後悔しないマイホーム-住宅購入アンケートから一級建築士がアドバイス

「家は3回建てないと理想の家にはならない」と言われるほど、後悔のないお家を手に入れるのは難しいものです。できることなら一度で満足のいくマイホームを購入したいですよね。では、実際にマイホームを購入された方は、どんな住宅設備を付けて良かったと感じ、どんなことに不満を抱いているのでしょうか? 住宅購入経験者にお聞きしたアンケート結果を一級建築士のしかま のりこさんに分析していただきました。しかまさんオススメの住宅設備やマイホーム購入で後悔しないためのアドバイスもご紹介します。

しかまのりこ プロフィール
しかまのりこ プロフィール

一級建築士/模様替えアドバイザー
「~地球にやさしい 家族にやさしい~」をコンセプトに、延べ5,000件以上の住戸の設計・検査・審査に携わる。また、これまで300軒以上のリビング・寝室・子ども部屋の模様替えをおこなった実績から、模様替えのスペシャリストとして、日本テレビ「ZIP!」、テレビ東京「日曜ビッグバラエティ」、扶桑社「住まいの設計」、小学館「週刊 女性セブン」などのテレビ・雑誌でも活躍中。
 書籍「狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール」(彩図社)
 COLLINO一級建築士事務所:https://collino-home.com

一級建築士のしかま のりこです。私はCOLLINO(コリーノ)一級建築士事務所の代表をしており、これまで延べ5,000件以上の住戸の設計・検査・審査に携わってきました。マイホームは人生のなかでも高い買い物ですから、後悔はしたくないもの。しかし、100%満足できるマイホームを購入できた方は、なかなか見かけないのが現状です。今回はどうしたら後悔しないお家を手に入れることができるのか? 一級建築士と働く母としての目線で、マイホーム購入時のアドバイスをお伝えいたします。

目次
1.一戸建て住宅に付けたほうが良い住宅設備とは? 女性一級建築士の見解
2.キッチン・風呂・トイレなど一戸建ての水回りにオススメの住宅設備は? 女性一級建築士の見解
3.マイホーム購入経験者から学ぶ! 後悔しない住宅設備選びのポイントを女性一級建築士が解説
4.一戸建て住宅で後悔しがち? 「駐車場・駐輪場」と「コンセントの位置」のアドバイス
5.マイホームで後悔しないためのアドバイス まとめ

一戸建て住宅に付けたほうが良い住宅設備とは? 女性一級建築士の見解

【アンケートグラフ】一戸建て住宅に付けて良かった住宅設備

アンケート結果のうち、まずは一戸建て住宅に付けて良かった住宅設備を見ていきましょう。

「床暖房」「ウォークインクローゼット」「玄関収納」が同率で1位ですね。床暖房は定番になりつつあるのですが、最近は光熱費が高騰しています。床暖房の効率アップのためにお家全体の断熱化もあわせておこなうと良いでしょう。断熱工法だけでなく、凸凹の多い間取りを避け、庇(ひさし)や軒(のき)をつくるのも冷暖房の効率がアップするポイントです。窓も高気密・高断熱仕様のものを選択するのが重要ですね。

また、お家に欠かせないのが収納です。なかでも3位の「玄関収納」と4位の「シューズクローク」など、玄関周りの収納は今では定番となりました。しかし、気を付けないと失敗してしまうことがあるんです。詳しく解説していきましょう。

玄関はお家の顔! 広さを確保したうえで収納をつくる

シューズインクローゼットのある日本ハウスホールディングスの規格住宅「Comfort-J」の玄関

シューズクロークや土間収納など、玄関に収納スペースを設ける方が増えています。とくに土間収納はベビーカーやアウトドアグッズなど、外で使うものを収納できてとても便利です。しかし、シューズクロークや土間収納をつくったばっかりに、玄関が狭くなってしまう場合もあるので注意しましょう。大人2人が並べないほど狭い玄関だと、生活のなかで不便さを感じることも出てきますし、将来車椅子が必要になった際、バリアフリーにリフォームするのも玄関スペースに余裕がないと難しくなってしまいます。平面図ではわからなかったけれど、工事が始まってから現場に行ってあまりにも狭い玄関にびっくりした、という意見もよく聞きますね。このような後悔がないよう、玄関は設計時にある程度の広さを確保しておくことが重要です。

