外出自粛の生活が続くコロナ禍……在宅勤務の機会が増加し、家族と一緒に過ごす時間が増えたと思います。それが良い方向に働けば問題ないのですが、悪い方向に働くこともあるので、家族との接し方に悩んでいる方もいるのではないでしょうか? そこで、陸上自衛隊のメンタル教官としてメンタルヘルスに携わってきた経験をもつ、メンタル・レスキュー協会理事長の下園壮太さんに「コロナ禍における家庭円満」について伺いました。
NPOメンタル・レスキュー協会理事長
陸上自衛隊で指揮官・幕僚を経験後、初の心理幹部として多数のカウンセリングを経験。その後、各級指揮官に対するコーチングをしつつ、衛生科隊員やレンジャー隊員等に、メンタルヘルス、カウンセリング、コンバットストレス対策等を教育。現在は、個人でメンタルコーチを提供しながら、NPOを通じてクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、県や市、企業、大学院などで、リーダーシップ、メンタルヘルス、カウンセリング、ストレスコントロールなどについての講演・講義・トレーニングを提供。
「自衛隊メンタル教官が教える心の疲れを取る技術」(朝日新聞出版社)「折れないリーダーの仕事」(日本能率協会マネジメントセンター)等著書40冊以上。「ホンマでっか!TV」等の出演、雑誌の連載等。
公式HP: http://www.yayoinokokoro.net/
メンタル・レスキュー協会の下園壮太です。1年以上続くコロナ禍によっておうちにいる時間が増え、家庭に関する悩みができてしまった方も少なくないでしょう。しかし、ともに過ごす時間が多いからこそ、家族の関係は良好でありたいものですよね。今回はコロナ禍でも家庭円満でいられるための考え方や、おうちでの過ごし方についてお話いたします。
コロナ禍で一緒に過ごす時間が増加……今こそ知りたい家庭円満のコツ
新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めたころは、予期せぬ非常事態に誰もが不安を抱えていました。そしてコロナ禍が1年以上続いた現在、人々の気持ちは不安からイライラへと変わってきています。では、イライラしている人はどうなるかというと、無意識のうちに言葉がきつくなるのです。
子どもには「ちゃんと勉強しなさい」、パートナーには「どうして頼んだことをやってくれていないの?」というような、日常的に口にする言葉にも怒気をはらませてしまうんですね。自分では気づいていない可能性がありますから、そこは意識して気を付けましょう。
ただ、家族に対して同様の意識を求めるのは難しいこともあります。イライラしている人に対して周りから改善を要求したり、あるいは諭そうとしたりしてもなかなか変えられないものです。そのようなときには自分から“物理的・時間的な距離”を取ることも選択肢のひとつにいれましょう。コロナ禍においては「相手を変えよう」と考えるのではなく、自分が嫌な思いをする時間を少なくしようという割り切った考え方も大切です。
家族で過ごす時間が増え、全員がリビングなどの同じ場所で長い時間一緒にいると、それぞれがイライラしていることもあり、ふとした拍子に口論になったり、今まで気にならなかった相手の癖が嫌になったりしてしまうことがあるんですね。もちろん、すべての家庭に当てはまることではありません。しかし、思い当たる節がある方は、“物理的・時間的な距離”を取るためにパーソナルスペースを確保してみるのも良いでしょう。
家族それぞれに自分の部屋がある場合は、仕事や勉強は各自の部屋でする、自分の部屋がない場合は、パーテーションを使うなどして自分だけのスペースをつくるというのも有りです。また、食卓で座る場所が決まっているように、人は“自分の場所”があると安心するんですね。家族全員に“自分の場所”があればストレスが緩和されるので、家族関係にひびが入る前に、一時的に接触時間を減らすのは悪いことではありません。家族仲を維持できてさえいれば、あとは時間が解決してくれるのですから。
コロナ禍では自分のこころをケアしてあげるのが大切
「つらい」「苦しい」と感じることが多く、不安の募るコロナ禍で「こころを強く持たなければ」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、今は“こころを鍛える”のではなく“こころをケアする”ときだと考えてください。
