近年、ますます注目度が高まっている「中学受験」。とくに首都圏では受験率が上がり続けており、2023年度は中学入試の受験者数が過去最多の66,500人を記録し、およそ5人に1人程度が中学受験をしたそうです。小学生のお子様がいる親御さんはもちろん、まだ小さなお子様を持つ方たちも、中学受験は気になる話題ではないでしょうか? そこで、これまで塾講師として多くの受験生を合格に導いてきた受験指導専門家のにしむら先生こと西村創さんに、中学受験の最新事情や対策などを伺いました。中学受験の塾選びのポイントや親のサポート方法、にしむら先生の得意分野である国語の勉強法やテストの点数アップテクニックもご紹介します。すでに中学受験に取り組まれている受験生もぜひ参考にしてみてください。
教育・受験指導専門家
中学受験、高校受験、大学受験指導歴28年。指導生徒3,000人以上。
『子どもを勉強好きにする20の方法』(WAVE出版)や『1分あれば中学生のやる気は引き出せる!』など、自著11冊・累計15万部超。
▼早稲田アカデミー(新卒入社~2年勤務)入社初年度に「生徒授業満足度全講師中1位」受賞
▼駿台(5年勤務)シンガポール校講師3年、香港校校長(社歴80年初の20代校長)を2年務め、過去最高の合格実績を出す
▼河合塾Wings(11年勤務)講師、教室長、エリアマネジャー、講師研修などを担当
YouTubeチャンネル「にしむら先生 受験指導専門家」
https://www.youtube.com/@nishimurasensei/featured
受験指導専門家の西村創です。これまでさまざまな塾や予備校で講師を勤め、中学受験から大学受験まで、3,000人以上の学生を指導してきました。年々、受験者数が増えて注目度も高まっている中学受験。子育て中の親御さんのなかには、我が子の中学受験を検討中という方も少なくないと思います。中学受験は高校受験や大学受験と比べて親のサポートが不可欠であり、親子が二人三脚で挑戦するものです。まずは中学受験のことを知っていただくため、概要や最新事情からお伝えしていきましょう。
目次
1.いつから始める? どう勉強する? 中学受験対策を受験指導専門家が解説
2.国語のオススメ勉強法&試験の得点アップのコツ
3.中学受験は親のサポートが重要! ハードな受験を支える心構えとは?
4.ブランド志向は禁物!? 中学受験の塾選び
5.勉強のご褒美はアリ? ナシ? 中学受験のモチベーションアップ法
6.中学受験の最新事情&対策 まとめ
いつから始める? どう勉強する? 中学受験対策を受験指導専門家が解説
私立中学や国立中学の受験率は上昇傾向にありますが、高校入試や大学入試と比較すると、まだまだ挑戦する子が少ないのが実態です。中学入試の受験者数は全国で18%程度、とくに盛んな都内でも25%ほどです。つまり、中学受験に挑戦するのは全体でも限られた層なんですね。
中学受験の勉強は小学校で習うことより難易度が高く、特殊な内容と言えます。理科や社会に関しては高校受験よりも深く広い範囲を勉強する必要がありますし、大人でもわからないような内容がたくさん出てくるんですよ。それこそ、現役東大生でも解けない問題だってあります。中学受験は、それだけハードなものだと親御さんには知っておいていただきたいですね。
また、中学受験では各教科で幅広い範囲からさまざまな問題が出題されるため、解き方や情報を丸暗記するだけでは対応できないケースが多いです。中学受験勉強のコツとしては、暗記ではなく理解することを意識しましょう。歴史の出来事ひとつとっても、年号と単語だけ覚えるのではなく、その背景や意味、ほかの情報とのつながりを含めて理解するよう意識すれば、脳が記憶しやすいんですね。基本の問題をやり込む勉強も大切です。基本の勉強をそこそこにして、すぐに応用問題や発展問題に手を出してしまうのは、前提となる知識の理解が不十分になってしまうためオススメできません。中学受験で難関校を目指していても、まずは徹底的に基本の理解を深める勉強を重視しましょう。
中学受験の塾は、2月に新学年が始まります。入塾するのは、新小4、小学3年生の2月からが一般的です。しかし、受験対策自体はもっと前から始められるので、中学受験に強い塾に小学1年生から通うケースもあります。お子様が幼稚園の年少や年中のころから、将来的な中学受験について考えているご家庭も増えているように思いますね。
“思考力”重視の流れが加速? 中学受験の傾向と対策
