ゴキブリ、ネズミ、シロアリ……新築・入居前の害虫&害獣対策を専門家が解説

新築一戸建て、念願のマイホーム……ピカピカの新居での新しい暮らしは、いつまでも快適で気持ち良いものにしたいですよね。しかし、気になるのは害虫や害獣の存在。不潔な印象のあるゴキブリやネズミ、住宅に被害を与えるシロアリなどが新築のマイホームに発生しては一大事です。新築一戸建て住宅に害虫対策・害獣対策は必要ないのか? それとも新居へ入居する前に害虫対策・害獣対策を講じておくべきなのか……さまざまな疑問を解消するため、害虫駆除のエキスパートが集う株式会社シー・アイ・シーの小松謙之さんにお話を伺いました。新築マイホームに害虫・害獣を寄せ付けないための土地選びや入居前のゴキブリ対策、シロアリに関する注意点や庭づくりの際に気を付けたい害虫が発生しやすい樹種などもご紹介します。

害虫対策のプロ 株式会社シー・アイ・シー 小松謙之のプロフィール
小松謙之 プロフィール

株式会社シー・アイ・シー 博士(学術)研究開発部 執行役員

ねずみ駆除協議会専門委員、日本ペストロジー学会編集委員、日本衛生動物学会編集委員、都市有害生物管理学会評議委員・編集委員、ヤマザキ動物看護大学客員教授
昭和60年麻布大学環境保健学部卒業、同年㈱シー・アイ・シー入社
近年はネズミ・ゴキブリなどの衛生動物の研究に加え、小笠原の外来生物の防除方法の研究・開発を行う。
発表論文:都市に生息するネズミ属の生態研究、ゴキブリの新種記載ほか
出演番組:NHKあさイチ、クローズアップ現代、所さんの目がテン ほか多数
最近の出版物:日本産直翅類標準図鑑(分担執筆)、衛生動物の事典(分担執筆)、トコジラミ読本(分担執筆)ほか
株式会社シー・アイ・シー : https://www.cic-net.co.jp/

株式会社シー・アイ・シーの小松謙之です。弊社は約50年にわたって、害虫を中心にさまざまな生き物の防除をおこなってきました。私も入社以来、害虫や害獣の駆除・研究に携わっています。新築一戸建ての場合、入居してすぐに害虫や害獣が出るケースはあまりないですが、大切な新居にゴキブリやシロアリが出てしまっては困りますよね。今回は新築時や入居前にできる害虫・害獣対策などを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次
1.新築マイホームにゴキブリやネズミなどの害虫・害獣を寄せ付けないためには? 土地選びの注意点
2.新築マイホームでバルサンなどのくん煙剤は必要? 入居時のゴキブリ・トコジラミ対策
3.マイホームの保証書は必ず保管! 新居のシロアリ対策
4.痕跡に気付いたら早めの対応を! 知っておきたいキクイムシの脅威
5.新居の害虫対策は庭も重要! 害虫が発生しやすい樹種&虫が集まりにくい樹種
6.ゴキブリ、ネズミ、シロアリ……新築・入居前の害虫&害獣対策 まとめ

新築マイホームにゴキブリやネズミなどの害虫・害獣を寄せ付けないためには? 土地選びの注意点

新築マイホームにゴキブリやネズミなどの害虫・害獣を寄せ付けないためには? 土地選びの注意点

新築マイホームに害虫・害獣を寄せ付けないためには、土地選びが重要です。ひとつ目のポイントは、低地や以前に川だった場所を避けること。これらは大雨などの災害時に被害が大きくなる土地でもありますが、害虫対策の観点からもオススメできません。湿度が高くジメジメしやすいので、湿気を好むシロアリが出やすい傾向があるんですね。川や池の近くも、大発生して電灯に飛来し、人体にアレルギーを引き起こす原因となる「ユスリカ」が出ることもあるので注意すべき土地です。

