お家を掃除してもすぐ散らかってしまう、部屋のどこに何があるかわからない、ものが捨てられずに収納スペースがいっぱい……こんな悩みを抱えつつも、「自分は片付けが苦手だから仕方ない」と諦めていませんか? しかし、整理収納アドバイザーとして活躍中の中山真由美さん曰く、お家や部屋の片付けはコツさえつかめば誰でもスムーズにおこなえるそうです。実は中山さんも、もともと片付けが大の苦手だったとのこと。では、どのような方法で片付け上手になったのでしょうか? 中山さんに片付けの考え方やコツを伺いました。整理・収納・整頓の違いや手順、整理収納を続けるためのアドバイス、不用品を捨てる整理のコツやプロが教える収納テクニックなどもご紹介します。片付け下手から一歩踏み出したい方は必読ですよ!
整理収納アドバイザー/お部屋と心のカウンセラー
整理収納サービスと電撃的な出会いをしたことで、子供の頃からの捨て下手・しまい下手を克服。この経験を元に整理収納事業を立ち上げ、個人宅や法人の整理収納コンサルティングやマンションの間取りの提案や監修、セミナーをおこなっている。雑誌での連載や特集記事、テレビ、講演など幅広く活躍中。
著書に『心も整う「捨てる」ルールと「しまう」ルール』(集英社)、『増やす男と、捨てない女の片づけ術』(小学館)『いちばんシンプルでわかりやすいお片づけBOOK』(マイナビ)など多数。
Ritta Stanza 中山真由美のお片づけ・整理収納
整理収納アドバイザーの中山真由美です。これまで2,000件以上の片付けに関する悩みを解決してきました。そんな私ですが、実は子どものころから捨て下手・しまい下手で、片付けが大の苦手だったんです。しかし、17年前に整理収納と出会い、学んだことで考え方や暮らしも変わりました。今回は、かつての私と同じように片付けが苦手な方、ものが捨てられずに困っている方に向けて、片付けの考え方や整理・収納・整頓のコツをご紹介したいと思います。ぜひ参考にしてくださいね!
目次
1.家族が暮らしやすい住まいを目指すには? 整理収納アドバイザーが教える「片付け」の定義
2.整理・収納・整頓の違いとコツ
3.整理収納のアドバイス! まずは理想の暮らしをイメージ&文字化
4.整理収納アドバイザー直伝! 不用品を捨てる「整理」の手順とコツ
5.使いやすい便利な収納とは? 整理収納のプロが教える収納術と注意点
6.整理収納アドバイザーがお家の片付けのコツを解説 まとめ
家族が暮らしやすい住まいを目指すには? 整理収納アドバイザーが教える「片付け」の定義
私が考える「片付け」は、整理・収納・整頓をひとまとめにしたものであり、その軸となるのは“暮らしやすい環境をつくること”です。お家の片付けというと、目に見えるところにものが少ないスッキリした空間にすることをイメージされるかもしれません。しかし、見た目がスッキリしていることは、必ずしも暮らしやすいということではないのです。
何でも隠すようにぎゅうぎゅうに収納していると、使いたいときに場所がわからなくなったり取り出しにくかったりと、生活が不便になってしまいます。ものの置き場所が決まっていて、使いたいときにすぐ取り出せて、使った後は戻しやすい……それが片付けの重要なポイントです。たとえば体温計の場所。つい「体温計は救急箱に入っているもの」と考えがちですが、その固定観念を取り払ってみてください。包帯や薬よりも出番の多い体温計は、救急箱にしまっておくよりもリビングのわかりやすいところに置いたほうが便利ですよね。
もちろん部屋をキレイにするのは良いことですが、それよりも大切なのは家族が必要とするものを自然に使ってキチンと片付けられる、ストレスなく暮らせる空間をつくること。それって、突き詰めると家族への思いやりなんですよね。ともに暮らす人、家族のことを考えて暮らしやすいお家にすることが、私の片付けの根底にあるものだと思います。
片付けは自分と人生を変えるチャンス? 片付ける意味とは?
