一戸建て住宅を新築する方の大半が、2階建てや3階建てを選んでいます。近年はバリアフリーなどの観点から平屋住宅も人気ですが、都市部では広い土地を確保することが難しく、実現しづらい事情があることから、実際には2階建てや3階建てを選ぶ人が多いのですね。そうなると必要になるのが「階段」です。階段の配置次第で間取りが変わり、住み心地に影響するので慎重に検討したいところですが、玄関の近くに設置するか、リビング階段にするか迷っている方も多いのではないでしょうか。この記事では、一戸建て住宅にリビング階段を設けることで、どのようなメリットやデメリットがあるのか解説します。
目次
1.玄関階段とリビング階段の違いは?
2.一戸建て住宅の新築時にリビング階段を採用するメリット
3.一戸建て住宅の新築時にリビング階段を採用するデメリット
4.リビング階段を配置する場所は?
5.リビング階段 まとめ
玄関階段とリビング階段の違いは?
一戸建て住宅の階段は、玄関ホール/LDK/リビングダイニングのいずれかに設置するケースが一般的です。玄関ホールに階段を設ける場合、玄関からすぐに2階へアクセスできますし、生活空間と切り離すことで来客時などにプライバシーを守ることができます。一方、昇降時以外に使用しないスペースにも関わらず一定の面積が必要となること、家族の出入りに気づきにくくコミュニケーションが取りづらくなる可能性があることなどの懸念があります。
こうした課題を解消できるのが、リビングに設置する「リビング階段」です。1階がLDK、2階以上に個々の居室がある間取りの場合、自分の部屋などへ移動する際にリビングを通ることになり、家族と顔を合わせる機会が自然と増えることになります。玄関に階段ホールのためのスペースを取る必要もなくなり、床面積を有効に使えることも特徴です。
一戸建て住宅の新築時にリビング階段を採用するメリット
リビング階段は、家族のコミュニケーションが密になることから子育て世帯を中心に人気を集めていて、設置することでさまざまなメリットがあります。どのような特徴があるのか、順に見ていきましょう。
リビング階段のメリット1―家族でコミュニケーションを育みやすい
前述の通り、リビング階段にすれば階段を通る度にリビングにいる家族が顔を合わせることになり、コミュニケーションを育みやすくなります。子どもがいる家庭であれば特に、子どものお出かけや帰宅の際に気配を感じることができて親は安心です。あいさつや会話が生まれるきっかけとなりやすいことも魅力です。
リビング階段のメリット2―居住スペースを広く取れる
階段を設けるには、最低でも2畳程度のスペースが必要です。玄関ホールに階段を設ける場合、階段下に収納スペースやトイレを設置することはできますが、居住スペースとして活用することはできません。リビング階段であれば、リビングの一部とすることができます。家族とともに長い時間を過ごすリビングを「できるだけ広くしたい」と考える方は多いのではないでしょうか。
リビング階段のメリット3―空間を広く、明るく見せやすい
リビングに階段を設けることで、1階と2階をひと続きの空間として演出しやすくなります。吹き抜けにすればさらに効果的で、開放的な気持ちのよい場所になります。また、玄関ホールに階段を設ける場合は暗くなりがちですが、リビング階段はリビングと同じ明るさになります。吹き抜けと組み合せれば上の階の窓から太陽の光が降り注いで家全体に行き渡り、より明るい空間となります。
リビング階段のメリット4―階段下のスペースを有効活用できる
階段室を設けず部屋の中に階段を設けることで、下部の空間をさまざまな用途で活用できます。例えばデスクカウンターを設置すれば、子どもが宿題をしたり、テレワークに対応したり、レシピを検索したりと家族でフレキシブルに活用できるでしょう。本棚を設置すれば家族共有のライブラリーに、ソファを置けばリラックススペースにできます。テレビボードを設置するにも最適です。
リビング階段のメリット5―空間のアクセントに
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デザイン性が高い階段が多いことも、リビング階段の特徴です。居住空間に階段を設置するということは、家族やゲストの目に触れることを前提としてデザインしなければならないということでもあります。蹴込板の入っていないスケルトン階段にすることで軽やかな印象に仕上げたり、シンプルなデザインのスチール階段にすることでオブジェのように見せたり、踊り場を広く取れるスキップフロアにしてオープンスペースを設けることもできます。
一戸建て住宅の新築時にリビング階段を採用するデメリット
数々のメリットがあるリビング階段ですが、設置するにあたり注意すべきポイントもあります。リビング階段のデメリットも合わせて確認しておきましょう。
リビング階段のデメリット1―冷暖房効率が下がりやすい
1階と2階がひと続きになっていることから、リビング階段のある空間は冷暖房効率が下がる場合があります。高気密・高断熱住宅であればさほど気にならないので、断熱材をしっかりと充填する、断熱性能が高いサッシを採用するなどの工夫をしましょう。全館空調システムの導入もおすすめです。また、暖かい空気は上昇する性質があることから、1階にいると足元が冷えると感じるかもしれません。床暖房を設置する、空気が循環しやすいようにシーリングファンを設置するといった対策も有効です。
リビング階段のデメリット2―音やにおいが伝わりやすい
間仕切りのない空間は開放感がありますが、音やにおいが充満しやすい環境とも言えます。自室で勉強中やリモートワーク中にリビングでの話し声やテレビの音、掃除機をかける音が響いて集中できないといったケースもあるため、階段と個室の位置関係には注意が必要です。また、調理のにおいが2階まで到達しないように、キッチンと階段も離した方が良いでしょう。窓のサイズや配置、換気扇の性能も大切です。
リビング階段のデメリット3― プライバシーを守りづらい
階段をリビングに設置することで家族の気配を察しやすく、顔を合わせやすい環境はメリットである反面、子どもの年齢が上がると「プライバシーを確保できない」と感じてしまう可能性もあります。階段を使用する度に気を遣う事態に陥ることのないよう、新築前に家族でしっかりと話し合い、長い目で見てベストな距離感を見つけましょう。例えば、玄関ホールの近くにリビング階段を設置すれば、リビングを通りながらも通過時間を最小限とし、ある程度のプライバシーを確保できます。
リビング階段を配置する場所は?
リビング階段の採用を決めた場合、「リビングのどこに設置するか」も重要な問題です。玄関ホールに比較的近い、リビングに入ってすぐの位置に設置すれば、プライバシーをある程度守ることができます。
リビングの中央に設置すれば、リビングをコミュニケーションの場として最大限に活用することができますが、プライバシーの確保は難しくなるかもしれません。また、側面に壁を設けず開放的な空間を演出することが多く、壁が少ないので、ソファなどの家具をレイアウトしづらくなってしまうこともあります。設置したい家具や生活動線を意識しながら計画することが大切です。
リビング階段 まとめ
「階段をどこに配置するのか」という問題は、家づくりに関するさまざまな課題に直結しています。家族とどんな距離で生活したいのか、ゲストを招く機会が多いのかなど、ライフスタイルによりベストな選択は変わりますし、生活動線や冷暖房効率にも影響します。また、リビング階段を採用すると決めた場合も、リビングのどこに設置するかによって住みやすさが変わってきます。階段は後から移動することができませんので、しっかり検討しておきたいですね。これから一戸建て住宅の新築を予定している方は、リビング階段のメリットとデメリットを把握し、自分や家族のライフスタイルにマッチするのか、希望する間取りになるのか検討してみてはいかがでしょうか。
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ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。