空き家が隣にある土地は害虫・害獣がマイホームに侵入してくるリスクが高まる

もうひとつ、避けるべき土地は“空き家の隣”です。放置されている空き家は、掃除もされずごちゃごちゃしていたり、ゴミが不法投棄されていたりと、ゴキブリやネズミ、シロアリなどが住み着いて繁殖しやすい環境だと言えます。ハクビシンやアライグマなど、庭や畑を荒らす害獣が住み着いているケースも少なくありません。空き家が隣にある土地は、害虫・害獣がマイホームに侵入してくるリスクが高まるので、できる限り避けるようにしましょう。

また、近くに森林がある土地だと、さまざまな虫が生息しており、蛾やアブラムシ、ハエなどの昆虫類がやって来るケースもあります。多くの昆虫は、ほとんど実害がないのですが、人によっては不快感を抱くので「不快害虫」として扱われています。同様に草むらなどの管理されていない緑地近くは、たくさんの昆虫類が住みつきやすい環境なので、虫全般が苦手な方は選ばないほうが良いかもしれません。

シロアリについては「アメリカカンザイシロアリ」の発生地域に気を付けましょう。アメリカカンザイシロアリは駆除が難しく、被害が報告されている地域に住んでいると、どこからか飛んできて侵入されてしまいます。土地選びの時点で、アメリカカンザイシロアリのうわさを聞く地域は避けるのが無難ですね。該当地域では自治体のホームページなどで注意喚起がされているので、チェックしておきましょう。

新築マイホームでバルサンなどのくん煙剤は必要? 入居時のゴキブリ・トコジラミ対策

新築マイホームでバルサンなどのくん煙剤は必要? 入居時のゴキブリ・トコジラミ対策

「新築時、ゴキブリ対策として入居前にくん煙剤を焚くべき?」という疑問を目にすることがありますが、私は必要ないと考えています。くん煙剤は“今いるゴキブリ”を駆除するための方法ですから、まだまっさらな新居で焚いても効果は薄いからです。残効性も低く、これから侵入するゴキブリを防ぐ効果はほとんどありません。基本的にゴキブリは外から侵入し、屋内で繁殖しますが、新築時はエサになるものがないので、いきなり住み着くというケースは除外して良いでしょう。

一方で、中古住宅を購入して引っ越す場合なら、害虫対策としてアリだと思います。前に人が住んでいた家屋であれば、ゴキブリやトコジラミが潜んでいる可能性もあるので、天井裏や床下などに焚いておくと良いですね。トコジラミがいた場合は、家具などを入れる前に根絶させないと駆除費が高額になりやすいので、業者に頼んで生息しているか否かを必ず確認してください。

ゴキブリやトコジラミ対策としてオススメのくん煙剤は、成分に「メトキサジアゾン」が入っているもの。殺虫力が高いので、ゴキブリをはじめとした害虫をしっかり駆除してくれるでしょう。市販のくん煙剤で知名度の高い『バルサン』シリーズにも、メトキサジアゾンが配合されていますよ。

ゴキブリの侵入対策も重要

ゴキブリの侵入対策も重要

新築一戸建てのゴキブリ対策で重要なのは、侵入経路を塞いでおくことです。キッチンのシンク下や洗面所の配管など、お家の外や床下につながる経路はゴキブリの侵入口になります。もし隙間があればパテなどで埋めましょう。

また、本来隙間があるべきではない場所に隙間があったなら、それは施工業者の瑕疵(かし)の可能性もあります。欠陥のようなところを見付けたら、必ず施工業者に相談してください。不自然な隙間があるか否かを確認するタイミングは、施工中、もしくは家具や電化製品を入れる前が良いと思います。屋根裏に通じる天井の板の施工も要チェック。天井の板がしっかりはまっていないと、そこからゴキブリやその他の虫に入られてしまうケースがあるので注意が必要です。

住まいにゴキブリの気配!? お家のゴキブリ対策について詳しく知りたい方はコチラ

ネズミも侵入経路を潰せば防げる?

ネズミも侵入経路を潰せば防げる?