片付けは、お家や部屋をキレイにするだけでなく、考え方や価値観も変えてくれるものです。実際に、私は整理収納と出会い、人生が一変したと感じています。まず変化したのが“嫌なこと”への向き合い方。かつての私は、捨てられないものをクローゼットに押し込んで隠すように、やりたくないことを後回しにするタイプだったんです。嫌なことを見ないふりして、結局それが積もり積もって大きな負担になる……そんな日々を送っていました。でも片付けに目覚めてからは、目の前にある問題を直視できるようになり、面倒なことは先回りして終わらせられるようになったんです! 一念発起して始めた片付けで人生がリセットされ、今ではすごく心が楽になる生き方ができていると感じます。
整理収納を学んでからは、ものを大切に扱う意識も芽生えました。使う人のこともよく考えるようになり、それは家族への思いやりにも繋がったと思います。先日、自宅で取材を受けたとき、息子が我が家のリビング収納について「使いやすいところに耳かきや爪切りがあるのがすごく便利!」って答えていたんです。それを聞いて、今まで家族を想ってやってきた片付けは間違ってなかったんだと感慨深くなりました。
私のお客様のなかにも、片付けで大きく生活が変わった方がいます。女性の方で、依頼内容は「プロに頼んでいることは夫に気付かれないように、家の片付けをしたい」というものでした。そのお家は、部屋によっては床が見えないほど散らかっているような状態で、何度も通って少しずつものを減らしていったんですね。そうこうしているうちに、旦那さんもお家がどんどんキレイになっていることに気付かれ、奥様はプロに依頼して片付けていること、そしてお家や夫婦間の不満や問題点についても、すべて本音で話したそうです。その結果、旦那さんもきちんと話し合いに応じてくれて夫婦仲は修復され、無事にお家をキレイにすることができました。今でも年賀状を毎年くださるので、お子様の成長や仲良しな家族の様子にうれしくなりますね。
整理・収納・整頓の違いとコツ
前述した通り、私にとっての片付けは、整理・収納・整頓をひとまとめにしたものです。それぞれの意味をきちんと理解していただくと、片付けでやるべきことや手順が明確になるので、ぜひ覚えてくださいね!
●「整理」の意味
「整理」とは、必要なものと不必要なものを分けて、不要なものを取り除くこと。不用品を捨てるわけですから、片付けの最初のステップになりますね。さらに私の考える整理は、ただ捨てるだけに留まらず、残ったものを分類することまで含んでいます。必要なものを上手に収納するため、使う場所や使用頻度、使う人などに応じて分類していきましょう。
●「収納」の意味
「収納」とは、ものをしまうことを意味しており、上手な収納 = 自分や家族にとって使いやすくものが収まっている状態を指します。整理の段階で分類したものを、使う人や使用頻度に応じて収納していくのがポイントですね。自分だけでなく家族の使いやすさも考慮して、取り出しやすく、戻しやすいことを意識してください。
●「整頓」の意味
「整頓」は、乱れている・散らかっているものを元の場所に戻して整えることです。たとえばお子様が勉強したり遊んだりすると、文房具や教科書、おもちゃなどで机や床が散らかりますよね。それらを元の場所に戻すことが整頓です。しっかりと整理した後、取り出しやすく戻しやすい収納をつくってあれば、整頓もしやすくなり、お家や部屋が散らかりにくくなりますよ。
整理収納のアドバイス! まずは理想の暮らしをイメージ&文字化
お家の片付けにはとても大きなエネルギーを使います。心身ともに疲れるので、途中でくじけてしまった経験がある方も少なくないでしょう。そこで、始める前にやっていただきたいのが“理想のイメージ&文字化”です。自分がどんなお家に住みたいのか、どんな部屋が心地良いのか……一流ホテルやモデルルームなど夢のような理想でも構いませんから、まずはその目標とする住まいをイメージしてみましょう。重要なのは、頭で考えるだけでなく文字にすること。理想の部屋で過ごす自分自身のイメージをそのまま文章化してください。片付けに疲れたときやくじけそうなとき、そのメモを見返すことで「そうだ、私はこういう部屋にしたいんだから頑張ろう」と、モチベーションが上がるはず。
理想の暮らしをさらに具体的にイメージするには、お家やインテリア関連の本を参考にするのも良いと思います。しかし、SNSの写真は一部分だけを切り取ったり、加工されてたりすることが多いので、書籍や雑誌、あるいは素敵な住まいが掲載されているホームページなどを参考にするのがオススメです。片付けは簡単には終わらないものですが、素敵な住まいの写真と自分の理想とする暮らしを掲げて、最後までやり切ってみましょう。ちなみに我が家も引っ越しに向けて整理の真っ最中ですが、 夫は「ホテルみたいな部屋にしたいんだ!」と奮闘しています(笑)。
整理収納アドバイザー直伝! 不用品を捨てる「整理」の手順とコツ
