家庭学習サポート専門家が教える幼児教育のアドバイスとオススメ教材

過熱気味の「幼児教育」。どのような効果があるのか、やらなかったらどうなるのかなど、わからないことも多いと思います。幼児教育とは未就学・学校に上がる前の教育を指しますが、いったいなにをすれば良いのでしょうか? 子どもに幸せな人生を送ってほしい、幼児教育が子どもの成長に役立つものならぜひ取り組みたいと思う親御さんは多いはず。家庭で取り組めることがあるのか、子どもの成長にどのようなメリットがあるのか、デメリットはないのか、幼児教育については気になることが多いですよね。そこで、幼児教育講座の企画もおこなっている家庭学習サポート専門家の大沢有貴子さんに、幼児教育のアドバイスを伺いました。

家庭学習サポート専門家・大沢有貴子のプロフィール
大沢有貴子

家庭学習サポート専門家
子どもの家庭学習のサポート方法を、教育・受験情報メディアを通じて発信中。「中学受験ナビ」「All About NEWS」「まいどなニュース」「BRAVA」などにて、保護者の不安に寄り添うアドバイスを心がけている。自身も教育ママ業を趣味のように楽しみ、お金も手間もなるべくかけず家庭学習をサポートする方法を追及。幼児食インストラクター、食育アドバイザー、食生活アドバイザーでもあり、モンテッソーリ教育講座の企画も行う。
公式HP:https://yukiko-ohsawa.amebaownd.com/
Twitter:https://twitter.com/OhsawaYukiko

家庭学習サポート専門家の大沢有貴子です。私にはふたりの子どもがいて、試行錯誤しながら育児をしてきました。「幼児教育」と聞くと、幼児教室や受験をイメージする方がいらっしゃるかもしれませんが、何も特別なものではないんですよ。今回は私の育児経験を踏まえながら、幼児教育についてお話していきたいと思います。

幼児教育とは? 家庭学習サポート専門家の目線で解説

幼児教育とは? 家庭学習サポート専門家の目線で解説

幼児教育とは、そもそもどんなものでしょうか。机に向かって勉強することだけを幼児教育と言うわけではありません。幼児はいろいろなものに触れて、遊んで、学習していきます。絵本を読むことや工作、料理などのお手伝い、家族でキャンプに行ったり、ジャングルジムなど公園で遊んだり……日常生活のすべてが幼児教育で、子どもには欠かすことのできないものだと私は考えています。

幼児教育で育むことができるものは多々ありますが、一番重要なのは「非認知能力」です。非認知能力とは「コミュニケーション能力」「計画力」「感情のコントロール」など、数値化できない能力のこと。一方で「認知能力」は、テストの点数やIQなど数値化できる能力ですね。社会的成功を収めるには非認知能力の影響が大きいとの調査結果もあります。

では、子どもの非認知能力を向上させるには、どうしたら良いのでしょうか。絶対的な方法はまだ見つかっていませんが、乳幼児から10歳くらいまでが伸びやすい時期で、やりたいことを思いっきりやれる時間が多いほど良いとされています。非認知能力を伸ばす遊びとしてオススメなのは、おままごとなどの「ごっこ遊び」。コミュニケーション能力や創造力の向上が期待できます。さらに、ごっこ遊びは論理的思考の土台となって、段取りを組んだり、5W1Hで考えたりするので学びが大きく、後述の「9歳の壁」対策にもなることでしょう。

幼児教育は“子どもの成長をサポートしよう”という意識で見守ることが大切

子どもは、歩き方を教えなくても自然と歩くようになります。どの子も自己教育力、つまり“自分で自分を育てる力”を持っているんですね。幼児教育をするうえで大切なのは、学ばせようや教えようではなく、“子どもの成長をサポートしよう”という意識で見守ることです。客観的に我が子を観察して、やりたいことは何か? うまくいかない原因は何か? を把握し、満足するまでチャレンジできる環境を整えてあげましょう。これは「モンテッソーリ教育」の考え方で、ご家庭でも少し意識することで取り入れられますよ。幼児教育とは、机に向かってガリガリ勉強しよう、というものではないので身近な体験から進めていきましょう。