ネズミもゴキブリ同様、外からの侵入経路が塞がれていれば新築一戸建てに出ることはほとんどありません。気を付けることとしては、施工中に職人さんが食事をしたゴミなどを長期間現場に放置すると、そのゴミにネズミが寄ってくるケースはあります。ビルの工事現場ではネズミ対策として、ゴミの管理をきちんとしているところが増えました。ビルとは規模こそ違いますが、個人宅でも同様の事態が起こるかもしれませんので、ネズミ対策として施工現場の管理者にゴミの管理もしっかりとお願いしましょう。

中古住宅を購入した場合は、念のため入居前にネズミの痕跡を確認してください。自宅近辺や建物の天井裏にフンなどがあれば、ネズミが屋内に侵入している可能性があるので、駆除業者の出番です。個人でもネズミ駆除依頼はできますが、不動産屋に依頼してもらうのが良いでしょう。早めに気付くことができればネズミ駆除費用を負担してもらえるはずなので、入居前のチェックが肝心ですね。

マイホームの保証書は必ず保管! 新居のシロアリ対策

マイホームの保証書は必ず保管! 新居のシロアリ対策

シロアリは家屋に大きな被害をもたらしかねない危険な害虫です。木を好んで食べるほか、発泡スチロールや発泡ウレタンも食べるので、壁の断熱材なども餌になってしまいます。新築一戸建てマイホームを持つならば、絶対に侵入されたくない害虫だと言えるでしょう。住宅を建てる際には建築基準法で「防蟻処理」が定められているので、入居前にシロアリ駆除業者によって薬剤散布などの対策がされます。この対策はハウスメーカー側が手配してくれますよ。

新築一戸建てで業者によるシロアリ対策をした後は、5年間ほどの保証が付きます。あわせて“保証書”が発行されるので、必ず目を通し、大切に保管してください。保証書には定期点検のタイミングやシロアリが発生してしまった際の連絡先などが記載されています。

また、中古住宅を購入した場合は、とくに保証書の有無が重要になります。不動産会社が住宅を買い上げた際に保証書も引き取っているはずなので、契約時に必ず確認しましょう。もし保証期間が切れている場合は不動産会社に相談し、改めてシロアリ駆除業者に点検を依頼するのがオススメです。

シロアリの生態やシロアリ駆除について詳しく知りたい方はコチラ

痕跡に気付いたら早めの対応を! 知っておきたいキクイムシの脅威

痕跡に気付いたら早めの対応を! 知っておきたいキクイムシの脅威

家屋に巣食う害虫として、キクイムシも紹介したいと思います。日本での被害件数は少ないものの、もし発生すると大惨事になりかねない危険な害虫です。キクイムシはその名のとおり木を食べる虫。住宅の床材や柱、木製家具などを食害し、放置しておくとフローリングなどが穴だらけになることも。キクイムシは世界に広く生息する害虫で、日本でも各地で確認されています。輸入材を使った建築資材や家具などに卵が産み付けられ、のちに住宅被害をもたらすことが多いようです。

キクイムシの幼虫は、フローリングなどの“木材の内部”に潜んで木を食べているため、建築資材の段階では潜んでいるかがわかりません。成虫になって木材から脱出し、穴が開くことで初めて気が付きます。一度発生すると駆除が非常に難しい害虫でもありますね。弊社でも、完全な駆除が難しいことからキクイムシは請け負っていないんです。アメリカでは一戸建てにキクイムシが発生した場合は、「天幕燻蒸(てんまくくんじょう)」という大きなテントのようなものでお家を包んで、その中に殺虫剤を投薬する方法で駆除します。ですがこの駆除方法は、土地が狭い日本では非常に難しいと思います。実際に日本で天幕燻蒸を実施したケースは、近年ではほとんど聞きませんね。

キクイムシの難点は完全駆除が難しいことに加えて、気付くのが遅れると原因がわからなくなってしまうことです。家屋中に被害が広がり、フローリング、柱、家具が穴だらけになっていると、最初にキクイムシがどこに潜んでいたかがわからない状態になります。そうなると、補償の責任はハウスメーカーにあるのか、家具の問屋やメーカーにあるのか曖昧になり、トラブルになりやすいんですね。実際に訴訟に発展した例もあります。揉め事にならないためにも、被害を最小限におさえるためにも、キクイムシの侵入には早めに気付けるようにしましょう。

白や黄色っぽい色の粉溜まりはキクイムシの痕跡?

