私たちの生活に欠かすことのできない、家電製品の数々。使用するにはコンセントを通じて電源の供給が必要なため、使う場所ごとに最適な数のコンセントを設置したいところです。「どの部屋の」「どの位置に」「いくつ」コンセントが設置されているかにより、暮らし始めてからの快適性が変わります。ただし、やみくもにコンセントを設置していては、余計な建築費用がかかってしまいます。一戸建て住宅を新築するのであれば、建築段階でしっかりとコンセント計画を立てたいところです。今回は、コンセントの配置で失敗しがちな注意点や部屋ごとのポイントを解説します。
目次
1.コンセントの種類
2.新築一戸建て住宅にコンセントを配置する際の注意点
3.【部屋別】新築一戸建て住宅にコンセントを配置するポイント
4.新築時に注意したいコンセント設置のポイント まとめ
コンセントの種類
コンセントにはさまざまな種類があります。日本の家庭で最もポピュラーなコンセントが「単相100V」で、エアコンやIHクッキングヒーター、大型冷蔵庫などの大きなエネルギーを必要とする電子機器用には「単相200V」のコンセントが設置されます。最近は、100Vでも200Vでも使用できる「単相3線式」を採用する住宅が一般的です。
また、単相100V・単相200Vのいずれも、アース線をつなぐ端子がある「接地極付きコンセント」という種類があります。冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機といった生活家電は水がかかりやすいため、感電を防止するためにアース線を接続できるようになっています。テレビやPCモニターも、電磁波やノイズ発生リスク、雷対策などのためにアース線の接続が必要な場合があります。
その他にも、スマートフォンやタブレットの充電に用いることが多い「USBコンセント」や、アンテナ端子が付いた「テレビ用コンセント」、壁から離れた場所にコンセントが必要な場合に設置する「床下コンセント」、屋外に照明や防犯カメラを設置したり、バーベキューやガーデニングをしたりするために必要な「屋外用コンセント」などがあります。ライフスタイルに合わせて、最適な電圧・種類のコンセントを設置しましょう。
新築一戸建て住宅にコンセントを配置する際の注意点
新築で一戸建て住宅を建てる際のコンセント計画により、住み始めてからの毎日がより便利になります。どのような点で注意をして配置すればよいのか、ポイントをチェックしましょう。
新築時のコンセント設置の注意点1―適切な設置数を検討する
出典:日本配線システム工業会「スイッチ・コンセントの設置について
コンセントが「いくつ」「どのような目的で」「どこで」必要なのか、部屋ごとに検討します。エアコンやテレビのような、電源プラグを挿したままにしておくことが前提の家電製品もあれば、掃除や充電など使用する時間のみ電気の供給が必要な家電製品もあります。新居での生活シーンを想像して、過不足のないコンセントの口数を導き出しましょう。
コンセントを設置する個数に関しては、民間規格の「内線規程」が基準となります。住居は6~8畳で4個、8~10畳で5個、10~13畳で6個が目安。キッチンは6個、ダイニングは4個が標準です。現在の住まいで延長コードやタコ足配線を多用している場合は、標準的な個数では足りない可能性があるので、多めの設置を検討しましょう。
新築時のコンセント設置の注意点2―適切な高さに設置する
コンセントは一般的に、床の低い位置に設置します。特に要望を出さなければ、床下25~30cmの高さで設置する住宅メーカーが主流です。パナソニックのウェブサイトによると、一般的なコンセントは床下から25cm、掃除機用は30~40cm、デスク用は70~90cm、洗濯機用は105~110cm、エアコンは180~200cmを目安としています。
ただし、抜き差しの頻度や用途に合わせて設置位置の調整が必要です。屈むのが大変な高齢者や腰痛などの持病がある方は、少し高めの位置に設置します。また、赤ちゃんや小さな子ども、ペットが手の届く位置にコンセントを設置した際、唾液などにより濡れた手で触ったり、金属をコンセントに挿し込んだりして感電事故を起こす可能性があります。設置する高さを調整するか、コンセントカバーを設置するなど対策を行いましょう。
新築時のコンセント設置の注意点3―家具のレイアウトを考慮する
ソファやチェスト、ベッドなどの大型家具を設置する場合、コンセントが家具に隠れてしまい、使用できなくなることがあります。家具のレイアウトを事前に決めておくことで、使いやすい位置にコンセントを設置できます。例えば寝室では、枕元でスマートフォンを充電したり、ベッドサイドランプを置いたりしたい方が多いでしょう。ベッドやサイドテーブルの位置を事前に想定することで、コンセントをベストな位置に設置できます。
新築時のコンセント設置の注意点4―季節家電の設置場所を考える
日常的に使用する家電だけでなく、加湿器や空気清浄機、扇風機、ホットカーペットなど、一定の季節のみ使用する家電の設置場所も事前に計画しておきましょう。花粉時期や梅雨時には室内干しを予定している家庭も多いと思いますが、室内物干しを使用する場所にコンセントがあれば、除湿器やサーキュレーターを使用して効率よく乾かすことができます。
