地震、台風、大雨、噴火……災害は時間を選ばずに訪れます。台風や大雨は予報があるものの、それでも家族全員が揃ってお家にいられるとは限りません。災害が起きたとき、家族がそれぞれ別の場所にいたら……とくにお子様がひとりのときに被災してしまったらと考えると、とても心配ですよね。防災士として活躍中の三原麻弓さんによると、家族一人ひとりの防災意識を高めることは、命と暮らしを守ることに直結するそうです。では、どのように防災意識を高めれば良いのでしょうか? 防災のプロである三原さんに、防災意識を高める考え方や子ども向けの防災教育などを伺いました。いち早く災害情報をチェックできる防災アプリ、緊急時の備えとして必要な「防災ポーチ」や「非常用持ち出し袋」、オススメのプチプラ防災グッズなどもご紹介します。
防災備蓄収納暮らし代表/防災士 ひょうご防災リーダー/防災備蓄収納マスタープランナー
1995年、激震地の兵庫県神戸市灘区内のマンションで、子育て中に阪神淡路大震災を経験する。その時の大変な経験から誰でも始められるやさしい防災と備蓄と収納セミナー・講座や片付けプロ目線の安全安心な暮らしの為のお片付け術セミナー・講座で登壇中。
災害はいつ起こるかわからないが、災害時でも日常生活が続けられるように、いつもの買物や暮らしに密着した防災備蓄と手軽に準備出来る非常食のアイデアを伝えている。
魅せる防災備蓄収納® :https://suteki-senior.com/
防災備蓄収納暮らし代表の三原麻弓です。私は、阪神・淡路大震災を経験して以来、母の目線・主婦の目線で誰でもできる防災と備蓄、収納についての情報発信を続けています。災害は、準備していてもしていなくても突然やってくるもの。被災したとき、お家に倒壊などの恐れがなければ在宅避難をしますが、そのような状況で欠かせないのが食料や水の備蓄です。台風や豪雨のなか買い物に行くのは危険ですし、大地震でスーパーやコンビニが倒壊してしまうこともあり得ます。食料や飲料水は生命に直結しますから、備蓄は家族の命綱となるのです。では、どんなものをどのくらい準備すれば良いのでしょうか? オススメの非常食やレシピとあわせてご紹介していきます。
目次
1.家族の防災意識を高めるコミュニケーション
2.ママ・パパがいないときに災害が起きたら? 子ども向けの防災教育
3.災害に備えて子どもに持たせておきたい「防災ポーチ」
4.最低限必要なものは? 一次避難を想定した「非常用持ち出し袋」(防災リュック)の中身リスト
5.防災のプロもオススメ! 手軽に揃う便利なプチプラ防災グッズ
6.子ども向け防災教育と災害への備えを防災士が解説 まとめ
家族の防災意識を高めるコミュニケーション
災害時に危険から身を守るためには、家族一人ひとりの防災意識が大切です。お家では、災害が起きたらどうするか? を普段から話し合って、いざというとき慌てず行動できるようにしましょう。食事中やリビングでテレビを見ているときなどに「今、地震が起きたらどうする?」と問い掛けて、家族で一緒に考えてみてください。地震が起きたときの大きな揺れを体験できる防災センターなどに家族で行くのも良いでしょう。災害をより現実的なものとして捉えることができるので、防災意識を高めるきっかけになるはずです。
災害に備えた備蓄や防災グッズの収納場所、使い方も家族で共有しておきましょう。せっかく災害時に役立つものを準備していても、見つけられなかったりうまく使えなかったりしては宝の持ち腐れです。災害が起きたとき、必ずしもお家に家族全員が揃っているわけではありませんから、それぞれが適切な防災行動をとれるように平常時から準備してください。
平日の日中など、仕事や学校で家族がバラバラな時間帯に災害が起きることもあり得ます。そうした場合の行動も、日頃から相談しておきましょう。自宅がハザードマップ上で津波や土砂災害などの危険があるなら、それぞれお家には帰らず避難することになります。地域で安全な場所はどこなのか、どこで待ち合わせするのかなどを家族であらかじめ話し合っておき、災害時は早急に避難するようにしましょう。
いち早く災害情報をチェックできるオススメ防災アプリ
