近年は中学受験対策の低年齢化が著しく、小学1年生から受験専門の塾に通うケースも増えてきました。しかし、これまで大手進学塾で指導されてきたにしむら先生こと西村創さんによると、小学校低学年の子どもには日常生活での“体験”が学びになるのだそうです。現在は受験指導専門家としてYouTubeやテレビなど、さまざまなメディアでご活躍中のにしむら先生に、小学校低学年のこどもが中学受験に向けて備えておきたいことを伺いました。勉強を習慣づけるためのアドバイスや中学受験に向けたオススメ習い事、親御さんのサポート方法など知っておきたい情報が満載。さらににしむら先生が得意とされている国語については、小学校低学年向けの勉強のコツもお聞きしました。
教育・受験指導専門家
中学受験、高校受験、大学受験指導歴28年。指導生徒3,000人以上。
『子どもを勉強好きにする20の方法』(WAVE出版)や『1分あれば中学生のやる気は引き出せる!』など、自著11冊・累計15万部超。
▼早稲田アカデミー(新卒入社~2年勤務)入社初年度に「生徒授業満足度全講師中1位」受賞
▼駿台(5年勤務)シンガポール校講師3年、香港校校長(社歴80年初の20代校長)を2年務め、過去最高の合格実績を出す
▼河合塾Wings(11年勤務)講師、教室長、エリアマネジャー、講師研修などを担当
YouTubeチャンネル「にしむら先生 受験指導専門家」
https://www.youtube.com/@nishimurasensei/featured
受験指導専門家の西村創です。私は28年にわたり、中学から大学受験まで3,000人以上の子どもたちを指導してきました。東京などの一部地域では中学受験が激化し、対策の低年齢化も進んでいます。まだまだ幼い小学校低学年のお子様に中学受験勉強を強いるのは難しいものですが、机に向かうことだけが勉強ではありません。日常にも学びがあり、それがお子様の学習意欲につながっていくんですね。そこで、先々の中学受験に備えるために、日常生活を学びに変えるヒントやコツをお伝えしたいと思います。まずは、中学受験の最新情報や対策スタート時期について解説していきましょう。
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目次
1.受験指導のプロが解説! 中学受験対策スタート時期&中学受験最新情報
2.小学校低学年から勉強を習慣づけるコツとは?
3.国語のエキスパートが解説! 小学校低学年の国語勉強法
4.食生活にメンタル面……中学受験には親のサポートが必要不可欠
5.ゴールデンエイジ期に体力づくり! 中学受験に向けたオススメ習い事は運動系!?
6.小学校低学年からの中学受験対策 まとめ
受験指導のプロが解説! 中学受験対策スタート時期&中学受験最新情報
中学受験専門の塾への入塾は、小学3年生の2月からが一般的です。しかし、都内など一部の地域では中学受験対策の低年齢化が進み、早ければ小学校に上がるタイミングで塾に入るケースも増えています。人気塾には入るのも一苦労で、たとえば東京だと、大手進学塾の「SAPIX」は小学1年生で定員オーバーなんてことが起きているほど。中学受験をする場合、お子様が幼稚園のころから検討しているご家庭が多いので、より早く対策を始めたい保護者の方も増えているということです。
本格的な中学受験対策は小学4年生から始まり、塾で学ぶ勉強の難易度もグッと上がります。小学校の勉強だけではわからないことばかりですし、東大生でも解けないような問題もあるんですよ。たとえば方程式を使えばわかるような計算でも、小学生の算数だと方程式を使わずにアプローチしなければいけません。中学受験にはそういった難しさもあるんですね。親御さんが勉強を見るにしても教育関係者でなければ限界がありますので、中学受験をするなら通塾が前提となるでしょう。
中学受験の傾向とは? 対策すべきは“思考力”と“長文化”
中学受験の内容は、大学受験の傾向が意識されることもあります。将来の大学進学で難関校に合格できるような人材を集めたい、という中学校側の意図が多少なりともあるからです。大学入試は2021年度以降大きく変わり、自分で考えて理解する力=“思考力”が問われるものが増えました。30年ほど前から暗記中心の知識よりも思考力を重視する流れにはなっていたのですが、近年その流れは加速していますね。問題に対して「どうしてそうなるのか?」を理解して、さらにアウトプットする力も必要になるわけです。
また、とくに国語に関しては、問題文の長文化も顕著になりました。こうした大学受験の変化も少なからず影響しているため、中学受験の対策も“思考力”の育成と“長文化”への対応が重要なポイントと言えるでしょう。
小学校低学年から勉強を習慣づけるコツとは?
