古くなったマイホームの建て替え&リフォームをFPが解説 事例別のポイントと注意点

今住んでいるマイホームが古くなってきたら、建て替えやリフォームを検討することでしょう。その際は、今の住まいやご自身の状況、理想のライフプランなどをしっかり把握することが大切になるそうです。具体的にはどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか? ファイナンシャル・プランナーの有田美津子さんに、建て替えやリフォームのアドバイスを伺いました。家族の介護が必要になった際の建て替えや実家を建て替えて二世帯住宅にするケース、介護リフォームや子ども部屋を増やす増築リフォームなど、さまざまなケースを想定してお聞きします。

ファイナンシャル・プランナー 有田美津子のプロフィール
有田美津子 プロフィール

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)/CFP®/住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)/相続診断士(相続診断協会)/WAFP関東(女性FPの会)副会長

2011年  企業に属さず第三者的な立場でコンサルティングを行うFPとして事業を開始。現在は家計や保険見直し、ライフプラン相談はもちろん介護が必要になっても最後まで自分らしく住み続けるためのリフォームや、安心・安全に暮らせる住まいへの住み替え支援に力を入れている。
公式HP:http://www.fparita.com/

ファイナンシャル・プランナーの有田美津子です。老朽化したマイホームを建て替えたり、リフォームしたりする際は、“今がどういう状況で、何のために行うのか”次第でポイントや注意点が異なります。いくつかの事例をもとに解説しますので、ご参考になれば幸いです。最初に建て替え時のチェックポイントからお話しいたします。

目次
1.マイホームを建て替える前のチェックポイント
2.建て替えの事例別アドバイス&注意点
3.リフォームの事例別アドバイス&注意点
4.古くなったマイホームの建て替え&リフォーム まとめ

マイホームを建て替える前のチェックポイント

マイホームを建て替える前のチェックポイント

まずは前提となりますが、「マイホームが古くなってきた」と言っても、必ずしも建て替えが必要とは限りません。住宅性能によっては長く快適に住めるケースもあるため、築年数だけで判断することは難しいのです。ただし、おおむね築40年以上の住宅、1981年よりも前に建てられた住宅は旧耐震基準で建てられているため、建て替えを検討したほうが良いかもしれません。迷った場合はホームインスペクター(住宅診断士)に見てもらうと安心でしょう。

建て替えを決めたら、真っ先に確認すべきは住宅ローンの残債です。完済していれば問題ないのですが、もし残っている場合は建て替え分の希望する額のローンが組めない可能性もあります。借りることが可能か否かは、ご自身の状況や金融機関によっても異なるため、事前にしっかりと確認してくださいね。

解体は追加費用が発生するケースが考えられるので資金は多めに準備

また、建て替えにかかる費用は、解体費用と新居の建築費用だけではありません。とくに解体は、壁や屋根などにアスベストが使われていたり、重機が入らず手作業になったりと、追加費用が発生するケースが考えられるため、資金は多めに準備しておきましょう。解体費用に関しては、自治体の補助金や助成金も活用すると良いですね。たとえば品川区は地震火災に備えて、木造住宅密集地域を対象に、老朽化した住宅の解体や引っ越しの助成金を出しています。地域は限定されますが、とくに都心は大きな補助が出るケースもあるので、お住まいの地域の情報は要チェックです。

新居が完成するまでの仮住まいにもお金がかかります。仮住まいは、近くにあるようならUR賃貸住宅を選ぶのも良いですね。敷金礼金など通常の入居に必要な費用がかからず、短期間の利用もOKなので適しているのではないでしょうか。お子様の学区内など、仮住まいの条件がある場合は前もって候補を探すようにしましょう。

建て替え前には「測量」と「地盤調査」が必要

建て替え前には「測量」と「地盤調査」が必要

お家を建てるには敷地の面積や高低差、隣接地との境界などが記された測量図が必要です。建築時には「建ぺい率」や「容積率」などの法的条件をクリアする必要があるので、測量図がない場合は土地家屋調査士に作成を依頼しましょう。測量図には「地積測量図」「確定測量図」「現況測量図」の3つの種類があり、測量方法によって費用も期間も変わるので、どれが必要なのかも建て替えを担当するハウスメーカーなどに確認してくださいね。

