台風に備えてお家でできることは? 台風対策の基本を防災のプロが解説

私たちの住む日本では、夏から秋にかけて台風が多く発生します。年間で約25の台風が発生し、そのうち約12個が接近、約3個が上陸して暴風雨をもたらすため、その被害は甚大です。しかし、防災士の三原麻弓さんによると、台風はあらかじめ予測できる災害だからこそ、しっかりと備えることで被害を確実に減らすことができると語ります。そこで、母であり主婦でもある三原さんに家族の命やお家を守るための台風対策を伺いました。自宅の台風対策や避難時の注意点、台風が過ぎ去ったあとの対応などをご紹介します。

防災備蓄収納のプロ・三原 麻弓のプロフィール
三原 麻弓 プロフィール
防災備蓄収納暮らし代表/防災士 ひょうご防災リーダー/防災備蓄収納マスタープランナー

1995年、激震地の兵庫県神戸市灘区内のマンションで、子育て中に阪神淡路大震災を経験する。その時の大変な経験から誰でも始められるやさしい防災と備蓄と収納セミナー・講座や片付けプロ目線の安全安心な暮らしの為のお片付け術セミナー・講座で登壇中。
災害はいつ起こるかわからないが、災害時でも日常生活が続けられるように、いつもの買物や暮らしに密着した防災備蓄と手軽に準備出来る非常食のアイデアを伝えている。
魅せる防災備蓄収納® :https://suteki-senior.com/

防災備蓄収納暮らし代表の三原麻弓です。自然災害の多い日本では、自分や家族の命と生活を守るための防災対策は欠かせません。台風は地震や噴火と違って予報があり、発生から接近・上陸までに時間を要することも特徴のひとつ。つまり、事前にしっかりと備えることで、確実に“減災”できる災害と言えるのです。台風がもたらす影響や被害を知り、適切な対策や避難行動で危険から身を守りましょう。まずは、自宅でできる台風対策について解説します。

目次
1.強風や停電に備えるには? お家の台風対策
2.家族の安全を守る! 台風発生時の防災行動
3.台風で避難が必要な場合は? 逃げるときや車移動の注意点
4.台風が過ぎ去ったあとの対応は?
5.台風対策の基本を防災のプロが解説 まとめ

強風や停電に備えるには? お家の台風対策

強風や停電に備えるには? お家の台風対策

台風は、海水が蒸発してできた上昇気流が熱帯低気圧となり、さらに成長したものです。強い雨や風をともなう大きな渦は、私たちの住む日本にも接近・上陸してさまざまな影響をもたらします。暴風によってものが飛ばされ、大雨が河川の氾濫や土砂崩れを引き起こし、海では水位が上昇し高潮となって近隣が浸水するなど、多くの人や建物が被害に遭うのです。

災害に備えるには自分が住んでいる地域のハザードマップを確認することが重要

台風対策として、まずはハザードマップを確認することが重要です。ハザードマップ上で土砂災害や洪水・氾濫の警戒レベルが高い地域に住んでいる場合、警報が出たらできるだけ素早く避難することが肝心です。自宅だけでなく、職場や学校、近所のスーパーやドラッグストアなど、家族がよく行く場所もチェックし、その場所が安全かどうかも確かめておきましょう。

ハザードマップ上で、危険を示す「赤」や注意の「黄色」が付いていない地域に住んでいたとしても、強風や大雨が来ることは変わりません。安全が担保されるわけではないので、必ず事前対策をしておきましょう。

お家でできる台風対策①窓のカーテンやシャッターを閉める

お家でできる台風対策 窓のカーテンやシャッターを閉める

台風が接近すると、強風で外から何が飛んでくるかわかりません。窓が割れる可能性もあるので、カーテンやブラインドは必ず閉めておきましょう。それだけでも飛来物の侵入を妨げたり、窓ガラスが屋内に飛び散るのを抑えたりできます。雨戸やシャッターがある場合は、必ず閉めます。窓ガラスの飛散防止対策として、フィルムや養生テープを貼ることもできますが、マンションの場合は勝手に貼ってはいけないので要注意。窓は共用部分となるため、管理組合との相談が必要となります。

