空気が乾燥する季節は、さまざまな感染症が流行します。代表的な感染症のインフルエンザは、冬から春にかけて増加傾向にあり、まだまだ不明な点が多い新型コロナウイルス感染症も似た傾向となる可能性があります。これらのウイルスは、なるべくお家の中に入れたくないですが「もし持ち込んでしまったらどうすればいいの?」と不安に思う方も多いでしょう。そこで、健康を守るお掃除士であり医療環境管理士でもある松本忠男さんに、感染対策の基本と正しい掃除・消毒の仕方について伺いました。
松本忠男 プロフィール
医療環境管理士
(株)プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング(株)代表取締役社長
フロレンス・ナイチンゲールの著書「看護覚え書」に共感し、33年間、病院の環境衛生に携わる。亀田総合病院では100人近く、横浜市立市民病院では約40人の清掃スタッフを指導・育成し、これまで現場で育ててきた清掃スタッフの総数は700人以上。現場で体得したコツやノウハウを、多くの医療施設や高齢者施設、店舗、家庭などに発信する。
2019年1月からは、中国の深圳市宝安区婦幼保健院(1000床病院)の環境整備を指導するなど、活動の場は海外にも広がる。
医療環境管理士の松本忠男です。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスは、お家に持ち込まないように対策するのが前提となります。そのうえで、持ち込んでしまったことを仮定した掃除と消毒をしましょう。今回ご紹介する「松本式お掃除術」は、病気の原因を徹底的に“可視化”した科学的な掃除法で、医療現場だけでなく、一般のご家庭でも応用できます。ご自身やご家族の健康を守るために役立つと思いますので、取り入れられそうなものから実践してみてください。
新型コロナウイルス・インフルエンザ対策の基本
インフルエンザは呼吸器系のウイルス感染症で、主な感染ルートは飛沫だと思って良いでしょう。特に冬から春にかけては空気が乾燥するので、咳やくしゃみで飛び散ったウイルスは夏に比べて空気中を漂う時間が長くなります。さらに乾燥すると鼻や喉の粘膜の働きが低下し、ウイルスが体内に侵入する可能性が高くなってしまうのです。この2つの条件が重なって、冬と春は感染症が流行しやすい時期になっています。
一方で、新型コロナウイルス感染症については、流行する時期や治療法など、まだハッキリと解明されていない点も多いですが、これも呼吸器系のウイルス感染症に分類されています。呼吸器系ウイルスの感染対策として重要なのが、なるべく飛沫を避けることです。飛沫が体内に入らなければ感染することはほぼないので、会話を可能な範囲で減らしたり、飛沫を吸い込まないようマスクを付けたりすることを心掛けましょう。飛沫を避ける行動をしていれば、おのずと飛沫を出してしまう機会も減少します。
ウイルスをお家に持ち込まないようにするには、帰宅してからの手洗いが一番効果的です。手に飛沫が付いている可能性があるので、しっかり手洗いするまでは、お家の中のものに触れるのを極力控え、さらに外出中も首から上を触らないように意識します。また、呼吸器系の感染症に対しては、換気と加湿がとても重要なので、窓を開けて汚れた空気を外に出すこと、加湿器などで屋内の湿度を60%程度まで上げることをこまめに行いましょう。
新型コロナウイルス・インフルエンザの家庭内感染を防ぐには? 正しい掃除術と消毒の仕方
水拭きはNG! ウイルスを除去するには“乾拭き”が重要
ウイルスを効果的に除去するには、掃除と消毒の“順番”を意識することが重要です。まずは汚れを取り除くために拭き掃除をするのですが、拭き方には大きく分けて「水拭き」と「乾拭き」があります。『水拭きが一番キレイになりそう』という理由で、いきなり水拭きをする方もいますが、それは逆効果なので注意しましょう。
『土砂が付いた洋服を濡れたタオルで拭おうとして、逆に汚れを塗り広げてしまった……』というパターンと同じで、最初に「水拭き」をしてしまうと、水と一緒に汚れやウイルスを塗り広げてしまうことになるのです。なので、まずは「乾拭き」で汚れを減らし、それから必要であれば「水拭き」をして、残った汚れを取るようにしてください。
乾拭きでサッと軽く拭き取りたい場合は、キッチンペーパーを使うのがオススメです。使用後にそのまま捨てられますし、手や指に汚れやウイルスが付着することも少ないので、使い勝手が良いと言えます。拭き掃除に雑巾やタオルを使うときは、一面だけを使用し、汚れても折り返さないようにしましょう。その一面に付着した汚れなどが、誤って手に付いてしまうのを防ぐためです。使った雑巾などを洗濯する際も、汚れがついた部分に触れないよう気を付けてください。また、掃除の基本はゆっくりと動くことです。素早く手足を動かして風を起こしてしまうと、せっかく集めたホコリなどの汚れやウイルスが舞い上がってしまいますので注意しましょう。
消毒をするタイミングは掃除のあと
アルコールなどの「消毒」は、乾拭きや水拭きで汚れを減らしたあとに行いましょう。汚れが多く残っていると、その汚れにウイルスがコーティングされてしまい、消毒の効果が薄れてしまうからです。医療施設では、先に汚れを減らしましょう、汚れを減らしたあとにウイルスを除去しましょうという考え方が基本としてありますが、一般家庭や飲食店にはあまり浸透していないように感じます。この機会に正しい消毒の仕方をぜひ実践してみてください。
お家でできる感染予防! 重点的に掃除と消毒をすべき場所とは?