キクイムシの侵入に気付くポイントは、木の“粉溜まり”です。床の上や柱のそば、木製家具の近くなどに白や黄色っぽい色の粉溜まりがポツンとあったら、キクイムシの痕跡かもしれません。お家をキレイにしていないと気付きにくいので、日々の掃除をしっかりしたうえで見逃さないようにしましょう。もちろん、木材に小さな穴が開いている場合もキクイムシの可能性はあります。キクイムシの痕跡らしきものを見つけたら、すぐに専門業者に相談してください。

私も今までいろいろな事例を見てきましたが、粉溜まりを見つけてから半年ほど放置して大変だったケースもあります。キクイムシは気付くのが遅れるほどトラブルになる可能性が高まりますし、お家の木材部分をすべて入れ替えるような状況にもなりかねません。被害報告が稀な害虫ではありますが「もしかして……」と思ったら、まずは専門業者に相談を。その際には各都道府県にある「ペストコントロール協会」に加盟している企業を選ぶと良いでしょう。ペストコントロール協会に加盟している企業は素性が明確で、技術や知識に信頼がおける駆除業者なので安心ですよ。

新居の害虫対策は庭も重要! 害虫が発生しやすい樹種&虫が集まりにくい樹種

新居の害虫対策は庭も重要! 害虫が発生しやすい樹種&虫が集まりにくい樹種?

新築一戸建てを建てる際には、庭もつくると思いますが、植物で彩られた庭には、虫たちもやってきます。なかでも害虫が発生しやすく、害虫駆除の観点からはあまりオススメできない樹種を紹介しましょう。

まずひとつ目は「サザンカ」。昔は街路樹として植えられることも多かったサザンカには、毒蛾の一種であるチャドクガがやって来ます。庭の植物を食害するほか、毒針毛によって人体にも被害をもたらすので要注意。チャドクガの毒針毛は人間の肌に触れると、強いかゆみをともなう皮膚炎を引き起こします。サザンカは庭の生け垣などに使われることも多いのですが、チャドクガを避けたいなら植えるのを控えましょう。「ツバキ」も庭木として人気がある樹種ですが、こちらも同様にチャドクガが発生しやすい木になっています。

また、「サンゴジュ」はサンゴジュハムシに寄生されてしまうと、葉っぱが食害で穴だらけとなり、食われた部分は茶色く変色します。人体に影響のある害虫ではありませんが、木がみすぼらしくなってしまうので、手入れにあまり手間を掛けられないなら避けるのが無難です。

オリーブの葉や実には虫が嫌うオレウロペインの成分が含まれる

一方で、害虫が出にくい樹木は「オリーブ」や「クロガネモチ」、「カイヅカイブキ」などが挙げられます。オリーブは虫が嫌う「オレウロペイン」という成分が葉っぱや実に含まれているため、害虫を寄せ付けにくいと言われています。クロガネモチは丈夫で育てやすい庭木として人気がありますし、カイヅカイブキは生け垣や目隠しとしてポピュラーな樹種で、どちらも比較的、虫が付きにくい木ですね。ただ、どんな樹木を植えても植物があるところには多少なりとも虫はやってくるものです。害のない虫であれば、寛容な心で許すことも大切ではないでしょうか。

ゴキブリ、ネズミ、シロアリ……新築・入居前の害虫&害獣対策 まとめ

ゴキブリやネズミなどは新築のお家には出にくく、シロアリも施工時に防蟻処理されるので、ご自身で多くの対策をする必要はないかもしれません。しかし、土地選びのポイントやそれぞれの害虫に対する知識などを持っておくことで、先々の被害を防ぐことはできると思います。今回お話したことを参考にしていただき、何か不安があればプロの業者にも相談して、快適なマイホームライフをおくってくださいね。

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