「住宅資金」「教育資金」「老後資金」は「人生の三大資金」と言われ、その他にも結婚や出産といったライフイベント時にはまとまったお金が必要です。多くの人にとって「人生最大の買い物」と言われる家を買うベストなタイミングはいつなのでしょうか。ここでは子育てを前提とした「買い時」を考察します。
「人生の三大資金」をはじめ、生きていく上で必要となる主なお金は?
結婚費用参照:「ゼクシィ結婚トレンド調査2019」
出産費用参照:「国民健康保険中央会・平成28年度」
住宅購入費用参照:「国土交通省・令和元年度 住宅市場動向調査」(P3)
教育費参照:「文部科学省・平成30年度子供の学習費調査の結果について」(P2)
「文部科学省・国公私立大学の授業料等の推移について」
老後資金参照:「生命保険文化センター・令和元年度 生活保障に関する調査」(P39.40)
「ゼクシィ結婚トレンド調査2019」によると、婚約から新婚旅行までにかかる費用は全国平均で、461.8万円。出産費用は「国民健康保険中央会」によると平均50.5万円です。
教育費用は、文部科学省の平成30年度「子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校まで公立に通った場合が平均541万円、私立に通った場合が平均1,830万円、「国公私立大学の授業料等の推移」によると、授業料を初年度授業料の4倍とした場合、
国立大学が約243万円、私立大学が約387万円となり、合計すると幼稚園から大学まで公立に通った場合が平均784万円、すべて私立に通った場合が平均2,217万円となります。
そして、老後に必要な生活費は「生活保障に関する調査」によると、夫婦で最低限の生活を送る場合、毎月平均22.1万円、ゆとりある老後を送りたい場合は毎月平均36.1万円で、年金で賄えない分が実際に支払う費用です。
家を買うタイミングは、これらのライフイベントとできるだけ被らない時期がおすすめです。住宅ローンの借り入れを考えている場合は「いつまでの完済を目標とするか」も考えながら計画しましょう。
ライフイベントに沿って考える「ベストな家の買い時」は?
結婚や出産、子どもの成長といったライフイベントのタイミングに合わせて家づくりを進めるケースが一般的です。しかし、どのタイミングがベストなのか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。下記の表をもとに、家を建てる主なタイミングとそれぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。
ライフステージ | メリット | デメリット |
結婚 | ・新生活を新居でスタートできる。 ・住宅ローン計画を立てやすい。 | ・収入が少なく、住宅ローンの借入可能額が足りない可能性。 ・子どもや転勤の有無など不確定要素が多い。 |
出産 | ・フットワークが軽い状態で土地探しや家づくり、引っ越しができる。 ・子育てに適した住環境を整えることができる。 | ・共働き家庭の場合、家計が変動しやすい。 ・第二子の誕生など不確定要素が大きく間取りも資金計画も立てづらい。 |
第二子の誕生 | ・家族構成を想定した家づくりや、第一子が誕生した際の経験を踏まえた資金計画が立てやすい。 | ・職場復帰ができないリスク。 ・子どもが家に傷や汚れを付け、ストレスになる可能性も。 |
子どもの幼稚園入園 | ・地域のコミュニティに慣れ、友だちとともに小学校へ進学できる。 | ・第二子を想定している場合、第二子の小学校入学までに住環境を整えることができる。 |
子どもの小学校入学 | ・小学校入学前に引っ越しができれば、転校の可能性を最小限に抑えることができる。 | ・家を建てるまで賃貸住宅で暮らす場合、階下や隣の部屋に騒音などの配慮が必要。 |
子どもの中学校入学 | ・家族構成も収入も算段がつき、予算に基づいた計画ができる。 ・子どもの意思を尊重した家づくりがしやすい。 | ・子どもが巣立つまでの期間が短く、近い将来に夫婦だけの生活となると広さを持て余す可能性がある。 |
子どもの自立 | ・夫婦だけで暮らすならコンパクトな家を建てれば良いので、費用を抑えることができる。 ・終の棲家となる可能性が高く、住み替えのリスクが低い。 | ・子育ては賃貸住宅ですることになり、思い通りの住環境を得られない可能性がある。 ・住宅ローンを契約する年齢により、長い借入期間を設定できない可能性が高い。 |