大学受験や中学受験の傾向として、“思考力”のほかに“判断力”や“表現力”も求められるようになりました。私たちが生きるうえで直面するさまざまな事態への対応力、そして知識や情報の使い方も問われる時代になったからですね。机上の勉強だけでなく、いろいろな体験をすることも後々生きてくるというわけです。その体験こそが、幼いころからの勉強を習慣づける鍵だと言えるでしょう。
まずは興味を持つことが勉強を習慣づける近道
中学受験の試験内容のほとんどは、日常生活と地続きになっています。たとえば算数でよくある「水と食塩の割合が違う2つのビーカーに入った食塩水を足すと、濃度はどれくらいになるか」という問題は、日頃からお家で料理を手伝っている子は感覚的にわかるんです。散歩中に草花を摘んだり、入浴中にペットボトルを使って水遊びをしたりするのは理科の勉強になりますし、旅行先でその土地の名物を食べるのは、社会の勉強につながります。旅行は自分の住んでいる都道府県以外を知り、食べ物や名産品などの違いに気づくきっかけにもなるでしょう。その違いが気候などによるものだという背景まで考えられるようになると、さらに学びが深まると思います。
いろいろな体験をしておくと、後々勉強したときに「これって、あのとき体験したあれだな」とイメージが湧くんですよね。机上だけで勉強するよりも、体験をとおして学んだことの方が理解も深まって記憶に残りやすくなります。それに、興味を持ったことは「もっと知りたい」という欲求が生まれますから、自発的な学習にもつながるわけです。ほかにも、一緒に植物を育てても良いですし、海外の映画を観ても良いでしょう。幼いころからいろいろな体験をして、さまざまなものへの興味を刺激することが、勉強を習慣づける近道だと思いますね。
YouTubeにカードゲーム! 日常には学習要素が溢れている
YouTubeが好きな子どもは多いですよね。「夢中になり過ぎていて心配……」という親御さんもいると思いますが、実は勉強になる面もあるんです。とくに幼いころはテロップのある動画を見ることで、自然と漢字や言葉の意味を覚えるんですね。それから、YouTubeにも学習系の動画がいろいろとあります。中学受験塾の日能研公式チャンネルは、理科の実験や歴史の解説を動画にしていて、楽しみながら学べる内容です。お子様が興味のあるジャンルの動画を勧めてみても良いかもしれません。
ほかに子どもの好きなものと言えば、カードゲーム。対戦型のカードゲームは算数力のトレーニングになります。小学生に大人気の「最強王バトルカードゲーム」や「ポケモンカードゲーム」は、戦うたびに計算が必要になってくるので、楽しみながら算数の力を付けることができますよ。家庭学習をしようとするとドリルなんかを買いがちですが、未就学児や小学校低学年の子は実体験で味わわせてあげたほうが勉強に関心を持ちやすいと思います。動画視聴やゲームなどがまったくの悪というわけではないので、うまく活用しながらお子様を見守るのもひとつの方法ではないでしょうか。
国語のエキスパートが解説! 小学校低学年の国語勉強法
学校の時間割を見ると、ほかの教科よりも国語と算数が多いと思います。これは、国語と算数が全教科の基礎になっているからです。学校の授業の目的は、それぞれの教科をとおして価値観を広げること。いろいろな価値観を理解するには、共通したものの見方や客観性、論理力が必要となってきます。その論理力を日本語で学ぶのが“国語”で、数字で学ぶのが“算数”なんですね。
国語が苦手だと教科書やテスト問題を読み解くことができませんし、数字が苦手だと算数だけでなく理科もわからない、なんてことになりかねません。授業は日本語がベースとなりますから、とくに国語は全教科の基礎と言っても過言ではないでしょう。では、国語が苦手な場合はどうしたら良いのでしょうか? 苦手意識を和らげる工夫や勉強のコツを解説します。
国語が苦手ならまずは読書! おしりたんてい、マインクラフト、ポケモンなど子どもの“好き”を活かす
“読書”と聞くと、親御さんは課題図書にあるような文学的な本を思い浮かべるかもしれません。しかし、国語が苦手な子はそういった本を読むのも嫌がるので、まずは取っ付きやすいものから読み始めるのが良いでしょう。たとえばアニメやゲームが好きな子なら、好きな作品のノベライズがオススメ。「おしりたんてい」や「マインクラフト」など、人気コンテンツの本は多く出版されています。それも難易度が高いようなら、図鑑も良いですね。生き物図鑑に限らず、ポケモンが好きならポケモン図鑑など、活字が入っているならなんでもOK。夢中になって読むうちに、活字に対する抵抗を軽減することが目的だからです。入り口は漫画でも良いので、できるだけ最初のハードルは下げて読書のきっかけをつくっていきましょう。活字に慣れると語彙力(ごいりょく)はもちろん、問題を読む速度もアップするので、長文化傾向にある国語対策にもつながりますよ。
小学校の宿題は“こなして終わり”にしない
小学校で出される宿題は、こなして終わりではなく、実になってくれると良いですよね。たとえば漢字の宿題で「ノートにひとつの漢字を10回書きなさい」という問題が出たら、お子様はどのように書いているでしょうか? 早く終わらせたくて、一画ずつを一気に書くなんて方法を生み出す子もいますが、そうしたケースの多くはしっかり書けるようにはなりません。しかし、ひとつひとつ真面目に書いたとしても、しばらくすると忘れてしまうので、どちらにしてもテストのときに答えられなかったりするわけです。