「9歳の壁」に備える! 自己肯定感を高める幼児教育

「9歳の壁」に備える! 自己肯定感を高める幼児教育

幼児教育は「9歳の壁」を乗り越えるためにも大きな役割を果たします。9歳の壁は「小4の壁」とも呼ばれており、自分を客観視できるようになる9〜10歳ごろに直面する現象。この時期は自信を失いやすく不安定になる子が多いと言われていますね。カラダ・アタマ・ココロが激しく変化するこの大転換期には、「学力」と「発達」のふたつの面で変化が見られるのですが、まず学力面では抽象的思考力が求められるようになります。

算数で言えば、小数や分数が出てきて、0.5と2分の1が同じ“半分”であると理解しなければいけません。難しくて逃げ出したくなる子も多いそうですが、幼児期にままごとでケーキを切り分けた経験があれば、「ケーキを3個に分けたときの、1個分の大きさを分数で表しましょう」といった問題が出ても、イメージして解くことができます。つまり、9歳の壁を迎えるまでにどれだけ“具体的な経験”をしたかが重要となるんですね。同様に立体図形の問題でも、ジャングルジムを上から見たことがあれば立体の空間認識能力が身に付いているのでクリアしやすいはず。幼児期の経験が後々の勉強にも生きてくるわけです。

自己肯定感を高めるには成功体験を客観的に感じ取れるような写真を飾るのがオススメ

発達面では、さまざま視点から物事を捉えられるようになるので、自己肯定感が下がりやすくなると言われています。友達との関係性が深くなり、複雑化するのもこの時期。幼児期にはあった根拠のない自信が持てなくなって、ほかの子と比較して劣等感を抱いてしまうケースが多く見られます。

他者と自分を区別して壁を乗り越えるためには、幼少期からの親御さんのサポートが欠かせません。家族の一員であること、自分の居場所があることを認識できれば自信を持ちやすくなるので、いつでも目に入るような場所に家族写真を飾るのがオススメ。キャンプをしたり、登山をしたりなど、子どもの頑張りや成功体験を客観的に感じ取れるような写真を選ぶのも良いですね。そして、積極的に感謝を伝えましょう。お手伝いなどの役割を果たしたときに「ありがとう」「助かったよ」と声を掛けることで、子どもは自身の存在意義を感じ、自己肯定感も高まるはず。9歳の壁に備え、乗り越えるには、お子様への愛情表現をできる限り具体的にすることが大切だと言えますね。

食事を通してできる幼児教育

食事を通してできる幼児教育

ここまで生活のすべてが幼児教育につながるとお話してきましたが、あれもこれも意識するのは難しいと感じた方は、「食事」に注目してはいかがでしょうか。私は幼児食インストラクターや食育アドバイザーとしてもお仕事をしており、食生活アドバイザーでもあるので、我が家では食と幼児教育を絡めることが多かったです。たとえばお菓子をひとつずつ分けるだけで、「一対一対応」という算数の基本概念につながりますし、七草粥の春の七草、端午の節句には菖蒲、冬至にはかぼちゃなど、日本古来の伝統を学ぶこともできます。

お皿を運ぶお手伝いは、指先を使ったり歩いたりする運動になり、料理を手伝うと段取り力も身に付きます。我が家ではレタスをちぎるなど包丁を使わずにできるお手伝いは2歳半ごろからさせていました。食事は毎日摂るので、幼児教育を何から始めたら良いのかわからない方も進めやすいと思いますよ。

机に向かう練習はいつから? 幼児教育と「小1プロブレム」

机に向かう練習はいつから? 幼児教育と「小1プロブレム」

幼児期は“遊びが学習”なので比較的自由ですが、小学校に上がると環境はガラリと変わります。「授業中は座っていなさい」と先生に言われ、時間割どおりに集団行動をしなければなりません。学校現場では、急な変化に馴染めなかったり、授業中に立ち歩くなどの行動を起こしてしまったりなどの「小1プロブレム」が問題視されています。

