憧れの吹き抜けのある暮らし。新築時のメリットやデメリット、作る場合の注意点を解説

2層以上のフロアをひとつの空間とする「吹き抜け」。一戸建て住宅の新築をする際、間取りを計画する中で「開放感を高めたい」「自然光がいっぱいに入る空間にしたい」と考えたとき、吹き抜けの採用を検討する方は多いのではないでしょうか。大きな吹き抜けは圧倒的で存在感があり「マイホームを建てるなら吹き抜けが欲しい」と憧れている方もいるでしょう。
吹き抜けのある暮らしにはたくさんのメリットがありますが、デメリットや注意しなければならないこともあります。この記事では、一戸建て住宅に吹き抜けを設ける際のポイントを解説します。

目次
1.一戸建て住宅の新築時に吹き抜けを採用するメリット
2.一戸建て住宅の新築時に吹き抜けを採用するデメリット
3.一戸建て住宅の新築時に吹き抜けを設ける際の注意点
4.吹き抜け まとめ

一戸建て住宅の新築時に吹き抜けを採用するメリット

一戸建て住宅に吹き抜けを作ることにより、さまざまなメリットがあります。吹き抜けにどのような特徴があるのか、順に見ていきましょう。

吹き抜けのメリット1―自然光を家の中に取り込みやすい

吹き抜けのメリット1―自然光を家の中に取り込みやすい

吹き抜けとすることで天井が高くなり、上部に窓を設置することができます。上から下へ自然光が入るので部屋の奥まで届きやすく、室内が明るくなります。太陽の位置が低くなる冬場も含め、季節を問わずに安定した光を取り込みやすいことも魅力です。
都市部の住宅地で隣の家との間隔が狭い場合「南側に大きな建物があり採光を見込めない」「1階に大きな窓を設けづらい」「窓があってもカーテンを開けると周囲の視線が気になる」といった問題が起こりがちですが、吹き抜けを設けることで解決するケースが少なくありません。また、採光を見込めるということは、日中に照明に頼る機会も減るということです。長い目で見れば、電気料金の節約にもつながります。

吹き抜けのメリット2―視覚的な開放感が得られる

吹き抜けのメリット2―視覚的な開放感が得られる

吹き抜けとすることで天井が高く伸びやかな空間となり、視覚的な開放感を得ることができます。床面積としてはやや狭い空間であったとしても、窮屈に感じることはないでしょう。洗練された見栄えのする空間を演出しやすく、ゲストを招くことが多い空間にも向いています。

吹き抜けのメリット3―風通しの効果を高めやすい

吹き抜けのメリット3―風通しの効果を高めやすい

風通しがよく空気が循環しやすい環境を作るには、低い位置から風を入れて、高い位置から抜けていくようにすることが大切です。吹き抜けがあれば窓の高低差を付けやすく、1階の窓から2階の窓へ対角線上に風の通り道を作り、自然換気がしやすい状況を作ることができます。2階の窓を開けておかないと2階に空気が溜まってしまうので、窓を開けた状態を保てるタイプの窓を採用しましょう。

吹き抜けのメリット4―家族とコミュニケーションを育みやすい

吹き抜けのメリット4―家族とコミュニケーションを育みやすい

吹き抜けを通じて1階と2階がつながることで、家族がどこにいても気配を感じやすくなり、自然とコミュニケーションを取る機会が増えます。「子どもが部屋に籠ってしまう暮らしは避けたい」「家族で会話する時間を増やしたい」と考えているのであれば、吹き抜けのあるLDKはぴったりの空間です。リビング階段と組み合わせれば、より家族の距離が近づきます。

一戸建て住宅の新築時に吹き抜けを採用するデメリット

吹き抜けは明るさや開放感を演出できるので人気がありますが、デメリットもあります。合わせて理解したうえで、吹き抜けを採用するかどうかの判断をしましょう。

吹き抜けのデメリット1―冷暖房効率が下がりやすい

吹き抜けのデメリット1―冷暖房効率が下がりやすい

吹き抜けを作るということは、天井が高くなるということです。暖かい空気は上昇する性質があるので、吹き抜けの上下間で温度差が生じやすく「足元がなかなか温まらない」「冷暖房の効きが悪い」といった状況が想定されます。断熱材の充填や高性能サッシの採用など住まいそのものの断熱性能を高めるとともに、空気を循環しやすいようにシーリングファンなどを設置する、足元からじんわりと温める床暖房を設置する、全館空調システムを導入するといった対策が必要です。