【部屋別】新築一戸建て住宅にコンセントを配置するポイント
リビング・ダイニング
家族が長い時間を過ごすリビングは、どのように過ごすかイメージし、合わせてコンセントを設置する必要があります。テレビの設置場所にはコンセントとアンテナ端子を設置するとともに、テレビボードを設置するのか、壁掛けにするのか、テレビのサイズによっても設置場所が変わるので、事前の計画が必要です。また、録画機やゲーム機、インターネット接続なども利用する場合、1ヶ所でまとめて配線できるマルチメディアコンセントの設置がおすすめです。
ソファに隠れない位置のコンセントを設置することも大切です。ソファに座った状態でスマートフォンを充電したい場合は、コンセントを高めの位置に設置するとよいでしょう。
ダイニングテーブルでホットプレートなどを使用する場合は、床下コンセントが便利です。壁付けの場合は、テーブルの高さより少し上の位置にコンセントを設けると重宝します。
そのほか、スタンドライトの設置や季節家電の使用に合わせて、コンセントが必要です。ロボット掃除機を使用する場合は、収納スペースに充電用のコンセントを設けると便利です。
キッチン
キッチンでは、さまざまな調理家電を使用します。電子レンジや冷蔵庫といった常時コンセントを挿したまま使用する家電製品は、設置場所に合わせてコンセントを配置します。電気ポットやコーヒーメーカー、ハンドミキサーのような短時間だけ使用する家電製品は、調理台の上や作業カウンターの脇、家電収納内などにコンセントを取り付けると便利で、毎日の作業がラクになります。最大でいくつの調理家電を同時に使用する可能性があるのか、コードレス式なのか有線なのかも踏まえて、コンセントの数と配置を決めましょう。
ワークスペースなど居室
テレワークの普及により、家の中にワークスペースを設けるケースが増えています。これから一戸建てを新築するのであれば、取り入れたいと考えている方も多いでしょう。仕事に欠かせない、パソコンやタブレット、モニター、プリンター、電話・FAX、スマートフォンなど使用する電子機器の数に合わせてコンセントを設置しましょう。「電気スタンドを設置したい」「仕事をしながら電気ブランケットを使用したい」といった場合は、プラスアルファでコンセントの口数が必要です。ノートパソコンを使用する場合、使用頻度が高く、あちこちに移動することも多いでしょう。毎回デスクの下に潜り込んでコンセントを抜き差しするのは大変ですので、デスクの上にもコンセントを設置します。
一方、パソコン周辺機器は消費電力があまり大きくないため、電源タップを使用するのも手です。デスクトップパソコンやモニターのような頻繁に動かさない家電に関しては、スイッチ付きの電源タップを使用することで、コンセントの抜き差しをしなくてもON・OFFが可能で待機電力の消費を防ぎやすくなります。見た目にもすっきりとまとまるケースもあるので、使用機器に合わせて検討しましょう。
洗面室・トイレ
洗面室ではドライヤーや電気シェーバー、美容家電、電動歯ブラシを充電することもあります。家族の人数や用途に応じ、カウンター上部に設置するコンセントの口数を決めましょう。また、浴室の脱衣室を兼ねている場合は扇風機やヒーターを使用することもあるので、足元にもコンセントを設置しておきます。
トイレでは、温水洗浄便座の使用にコンセントが必要です。脱臭機や冷暖房機を使用したければ、もう一口コンセントを設けましょう。設置場所は背面が目立ちませんが、真後ろに設置すると掃除がしづらくトラブルにも気づきにくいので、右側か左側へ。水に濡れず汚れがつきにくい高さに設置します。
玄関・廊下
玄関や廊下は、掃除機などを使用するためにコンセントが必要です。使用する度にコンセントを抜き挿しすることになるので、やや高い位置に設置すると便利です。コードの長さが足りず端から端まで掃除ができないということのないよう、コンセントの位置や数を検討しましょう。
また、土間収納を設けている場合は、コンセントを設置することで電動自転車やDIYで使用する電動ドライバーなどの工具、ポータブル電源をはじめとするアウトドア用品の充電がしやすくなります。
屋外
屋外に防犯灯や防犯カメラを設置したいとき、バーベキューなどを楽しみたいとき、イルミネーションを設置したいときなどは、屋外にコンセントが必要になります。庭木の手入れや掃除のためにもあると便利です。防水カバー付きであれば、雨などによる漏電のリスクも軽減できます。
新築時に注意したいコンセント設置のポイント まとめ
一戸建て住宅を新築する際は、コンセントが必要な数や高さ、家具のレイアウトに合わせた配置を検討しましょう。家電を使用する頻度や使用場所、デバイスの充電をどこでするかなど、具体的な暮らしをイメージしながら計画することで、新居での生活がしやすくなります。
ただし、使い勝手を優先しすぎてしまうと、コンセントが目立ってしまい、室内のデザイン性を損ねてしまうこともあります。優先順位を明確にして、後悔のない家づくりをしてください。
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ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。