我が家の子どもたちが通っていた幼稚園では、年長になると机と椅子を使ったり、和式トイレで練習したりと小学校生活の準備をしてくれました。そのおかげでスムーズに小学校生活を始められたのですが、ほかの子たちは慣れるまで大変そうでしたね。もしお子様が小1プロブレムになってしまったら、まずは子どもの立場に立ってみましょう。今まで遊び中心の生活だったにも関わらず、小学生になった途端、朝から座っていなきゃならない、休み時間は遊んで良いと言っても場所限定……と劇的な変化を強いられたわけです。そんな状況のなか、毎日学校へ行くだけでも偉いと思いませんか? 日々頑張っている子どもたちには、ぜひ「頑張っているね」と共感して寄り添ってあげてくださいね。

小1プロブレムの事前対策……机に向かう練習は必要?

小1プロブレムの事前対策……机に向かう練習は必要?

小1プロブレムの事前対策として、机に向かう練習をするのも良いでしょう。これも幼児教育の一環ですね。もちろん無理にする必要はありませんが、子どもは自分専用の机と椅子を用意してあげると喜ぶと思います。その場合は、簡易的な折りたたみタイプでもOK。ぬりえや迷路など、何かするときは「この専用スペースでやりましょうね」と伝えることでモチベーションも変わるはずです。入学前にNHK for Schoolの「すたあと」など、子ども向け番組を見ておくのもオススメ。学校がどんなところなのか事前に知っておくことも、小1プロブレム対策になりますね。

お兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に机を並べるのも◎

小学校の兄弟や姉妹がいるなら、一緒に机を並んで勉強するのも良いですね。勉強と言っても、折り紙でもお絵かきでも机と椅子でやるものなら何でもOK。幼児は一人前扱いされると喜びますし、上の子も「弟や妹よりも難しいことを自分は頑張っているんだ」と感じてモチベーションが上がると思いますよ。

家庭学習のプロがオススメする知育玩具&幼児向け教材

家庭学習のプロがオススメする知育玩具&幼児向け教材

幼児教育をするうえでも便利な知育玩具。種類はたくさんありますが、私のオススメは“感覚”を磨くものですね。モンテッソーリ教育の土台として、算数や言語の前に「感覚教育」というものがあって、自然のなかで土に触れたり、花の匂いを感じたりするのも知育だという考え方です。「今日の洋服はツルツルしているね」「こっちはいちご味、じゃあこっちは何味かな?」というように手触りや味、匂いや音、動きなど五感を磨くものはすべて知育につながります。市販のおもちゃを選ぶときも感覚を重視してみてください。レゴブロックや積み木で遊ぶのも良いですね。算数で空間図形や立体図形が出てくると戸惑う子が多いそうなので、自由に組み立てて遊べるおもちゃは知育に役立つことでしょう。

続いて、幼児教育でも活用できる教材をいくつかご紹介します。

●ちびむすドリル
ちびむすドリル」は、子育てママが「こんな教材やコンテンツがすぐ簡単に手に入ったら便利だな」という想いでつくったのが始まり。今では幼稚園や小学校、塾や公共施設などで広く使用されている教材です。幼児教育だけでなく、小学生や中学生向けや英語学習の教材も揃っているので、先取り学習ができますよ。充実度が高く、私のイチオシです。

●「こぐま会」の小学校受験教材
受験教材は、受験する子しか使ってはいけないと思っていませんか? まったくそんなことはありません。誰でも使って良いんです! 数ある受験教材のなかでもオススメは「こぐま会」。パズルやおはじき、ひも通しなど知育玩具のような教材も多く、価格もお手頃です。ネット通販でも手に入りますが、購入前に実物を見たい方は、取扱店が限定されているので事前に確認してから足を運びましょう。内容が充実していてコスパが良く、非常に魅力的だと思います。