中学受験の試験内容は、大学選抜テストの傾向を意識したものが出題されることもあります。受験を実施する中学校の評価は、難関大学への進学者数によっても左右されるからですね。中学受験の時点で難関大学に合格できるか否かの素養を見極めるために、大学入試の傾向を踏まえた問題がつくられる、という要素もあるわけです。
大学受験だけでなく、中学受験でも“思考力”を問われる問題が増えてきました。30年ほど前から知識重視から思考力を重視する流れに変わっていたのですが、その流れは確実に加速していますね。生きるために必要な“自分で考えて、行動できる能力”を持った人材が社会で求められるようになったため、受験でも思考力が問われるわけです。知識を身に付けること以上に、考えて理解しながら勉強することが大切になるのは、そのためですね。
また、問題文の“長文化”も近年の入試問題の特徴です。大学入学共通テストや各大学の一般選抜の問題でもその傾向は明らかで、高校受験・中学受験の入試問題も長文化が進んでいます。中学受験を突破するためには読解力も鍛える必要があると言えますね。
国語のオススメ勉強法&試験の得点アップのコツ
前述したように、中学受験でも問題の長文化が進んでいます。論説文を読み解く力を付けるには、読書が有効な方法のひとつだと言えますね。普段から本を読む習慣のある子は、問題を読むスピードも速いんですよ。「国語が苦手」と言う学生の多くは、語彙力(ごいりょく)の不足から問題を理解できていない傾向にあるので、やはり読書をオススメしたいですね。活字を読むのが苦手な子は、最初は読みやすいライトノベルなどを入り口にして、徐々にいろいろな本を読むようにすると良いのではないでしょうか。読書は1ヶ月や2ヶ月ではあまり効果が上がらないので、できるだけ早い時期から習慣付けられると読解力の向上につながりますよ。
また、中学受験の全体的な傾向として、漢字や慣用句、語彙(ごい)に関する問題が多く出ることもあります。漢字を覚えるためには、ひたすらノートに書いて、暗記するだけの勉強法はNGです。成り立ちを理解し、使い方を考えながら覚えることで、実際に出題されたときに記憶から引き出しやすくなりますよ。慣用句も同様に、成り立ちと使い方などをセットにして理解しながら覚えると良いでしょう。
テストでケアレスミスを少なくするテクニック
テストでのケアレスミスは、答えがわかっても点数につながらなくなるので要注意。普段からケアレスミスが多い場合、どんなに「気を付けよう」と意識していてもゼロにするのは難しいものです。気持ちでなんとかしようとせずに、見える形で対策しましょう。
ケアレスミスのパターンには、“読み間違い”と“書き間違い”があります。読み間違いの場合は、問題をしっかりと読まずに早合点して答えを書いてしまうケースと、問題の意図を勘違いするケースがあります。たとえば「一文を書き抜きなさい」と書かれているのに、本文で漢字のところをひらがなにして書いてしまったり、句読点が抜けていたり……。「記号で書きなさい」という問題なのに、記号で答えなかったというケースもありますね。こうした読み間違いのミスには、問題を読むときに傍線を引いたり、丸で囲んだりしてチェックを入れる対策がオススメです。
書き間違いについては、記号で「イ」と書くはずが、最初に答えとして頭によぎった「ウ」を書いていたとか、「専」という字の右上に点を入れてしまった、などの単純なミスが挙げられます。これは国語に限らず、社会で人物名を答える問題でもけっこう見受けられますね。書き間違いに対しては、最後の確認が重要です。1単語ずつ見るのではなく、解答を“1文字ずつ”指差し確認すると、ちょっとした書き間違いにも気付くことができると思います。
こうした具体的な対策をとれば、ケアレスミスの7〜8割は防ぐことができるでしょう。残りのケアレスミスは個人特有の癖だと思いますので、自身のテスト結果を振り返って、答えがわかっていたのに得点にならなかったパターンを抜き出し、分析してみてください。
また、焦ってミスをするケースも少なくありませんから、時間の使い方も非常に重要です。問題を解くスピードを上げるのには限界があるので、「できる・できない」の取捨選択もできるようにしましょう。無理にすべての問題を解こうとせず、最後の数分を確認の時間にして、確実な問題を押さえることも大切ですよ。
中学受験は親のサポートが重要! ハードな受験を支える心構えとは?
