アウトドアプロデューサーに聞く!非認知能力を育む自然遊び~初級編~ピクニックin都市型公園

近年では、物事を考える力や問題を解決する力などを表す「非認知能力」が、幼児教育や学校教育においても注目されるようになりました。アウトドアプロデューサーで、『自然あそびで子どもの非認知能力が育つ』の著者でもある長谷部雅一さんによると、子どもの非認知能力を高めるには自然との触れ合いが有効で、まずは都市型公園でのピクニックから始めるのが良いそうです。その理由とは? 自然を舞台にした幼児教育にも尽力されている長谷部さんに、自然遊びのコツや都市型公園がなぜオススメなのかを伺いました。都市型公園の選び方や非認知能力を育むためのアドバイス、体験をアウトプットして経験に変えるポイントなどもご紹介します。

長谷部雅一 プロフィール

アウトドアプロデューサー・長谷部雅一のプロフィール
長谷部雅一 プロフィール

株式会社ビーコン 代表取締役/アウトドアプロデューサー/ネイチャーインタープリター

アウトドア事業に関する企画・運営の他、研修講師、登山ガイド等を務める。アウトドアイベントでは子どもや親子を対象としたさまざまなワークショップ講師を務め、親子の関係が深まり、楽しく学び合える場を提供。また、自然を舞台にした幼児教育にも尽力。幼稚園や保育園、こども園の教育コンサルタント業務を行っている。
20年来の経験を元に、保育士向けに自然体験指導者養成やコミュニケーション研修、応急救護研修を提供。著者「ネイチャーエデュケーション(みくに出版)」、「自然あそびで子どもの非認知能力が育つ(東洋館出版社)」など多数、雑誌等メディアなどでも活躍中。
株式会社ビーコン: https://be-con.co.jp/  

アウトドアプロデューサーの長谷部雅一です。2020年は教育改革の年と言われ、新しい学校指導要領が教育現場で導入されました。そのなかで重要視されているのが「非認知能力」です。非認知能力とは、思考力や判断力、表現力や人間性など学力テストでは数値化できない能力を指します。ですが、学校のみでは身に付けることが難しく、親御さんのサポートが必要不可欠とされているんですね。今回は私が幼児教育現場や親子を対象とした自然体験などで培ってきた経験をもとに、非認知能力を育むサポート方法や都市型公園でのピクニックを勧める理由などを解説させていただきます。

目次
1.自然遊び&自然体験で子どもの非認知能力を育む
2.自然遊び初心者には都市型公園でのピクニックがオススメ
3.公園に出かける前の作戦会議が子どもの非認知能力を育む
4.試行錯誤のすえに満足できた成功体験が非認知能力を育て自己肯定感も育む
5.振り返りで“体験”を“経験”に変える
6.非認知能力を育む自然遊び~初級編~ピクニックin都市型公園 まとめ

自然遊び&自然体験で子どもの非認知能力を育む

自然遊び&自然体験で子どもの非認知能力を育む

これまで日本の教育は、テストで数値化可能な認知能力を評価するシステムをベースとしてきました。しかし、急速な社会の変化に対応するためには、非認知能力が必要だという認識へと変わったんですね。とは言え、子どもたちがこれからの時代を生き抜くためには、どちらも重要な能力であることに変わりありません。知識や技術などの認知能力は、シチュエーションに応じて使いこなす非認知能力があってこそ意味をなしますし、そもそもの知識がないと応用しようがないからです。ですが、とくに非認知能力は一朝一夕で身に付くものではないので、学校任せにするのではなく家庭でも育むことを意識するべきでしょう。

では、どのような形で取り組めば非認知能力を育むことができるのか? 私は人間の五感や感情・身体を開放的にさせてくれる“自然”に身を置くのが一番だと考えています。日常生活では周囲に迷惑を掛けないよう、大きな声で笑ったり、走り回ったりすることがしにくい状況です。しかし、森や海など自然のなかでは心も身体も抑制されず、感情を表に出しやすくなるんですね。私も今まで数多くの自然遊び教室で、子どもも大人も開放的になる姿を見てきました。自然という伸び伸びとした環境に身を置くことで、普段は気付かなかったり気にならなかったりする草花に目がいったり、風の音や鳥のさえずりが聞こえてきたりして、子どもは多くの発見をするようになることでしょう。