そのほか、100円ショップにある幼児向けのドリルもオススメ。十二分に満足できる内容で、お試ししやすい価格なのも嬉しいですね。とくにダイソーには読み書きや間違い探しなどが豊富に揃っています。お子様と一緒に選んで、本人が興味を持ったものに挑戦してみてくださいね。

入学前に運筆の練習! 幼児にも使いやすいオススメ文具

入学前に運筆の練習! 幼児にも使いやすいオススメ文具

入学前に運筆の練習を始めるのなら、5歳ごろからが良いでしょう。指先の動きは脳と密接に関係していて、手先の器用さを育むことは幼児教育でも重要だと言われています。指先の機能がだいたい揃って、しっかり動くようになるのが5歳前後。スムーズな運筆には体幹も重要で、足の裏全体を付けて身体を安定させるのがポイントです。手や指だけでなく、足を軸とした全身の動きのコントロールが必要なので、床に座るのではなく椅子を使いましょう。ダイニングの椅子でも良いのですが、高さが合わない場合は足がフラフラしないように踏み台を使ってくださいね。

運筆の練習をスムーズに進めるには文具選びも重要です。運筆練習にオススメの文房具をピックアップするにあたって、「【絶対使うべき】小学生の勉強効率爆上がり文房具TOP5」をYouTubeで配信している教育・受験指導専門家の西村創さんと、この動画の作成・編集に協力された勉強×文具研究家の秋月千津子さんにアドバイスをいただきました。動画のタイトルには「小学生」とありますが、使い勝手が素晴らしいものばかりなので幼児にもぴったりですよ。

●クツワ STARLINE「オレンピツ」
とにかく折れにくい鉛筆「オレンピツ」。芯の強度は、従来品と比べて何回落としても簡単には折れないのに、書き心地がなめらか。少しお値段は張りますが、運筆の練習には持って来いの1本です。

●ダイソーまとまる消しゴム 激落ちくんシリーズ「はじめての消しゴム」
ダイソー限定の消しゴム「まとまる消しゴム 激落ちくん」シリーズは、幼児の力でも良く消えるのでオススメです。消しカスがまとまるので、掃除が楽なのも嬉しいですね。このシリーズの中でも、「はじめての消しゴム」は濃い鉛筆用。低学年までは濃い鉛筆が推奨されているので、こちらを選ぶのも良いでしょう。

●レイメイ藤井「先生おすすめ 魔法のザラザラ下じき」
魔法のザラザラ下じき」は、日本文具大賞2022 機能部門グランプリを受賞した注目の一品。表面の細かいドット加工によるザラザラに、鉛筆が触れることで振動が生まれ、筋肉や関節に刺激が伝わりやすくなるそうです。この刺激が脳に伝わることで運筆を意識しやすくなり、イメージした文字と手の動きが一致しやすくなるという優れもの。文字書きに不慣れな幼児〜低学年タイプがあるのもありがたいですね。値段は少々お高いですが、運筆練習を始める際には検討してみてください。


また、文具を使い始めるときには、正しい使い方を教えないとすぐに癖がついてしまいます。とくに鉛筆の握り方は変な癖がつきやすいので、正しく握れるようになるまでは矯正キャップを使うなどして注意しましょう。洗濯ばさみをはさむだけでもOKです。ちゃんと削って書きやすい状態かどうかもチェックしつつ、習慣付くまでは重点的にサポートしてあげてくださいね。

幼児教育で大切なことは? 家庭学習サポート専門家が教えるアドバイスとオススメ教材 まとめ

小さな子どもにとって、日常生活はすべて学びにつながります。お子様の好奇心の向くままに幼児教育を進めていきましょう。しかし、できることがどんどん増えていくと、あれもこれもと先へ進みたくなってしまうのが親と言うもの。そんなときは少し立ち止まって、お子様が望んでいるかどうかを確かめるのが大切です。親の理想を押し付けすぎず、子どもが伸び伸びと成長できるように見守ってあげてくださいね。

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