中学受験において、親御さんのサポートは必要不可欠です。塾の送迎やお弁当づくり、配布物のファイリングの手伝い、保護者相談会や面談への参加、学校説明会の予約など、やらなくてはいけないことは多岐にわたります。さらに、受験生とは言ってもまだ小学生。個人差はあるものの、勉強のサポートが必要なお子様も少なくありません。塾の確認テストや模試の予定に合わせて、各教科の勉強スケジュール管理などを親御さんがおこなっているケースも多いですね。
生活・塾・勉強などのサポート……そして、もうひとつ大切なのがお子様の精神面のサポートです。とくに気を付けていただきたいのが“怒らない”ということ。塾のテストや模試の結果が思わしくないとき、つい怒ってしまう親御さんもいらっしゃいます。しかし、前述したとおり中学受験に挑戦するのは全国の小学6年生のうち2割程度。まわりのお友達の多くが遊んでいるときに、もっと難しくて特殊な勉強に励んでいるわけです。
本来であれば小学校の勉強がしっかりできているだけで褒めてもらえる年頃、我が子はそれ以上のことに挑戦しているのだと認識し、寛容な心で見守りましょう。テストや模試の結果が悪かったときには、できているところを見つけてあげるのも大切です。できなかったところは本人が一番よくわかっているはずですから、できなかった部分の指摘よりも、以前より良くなった点を褒めてあげると、お子様のやる気につながりますよ。
中学受験の倍率は基本的にどの学校も4倍から5倍、人気の高い学校であれば10倍、20倍にもなります。つまり、第一志望の学校に合格できない子の方が、圧倒的に多いわけです。親子間で“落ちるのが大前提”という共通認識を持つのも大事なことなんですよ。そのうえで、親御さんは“全滅しない”受験プランを考える必要があります。複数の受験日程のなかで、どの学校をいつ受けるかの計画はとても重要なので、塾とも相談しながら、お子様にとって良い結果となるような受験プランを組んであげてくださいね。
にしむら先生流! 中学受験“三種の神器”とは?
中学受験には“三種の神器”と呼ばれるアイテムがありますが、紹介する方によって、内容は若干変わるんですね。ここでは私が考える三種の神器を紹介させていただきます。
まず1つ目がセイコーから発売されている時計「スタディタイム」。これは左側がアナログ時計、右側がデジタル時計という構造になっていて、集中力や時間管理能力を育むサポートをしてくれます。「陰山メソッド」で知られる陰山英男先生が監修されている時計で、過去問を制限時間付きで解く際などに役立ちますよ。
2つ目はホワイトボードです。中学受験はとにかく日々の勉強量がとても多く、塾で習った内容を復習するのも大変な作業。その日に学んだことをまとめるには、ホワイトボードが適しているんですね。お家で親御さんを生徒に見立て、その日に学んだ内容で擬似授業してみるのも、復習の一環としてオススメです。
3つ目は家庭用プリンター。塾で配布されるプリントやテキストをコピーするために使います。コピー数枚くらいならコンビニで良いのでは? と思う方もいるかもしれませんが、これがけっこう頻繁に活躍するんですよ。テキストが見開きで印刷できるよう、A3対応のプリンターを選びましょう。
ブランド志向は禁物!? 中学受験の塾選び
中学受験をする場合、ほとんどの小学生が塾に通います。この塾選びが、中学受験の大きなポイントのひとつと言えるでしょう。注意すべき点は、有名塾というブランドだけで選ばないこと。お子様の気持ちやレベルに合わない、背伸びをさせるような塾選びは禁物です。体験授業を受けたり、講師と話したりして、お子様に合う塾を選んであげましょう。
お子様本人だけでなく、親御さんにも合う塾か否かも大切です。東京で中学受験と言えば、圧倒的な合格実績を誇る「SAPIX」がありますが、親御さんのサポートがとても大変な塾でもあるんですね。そもそも中学受験自体がサポートを要するものではありますが、SAPIXはほかの塾と比較して毎回の配付物が多く、それをコピーしたりファイリングしたりと親御さんの負担はとても大きくなります。その塾に通うことで、どれだけのサポートが必要なのかは、ある程度調べておきましょう。
また、中学受験は親御さんの精神的な負担も大きくなります。塾の先生と気軽に相談できるような関係性を築けると、心の支えになってくれるはずです。塾のカラーによって相談のしやすさも異なるので、その点も踏まえた塾選びをすると良いですね。
成績が伸びないときは転塾も視野に