災害が起きたときの情報収集や、平常時から防災意識を高めるのに役立つアプリを紹介しましょう。家族で一緒に活用するのにオススメなのが総合防災アプリ「PREP(プレップ)」です。地震や津波、台風、大雨、火山の噴火など、さまざまな災害の発生と避難情報を知ることができます。情報収集だけでなく災害時の避難行動をあらかじめ検討したり、防災用品をチェックしたりもできますし、実際に災害が発生した際には行動をサポートする機能もあるんですよ。
NHKの「ニュース・防災アプリ」も使いやすいアプリです。全国の災害情報のほか、天気予報もあわせてチェックできるので、さまざまな備えに役立つことでしょう。そのほか、日本各地の自治体が運営する独自の防災アプリもあります。都道府県や市町村単位でリリースされているものもあるので、自分が住んでいる地域の防災アプリやWEBサービスも探してみると良いでしょう。私は関西在住で、大阪府のアプリを活用しています。家族の人数を入れると、必要な防災グッズの数が確認できるなどコンテンツが充実していて使いやすいですよ。家族とも話し合いながらいろいろなアプリをチェックして、自分たちに合った防災アプリを見つけましょう。
ママ・パパがいないときに災害が起きたら? 子ども向けの防災教育
お子様がいる方は、やはり離れているときが心配ですよね。小さなお子様を幼稚園や保育園に預けている場合は、まず施設がおこなっている防災対策について確認することが大切です。子どもたちの避難訓練や保護者への引き渡し訓練の実施、災害への備え、緊急時の連絡システムの構築などができているのかは、知っておく必要があります。しっかり備えられているのなら安心ですし、訓練後にどのようなことをしたかを家族で振り返れば防災意識を高めるきっかけにもなります。もし幼稚園や保育園の備えに懸念があれば、保護者会などで働きかけましょう。習い事や塾などに通わせている場合も同様です。
学校に通っている年頃のお子様なら、通学路のチェックも必要不可欠です。地震が起きたら崩れそうな古い塀や空き家などはないか、通学路を一緒に歩いてチェックしましょう。あわせて、大雨で氾濫しそうな川や蓋のない側溝なども確認しつつ、それぞれの災害時には近付かないようしっかりと伝えてください。災害時に通ると危険な道があれば、迂回路も一緒に考えておくと良いですね。災害が起きた際の避難場所は地域によって異なるので、お家から学校までのハザードマップも親子でよく確認しておきましょう。
留守番をしているときなど、自宅で子どもがひとりのときに被災するケースも考えられます。家族がすぐに帰宅できない場合に備えて、緊急時に使う防災グッズや備蓄の収納場所もお子様に伝えておきましょう。緊急地震速報の音を聞かせてあげるのも、お家でできる防災訓練のひとつです。ただでさえ緊張感のある音ですし、いざ地震が起きたときに生まれて初めて聞くとなると、お子様は怖がってパニックになりかねません。「この音が鳴ったら机の下に隠れるんだよ」など、お子様がひとりでも防災行動を取れるように教えてください。
また、お子様と災害について話し合うときのポイントは“怖がらせないこと”です。災害の恐ろしさを伝えるのは大事ですが、怖いと感じると子どもは話に耳を傾けてくれません。できるだけ恐怖心を煽るような言い方は避け、お子様の年齢や性格に合わせ、状況に応じた防災行動を教えてあげましょう。
災害に備えて子どもに持たせておきたい「防災ポーチ」
外出先で災害に遭ったときに役立つものを入れた「防災ポーチ」は、ぜひ大人も子どもも持ち歩いていただきたいと思います。バッグに入れていつでも持ち運びしやすいように、ポーチの素材自体は軽量なものが良いですね。中身については、私の防災ポーチを例に紹介しましょう。
●防災ポーチの中身
・手の衛生を保つもの(ウエットティッシュなど)
・口腔衛生を保つもの(歯磨きシートなど)
・レインコート
・防寒用アルミシート
・LEDライト
・ホイッスル
・携帯充電器
・小銭
・筆記用具
・持病の薬や頭痛薬(1回分)
以上のアイテムがあれば、平常時にも役立ちますし、外出先で被災したときに最低限の対応はできます。お家になかなか帰れない可能性も考慮し、衛生関連のグッズは必ず入れておきましょう。ライトやホイッスルは、100円ショップやプチプラなどで売られているものでも問題なく使えるので、備えておくのがオススメです。小銭は合計1000円ほどを透明なジッパーバッグに入れています。毎日持ち歩けるようにするため、全体的に重くなりすぎないよう意識して揃えていますね。