お家でできる台風対策②庭やベランダを片付ける

お家でできる台風対策 庭やベランダを片付ける

庭やベランダに置いてあるものは、安全のためにお家や物置などに片付けます。どうしても片付けられないものは丈夫な紐などで固定しましょう。ベランダは、排水口などの掃除もしてください。落ち葉やゴミがたまると水はけが悪くなり、大雨で水没しかねないからです。とくにベランダと部屋がフラットなつくりになっている住まいだと、室内に浸水する危険性もあるので、台風の予報が出た時点で掃除すると良いでしょう。

お家でできる台風対策③停電と断水に備える

お家でできる台風対策 停電と断水に備える

強風による飛来物で電線が傷付いたり、落雷や土砂崩れで電柱が倒れたりして、停電になる恐れがあります。海沿いの地域では、海水の塩分が電線をショートさせる「塩害」も生じるため、台風に備えて停電対策を必ずしておきましょう。停電したときに慌てないため、自宅のいろいろな場所に緊急用のライトを置いてください。「たくさん準備するにはコストがかかるから……」と思われるかもしれませんが、100円ショップのLEDライトで問題ありません。プチプラのライトでも十分に明るいですよ。リビングや寝室はもちろん、玄関やトイレにも備えておき、浴室には防水のライトを準備しておきましょう。

また、4階建て以上のマンションの場合、停電すると水を送るためのポンプが停止するため、断水が起こりやすくなります。エレベーターで昇り降りできない事態にも備え、飲料を含む生活水を多めに備えておきましょう。あらかじめ浴槽にお湯をためておくことも断水対策のひとつですが、浴槽にためた水はすぐに雑菌が増えていきますので、飲料水や食器洗いには決して使用しないでください。台風時の停電による断水であれば、浴槽の水はトイレを流す用途で使えるでしょう。

ただし、台風で下水処理場が被災した場合は下水処理が難しくなるので、トイレの水を流すという行為自体がNGになる可能性もあります。お住まいの地域でトイレの水を流すことが可能なのか、行政の情報もチェックしてください。一方で、地震の場合は揺れによって排水管が破損している恐れがあるため、トイレに水を流すのは控えましょう。

家族の安全を守る! 台風発生時の防災行動

家族の安全を守る! 台風発生時の防災行動

台風の影響で学校が臨時休校になっても、親御さんは仕事へ行かなければならないケースもあります。お子様だけで留守番することになってしまったら、窓のそばには近付かず、お家からは決して出ないように伝えましょう。つい外の様子が気になってしまう子も少なくありませんから、飛来物や河川の増水などの危険性を説明してあげてください。

また、突然電気が消えたり水が出なくなったりするとパニックになりかねませんから、停電や断水が起きる可能性も伝えておく必要があります。あわせて懐中電灯やLEDライトがある場所、断水時のトイレの使い方などを教えてあげてください。非常用の簡易トイレを備えてあるのなら平常時に使う練習もしておきましょう。

ペットは安心させてあげることが大切

台風発生時はペットを安心させてあげることが大切

家族の一員であるペットの備えもしっかりとしておきましょう。フードや水、お気に入りのおやつやトイレシートなどは普段から多めに買って、備蓄してあげてください。また、ペットは自然災害に対してとても敏感で、雨風や雷の音に怯えます。普段とは違う状況で、さらに飼い主が慌ててしまうと余計に不安になりますから、安心させてあげられるように落ち着いて接しましょう。犬の場合、外でしか排泄できない子もいますが、台風の通過中は外に出るのはとても危険です。屋内でもトイレができるようにしつけておくことも、防災対策のひとつだと言えるでしょう。