塾にしばらく通わせてみてから「やっぱり合わないかも」というケースもあります。その判断基準のひとつが、塾内のテスト結果。もしも塾内テストで上位50%以内にずっと入れない場合は、転塾を検討しても良いと思います。塾は合格実績を多くしたいので、塾内テストで上位の生徒に合わせた授業になるんですね。そのため、合わない塾でついていけない授業を受け続けることになり、成績も伸び悩んでしまいがち、というわけです。志望校に合格するには今の成績だと不安、今より偏差値を10上げたい、といった明確な目標があるのなら、転塾の選択肢も視野に入れましょう。とは言え、塾内のテスト結果が下位でも、お子様自身が塾での勉強を楽しめていたり、仲の良い友達ができて切磋琢磨していたりする場合は、もうしばらく見守るのも悪くないと思いますね。
勉強のご褒美はアリ? ナシ? 中学受験のモチベーションアップ法
勉強やテストに対して何かしらのご褒美やお小遣いを与える「報酬制」のご家庭もあると思います。ある種のモチベーションアップになるという点では一概に悪いとは言いませんが、そればかりにならないよう注意しましょう。報酬に対するモチベーションは一時的なもので、逆に報酬がないときに頑張れなくなるケースもあります。また、お子様本人が勉強を楽しいと思える機会を奪いかねませんから、報酬制はほどほどにするのが良いと思います。
中学受験勉強のモチベーションアップなら、中学校見学や文化祭などに連れて行ってあげるのがオススメです。小学生の受験に対するやる気は、「憧れのあの中学に行きたい!」「あの学校の○○部に絶対入るんだ!」といった、志望校への想いによって強くなります。合格してからの学校生活のビジョンが具体的にイメージできれば、きっと励みになるはずですよ。
中学受験生のゲームや動画サイトは制限するべき?
小学生にとって、ゲームや動画サイトの誘惑は大きいですよね。自由に遊ばせては受験勉強が疎かになりますが、だからと言って制限しすぎてもストレスがたまりがちに。なので、少し制限を緩めてみてはいかがでしょうか?
たとえば中学受験塾の日能研公式YouTubeチャンネルは、理科の実験動画や歴史を歌で覚える動画など、けっこう面白くてためになるんですね。勉強にもなる動画ならOK! というルールにするのも、ひとつの手だと思います。
また、ゲームでも「桃太郎電鉄」なんかは地理の勉強に役立ちます。親御さん世代にも馴染み深いと思いますが、都道府県の位置関係や各地の名産品などにすごく詳しくなれるんですよね。最近では「桃太郎電鉄 教育版」と題した教育機関向けのブラウザゲームもあり、授業に活用している学校もあるようです。
「動画やゲームは全部ダメ」と制限しすぎず、ときには息抜きも認めてあげると勉強のモチベーションも上がるのではないでしょうか。
中学受験の最新事情&対策 まとめ
中学受験の勉強は小学校で習うことより難易度が高く、特殊な内容と言えます。理科や社会に関しては高校受験よりも深く広い範囲を勉強する必要がありますし、大人でもわからないような内容がたくさん出てきます。また、中学受験において、親御さんのサポートは必要不可欠。塾の送迎やお弁当づくり、配布物のファイリングの手伝い、保護者相談会や面談への参加、学校説明会の予約など、やらなくてはいけないことは多岐にわたります。そして、もうひとつ大切なのがお子様の精神面のサポートです。とくに気を付けていただきたいのが“怒らない”ということ。塾のテストや模試の結果が思わしくないとき、つい怒ってしまう親御さんもいらっしゃいます。しかし、まわりのお友達の多くが遊んでいるときに、もっと難しくて特殊な勉強に励んでいることを忘れずに寛容に見守ってあげてください。
中学受験は、まだ心身が未成熟な小学生にとって負担が大きく大変なことです。しかし、多くの人が中学3年生で初めて経験する“受験”を小学6年生で経験できるのは、その子にとって大きな糧にもなるんですね。とことんまで努力した結果が「合格か不合格か」という形で突きつけられる。合否がどうあれ、そんな経験をまだ幼いうちにできるのは、精神的に大きく成長する機会になると思います。また、最も吸収力のある時期に大人でも知らないような幅広い知識を学んで、深く考えられる力を育むチャンスにもなりますね。尊い努力のうえでたくさんのことを学び、報われる喜びと報われない辛さを味わう中学受験。親子ともども苦しい道のりですが、その経験はきっとお子様を大きく成長させてくれることでしょう。
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