こころを鍛えるのは心身ともに“元気な状態”だからこそできることです。毎日早起きして食事をしっかりとり、体を鍛えるような運動をする……という生活は健康なときには可能ですが、風邪をひいて熱が出たときはとにかく寝て体を休めて、食べられるものだけを食べて回復をはかりますよね。
こころもそれと同じで、疲労している状態では鍛えるよりも休める、ケアをすることが大切になってくるのです。このコロナ禍では、社会全体が疲れています。そんななかで「みんな頑張ってるから」「みんな我慢しているから」と考えて、疲れている自分を責め、無理をしてはいけません。こころが健全な状態でなければ、家族に優しくすることも難しくなってしまうのですから。
私は、元気な状態である“通常疲労”を1として、蓄積される疲労の状態を3段階で捉えています。1段階目は通常の生活が送れて、感情を理性でコントロールできる状態ですが、疲労が2段階目に進むとイライラや不安がコントロールしにくくなってきます。しかし、ここで“通常よりも疲れている”と自覚できないと、自分を責めて無理に頑張ってしまい、3段階目の疲労状態になる可能性が高まっていくのです。
疲労の3段階目というのは、“うつ”に近い状態で、ネガティブな感情に苛まれ、気力や行動力を失い、心身ともに回復が難しくなります。そうなる前に自分自身の疲労状態と向き合い、2段階目の疲労状態であると感じたときには、心身を休めるようにしてください。
疲労を自覚する方法はひとつに定められるものではありませんが、たとえば「こころ電池とからだ電池」という考え方で、セルフチェックする方法もあります。毎日、自分のこころと肉体の“充電度合い”を「こころ電池60%、からだ電池70%」という風に数値化してみるのです。
この数値が低くなってきたら、それは疲労が溜まっている可能性があるということなので、自分の心身をケアしてあげましょう。こころの充電が低ければストレス解消のために趣味に興じる、からだの充電が低ければしっかりと睡眠をとる、といった具合です。これは一例でしかありませんが、さまざまな形で自分自身を観察することは、疲労状態を自覚するのに役立ちます。ぜひ自分に合った疲労の指標を探してみてくださいね。
家族間で口論やけんかをしてしまった……その時、子どもに必要なケアとは?
自分のイライラや疲労を自覚する、パーソナルスペースをつくる……そうして家族間でストレスをためないように生活をしていても、時にはぶつかることもあるでしょう。特に子どものいる家庭で口論やけんかが起きてしまったら、アフターケアが重要になってきます。
親子間で口論になった後は、親の方から子どもに声をかけましょう。感情同士が衝突すると、一旦その人間関係は崩れて緊張状態になりますが、その関係性を元の状態に戻すのは、親の役目だと私は考えています。口論の原因が子どもへの注意や指導で、親としては“正しいことを言った”から問題ないように感じるかもしれません。しかし、そうであっても言われた側である子どもは傷ついているんですね。その点を理解して、アフターケアはぜひ親から行なってください。
また、パートナーとの口論を子どもに見せてしまった場合にも、アフターケアが必要です。子どもというのは、自立する年齢までは「親が仲良くしている=自分の人生はある程度保障されている」というような感覚があります。それが親のけんかを見てしまうことで「親が別れたら自分は捨てられるかもしれない」と思い、自分の人生に対する危うさを感じてしまうんですね。小さな子どもはもちろん、中学生くらいのお子さんでも、将来の不安などと重なってナーバスな気持ちになることがあります。ですから、そのような状態の子どもにはきちんとケアしなくてはいけません。どうケアするかというと、「お母さんとお父さんは仲直りしたよ」と伝えればOKです。実際にはすぐに落ち着かないこともあると思いますが、子どもには嘘であっても良いので「仲直りした」と伝えてあげてくださいね。
家族内コミュニケーションのコツとこころのケア法 まとめ
社会全体が疲弊し、イライラが募るコロナ禍。このような特殊な状況下においては、疲労を自覚して休んだり、イライラを自覚して家族に当たらないよう距離を取ったり、まず自分自身の状態を理解することが重要です。自分自身のこころをケアすることできれば、家族に対しても優しく接することができるようになり、それが家庭円満につながると言えるでしょう。
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