台風で避難が必要な場合は? 逃げるときや車移動の注意点

台風で避難が必要な場合は? 逃げるときや車移動の注意点

ハザードマップ上で警戒レベルが高い地域に住んでいる場合や、自治体や警察・消防から避難指示を受けた際は、早急に避難する必要があります。台風が接近して雨風が強くなるほど移動が困難になるため、できるだけ素早く行動することが重要です。徒歩での移動中は飛来物などに注意するほか、川や側溝、水路の付近を避けて避難しましょう。普段は気にも留めない側溝や水路でも、増水したときは大変危険で、実際に転落による死亡事故も起こっています。とくに子どもは危険ですから、必ず大人が手をつないであげましょう。ほかに危険な場所としては、「アンダーパス」が挙げられます。アンダーパスとは、立体交差で掘り下げになっている下の道や、鉄道や道路の下を横切る道など、周辺より低くなっている道のことで、中央の底部分に向けて傾斜になっているため、降った雨が流れ込んでたまりやすいのが特徴です。

トンネル状のアンダーパスは雨水が一気に流れ込む恐れがあるため危険

人や自転車が通るような狭いトンネル状のアンダーパスもあり、急な大雨で雨水が一気に流れ込むと身動きが取れなくなる恐れがあるため、台風の際は避けて避難するようにしましょう。

また、道路が冠水していない状況であれば車移動もできますが、周辺道路よりも低い位置にあるアンダーパスや川の付近などの危険な道は避け、できるだけ安全なルートを選んでください。冠水でエンジンが止まってしまうケースも想定して、緊急脱出用のハンマーを車に積んでおくことも重要です。家族と自分の命を守るため、さまざまなケースを想定して日頃から備えてください。

平常時に「非常用持ち出し袋」を準備しておくことも大切

もしものときに備え、平常時に「非常用持ち出し袋」を準備しておくことも大切です。災害が起きたときに最低限必要な一次持ち出し品を入れたもので、「防災リュック」とも呼ばれます。一時的に自宅を離れて避難することを想定して、家族全員の1日分の着替えや飲料水、衛生用品や簡単な食料などを入れておきます。緊急時に家族が誰でもサッと持ち出せるよう、わかりやすい場所に収納しましょう。

ただし、避難する際に重視することは、“避難所に行く”ではなく、“安全な場所に逃げる”という考え方です。台風の場合、事前に来ることがわかっているため、非常用持ち出し袋を必要とする場所に避難するよりも、被害のない安全な場所に逃げることを優先してください。被害のない場所であれば、食料も物資も調達できるので、非常用持ち出し袋も必要ないはずです。一方で、災害の規模や種類によっては、何もない避難所に行かざるを得ないケースもありますので、防災意識を高める意味でも非常用持ち出し袋はしっかりと備えておきましょう。

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台風が過ぎ去ったあとの対応は?

台風が過ぎ去ったあとの対応は?

台風が通過した後は、お家の状態を確認する必要があります。在宅避難でも安全な場所へ避難していたときでも同様です。浸水などがあった場合はすぐにでもお家の片付けに入りたいところですが、まずは被害状況を写真に撮りましょう。保険会社や契約内容にもよりますが、雨漏りや浸水、飛来物による損傷など、台風被害に対する補償を受けるには、証拠写真を求められるケースもあります。自動車も同じく、水没や破損などがあれば写真に収めて残しておき、保険会社に相談すると良いでしょう。

災害時に物資がなくなることを想定して日頃から備蓄しておく

また、大きな台風が来ると、工場や倉庫が被害に遭ったり、土砂崩れで道路が分断されたりと、物資の流通にも影響が生じます。スーパーやドラッグストアなどで必要なものが購入できなくなることも想定して、日頃から備蓄しておくことが大切です。最低でも家族の人数分✕7日分の食料や水があれば、ものが手に入りにくい状況下でも生活を守ることができるでしょう。

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台風対策の基本を防災のプロが解説 まとめ

台風が接近したときの対策と、自宅から避難する際の注意点についてお話ししました。とくに子育て中の親御さんにお伝えしたいのは、“親の防災知識が子どもを守る”ということです。災害が起きて停電や断水になったとき、親が慌ててしまうと子どもも不安になってしまいます。しかし、親に防災知識があって、さまざまな事態への対応がわかっていれば、「大丈夫だよ」と安心させることができるでしょう。とくに台風は事前にできることも多いですから、状況に応じて対応できるように日頃から備えてくださいね。

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