長期優良住宅とは?安心安全に暮らせて減税の対象にも!住まいのプロが「長期優良住宅」の基準やメリット・デメリットを解説

「長期優良住宅」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。なんとなく良さそうな印象は受けますが、実際に「長期優良住宅」を購入した場合、どのようなメリットがあるのかは、まだあまり浸透していないように思います。そこで、一級建築士のしかまのりこさんに、長期優良住宅の概要やメリット・デメリットについて解説していただきました。

しかまのりこ プロフィール
しかまのりこ プロフィール

COLLINO(コリーノ)一級建築士事務所代表
「~地球にやさしい 家族にやさしい~」をコンセプトに、延べ5,000件以上の住戸の設計・検査・審査に携わる。また、これまで300軒以上のリビング・寝室・子ども部屋の模様替えをおこなった実績から、模様替えのスペシャリストとして、日本テレビ「ZIP!」、テレビ朝日「グッド!モーニング」、扶桑社「住まいの設計」、小学館「週刊 女性セブン」などのテレビ・雑誌でも活躍中。
 書籍「狭くても快適に暮らす、家具配置のルール」(2021年2月彩図社より発売予定)
 https://collino-home.com

一級建築士のしかまのりこです。今回は長期優良住宅について解説します。長期優良住宅認定制度の概要から、メリット、デメリット、認定を受けるまでの申請フローなどをお伝えしますので、これから新築一戸建てを建てる方やリフォームを検討されている方のご参考になれば幸いです。

「長期優良住宅」とは?

長期優良住宅とは長く安心して住める質の高い住まい。長期優良住宅認定制度の基準。劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、高水準のエネルギー性能、基礎的なバリアフリー性能、維持保全計画の提出、住環境への配慮、住戸面積
「長期優良住宅認定制度」の基準

長期優良住宅は“長く安心して住める質の高い住まい”

長期優良住宅とは、「長期優良住宅認定制度」の基準をクリアした“長く安心して住める質の高い住まい”のことです。バリアフリー性(共同住宅等)、可変性(共同住宅・長屋)、耐震性、省エネルギー性、居住環境、維持保全計画、維持管理・更新の容易性、劣化対策、住居面積など、国が定めた条件に適合した住まいが長期優良住宅に認定されます。 この認定制度は新築を対象として2009年にスタートし、その7年後の2016年にはリフォームなど中古住宅を増改築した場合でも適用されるようになりました。この制度が始まったきっかけは、2006年に施行された「住生活基本法」が関係しています。

「住生活基本法」が制定されたのはなぜ?

「住生活基本法」が施行されたのは、住宅の“量”ではなく “質”を重視しようという政策の切り替えがあったからです。戦後の日本は住宅不足解消への対策として、大量の住宅確保を重視していました。しかし、今の日本では少子高齢化や人口減少が進み、世界全体では省エネへの意識が向上しています。 そのことを踏まえ、「住宅を建てては壊す(スクラップアンドビルド)」という従来の考え方を改めたわけです。良質で安心して住める住宅をつくり、次世代へと継承することを国の方針にしたのが「住生活基本法」で、この方針を発展させたのが、「長期優良住宅の認定制度」です。国は長期優良住宅を普及させるために、住宅ローンの金利優遇や減税などのさまざまな措置をしています。

長期優良住宅のメリットとデメリット

長期優良住宅のメリット・デメリット
長期優良住宅のメリット・デメリット

長期優良住宅のメリット①フラット35Sの金利や税金が優遇される

税制の種類優遇ポイント一般住宅長期優良住宅
住宅ローン減税控除限度額4000万円5000万円
不動産取得税控除額1200万円1300万円
固定資産税減税措置の適用期間戸建て(1〜3年間)
マンション(1〜5年間)
戸建て(1〜5年間)
マンション(1〜7年間)
登録免許税
(保存登記)
税率0.15%0.1%
登録免許税
(移転登記)
税率0.3%(戸建て)
0.3%(マンション)
0.2%(戸建て)
0.1%(マンション)
一般住宅と比較した長期優良住宅のメリット

長期優良住宅の認定を受けると、あらゆる住宅ローンの金利が優遇されます。特にお得なのが「フラット35S」。これは、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する「フラット35」のプランのひとつで、耐震性や省エネ性などが優れた住まいと認定されたときに適用されます。 たとえば「フラット35S金利Aプラン」に加入した場合、金利の幅を10年間、0.25%まで引き下げることが可能です。今までお得とされていた変動金利型ローンの金利が、だいたい0.5%なので、かなり優遇されていることが分かります。