ウイルスが多くいる場所はどこかと聞くと「病院」と答える方もいらっしゃいますが、実際はそんなことはありません。ウイルスは、お家であろうとお店であろうと、そこにウイルスを持った人がいれば必ず存在します。感染症が流行する時期だからこそ、ウイルスを持ち込んでしまったと仮定して、お家の中で飛沫が多く飛ぶ場所や手で触れる機会の多いポイントを重点的に清掃するようにしましょう。
食事や会話をするテーブル
お家の中で飛沫が多く飛ぶ場所は、会話の多い場所です。ご家族と一緒に暮らしている方は、リビングやダイニングにあるテーブルの清掃からはじめましょう。飛沫は掃除機では取れないものなので、拭くことが重要になります。乾いたタオルやキッチンペーパーで拭き掃除をする際は、汚れやウイルスが散らばらないよう必ず一方向に向かって拭くようにしてください。消毒は乾拭きをしたあとです。また、最近はおうち時間の増加によってオンラインで会話する機会が増えていますので、家族共用のパソコンを使っている場合は、画面やキーボードを掃除するのも良いでしょう。
口をすすぐ洗面所
洗面所も飛沫が多いと考えられる場所です。特に歯磨きやうがいは、意図的に飛沫を吐き出す行為にあたるので、終わったあとは乾いたタオルなどで洗面台に付いている水滴をしっかり拭き取りましょう。水気をこまめに拭き取れば、カビや水垢対策にもなります。
接触回数の多いドアノブやスイッチ
手で触れる機会の多いドアノブや電気のスイッチ、リモコンなどを清掃するのも良いでしょう。口から出た飛沫が手に触れてウイルスが付着し、その手からドアノブなどへウイルスが移動するケースは、陽性者がいない家庭であればあまり考えられませんが、無症状陽性者の存在はわからないためゼロではありません。また、手の脂がベタベタと付きやすい場所なので、清潔さを保つという意味ではこまめな掃除が重要です。その際は、マイクロファイバーを使いましょう。マイクロファイバー素材は繊維が細く、繊維自体に隙間や溝があるので、手の脂などの汚れを簡単に拭き取れます。
赤ちゃんがいる場合は「おもちゃ」も清潔に
何でも口に咥えてしまう赤ちゃんが家庭内にいる場合、注意して欲しいのが「おもちゃ」に付いた飛沫です。小さなお子様が新型コロナウイルスに感染し、重症化したケースは少ないですが、インフルエンザウイルスのことを考慮すると、清潔さを保つに越したことはないでしょう。おもちゃを清掃する場合、素材にもよりますが、アルコールで消毒するよりも洗剤をつかった水洗いがオススメです。水でウイルスを洗い流したあとは、しっかり乾かすのも忘れないようにしてください。
家庭内感染を防ぐ掃除術と消毒法 まとめ
空気が乾燥するこの時期は、呼吸器系の感染症が増える傾向にあります。帰宅後の手洗いを徹底し、飛沫が飛びやすい場所を正しい順番で掃除することで、家庭内での感染を防ぐことができるのではないでしょうか。
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