片付けの最初のステップ「整理」の手順について解説していきます。まずは、ものを広げるためのレジャーシートを2枚、異なるカラーで用意しましょう。その後、棚の引き出し1段分やクローゼットの衣装ケースひとつ分などエリアを決めて、そこにあるものを片方のレジャーシートにすべて出します。レジャーシートを用意するのは、床や机を汚さないだけでなく、これから整理するもの、整理できたものが一目でわかるようになるからです。
膨大な量を整理するとなると、終わりがないように感じて辛くなってしまいがちですが、2色のレジャーシートで「整理済」「未整理」に分ければ、残りの分が可視化されてゴールが見えてくるんですね。シートは色味がはっきりしたものよりも、水色やピンクのパステルカラーや白系の薄い色がオススメ。いわゆるブルーシートを使ったこともありますが、濃くてはっきりした色って目が疲れやすいんですよ。ただでさえ体力も気力も必要な作業ですから、目に優しい色を選びましょう。
未整理のレジャーシートにものを出したら、付箋などを準備して整理するものの分類をつくります。その際に「捨てる・残す」や「いる・いらない」といった感じで分類するのは避けましょう。自分の感情を目安に分類すると、捨てるのが苦手な方は全部を「残す」や「いる」に入れてしまいがちだからです。分類は客観的に判断しやすい「使う・使わない」がオススメ。さらに、判断に迷うものを分けるための「迷う」や“使わないけれど思い入れがあるもの”用の「思い出」などの付箋を追加し、整理済のレジャーシートに貼って、ものを仕分けしていきましょう。文具やアクセサリーなど小さなものを仕分けるときは、100円ショップのカゴなどを使うと便利ですよ。
「使う・使わない」は基準のひとつですが、使わない = 不用品ではありません。お世話になった人からもらったもの、自分や家族の思い出にまつわるものなど、使わなくても大事なものってありますよね。そうしたものまで無理に手放す必要はないんです。たとえば私の場合、思い出にまつわるものは子どもたちの小さなころの写真ですね。写真はすべてデータ化してしまえば場所を圧迫しない、という考え方もありますが、私にとっては印刷した写真のほうが子どもたちの成長を実感できるものなんですよ。だから家族の写真はすべて無印良品のアルバムに収納しています。
何かに使うでもなく、頻繁に見返すわけでもないけれど、“自分の心の拠り所”になってモチベーションが上がるものは、「思い出」に分類して大切に保管してください。そして、その大切なもの用のスペースを確保するため、使わないままなんとなく捨てられずにいるものをどんどん整理していきましょう!
捨て下手・片付け下手の方は小さなエリアから始めよう
整理を順調に進めていくためには、どこから始めるかも肝心です。クローゼットや食器棚、趣味に関するものなどは、こだわりや思い入れが強くて整理に苦労しがち。そこで、冷蔵庫や洗面所下の収納などからスタートしてみましょう。冷蔵庫に関しては「食べる・食べない」のみの分類でOKなので、賞味期限が切れているものなどはどんどん捨てて整理できます。
洗面所下の収納も、ずっと使っていない洗剤などが潜んでいませんか? 洗剤は使用期限が表示されていなくても、時間が経つと効果が薄れるものもあります。我が家でも、長い間放置していた漂白剤が出てきたこともありますが、中身はほとんど水のようになっていました(笑)。ストックがないと不安などの理由から溜め込みがちになる洗剤類も、思い切って整理しましょう。こうして難易度の低いエリアから片付けをしていくと、自然と整理スキルが上がっていくはずです! とくに捨てるのが苦手な方は、整理のトレーニングとして冷蔵庫や洗面所下の収納から始めてみてくださいね。
整理は“動かない”のが鉄則! 範囲と時間を決めてスタート
整理をするときは、計画的かつ集中しておこなうことが大切です。今日はクローゼット、明日はリビングというふうに場所を決め、時間もきちんと定めて始めましょう。さらに、これだけは守っていただきたいのが“動かない”こと。整理の途中でその場を離れると、ほかのことに気を取られたり集中力が途切れたりして、作業がおろそかになりかねません。動かなくて良いように、必要なものはすべて準備してスタートしてください。私も整理収納アドバイザーとして片付けに行くときは、はさみや付箋、ペンなど必要なものをすべて入れたウエストポーチを持ち込んでいます。ほかにもチョコレートなどのちょっとしたお菓子や飲み物を用意しておくのもオススメです。
整理のコツは5秒でジャッジ! 「迷う」ものは見直し期間を設ける
「使う・使わない・迷う・思い出」など、それぞれのグループに分類するときはスピード感が重要。ジャッジは5秒! を意識してみましょう。ものの整理はとにかく時間と根気が必要な作業です。即断できないものに対して「今は使わないけど、また必要になるかも……」と悩んでいたら、その分だけ時間をロスしてしまいますから、決められないときはすぐ「迷う」に分類することが大切です。一通り整理した後、「迷う」が多くなってしまうこともあるでしょう。その場合、「迷う」に入れたものだけをもう一度ジャッジし直します。そうすると、「やっぱり捨てよう」と決断できるものがかなり出てくるんですよ。