また、税金が安くなるメリットもあります。たとえば住宅ローン減税の控除限度額は、一般の住宅の最大4000万円に対し、長期優良住宅は最大5000万円。土地や建物の取得に掛かる不動産取得税は一般の住宅が最大1200万円に対して、長期優良住宅は最大1300万円控除されます。 ほかにも、土地や建物の所有者に掛かる「固定資産税」の減税適用期間を長くできたり、住宅を登録する際に必要な「登録免許税」の税率も一般住宅より低く抑えたりできます。

長期優良住宅のメリット②快適な暮らしができる高断熱仕様

長期優良住宅は断熱性が高く、快適な室温で過ごしやすい
長期優良住宅は断熱性が高く、快適な室温で過ごしやすい

長期優良住宅の認定基準のひとつに、一定水準の断熱性の確保というものがあります。省エネ性を高めることが目的で定められた項目ですが、これによって一般的な住まいよりも断熱性能が高くなっています。断熱性が高いと外気温の影響を受けにくいため、一度エアコンで快適な室温にしてしまえば、その状態が保たれやすくなります。 暑い夏でも光熱費を抑えながら、快適な室温で過ごすことができるわけです。また、室外からの空気が入りにくいので、住まいのなかの寒暖差などで起こるヒートショックを予防する効果も期待できます。

長期優良住宅のメリット③寿命が長く、資産価値が落ちにくい

長期優良住宅は寿命が長く、資産価値が落ちにくい
長期優良住宅は寿命が長く、資産価値が落ちにくい

長期優良住宅の認定には、住宅性能を保つため、住まいを建てたあとの30年間は、10年以内ごとに定期点検することを条件としています。この定期点検ですが、多くの場合、住まいを建てたハウスメーカーや工務店がプロの目線でこまめに点検修繕してくれます。 そのため、長く暮らしていても住まいの質を維持することができ、住宅としての資産価値が保たれるというわけです。ちなみに、一般的な戸建ての寿命が約50年と言われているのに対し、長期優良住宅は約100年と言われています。 点検の基準は最長10年以内と定められていますが、できれば5年ごとに点検修繕を依頼するのがオススメです。お子様に住まいを残すためにも、メンテナンスは怠らないようにしましょう。

長期優良住宅のデメリット

長期優良住宅を建てるデメリットは、はっきり言ってあまり挙げることができません。あえて言うのであれば、イニシャルコストが一般の住宅より高くなってしまうことでしょうか。長期優良住宅の施工に慣れていないハウスメーカーなどに依頼すると、一般的な住宅に比べて施工費用が20%から30%ほど高額になることもあります。 施工費用を安く抑えたい場合は、長期優良住宅を標準仕様としているハウスメーカーに依頼すると良いでしょう。

長期優良住宅の認定基準

長期優良住宅の認定基準とは?
長期優良住宅の認定基準とは?

長期優良住宅の認定を受けるためには、9つの認定基準に適合させた住まいづくりをする必要があります。

    
①劣化対策
②耐震性
③維持管理・更新の容易性
④可変性(共同住宅のみ)
⑤高水準の省エネルギー性能
⑥基礎的なバリアフリー性能(共同住宅のみ)
⑦維持保全計画の提出
⑧住環境への配慮
⑨住戸面積  

これらの基準を満たす施工に慣れているハウスメーカーであれば、長期優良住宅の申請に問題が起きることはまずありません。

懸念点があるとすれば、「高水準の省エネルギー性能」の項目でしょうか。この項目をクリアするためには「断熱性能等級4」の基準を満たさなければいけません。基準をクリアするには建築士による複雑な計算が必要となるのですが、その計算に慣れていない建築士の方もいるようです。なので、長期優良住宅を建てる場合は、施工に携わった経験のある建築士を介す方が良いでしょう。

また、「耐震性」では「耐震等級2」もしくは「条件付きの等級1」を基準とした施工が義務付けられています。これは戸建ての注文住宅ならば、それほど厳しい基準ではありません。しかし、マンションやローコストを売りにしている建売住宅などは、施工費用との兼ね合いから、基準のクリアは難しいのが現状です。
一方で規格住宅の場合、耐震性を満たしているリーズナブルなものは、ネットや住宅カタログなどでしばしば見かけます。売り文句として紹介欄に記載があるかもしれないので、こまかくチェックしてみるのもオススメです。

長期優良住宅を建てるには? 完成までのフローを解説

長期優良住宅を建てるには?
長期優良住宅を建てるには?