たとえば落ちている枝や葉っぱ、木の実を使って作品をつくることを思いつき、頭の中にある完成イメージに近づくよう、さまざまな工夫をしていきます。悩んで、解決策を思いついて、やってみる、うまくいかなかったらまた考える……。このトライアンドエラーを繰り返すことで、物事を考える力や課題解決能力といった非認知能力が身に付くサイクルが生まれるんですね。あらかじめ遊び方が決まっている既製品のおもちゃや公園の遊具よりも、もっと広く自由な発想で気付きや学びにつながるのが自然遊びというわけです。

自然のなかでは親子のコミュニケーションも変化

自然に身を置き、素の自分になることで、親子のコミュニケーションも変わります。毎日分刻みで仕事に学校、幼稚園や保育園、習い事と慌ただしい状態では、子どもとゆっくり向き合う時間をとるのも難しいのではないでしょうか? 時間に追われず、自然のなかでリラックスした状態でお子様と接していると、いつもとは違う一面に気付くなど新しい発見があるものです。そして、子どもへの理解が深まることで会話や関わり方が変化して、より良い親子関係も築けることでしょう。自然のなかでは非日常を思いっ切り楽しんで、お子様との時間を大切にしていただければと思います。

自然遊びを通じて子どもの「非認知能力」を育む方法の詳細はコチラ

自然遊び初心者には都市型公園でのピクニックがオススメ

自然遊び初心者には都市型公園でのピクニックがオススメ

ひと言で自然と言っても山や海などさまざま。「いきなり自然遊びと言われても何から始めたら良いの……?」と思われる親御さんも多いでしょう。そこでオススメしたいのが、都市型公園です。たとえば東京なら代々木公園や駒沢公園、昭和記念公園など。大阪なら万博記念公園、愛知なら愛・地球博記念公園のように、いつも行くような近所の公園よりも圧倒的に広い公園をイメージしてください。

木々が生い茂るエリアや芝生エリアなどを単純に歩き回るだけでも楽しいですし、気に入った場所でレジャーシートを広げて食べるご飯は格別です。都市型公園でのピクニックは、自然に囲まれていろんな刺激を受けながら、いつもの公園よりも長く滞在できるので、自然遊びを始めやすいと思います。では、具体的な都市型公園の選び方を解説しましょう。

自然遊びが楽しめる都市型公園の選び方

自然遊びが楽しめる都市型公園の選び方

都市型公園選びの一番のポイントは、アクセスのしやすさ。お子様に「また行きたい」と言われたら「行こう!」と即答できる場所が良いですね。気軽に行けると「次回はもっとこうしたい!」と遊びが発展していくことにも期待できるでしょう。これは幼児教育用語で“遊び込み”と呼ばれるもので、遊びをクリエイトしつつ工夫を重ねられるため、非認知能力を育むチャンスになります。季節ごとに移り変わる自然を感じられるのも、気軽に行ける都市型公園のメリット。たとえばドングリで遊ぶことが気に入ったら、地面に落ちている季節と落ちていない季節の違いに気付き、学びを深めるきっかけにもなり得るでしょう。

また、公園の近くに好きなパン屋さんがあるなど、親御さんにとっても気分が上がる要素がことも重要です。行くのが億劫ということも減るはずなので、親子で楽しめるような公園をぜひ探してみてください。

芝生広場にシンボルツリー! 都市型公園を選ぶポイントとは?

芝生広場にシンボルツリー! 都市型公園を選ぶポイントとは?