また、お子様に持たせるポーチには、連絡先や血液型がわかるメモなども入れておきましょう。親や学校の先生などがいない場所で被災した際は、面識のない大人に助けてもらう可能性もありますから、連絡先などはわかりやすいほうが良いですね。持ち物を確認したときに“防災グッズが入っている”ということが助けてくれた人にもわかりやすいように、ポーチは透明な素材のものを選ぶと良いでしょう。
最低限必要なものは? 一次避難を想定した「非常用持ち出し袋」(防災リュック)の中身リスト
災害に備えた「非常用持ち出し袋」は、家族ひとりにつき1つ準備してあると安心な防災アイテムです。一次避難を想定しているので、中身は避難所などで一泊程度することを想定して準備します。「防災リュック」と呼ぶこともありますね。では、最低限備えておきたい中身を紹介しましょう。
●非常用持ち出し袋の中身リスト
・1泊分の着替え
・水(500ミリリットル)
・ウエットティッシュ
・歯磨きシート
・スリッパや上履き
・レインコート
・ランタン
・マスク
・ゴム手袋
・メモ帳
・筆記用具
・ホイッスル
・LEDライト
・防寒用アルミシート
・暑さ&寒さ対策アイテム
・非常用トイレ
・おやつ
まずは避難所での1泊を想定して最低限必要なものを用意します。そのほか常備薬や予備の眼鏡など、それぞれの家庭での必需品を準備してください。着替えについてはお子様用の下着は余分にあると良いですね。避難所に行くレベルの災害は地域の断水も想定されるため、水の要らない歯磨きシートや非常用トイレを入れておくと役立ちます。避難所は土足厳禁なことが多いので、スリッパや上履きも忘れずに。暑さ&寒さ対策アイテムは、季節に合わせて“衣替え”をしてください。真夏の避難時に使い捨てカイロが出てこないようにしましょう。
また、避難所に備蓄がないことも考えられますから、すぐに食べられるおやつを入れておくと安心ですし、お子様も喜ぶはずですよ。さらに、小さめの絵本やトランプなどのかさばらない遊び道具があると、お子様が退屈せずに不安も和らぐでしょうから、入れておくと良いでしょう。
お子様と一緒に避難する場合は手をつないだり抱っこしたりするため、リュックやナップサックを非常用持ち出し袋にするのがオススメです。全体の重さは、女性が持つことを考えて7〜8キロほどが望ましいでしょう。パパ基準の重さにしてしまうと、ママと子どもたちだけでの避難が難しくなるので気を付けてください。
実際にすべての持ち出し品を入れたうえで避難訓練することも大切です。重いリュックを背負い、子どもを連れて逃げられるのか? 避難所まで素早くたどり着けるのか? などを意識しながら家族みんなで練習し、持ち運びが難しければ中身を検討し直して、実際の災害に備えましょう。
非常用持ち出し袋(防災リュック)は、“すぐに持ち出せる”ことも重要なポイント。押入れの奥や棚の上など手が届きにくい場所には置かず、家族全員がわかりやすくて取り出しやすい場所に収納しましょう。ただし、置き家具に収納していると地震で倒れた際に取り出せないことも考えられるので、造り付けの収納に入れるようにしてください。
防災のプロもオススメ! 手軽に揃う便利なプチプラ防災グッズ
防災グッズというと、「緊急時に使うものだから、しっかりとしたものを用意しなければ……」と思っている方は少なくないでしょう。あるいは「防災グッズや防災備蓄 = お金がかかる」と敬遠気味な方もいらっしゃるかもしれません。しかし、防災対策は必ずしもお金がかかるわけではないです。最近では100円ショップで手に入る防災グッズも増えましたし、実際に使い勝手が良いものも数多くあります。そこで、私がオススメするプチプラ防災グッズをいくつかご紹介しましょう。災害への備えとして、ぜひ購入を検討してください。
●給水バッグ