また、玄関は出入りする空間という役割だけでなく、お家の顔という役割もあります。建物の大きさに合った広さがないとお家としてのバランスが取れません。SNSなどに投稿されている小さくおしゃれな玄関を参考にするのも良いのですが、玄関の広さは住まい全体でのトータルバランスを考慮することが何より大切です。後から困ることのないよう、“玄関は収納部分を除いて2畳は確保する”と覚えておいてくださいね。

女性一級建築士オススメの住宅設備は「高機能ドアホン」

女性一級建築士オススメの住宅設備は「高機能ドアホン」

アンケートでは「宅配ボックス」や「室内干しユニット」、「防犯カメラ」も一戸建て住宅に付けて良かった住宅設備として挙げられていますね。これらは共働き世帯の増加によって必要性が生まれたものだと思います。あわせて私が共働き家庭にオススメしたいのが「高機能ドアホン」です。

たとえばパナソニックのテレビドアホン『VL-SWD505KF』なら子どもだけの留守番時も安心。留守中に来訪があっても、スマホでリアルタイムに来客対応できる便利アイテムなんですよ。応答時に男性のような低い声になる「ボイスチェンジ機能」もあって、お子様だけでなく女性にも安心です。録画機能も付いているので、防犯カメラと兼用で設置するのも良いでしょう。共働きで帰りが遅く、お子様に留守番させることが多いご家庭にとって、強い味方になってくれると思います。

キッチン・風呂・トイレなど一戸建ての水回りにオススメの住宅設備は? 女性一級建築士の見解

【アンケートグラフ】一戸建て住宅の水回りに付けて良かった住宅設備

続いて、一戸建て住宅の水回りに付けて良かった住宅設備を見ていきましょう。これは「ビルトイン食洗機」がダントツでトップですね。2位の「浴室乾燥」とあわせて、共働き夫婦の増加とともに需要が高まってきました。食洗機にはビルトイン方式と外付け方式がありますが、新築一戸建てだとビルトイン食洗機を選ぶ方が多く見られます。

ただし、キッチンの広さによっては外付け方式も選択肢に入れてみてください。見た目では、キッチンにすっきりと収まってくれるビルトイン方式が圧倒的に優れています。しかし、設置の自由度、故障時の買い替えの容易さ、キッチンの造り付け収納スペースを圧迫しない点など、外付け方式の食洗機にもメリットはあるわけです。キッチンの広さと使い勝手、ご自身の要望を考慮し、どの設備を優先して導入するかを決めましょう。

オススメの水回り設備は衛生的で節水もできる「タッチレス水栓」

オススメの水回り設備は衛生的で節水もできる「タッチレス水栓」

一戸建て住宅の水回りに付けて良かった住宅設備では、3位に「シャワー式水栓」が挙げられていますが、なかでも私のオススメは「タッチレス水栓」です。手をかざすだけなので、大きい鍋を持っているときなど、両手が塞がっていても簡単に吐水・止水ができます。肉や魚を調理している際に蛇口を触らなくて済むのも衛生的ですね。また、お子様の手洗い時などに水が出しっぱなしにならないので、節水になります。一度使うと、もとの水栓には戻れないくらいの便利アイテムですよ。

タッチレス水栓には配線式と電池式がありますが、オススメは配線式。電池式はリフォーム用と考えてください。電池代がかさむので、新築であれば配線式にしましょう。トイレや洗面室も同様、配線式の自動水栓にすると快適さがアップしますよ。

マイホーム購入経験者から学ぶ! 後悔しない住宅設備選びのポイントを女性一級建築士が解説

【アンケートグラフ】一戸建て住宅に付けておけば良かった住宅設備

一戸建て住宅で付けておけば良かった住宅設備では、1位に「宅配ボックス」、3位に「スマートキー」が挙げられています。どちらも後付け可能ですが、新築時に導入するのがオススメです。宅配ボックスは思っている以上に場所を取るため、外構とトータルで考えないと見た目が格好悪く、使い勝手も悪くなってしまうんですね。宅配ボックスの大きさや玄関までのアプローチ、駐車場との位置関係などを考慮し、外構の一部として馴染むように設置しましょう。