また、建築前には地盤調査をすることが一般的です。とくに最近では地震などの災害に備えて重要性が高くなっています。調査後は、地盤改良工事や古い水道管・ガス管の入れ替えが必要になるケースもあるので、建て替え前にもいろいろな費用がかかることを想定しておきましょう。

建て替えの事例別アドバイス&注意点

建て替えの事例別アドバイス&注意点

ここからは、いくつかのケースを例に建て替えのアドバイスや注意点をお話ししていきます。実際に置かれている状況やご家族が望むライフプランによっては、“建て替えない”ほうが良い場合もあるかと思いますので、ほかの選択肢もお伝えしますね。

ケース①家族の介護が必要になった場合の建て替えアドバイス

家族の介護が必要になった場合の建て替えアドバイス

今の住まいが老朽化している状況で、不便だったり危険だったりする場合は建て替えを検討しても良いでしょう。家族の介護を意識して建て替えするなら、寝室、トイレ、お風呂の動線をスムーズにすることが大切になります。そのほか、どのようにバリアフリー要素を組み込むかは事前によく検討しておきましょう。たとえば、立派なバリアフリー住宅に建て替えても、介護の対象者がいなくなった後はデッドスペースになってしまいますし、メンテナンスしきれずに住み替えるお手伝いをしたことも何度かあります。「祖父母が要介護になったときのためにホームエレベーター用のスペースを空けたのに、有料老人ホームに入ってしまい無駄になってしまった」なんてケースもありました。

介護は一時的なものですし、施設に入ってしまえば不要になってしまうため、バリアフリー住宅への建て替えは慎重な検討が必要です。ただし、自分たちが要介護者になったときに住みやすいお家ではあるので、家族としっかり相談して考えると良いでしょう。

ケース②二世帯住宅にする場合の建て替えアドバイス

古くなった実家を建て替えて、親と同居する二世帯住宅にする場合、親の死後に空いた居住スペースをどうするかも考えておく必要があります。玄関などを完全に分けておくなど、賃貸にできるような建て方をしておくのも有効でしょう。

また、トラブルになりがちなのが相続問題。ご自身がひとりっ子であれば問題ないのですが、兄弟姉妹がいるならば相続において気を付けるべき点があります。仮にあなたが家屋と土地を相続する場合、法定相続分の財産分与を要求されれば、ほかの相続人に土地や建物分の代償金を支払って精算する「代償分割」が必要となります。そのケースでは、遺産のうち現金でその代償金が支払えるかどうかがポイントに。支払いが難しいと、住むつもりだったお家を売却しなくてはならない事態にもなりかねません。事前にお家や土地の相続について家族で話し合い、住んでいる人が引き継げるように公正証書遺言を親に作成してもらうようにしましょう。

ケース③独身で親の土地と家屋を相続した場合の建て替えアドバイス

独身で結婚の予定もないという状況で一戸建ての実家を相続した場合、将来的にずっとこのお家に住み続けられるか、そして、ご自身が高齢になったときのことをよく考える必要があります。ひとりで暮らすことになったら何部屋も必要ないでしょうし、家が大きければ大きいほど掃除や管理も大変に。実際に「部屋はたくさんあるけれど、一部屋しか使っていない」というご高齢者からの相談も多いんですよ。なので、建て替えを決意したならばダウンサイジングやバリアフリー化を検討してみましょう。

ひとり暮らしになった段階で相続したお家や土地を売却して、マンションを購入したり、賃貸で暮らしたりするのも良いと思います。また、歳をとって認知症になってしまった場合、任意後見契約で不動産の処分権限を与えておかなければ、お家を売却することができません。任意後見契約とは、認知症などで判断能力が低下した際、本人に代わって任意後見人が財産管理や手続きがおこなえる委任契約です。判断能力がなくなってからは成年後見人を立て、家庭裁判所の判断を仰いでからしか売却できず、時間も費用も掛かってしまいます。元気なうちに、信頼できる相手と任意後見契約を結んでおくことも視野に入れましょう。自分自身が望む生活を送れるよう、しっかりとライフプランを立ててくださいね。

