住宅手当とはどんな制度?減少傾向にあるって本当?相場や賃貸・持ち家などの支給条件について解説

勤務先の就業条件で、給与や賞与と合わせてチェックしたいのが「福利厚生」。人間ドックなど健康に関するものや各種休暇の設定、持ち株や財形貯蓄といった財産形成にかかわる制度など、企業によりさまざまな取り組みを行っています。中でも多くの企業が採用している福利厚生が「住宅手当」をはじめとする、住まいに関する金銭的補助制度です。住宅手当とはどのような制度なのでしょうか。最近の動向や金額の相場、支給条件を解説します。

目次
1.住宅手当とは?
2.住宅手当の相場
3.住宅手当が減少傾向にある背景
4.住宅手当の支給条件
5.住宅手当 まとめ

住宅手当とは?

住宅手当とは

住宅手当とは企業が従業員やその家族に提供する福利厚生のうちのひとつで、住宅費用を補助する制度です。住まいに関する補助制度は、賃貸アパートやマンションの家賃を一部負担する「家賃補助」や、一般的な賃貸住宅より大幅に抑えた家賃で住まいを提供する「社宅(社員寮)」、そして持ち家の場合住宅購入時に借り入れした住宅ローンの返済費用を一部補助する「住宅手当」などがあり、家賃補助も含めて「住宅手当」としている企業も多くあります。また、引っ越しの際に「引っ越し手当」が出る企業もあります。
ちなみに、住宅手当のような現金支給の手当は課税の対象となります。社宅など、現金としてではなく住まいそのものを提供する場合は福利厚生費として計上され、非課税となります。

住宅手当の相場

では、住宅手当の相場や支給状況について確認していきましょう。

住宅手当の支給状況
住宅手当の支給状況

詳細:東京都産業労働局「中小企業の賃金事情(令和3年度)

そもそも、住宅手当はどの程度の企業で支給されているのでしょうか。東京都産業労働局が2021年に公表した「中小企業の賃金事情(令和3年度)」によると、住宅手当を支給している企業は37.8%と全体の4割弱となっています。また、2019年の同調査では40.2%であったことから、住宅手当を支給する企業はやや減少傾向にあることが分かります。

住宅手当の支給金額
住宅手当の支給金額

詳細:東京都産業労働局「中小企業の賃金事情(令和3年度)

次に、住宅手当を支給する企業を見てみると、半分以上の52.8%が賃貸や持ち家などの住宅の形態にかかわらず、一律で支給していることがわかります。平均支給額は、扶養家族ありの場合が1万9,813円、扶養家族なしの場合が1万6,815円でした。平均支給額は企業規模によっても変わりますが、企業規模が大きいほど支給額が高くなる傾向がうかがえます。
また、支給企業の19.6%が賃貸か持ち家で異なる金額を支給しています。扶養家族がある場合の住宅手当平均支給額は、賃貸住宅が2万4,656円、持ち家が1万8,806円、扶養家族がない場合の住宅手当平均支給額は、賃貸住宅が2万929円、持ち家が1万6,997円となっています。

住宅手当が減少傾向にある背景

住宅手当が減少傾向にある背景

住宅手当は近年減少傾向にあるようです。実際に東京都産業労働局の調査でもやや減少傾向にありました。
企業にとって、住宅手当の支給は企業のイメージアップや、従業員のモチベーションアップなどのメリットがあり、人材の流出を防ぎ、定着させるための有効な手段でもあります。にもかかわらず、住宅手当の制度を縮小、もしくは廃止する企業が増えているのはなぜなのでしょうか。

住宅手当が減少している理由1―金銭的負担が大きい

福利厚生費と法定外福利費の構成割合

詳細:日本経済団体連合会「第64回 福利厚生費調査結果報告

住宅手当が減少している理由の一番目として、住宅手当制度が企業の福利厚生費の中で大きな負担になっていることが挙げられます。
日本経済団体連合会が公表した「第64回 福利厚生費調査結果報告」によると、住宅手当をはじめとする住まい関連の福利厚生は、福利厚生費全体の48.2%と半数近くを占めています。大きな金額ゆえ家計を大きく左右する福利厚生費といえますが、企業にとって住宅手当は大きな負担となっています。

住宅手当が減少している理由2―年功序列型から成果主義型へ

住宅手当が減少している理由2―年功序列から成果主義へ

住宅手当が減少している理由の二番目として、企業の人事評価制度が年功序列型から成果主義型へ変化してきたことが挙げられます。
年齢とともに給与や役職が上がっていく「年功序列型」から、個々が挙げた成果をもとに評価して給与や役職に反映させる「成果主義型」を採用する企業が増えています。そうしたなかで、仕事上の働きと関係のない基準で支給される住宅手当は、今の時代にそぐわないと考える企業が増えつつあります。

住宅手当が減少している理由3―「同一労働同一賃金」の普及

住宅手当が減少している理由3―「同一労働同一賃金」の普及

住宅手当が減少している理由の三番目として、「同一労働同一賃金」の普及が挙げられます。
働き方改革により、同じ職場で同じ職務内容なのであれば、雇用形態を問わず同額の賃金を支払う「同一労働同一賃金」が叫ばれるようになりました。正規雇用・非正規雇用で同じ待遇を目指す企業が増えるなか、一部の従業員だけに住宅手当を支給することが「待遇格差である」と考えられるようになり、手当分を給与に上乗せする企業が増えています。

住宅手当が減少している理由4―働き方の多様化

住宅手当が減少している理由4―働き方の多様化

住宅手当が減少している理由の四番目としては働き方の多様化が挙げられます。
働き方改革の影響により、就業スタイルにも変化をもたらしました。以前から政府が進めていた「テレワーク」という働き方ですが、コロナ禍の生活を経て普及が進みました。在宅でのリモートワークや、在宅と出社を織り交ぜたハイブリットワークなど、一気に働き方が多様化。住宅手当よりも、自宅での業務で生ずる電気代や通信費などの経費をサポートする「在宅勤務手当」を支給する企業も増えています。

住宅手当の支給条件

住宅手当の支給条件

住宅手当は、従業員がだれでも無条件に支給される手当ではありません。住宅手当の支給条件は企業により異なります。住まいが持ち家なのか賃貸住宅なのかも基準のひとつで、持ち家の場合は残念ながら支給対象外となることもあります。また、勤務先から自宅までの距離も重要です。「勤務先から〇km以内」といった指定がある場合や、距離が遠い人には住宅手当を支給せず、代わりに通勤手当を支給する企業もあります。そのほか、世帯主のみに住宅手当を支給する企業が多く、扶養家族の有無でも支給額が変わります。扶養家族がいる場合は多めに支給されるケースが一般的です。詳しくは、勤務先の就業規則を確認してください。
なお、住宅手当の支給を受ける際は世帯主であることを証明するための「住民票」や、家賃補助の場合は「賃貸借契約書」を提出するケースが一般的であることも覚えておきましょう。

住宅手当について まとめ

住宅手当を縮小・廃止する企業が増えているとはいえ、現在も4割弱の企業が住宅に関する手当を支給しています。これからマイホームの購入を検討している方は、現在の収入のうち住宅手当がどの程度の金額を占めているのかをご確認ください。家計における住居費は大きなウエイトを占めています。マイホームを購入して持ち家になることによって家賃補助がなくなり収入が減少するケースもあれば、家賃補助の代わりに住宅ローンの補助を受けることができるケースもあります。また、家賃補助には年齢等の制限がある場合もあります。事前に就業規則を確認し、住宅購入後の家計をしっかりと守れるように心づもりをしておきましょう。

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