では、どうすれば良いかというと、漢字の成り立ちを知るのが、ひとつの方法だと思いますね。漢字は「象形文字」「指事文字」「形声文字」「会意文字」「転注文字」「仮借文字」の6パターンに分類できます。漢字ごとの分類を考えて、“へん”と“つくり”や自分が知っている字との“共通点”なども見いだしていくと、記憶に残りやすくなるので、テストのときにも思い出せるようになることでしょう。成り立ちを知ると興味も湧くはずですし、ただ書くよりも楽しんで勉強ができると思いますね。小学校低学年の場合、「会意文字」や「転注文字」と言われても取っつきにくいので、まずは直感的にわかりやすい「象形文字」から成り立ちを知るのも良いでしょう。
読書感想文にはコツがある! 大人も知っておきたいテクニック
夏休みの宿題など、小学生には読書感想文を書く機会がありますが、苦手だと言う子も少なくありません。しかし、実は読書感想文には書き方のコツがあるんです。まず、本を読んでいくなかで、登場人物の言葉や行動で心に残ったところに付箋を貼ります。読み終えたら、付箋を貼ったなかでとくに印象的だった部分を2〜3箇所に絞り込みましょう。そこから、主人公(登場人物)の尊敬できるところや「自分もこうなりたい」と感じたところなど、行動だけでなく考え方や感じ方でプラスの影響を受けたこと、さらに読む前と読んだ後を比べて、自分が成長できたと思う点をメモしていきます。そこに具体的な体験談を加えて、結論→理由→具体例→結論の順で書いていくと、先生から「うまい!」と評価される感想文に仕上がるんですね。
これは「サンドイッチ法」と呼ばれる文章作成の黄金パターンです。身に付けておくと高校受験・大学受験で役立つだけでなく、大人になってもビジネスシーンなどで使える手法ですね。
食生活にメンタル面……中学受験には親のサポートが必要不可欠
中学受験は、子どもにとって大きな負担となります。小さいうちから対策を始めるなら、なおさら親のサポートが不可欠です。日々、学校に習い事にと忙しい子は、とくに食生活が不規則になりがち。小学校低学年はまだまだ体をつくる時期ですから、栄養をしっかり摂ることも中学受験対策としては必要ですね。とは言え、毎日完璧な献立にするのは大変ですから、1週間単位でバランスを考えると良いと思います。
また、精神面のサポートも重要ですね。成績が上がらないと怒ってしまう親御さんもいるようですが、褒めて認めてあげましょう。小学生になると自己肯定感が下がると言われているので、できないところを指摘するよりも、できたところを見つけるようにします。ポイントは関心を示すことで、「〇〇ができたんだね、すごいね」と事実を伝えるだけでOK。「ちゃんと見ているよ」という姿勢が大切です。これは勉強に限らず、お手伝いなどの日常の体験をはじめ、どんなことにも当てはまりますよ。
中学受験に向けた塾選びのコツ
塾選びも親御さんのサポートが必要なことのひとつ。お子様に合う塾を探しましょう。有名塾だからと言って、万人の成績が上がるわけではありません。子どもと先生との相性もあるので、実際に体験授業を受けてみると良いですね。また、お子様だけでなく親御さんに合う塾かどうかも重要です。中学受験は親御さんの精神的な負担が大きくなるので、悩みや不安を話したい方は講師に相談しやすい塾を選ぶと良いですね。いろいろなカラーの塾があるので、お子様が勉強を楽しめて、親御さんも安心できるところを選びましょう。
ゴールデンエイジ期に体力づくり! 中学受験に向けたオススメ習い事は運動系!?
小学校に上がると、学習塾にピアノや書道、そろばんなど、さまざまな習い事を始めることでしょう。なかでも私のオススメは運動系です。中学受験は、かなり体力面が重要になるので、9〜12歳ころのゴールデンエイジ期に運動経験を積んでおくことが大きなアドバンテージになります。受験本番間近に疲れがたまって体調を崩すことがないよう、小さいうちから体を鍛えておきましょう。体だけでなくメンタル面も強くなるので、厳しい受験に立ち向かうにはオススメですね。
また、いくつも習い事を掛け持ちして、休みがない状態の子も見かけますが、何をするにも休息は必要です。大人だって予定が詰まって休みなしのスケジュールは辛いですよね。繰り返しになりますが、中学受験は体調管理と体力が重要。休むときはしっかりと休めるような、メリハリのある生活が送れるようにしてあげましょう。
小学校低学年からの中学受験対策 まとめ
お子様が小学校低学年のうちから中学受験対策を始めようとすると、まだ将来を見据えていない状態で臨むケースも少なくありません。とくに小学1年生は、環境が変わりストレスを感じやすい時期でもあります。また、中学受験は親御さんにとっても負荷がかかることも視野に入れなくてはいけません。まだまだ幼い小学校低学年、うまくバランスを取りながらお子様を支えてあげてくださいね。「勉強、勉強」と机上の学習になりがちなところを、体験をとおして楽しむ学びに変えていきましょう。
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