都市型公園を選ぶ際は、次に挙げるものがあるかどうかも参考にしてみましょう。この8つは、草花や生きものなど、自然遊びにうってつけのものに出会いやすい環境です。
●芝生広場
●シンボルツリー
●生け垣(公園全体や一部を囲む低木)
●建物(トイレなど)
●遊具
●トイレの周り
●ベンチ
●街灯

このなかで重要視したいのが、レジャーシートを広げられる芝生広場。お弁当を食べることができますし、斜面があれば滑ったり転がったりするような遊びもクリエイトするはず。それからシンボルツリーとして植えられているサクラやケヤキなどの大木は、樹液が出る木なら虫を観察することができます。これらのスポットは子どもの発想に任せて自由に遊べたり自然を観察できたりして“遊び込み”につながりやすいので、アクセスのしやすさとあわせて公園選びの基準にしてみてください。

公園に出かける前の作戦会議が子どもの非認知能力を育む

公園に出かける前の作戦会議が子どもの非認知能力を育む

出かける前に大切にしていただきたいのが、子どもの「行くのが楽しみ!」という気持ち。そのワクワク感を増幅させるため、何日か前から予定を立てるようにしましょう。「今から行こう」と急に誘うよりも、ワクワクしながらやりたいことを考える時間を確保し、準備を整えて出かけたほうが何倍も気付きや学びの機会となるんですね。

さらに、親子でやりたいことやワクワクすることを出し合う“作戦会議”もしてみましょう。親御さんに意識してほしいのは、お子様からより具体的な「〇〇したい!」が引き出せるような問いかけです。たとえば「公園で何したい?」と問いかけて「虫捕り!」と返ってくれば、公園のどこでするのか、必要な持ち物は何かを一緒に考える……このようにお子様の対応を引き出すように計画を練っていきましょう。子どもの「やりたい!」という前のめりな気持ちを大切にしながら親子で計画を立てることで、先を具体的にイメージして行動する力などの非認知能力が育まれていくわけです。

作戦会議では親の寄りたい場所もプレゼンテーション

公園へ行く途中や帰り道に親御さんの寄りたい場所があるのなら、そのことも作戦会議でプレゼンテーションしてみましょう。「このお店の○○パンがすごく美味しいから、買ってから行きたい!」という風に話しているうちに、お子様の頭の中でも計画が総合的にできあがっていくはずです。もしかしたら、「行きにパンを買って、公園でレジャーシートの上で食べたい!」といった、より具体的な楽しさと論理性を両立させた計画が生まれるかもしれません。親が決めて子が従うのではなく、行くメンバー全員が楽しめるように作戦会議すると良いですね。

持ち物の準備は子ども主体でおこなう

また、持ち物の準備は作戦会議で話した内容をベースに、基本的にはお子様主体でおこないましょう。天気や気温など、お子様が気付きにくいことに関しては親御さんがフォローしてあげてください。お家から離れるので、絆創膏や持病薬など簡易的な救急セットも必携ですね。暑い時期なら熱中症対策に必要なアイテムも持って行きましょう。目いっぱい遊ぶと服が汚れることもあるので、着替えも準備します。汚れるから、と行動を制限するのはもったいないので、ドロドロになるくらい夢中になって遊びましょう。

こうやって作戦会議をしてからのお出かけを繰り返すことで、子どもはやりたいことに合わせた準備を自主的に始めるようになるはず。我が家もお出かけとなると、娘は慣れた手付きで用意をするようになりました。まだ10歳ですが、その姿はとても頼もしく思います。

試行錯誤のすえに満足できた成功体験が非認知能力を育て自己肯定感も育む

試行錯誤のすえに満足できた成功体験が非認知能力を育て自己肯定感も育む

公園では親御さんもお子様と一緒にとことん遊びましょう。お母さん・お父さんが「ベンチで座って見ているからね」と見守っているのは、とてももったいないことです。一緒に遊べば、「次は何をしよう?」「この遊びをもっと楽しむにはどうしたら良いかな?」など、その場で作戦会議が始まり、子どもはより楽しむためのトライアンドエラーを開始することでしょう。もっと楽しむという目的を達成するために考えて、実際にやってみて、自分が満足するまで何度も繰り返す。この一連の行動を自然に促すためには、親御さんも一緒になって遊ぶことが大切になるわけです。