結婚
結婚のタイミングで家を建てる場合、新生活を始めから、新居で気持ちよくスタートすることができます。結婚時の年齢にもよりますが、早い段階で家づくりを進めれば、住宅ローン契約を一般的な借入期間である35年に設定しても、仕事をリタイアする前に完済できる可能性が高いでしょう。
無理のない資金計画を立てやすい反面、まだ収入が少ない段階なので希望の借入金額では住宅ローン審査が通らない可能性があります。また、子どもを授かるかどうか、転勤はあるのかないのかといった不確定要素が多く、状況によっては家を建てることがリスクになってしまうかもしれません。
出産・第二子の可能性
子どもの誕生を目前に、家を建てる決断をするケースは多いでしょう。子どもが生まれた後はしばらくかかりきりになってしまうので、フットワークが軽い今のうちに土地探しや家づくりを進めたい、出産前の身軽なうちに引っ越しを済ませたいと思うのは当然です。もちろん、子育てに適した住環境を整えることができることも大きなポイントです。
ただし、今までは夫婦共働きで家庭を支えていた場合、産休や育休の取得状況や復帰の目途が家計に直結します。子どもが通う学校は公立か、私立かといった選択により、教育費が大きく変わります。第二子を予定しているかどうかも重要で、家を建てた後に家族が増え、建て替えや増築をするのは大変です。
必要な間取りや教育費といった不確定要素について、ある程度将来の見通しが立ってから家を建てた方が、無駄のない家づくりができます。また、子どもが小さなうちは家に傷や汚れがつきがち。「傷や汚れも味わいのうち」と大らかな気持ちでいられれば良いのですが、ストレスに感じる場合、家を建てるのは時期尚早かもしれません。
子どもの進学
子どもの進学も、家を建てるきっかけとなる大きな節目です。幼稚園(保育園)の入園に間に合えば、地域のコミュニティに早い段階で慣れることができ、友だちとともに小学校へ進学できますし、ママ友の輪にも入りやすいでしょう。また、第二子を想定している場合、第二子の小学校入学までに住環境を整えやすいでしょう。
次の節目は、小学校の入学です。入学前に引っ越せば、転校の可能性を最小限に抑えることができます。万が一、転勤が決まった場合も、小学校入学以降は単身赴任とする家庭も多いのではないでしょうか。
「中学校から私立へ通学を予定している」という場合は、中学校の入学に合わせて家を建てる選択もおすすめです。家族構成も収入もある程度固まり、金銭的な余裕がある状態で家を建てることができるでしょう。子どもの意思を尊重した家づくりがしやすいこともポイントです。
子どもの自立
子どもの大学進学や就職、結婚など、自立して家を出るタイミングで家を建てるという選択もあります。夫婦だけで暮らすならコンパクトな家を建てれば良いので、費用を抑えた家づくりができるでしょう。年齢的に終の棲家となる可能性が高いので、住み替えが必要になるリスクが低いこともメリットと言えます。
それまで家を建てないということは、子育ては賃貸住宅でする前提となり、思い通りの住環境を整えづらい可能性があります。子どもが成長するまで家賃を払い続ける必要があり「お金がもったいない」と感じる人もいるでしょう。
また、歳を重ねてからの住宅ローン契約は、長い借入期間を設定できない可能性が高く、十分な貯蓄が必要です。老後資金と合わせて、前もって計画しましょう。
まとめ:家計の把握と子育て計画から始めよう
株式会社リクルート住まいカンパニーが発表した2019年度の「住宅購入・建築検討者」調査 によると、
住宅購入のきっかけは「結婚」が最も多く、次いで「第一子出生」とのこと。ライフイベントをきっかけに、早い段階でマイホームを計画する人が多いようです。
しかし、今回の記事でご紹介したように、どのタイミングで家を建てる決断をしても、メリットとデメリットがあります。自身の状況やこれからの計画に合わせて、ベストな選択をしたいものですね。
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ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。