吹き抜けのデメリット2―音やにおいが伝わりやすい

吹き抜けのデメリット2―音やにおいが伝わりやすい

間仕切りのない大空間になればなるほど、開放感がある一方で音やにおいが広がりやすい側面があります。リモートワークをしている方がいる場合、子どもがはしゃぐ声やテレビの音、掃除機をかける音が気になることがあります。また、キッチンの近くに吹き抜けを設けた場合、料理のにおいが2階にも広がることが考えられます。吹き抜けと書斎や寝室など静かに落ち着いて過ごしたい個室の位置関係を熟考するとともに、防音・消臭対策として吸音材や防臭効果のある壁材、高性能の換気扇を採用することも検討すると良いでしょう。

リビング階段のデメリット3― メンテナンスをしづらい

リビング階段のデメリット3― メンテナンスをしづらい

吹き抜けの高い天井に設置された照明やシーリングファンの掃除、窓拭きなどは高所での作業となり、掃除やメンテナンスが難しくなります。照明の電球が切れてしまっても、高所の交換作業はプロにお願いしないとできないかもしれません。吹き抜けに面した窓は、室内と室外の寒暖差が大きくなるほど結露し、カビが発生してしまうリスクもありますので、2階からワイパーなどの掃除道具が届く位置に設置すると良いでしょう。キャットウォークなど狭い通路を設置しておけば、掃除やメンテナンスを自分でできて便利です。また、照明は電動で昇降できるタイプを選ぶと便利です。

リビング階段のデメリット4― 部屋数が少なくなる

リビング階段のデメリット4― 部屋数が少なくなる

吹き抜けを設けるということは、本来は真上に作れる部屋をあえて設けないという選択でもあります。必要な部屋数を確保できているのであれば問題ありませんが、足りていない場合は、明るさや開放感を求めるあまりに普段の生活が不便になってしまい、本末転倒です。居住空間の確保を優先すべきでしょう。部屋数が足りている場合も「階段の設置スペースに吹き抜けを設け、デッドスペースをできるだけ作らない」「廊下の少ない間取りにする」といった工夫で、限られたスペースを有効に活用しましょう。

一戸建て住宅の新築時に吹き抜けを設ける際の注意点

吹き抜けがある家を新築するのであれば、吹き抜けのメリットを最大限に活かせる家づくりをしたいところです。一戸建て住宅を新築する際に吹き抜けを設ける場合の注意したいポイントを確認しておきましょう。

吹き抜けのサイズ

吹き抜けのサイズの考え方

吹き抜けは大きければ大きいほど自然光を取り入れやすく、のびやかな空間を演出することができますが、その分だけ冷暖房効率が下がり、音やにおいの対策も必要になります。かといって吹き抜けを小さくしてしまうと、明るさや開放感を十分に感じることができません。
吹き抜けのベストなサイズは間取りや敷地条件によって異なりますが、LDKに設ける場合、6畳~8畳程度が目安です。「必要な部屋数や収納スペースを確保し、残ったスペースを吹き抜けにしたい」と考える方もいると思いますが、中途半端なサイズでは思うような効果が得られないことも。スペースが足りないのに無理やり吹き抜けを作るよりも、2階リビングにして勾配天井で開放感を高めるなど、吹き抜けのサイズが確保できない場合は他の方法も検討しましょう。

吹き抜けを設ける場所

吹き抜けを設ける場所

「吹き抜けをどこに設けるか」についても、よく考える必要があります。一般的には、玄関ホール、もしくはLDKを選ぶ方が多いでしょう。
玄関は北側に設けることが多く、暗くなりがちですが、吹き抜けとすることで明るく開放的になります。ただし、玄関は家の外と中をつなぐ場所なので外気の影響を受けやすく、冷暖房を設けないことが多い空間のため、吹き抜けを作ることでより寒く感じてしまう可能性もあります。高気密・高断熱住宅の場合や、全館空調システムを採用する場合であれば、玄関はおすすめの設置場所です。
家族が長い時間を過ごすLDKに吹き抜けを作れば、広く明るい空間になります。ダイニングの上部に吹き抜けを設ける場合は天井まで距離があるので、ダイニングテーブルを照らす照明をどこに設置するか、事前によく検討しましょう。キッチンの上部に設置する場合は、においが充満することのないように換気計画をしっかりと立てる必要があります。

吹き抜け まとめ

明るさや開放感を演出し、家族との距離を近づける家づくりにも有効な「吹き抜け」。都市部の住宅地で隣の家との距離が近く、敷地面積が限られていても、自然の光や風がいっぱいに入る心地よい住まいを実現することができます。後から吹き抜けを設けようとすると大がかりな工事が必要になってしまうので、吹き抜けを採用したい場合は新築時に取り入れたいですね。冷暖房効率や音・においの問題などデメリットも理解し、しっかりと対策をしたうえで、吹き抜けのある暮らしを実現してみてはいかがでしょうか。

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住宅ライター 斎藤 若菜
住宅ライター 斎藤 若菜

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。

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