気圧が外気より上がり、ホコリやゴミが室内に入りにくくなるメリットがあります。 ただ、多くの空気を取り入れるため、内部結露が発生するリスクが高まるというのがデメリットです。
第3種換気方式のメリット・デメリット
第3種換気方式は、給気は自然換気口から、排気は換気専用のファンから行う方法で、多くの戸建てやマンションで採用されています。ランニングコストを安くできますが、室内に入ってくる外気をコントロールできないことや熱の損失が大きいというデメリットがあります。
24時間換気システムがないお家で効率的に空気を入れ替える方法
2003年7月1日以前に建てられたお家には24時間換気システムの設置義務がなかったため、設備が整っていないことがほとんどです。ただし、その場合でも換気の重要性は変わりません。特に、コロナ禍の現在においては、適度な換気を行い、部屋全体の空気を入れ替えることが感染拡大を防止するポイントとされています。
お家に24時間換気システムが設置されていなければ、こまめに窓を開けて、換気することをこころがけましょう。部屋に窓が2箇所ある場合は、どちらも開けておくと空気が流れやすくなるので、より効率的です。
定期的な窓の開閉が難しいなら、トイレなどの局所換気扇を使う方法もあります。換気したい部屋の窓をすきま程度に開けて、その部屋からできるだけ遠い、浴室やトイレなどの換気扇を回すようにしてください。そうすることで、上図のような空気の流れができるため、効率良く換気ができるようになります。
寒い冬を快適に暮らしたい! 室温や湿度を維持しながら換気を行うには?
床暖房や電気カーペットなどを活用
冬に換気をすると、どうしても外気の寒さが気になるものです。窓を開けている最中はもちろん、第3種換気方式の給気口を開けているときでも、暖房で暖めた熱が外に逃げてしまいます。室温を保ちながら換気をしたいのであれば、エアコン暖房よりも、床暖房や電気カーペット、こたつのような、部屋の下半分が暖かくなる暖房機器を活用するのが良いでしょう。 暖気は上に昇るので、下を重点的に暖めたほうが換気で熱が逃げにくいというわけです。
結露防止のため加湿器は部屋の中心に置く
冬の換気時は「乾燥」にも注意しましょう。換気によって部屋の湿気を排出してしまうため、室内は乾燥しがちに。加湿器を使って、部屋の湿度を40%から50%程度に保つようにしましょう。 加湿器を置く位置ですが、結露を防ぐため、窓のそばに置くことは控えてください。置く場所として最適なのは部屋の中心です。中心に置くことで、結露の発生を防ぎながら部屋全体を加湿することができます。
お家の換気性能を高めるためのオススメリフォームと設備
オススメリフォーム①24時間換気システム(全熱交換器ダクトレス式)の後付け
24時間換気システムがお家に設置されていない場合は、先ほどご紹介した「全熱交換器ダクトレス式」の導入を検討してみてください。費用もそれほど掛かりませんし、ダクト式に比べて施工も簡単です。 ただ、施工時は壁に穴を開けることになるので、不良施工をされた場合は雨漏りが発生することも考えられます。後付け工事を依頼する際は、実績の多い信頼できる業者に依頼してリスクを抑えるようにしましょう。
オススメリフォーム②窓のサッシを「換気用ユニット」付きのものに交換
窓のリフォームでも、換気性能を高めることができます。YKK AP株式会社の窓リフォーム「かんたんマドリモ」は、窓を「換気用ユニット」付きのものに交換できるのでオススメです。トイレなどの換気扇を回しながら換気用ユニットを開けておけば、24時間換気システムがないお家でも、空気の流れができ、効率良く換気ができます。 施工はわずか半日で済みますし、壁に穴などをあけないので手軽に行うことができます。また、断熱性能のついた窓への交換の場合、国から補助金が下りることもありますので、詳しくはリフォーム業者や窓メーカーに確認してみましょう。
オススメ設備 ダイキン「うるさらシリーズ」のエアコン
“換気ができる”エアコンとして注目を集めているのが、ダイキンの「うるさらシリーズ」です。このエアコンには、室外機を通じて外気を取り入れる機能があり、冷暖房の風と一緒に新鮮な空気を室内に送り込むことができます。コロナ過で換気の重要性が高まっている今、多くの方が購入されているようです。
コロナ禍の冬、正しい換気の方法と換気のメリット まとめ
換気をして、室内の空気を新鮮な状態に保つことは、ウイルス対策はもちろん、化学物質の除去や結露の防止、作業能率のアップなど、さまざまなメリットがあります。おうち時間が増えた今、あらためて換気への意識を高めるようにしましょう。
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