飲料水をたっぷり備蓄していても、水道の復旧が遅れると自治体などの給水に頼ることになります。そのときに役立つのが給水バッグです。100円ショップで手に入るので、いくつか準備しておくと良いですね。5リットルや10リットルなど大容量タイプもありますが、持ち運びしやすい3リットルほどがオススメです。一度に多くの水を入れたい気持ちはわかりますが、その重さを持って自宅まで運ぶことができるのか? をしっかりと考えましょう。エレベーターが止まれば階段を使うことになるので、身体に負担をかけない、しばらく継続できる重さを把握することが大切です。
●耐震マット
家具の転倒防止グッズも100円ショップやプチプラで揃えられます。強い揺れで家具やテレビが倒れると危険ですから、安全のために耐震マットなどで固定しておきましょう。
●突っ張り耐震ポール
ねじや釘が不要で家具を傷つけず、ジャッキの力で強力に圧着固定できるものもありますが、何より大切なのは正しい位置に正しく付けることです。取り付ける際は、しっかりと取扱説明書を読んでくださいね。
●キャビネットロック
赤ちゃんが扉や引き出しを開けるのを防ぐキャビネットロックも、実は防災グッズとして使えます。食器棚の扉をロックしておくと、地震で食器が飛び出すことを防いでくれますよ。100円ショップでもいろいろな種類があるので、自宅の家具に合ったものを選んでください。ちなみに、最近の備え付け食器棚や家具には、地震の揺れを感知して自動的に扉がロックされる「耐震ラッチ」が最初から付いているものもあります。
●ヘッドライト
夜中に避難するときに役立つヘッドライトも、100円ショップで手に入ります。頭に付けるだけでなく、首から下げても視界が明るくなって便利。ボタン電池式のものが多いので、購入時に仕様を確認して、あわせて予備の電池も買っておきましょう。
●LEDライト
避難時に使うだけでなく、在宅避難での停電に備えてLEDライトはたくさん用意しておきたいものです。できれば各部屋に置いていただきたいと思います。100円ショップのライトでも十分明るいので、多めに準備するのがオススメです。
●レインコート
防災ポーチや非常用持ち出し袋に入れておくと便利なレインコートも100円ショップのものでOK。雨のなか避難することも想定して、リュックを背負ったまま着られるポンチョタイプ、または大きめのサイズを選ぶと良いでしょう。防寒着としても役立ちますし、風を防ぐこともできます。
●紙製の下着
断水がはじまると洗濯できない状況が続きますから、使い捨ての紙パンツ・紙ショーツがあると衛生的です。100円ショップでは旅行グッズやアウトドア用品として売られていますが、防災グッズとしても重宝します。能登半島地震では、避難されてきた方々は着替えがなく、もちろん下着もなくて困っておられました。もしものときに備え、準備しておきましょう。より良い使い心地を求めるなら介護用品メーカーのハッソーが手掛けた「使い切りパンツ/ショーツ」がオススメです。また、あまりにも女性っぽい下着は避けるようにしましょう。
●歯間ブラシ
避難所生活や在宅避難でも、断水が続く場合は歯磨きができません。歯間ブラシは100円ショップで買えるので、災害時の口腔ケア用として使い慣れたものを多めに用意しましょう。
●割れない食器
地震で食器棚が倒れて、皿やコップが全滅してしまうこともあります。食器棚とは別の場所に、割れない素材の食器を備えておくと、在宅避難のときに役立ちますよ。最近では100円ショップのキャンプ用品コーナーに割れない食器類が充実しているので、チェックしてみてください。
子ども向け防災教育と災害への備えを防災士が解説 まとめ
家族の防災意識を高めるには、日頃から災害や備えについて、話し合っておくことが大切です。災害が起きたらお家に帰れなかったり、電気や水道が止まったりと、命が助かっても簡単にもとの暮らしには戻れず、心も体も疲弊してしまうことでしょう。それでも、普段から災害に対して備えておくことで、自分や家族の心身への負担は減らせるはずです。“災害時に日常生活を送るために、日常生活のなかで災害時のことを考える”、私が常々お伝えしていることです。今回ご紹介した防災アプリやプチプラ防災グッズ、「防災ポーチ」や「非常用持ち出し袋」なども参考に、家族の生活と命を守るための備えをしてくださいね。
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