スマートキーは後付けよりも「電気錠一体型玄関ドア」がオススメ

スマートキーは後付けよりも「電気錠一体型玄関ドア」がオススメ

付けておけば良かった住宅設備で3位のスマートキーは大変便利なアイテムです。仕事が終わって暗い時間に帰宅した際、早くお家に入りたいのに鍵がなかなか見つからなくて困った……なんて経験のある方は多いのではないでしょうか? 自宅の鍵がスマートキーなら、そうしたストレスがなくなるんですね。鍵をバックから取り出さなくても開錠できるので、とても重宝します。

スマートキーを設置するなら、「電気錠一体型の玄関ドア」がオススメ。リクシルやYKK APといった玄関ドアをつくっているメーカーの製品を選ぶと良いでしょう。自分でも設置できる手軽な後付けスマートキーは電池式が一般的ですが、電気錠一体型の玄関ドアは配線式になります。配線式なら電池切れの心配がありませんし、指紋認証や顔認証などの機能が付いているものもありますよ。一体型なのでデザイン性にも優れています。

お家づくり成功の鍵は家族で立てる“収納計画”

お家づくり成功の鍵は家族で立てる“収納計画”

今回のアンケートに限らず、どの調査結果を見ても多くの方が後悔しているのが収納です。新築時に少しでも収納スペースを確保しようとたくさん設けるのは良いのですが、生活動線やライフスタイルを考慮して“どこに何を収納するのか”を決めることが本当に重要なんですよ。

多くの方が「たくさん収納をつくっておけば、どこかに収納できるだろう」と考えがちですが、広い空間が使いにくいところにあっても不便なだけ。住み始めてから収納に困る方は、「土間収納が狭くてベビーカーを置けなかった」や「キッチンの収納が足りないからパントリーの設置を検討したけど、スペースがなくて少し離れた場所につくった」など、要所要所のスペースが足りないと感じることが多いんですね。マイホームを検討する際は、使う場所としまう場所をセットで考え、その場に収納できないものは動線でつながっている近場のスペースにしまうなど、イメージをしっかりと固めましょう。

ESTAGEの規格住宅「Revon」の玄関収納

付けておけば良かった住宅設備として、「土間収納」を挙げている方もいらっしゃいますね。付けて良かった住宅設備でも上位にランクインしている土間収納ですが、私としても、ぜひつくってほしいと考えています。キャリーケースなど泥汚れが付いたものを置いておけますし、花粉が付着したり濡れたりしたコートなども収納できて重宝しますよ。

土間収納のほか、こまめに買い物に行けない共働き夫婦ならパントリーをつくるのがオススメ。洗面脱衣室とつながるファミリークローゼットも家事が楽になり便利です。ただし、設計士は特別なオーダーがない限り、一般的な間取りで設計図をつくるということを覚えておいてください。何をどこで使い、どこに収納するかは人それぞれですが、その要望をきちんと伝えないと、間取りに反映されないんですね。もちろん、そういった要望を聞き出すのがうまい設計士も大勢いますが、自分から伝える意識もあると、理想の間取りをつくりやすくなりますよ。現在どのくらいのものを所有していて、これから何が増えて、どこに収納したいのかを家族で話し合ってから、設計士に要望を伝えてください。

「人感センサー付き照明」は共働き家庭の強い味方

「人感センサー付き照明」は共働き家庭の強い味方

アンケート結果にはありませんが、「人感センサー付き照明」もオススメしたい住宅設備です。知っている方は多いけれど導入しているお家は少なく、便利さがあまり周知されていないのですが、本当に快適なんですよ。玄関や廊下、洗面室やトイレなどに設置すれば消し忘れがなくなるので、お子様が留守番しているときに電気がつけっぱなしだった! ということを防げますし、使用時しか点灯しないので省エネにもなります。仕事などで帰宅が遅くなったときも、玄関の照明が自動点灯してくれるので便利ですね。

最近は電球自体にセンサー機能が付加されたものも出てきていますが、感度があまり良くないので、新築時に配線式のものを設置するのが良いでしょう。パナソニックやオーデリックなど、メジャーな照明メーカーなら大抵ありますから、設計士やハウスメーカーに依頼すると手配してくれますよ。