それでも捨てきれなかった「迷う」ものは、1年間の見直し期間を設けましょう。「1年間で一度も使わなかったから」と捨てる判断につながったり、もう一度「今の自分に必要かどうか」をあらためてジャッジできたりするんですね。ものの価値は時間が経つと変化するので、見直し期間を設けることも重要です。捨てるのが苦手な自覚のある方は、見直し期間を少し長めに設定しても良いですよ。
あげる? 売る? 不用品を「捨てる」以外の選択肢
ものを整理する際、「あげる」や「売る」といった選択肢を追加するのもアリです。ただし、「いつか誰かにあげるかも」と考えてとっておくと、結局は残り続けてしまうので要注意。「あげる」に分類するのは、あげたい人がすぐ頭に浮かぶ場合のみにしましょう。
「売る」のは、基本的に価値が付くとわかるもの。たとえばCDや本、ゲームソフトは中古で買い取ってもらいやすいアイテムです。私も最近、青春時代に買った懐かしいCDたちを売ってきましたが、それなりの値段が付きましたよ(笑)。逆にリサイクルショップなどで値段が付きにくいのが食器と洋服ですね。ブランド品の場合は専門の中古ショップに持ち込めば状態に応じて値段を付けてくれますが、それ以外はお金に換えることを期待せずに引き取ってもらう心づもりでいましょう。
メルカリなどのサービスを使えばブランド品以外でも値段が付きやすいですが、ものを減らすのに時間がかかってしまうケースも多いので、気を付けてくださいね。こうして捨てるものと残すものを分類したら、残すものを使用頻度や使う人に応じてグループ分けしていきます。
使いやすい便利な収納とは? 整理収納のプロが教える収納術と注意点
ものの整理が終わったら、次のステップは「収納」です。便利な収納を目指すには、家族全員の使いやすさを意識しましょう。誰が、どこで、どのくらいの頻度で使っているのか? をきちんと話し合いながらものをグループ分けし、収納の定位置を決めます。収納する“高さ”もポイントのひとつ。とくに頻繁に使うものは、腰から目の高さにしまうと取り出しやすくなりますよ。その高さを基準にして、使う頻度に応じて場所を区切り、収納していきます。
高さを上・中・下に分けるとしたら、中の位置には日常的によく使う「一軍」アイテム、下には半年に数回は使う「二軍」アイテムを置きましょう。上には年に一度ほど出番がある「三軍」と、使わないけれど思い入れのあるものなどを収納してください。ただし、上に置くのは軽いものだけ! 使う頻度とは別に、重いものは高い場所に置かないようにしましょう。
使いやすい収納のポイントは“取り出しやすさ”と“戻しやすさ”です。どんなにキレイに収まっているように見えても、引き出しやボックスに隙間がないと取り出すのに一苦労。それでは使いやすい収納とは言えません。適正量として、7割を目安にものを収納しましょう。適度な隙間ができて、取り出しやすく戻しやすい収納になりますよ。
収納をゾーニングすると整頓もしやすくなる
「しまったものが、どこにあるのかわからない……」そんなことはありませんか? せっかくキレイに収納しても、暮らしが不便になってしまっては困りますよね。収納したものの行方がわからなくなる原因は“空いているところにしまう”という考え方にあります。収納スペースが空いているから埋めていくのではなく、収納する前にまず、どこで何をするのか? を意識し、用途別にものを配置する「ゾーニング」をしましょう。
たとえばリビングのテレビでゲームをするなら、テレビ付近の収納にゲームソフトをしまう、洗濯機のそばに洗濯物用のカゴや洗濯ばさみをまとめるといった具合に、“使うスペースに合わせたものを配置”するように計画を立てて書き出します。さらに箱やケースに収納する場合はラベルを貼っておけば、どこに何があるかすぐにわかるようになりますよ。“どこで何をするのか”は家族それぞれの習慣がありますから、相談しながらゾーニングを進めてくださいね。ゾーニングができれば、おのずと整頓しやすいお家になることでしょう。
整理収納アドバイザーがお家の片付けのコツを解説 まとめ
整理・収納・整頓の違いと手順、片付けの考え方や整理収納のコツについて解説しました。今回アドバイスした内容は、お家が片付かず、暮らしにくいと感じている方にはぜひ参考にしていただきたいと思います。仕事も家事も勉強も、散らかった状態の場所では効率良く進まないものです。充実した暮らしをスタートさせるため、まずは整理から始めてみてください。私は“床の広さは心の広さ”でもあると考えています。お家にものが溢れて乱れた状態では、心の余裕も奪われてしまうもの。自分と家族にとって心穏やかに過ごせる理想の住まいを目指して、積極的に片付けをしてくださいね。
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