なかなか思った通りにいかず、泣き出す子もいるかもしれません。急に違う遊びを始めることもあるでしょう。そのとき、親御さんが遠巻きに眺めているだけでは、お子様がなぜ泣いているのか、なぜ別のことを始めたのか、わかってあげられません。子どもが思い描く成功に向けて一緒にチャレンジするからこそ、気持ちをくみ取って寄り添い、次はどうするのか、どうしたいのかを一緒に考えることができるんですね。そして、試行錯誤のすえに満足できたという成功体験は、子どもの非認知能力を育てるとともに自己肯定感も育むことでしょう。

子どもが乗り気でないときは「何をして遊びたいか」聞いてみる

公園でする遊びは、お子様が今やりたいことでOKです。作戦会議で立てた計画はあくまでも予定。実際に現地に行くと、子どもの気持ちが変わることも多々あるので、実は計画にこだわる必要はありません。作戦会議をすること自体に大きな意味があるのだと覚えておきましょう。

事前に立てた計画と違っていても、たいていの場合は「何して遊ぶ?」と聞けば、答えは返ってきます。もし答えが返ってこないなら、「体を動かす遊びをしようよ」など、一緒に遊びたいという気持ちを伝えて誘ってみましょう。もし断られたら気乗りしないだけです。遊びには大きく「静」と「動」の二種類の遊びがあるので、体を動かす「動」の遊びが嫌なら花やドングリを集めるような「静」の遊びを提案してみてください。ふたつの遊びはつながっていて、静から動に発展したり、動から静に変化したりするものです。杓子定規に決めつけず、臨機応変に楽しんでくださいね。

お子様が生き物好きなら、生き物探しも楽しいと思います。木々が生い茂っているところを進んでじっくり観察しているうちに、お子様の目の色も変わってどんどん遊びが広がっていくはず。ただし、立入禁止の区域には入らないように気を付けましょう。公園によっては木登り禁止、敷物OKなエリアが限定されている、採取してはいけない植物があるなどさまざまなルールがあるので、親御さんは事前にホームページなどで確認しておきます。

もしもお子様がルールを破ったり、危険なことをしたりする場合、ただ怒ってやめさせるのではなく、理由を伝えてください。さらに「○○ちゃんが△△をすると怪我してしまうんじゃないかと思って、とっても心配な気持ちになったんだよ」と私を主語にした“私メッセージ”として伝えましょう。気持ちとともに伝えることで子ども自身が考え、自分なりにどう行動するのが良いかを模索するはず。遊びを通して考える機会をつくることも、親御さんの役割なのだと思います。

振り返りで“体験”を“経験”に変える

振り返りで“体験”を“経験”に変える

公園では、楽しいことや悔しいことなどたくさんのドラマが起こることでしょう。それを「楽しかったね」「また行こうね」と終わらせるのではなく、具体的に何がどのように楽しかったのか、何が難しくて次はどうやったらうまくいくと思うのかなどを、“振り返り”することも大切です。

帰り道でもお家に帰ってからでも良いので、一緒に公園での体験をアウトプットする時間をつくりましょう。振り返りは親子で話すだけでも良いですし、絵日記や詩など形に残るものにしてもOK。公園でお子様が「こうしたらうまくいくかも、もっと楽しめるかも」と思ったとしても、アウトプットしなければいずれ忘れてしまいます。しかし、自分の体験したことを頭と心からアウトプットすれば記憶に残りやすくなり、次に似たような機会があったときに以前の体験を活かすことができるのです。体験はアウトプットを繰り返すことで具体的な経験へと変わり、経験は積み重なることで、子どもの生きる力となることでしょう。

非認知能力を育む自然遊び~初級編~ピクニックin都市型公園 まとめ

子どもの非認知能力を高めるには、自然のなかでリラックスし、素の状態で遊ぶことが一番です。自然といっても遠くの山や海まで行かなくても大丈夫。アクセスの良い都市型公園に四季を通して訪れれば、どんどん遊びをクリエイトして工夫していく“遊び込み”につながります。自然遊びを重ねて、遊び方も振り返り方も、いろいろと試してみてください。チャレンジして試行錯誤のすえに満足できた成功体験は、お子様の非認知能力を育て、自己肯定感も育みます。そして、振り返りによるアウトプットで体験を経験に変え、経験を積み重ねていってください。その時間は親子にとってかけがえのないものとなり、お子様の成長にもつながっていくことでしょう。

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