ケース④子どもの経済的自立が難しい場合の建て替えアドバイス

子どもの経済的な自立が難しいケースでは、状況に応じていくつかの選択肢が考えられます。まず、お子様自身でお金の管理ができるのであれば、立地によっては賃貸併用住宅への建て替えが良いのではないでしょうか。賃貸部分から収入を得られるので安心材料にはなるでしょう。しかし、不動産屋など外部とのコミュニケーションが必要となるため、それが難しいのなら、極力メンテナンスをしなくても住み続けられるお家に建て替えるのが良いと思います。外壁や屋根などのメンテナンスを軽減できる素材を採用するといった工夫をしましょう。

また、ひとりで暮らすことが難しく、生活サポートが必要なお子様であれば、グループホームに入る可能性もあります。その場合はお家を建て替えるよりも、お金を残してあげることを視野に入れましょう。

リフォームの事例別アドバイス&注意点

リフォームの事例別アドバイス&注意点

建て替えは、住んでいるお家を解体して更地に新しいお家を建てることですが、リフォームは古くなった建物や設備を改修して、新築同様の状態に戻すことです。一般的に建て替えよりも安く済むケースが多く、施工期間も短めなので、ご自身の状況に応じてリフォームを選択肢に入れるのも良いでしょう。ここからは、リフォームの事例別にアドバイスや注意点をお話しさせていただきます。

ケース①増築したい場合のリフォームアドバイス

増築したい場合のリフォームアドバイス

中古物件を購入した後、子どもが生まれたり成長したりして、子ども部屋が必要になったけど建て替えの費用を用意するのは難しい、というケースもあるかと思います。増築リフォームをする場合は、10㎡(約6畳)以上の増築で建築確認申請が必要だと覚えておきましょう。

建ぺい率や容積率がオーバーすると違法建築になってしまい、行政から注意を受ける可能性がありますし、ローンが借りにくくなったり、売却しにくくなったりとさまざまなリスクが発生します。とくに建売住宅は、建ぺい率や容積率をギリギリの設計にしているケースがあるので要注意。相談のなかでは、オーバーしているにも関わらずそのまま施工してしまう業者の話も聞いたことがあります。増築リフォームをする際は実績があって親身に相談に乗ってくれることはもちろん、法令をしっかり守ってくれる業者を選びましょう。

ケース②家族の介護が必要になった場合のリフォームアドバイス

家族の介護が必要になった場合のリフォームアドバイス

介護のためのリフォームでは、軽微なものなら介護保険を使える場合があります。しかし、要介護認定を受ける必要があり、認定には時間がかかるので早めに自治体に申請しておきましょう。一生涯で、上限20万円までの工事に対して9割の費用が補助されます。そのほか、地域によっては助成金が出るケースもあるので、家族の介護が必要になったら自治体の窓口にも相談してみましょう。

ケース③子どもが独立して夫婦ふたり暮らしをする場合のリフォームアドバイス

子どもが独立して夫婦ふたり暮らしをする場合のリフォームアドバイス

子どもが独立した後、古くなったマイホームを解体し、ダウンサイジングした新居に建て替えるケースもあります。しかし、今の住まいに思い入れがある場合などは、空いた子ども部屋を趣味部屋にリフォームするのも良いでしょう。

たとえば音楽好きなご夫婦が、お互い好きなジャンルが違うからと防音室を2部屋つくったケースがあります。ペットのために散歩後の足洗い場やキャットウォークなどを設置した話も耳にしましたね。子育てを終え、新たに自分たちが楽しめる暮らしを手に入れた良い例だと思いますので、今の住まいを活かしたリフォームを視野に入れても良いのではないでしょうか。

古くなったマイホームの建て替え&リフォーム まとめ

古くなったお家の建て替え・リフォームをする際のポイントや注意点を、いくつかの事例を挙げてお話ししました。実際に建て替えるとなると、まずは業者に相談すると思いますが、想定していた予算以上の契約をしてしまいがちなんですね。その結果、お金のことが心配になって施工後に相談しに来られる方が多いのも実情です。そうならないために、先々を見越した資金計画を立てたうえで、建て替えするかリフォームするかを決めましょう。ご自身で試算するのが難しければ、ファイナンシャル・プランナーに相談するのも良いと思います。


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