ここからは、長期優良住宅を新築することを想定して、完成までのフローを解説します。

①ハウスメーカーに長期優良住宅を建てたい旨を伝える

新築で長期優良住宅の購入を決意したら、まずはハウスメーカーに伝える必要があります。ポイントは長期優良住宅の施工に慣れている、または標準仕様で長期優良住宅申請を行っているハウスメーカーを選ぶこと。 慣れていないハウスメーカーだと、どうしても申請ミスや施工ミスが起きるリスクが高まってしまうので、できるだけ長期優良住宅が標準仕様となっているハウスメーカーに依頼することをオススメします。

②長期優良住宅の認定申請をする

依頼するハウスメーカーが決まったら、建築士に住まいの設計図書や必要な書類を書いてもらいます。これらが完成したら、所管行政庁から長期優良住宅の認定通知書が発行されるフローに移ります。 工事を着工してからは長期優良住宅の認定を受けられないので注意してください。長期優良住宅を建てたいと思ったら、必ず建築工事着工前にハウスメーカーに伝え、認定審査を依頼しましょう。

長期優良住宅の認定方法は、第三者機関である「指定確認検査機関」を介して事前審査を行い認定申請する方法、もしくは、建設地の所管行政庁で直接申請する方法があります。ただし、所管行政庁に申請する方法は時間が掛かってしまうので、あまりオススメできません。 入居日がすでに決まっている場合は、ズレが生じてしまうことになり兼ねないので、指定確認検査機関を介した申請をオススメします。申請などに不安のある方は、ハウスメーカーに施工を依頼する際、ベテランの営業マンがつくことを希望しましょう。認定申請のミスがないように、親身になって相談にのってくれるはずです。

③認定後に着工

申請が通り認定証を受け取ったら、いよいよ着工です。工事が始まったら、ローンや減税などの優遇申請をスムーズに進めるため、情報の整理をしておきましょう。ローンや減税の情報は数え切れないほど多くあります。できるだけお得に長期優良住宅を建てるためにも、情報収集には十分に時間を取ってください。 こちらのサイト(https://www.sumai-fun.com/money/)では、テーマ別に補助金・減税・優遇制度がまとまっており、更新もこまめにされているので、情報チェックにオススメです。

④長期優良住宅の完成

無事に竣工したら、所管行政庁から届いた長期優良住宅の認定通知書をもとに、減税やローン優遇などの手続きを進めます。不明な点などがあればハウスメーカーの営業マンに相談して、申請時に漏れがないよう気をつけましょう。

「長期優良住宅化リフォーム」という選択肢も視野に

「長期優良住宅化リフォーム」という選択肢も視野に
「長期優良住宅化リフォーム」という選択肢も視野に

長期優良住宅は、新築だけでなく、リフォームでも認定を受けることができます。新築同様、ローンや税金の優遇を受けられるので、今住んでいる住まいや購入した中古住宅をリフォームし、長期優良住宅にするという選択も可能です。
ただし、新築に比べると、長期優良住宅の認定を受けるハードルは高くなります。築年数が経っている古い住宅だと、天井の高さや壁を認定基準に適合するレベルまで作り変える必要があるので、どうしても費用が高額になってしまいます。 また、リフォーム工事の過程で壁を開けることがあるので、雨漏りの心配が増えてしまうことも。今住んでいる住まいや購入を検討している物件が築浅であれば、比較的安価でリフォームできるので、検討してみても良いかもしれません。

補助金制度「長期優良住宅リフォーム推進事業」にも注目

リフォームを検討中の方にご紹介したいのが、「長期優良住宅リフォーム推進事業」という補助金制度です。長期優良住宅の認定を受けられるレベルの「認定長期優良型」や「高度省エネルギー型」のリフォームをすれば、それぞれ上限250万円、上限300万円の補助金を受け取ることができます。現在リフォームを検討されている方は、ぜひ調べてみてください。

「長期優良住宅」についてのまとめ

長期優良住宅はローンや税金の優遇など、多くのメリットがありますが、認定申請の手続きが難しいのでは? とデメリットに感じてしまうかもしれません。しかし、認定による補助でさまざまなコストを抑えられ、かつ安全で快適な住生活をおくることができる長期優良住宅は、今後ますます一般的なものになっていくと考えられます。 新築一戸建て住宅の購入を検討されている方は、ぜひ長期優良住宅を選択肢のひとつに入れてみてください。

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