一戸建て住宅で後悔しがち? 「駐車場・駐輪場」と「コンセントの位置」のアドバイス

一戸建てマイホームで不満を感じているポイント

順位新築(一戸建て)
1位駐車場・駐輪場
2位コンセントの位置
3位間取りや生活のしやすさ
4位
5位植栽

■アンケートの声 (駐車場・駐輪場)
土地が狭いこともあり家族の自転車と車の駐車位置が限られている
カーポートはあるが、近隣の塀や電信柱があり、軽自動車くらいしか停められない
入庫しにくい

一戸建てマイホームで不満を感じているポイントも見てみましょう。1位の「駐車場・駐輪場」と2位の「コンセントの位置」は、実際に私も後悔の声をよく耳にしますね。お家を建てるときには間取りや住宅設備に目がいきがちですが、設計時にまず考えなくてはいけないのが、実は駐車場・駐輪場なんです。これらの場所が決まっていないと玄関のベストな位置が決められず、玄関が決まらないと暮らしやすい間取りもつくれません。

駐車場・駐輪場の位置を後から決めてしまうと、玄関までが遠くて荷物の出し入れが大変だったり、雨天時に濡れてしまったりと大変不便な間取りになります。また、電柱や近隣の塀の位置を考えずに駐車場の位置を決めると、停めるのに苦労することも考えられます。後悔しないため、まずは敷地の現状を意識して駐車場・駐輪場の位置を決めましょう。その後、できるだけ短い動線でつながる位置に玄関や勝手口をつくると良いですね。

コンセントの位置で後悔しないためには“家具配置”を事前に考える

コンセントの位置で後悔しないためには“家具配置”を事前に考える

■アンケートの声 (コンセントの位置)
コンセントの位置を通常の位置にしたため、ペットにおしっこをかけられてダメになった
「コンセントは1メートルおきにあったほうがいい」という話は冗談かと思っていたが、住み始めてからその通りだと痛感した
コンセントやスイッチの位置や数量はよく考えて設置場所を決めたものの、実際に生活が始まると不便だった

不満を感じているポイント2位の「コンセントの位置」は、収納と同じように特別なオーダーがない限り、設計士は一般的な基準で位置や数を決めます。コンセントの必要数は家族構成などによって違うので、要望をしっかりと伝えましょう。オススメなのは、置きたい家電や家具を図面に当てはめたうえでコンセントの設置位置や数を決めること。具体的な家具配置を考えながら間取りをつくる方はほとんどいませんが、現在持っている家具やこれから購入する家電などをどこに置きたいのか、しっかりと考えることが重要です。家具配置を考慮したうえでコンセントを配置できれば、生活しやすくて満足度の高いお家がつくりやすくなりますよ。

また、コンセントのなかでも「マルチメディアコンセント」と言って、テレビや電話・FAX、インターネット回線をひとつにまとめたものがあります。各部屋にひとつずつ設置することが多いのですが、テレビやパソコンを置く予定の場所に設置すると、ゴチャつきやすい配線もすっきりします。必要な箇所にマルチメディアコンセントを設置するためにも、事前に家具配置を考えておくのが良いですね。

マイホームで後悔しないためのアドバイス まとめ

マイホームが完成するまでには、短い期間で何度も打ち合わせを重ねます。平面図では納得しても、いざ工事に入ると「あれ? 思っていたより玄関が狭い!」というようなケースが起こる可能性もあるのです。マイホーム購入を検討する際、まずは現在の生活スタイルをリストアップし、どんなものを持っていて、どこで使いたいか、どこに収納すると便利なのか? どこにコンセントがあったら良いのか? 買い物から帰ったら、どこに車を停めて搬入すると楽なのか? 駐輪場をどこに設置するとお子様が安全なのか? などを家族で話し合いましょう。

後悔しないマイホームづくりのポイントは現在の生活のなかにありますし、住宅購入経験者の声は意外な落とし穴に気付くことができる大切なヒントです。それぞれのご家庭に合った快適なマイホームを手に入れるためにも、家族で話し合って、事前の計画をしっかりと立ててくださいね。

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