リモートワークでも人間関係を円滑に!カウンセラーが教えるコミュニケーションのコツ

コロナ禍の影響で急速に普及したテレワークやリモートワーク。長引くテレワークやリモートワークでストレスを感じている方、同僚と直接会って話す機会が減ったことで、うまく人間関係が築けているか不安になっている方も多いと思います。では、テレワークやリモートワークでも職場の人と円滑にコミュニケーションするためには、どのようにしたら良いのでしょうか? 長年、カウンセリングや陸上自衛隊でメンタルへルスに関わってきた、メンタル・レスキュー協会理事長の下園壮太さんに伺いました。

下園壮太プロフィール
下園壮太 プロフィール

NPOメンタル・レスキュー協会理事長

陸上自衛隊で指揮官・幕僚を経験後、初の心理幹部として多数のカウンセリングを経験。その後、各級指揮官に対するコーチングをしつつ、衛生科隊員やレンジャー隊員等に、メンタルヘルス、カウンセリング、コンバットストレス対策等を教育。現在は、個人でメンタルコーチを提供しながら、NPOを通じてクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、県や市、企業、大学院などで、リーダーシップ、メンタルヘルス、カウンセリング、ストレスコントロールなどについての講演・講義・トレーニングを提供。

「自衛隊メンタル教官が教える心の疲れを取る技術」(朝日新聞出版社)「折れないリーダーの仕事」(日本能率協会マネジメントセンター)等著書40冊以上。「ホンマでっか!TV」等の出演、雑誌の連載等。
公式HP: http://www.yayoinokokoro.net/

メンタル・レスキュー協会の下園壮太です。リモートワークで人間関係がギクシャクする原因のひとつとして、“疑心暗鬼”が考えられます。今回は、同僚と自分、お互いが疑心暗鬼にならないためには、どのように働きかければ良いのかをご紹介します。

円滑なコミュニケーションの極意は“雑談”をすること? 内面情報の交換「こころ電池とからだ電池」

円滑なコミュニケーションの極意は“雑談”をすること? 内面情報の交換「こころ電池とからだ電池」

会社から離れて自宅でリモートワークをしていると、チーム内が疑心暗鬼の方向に流れやすい傾向にあります。それは、“内面情報”の交換ができていないために起こりやすいと言えるでしょう。

リモートワークは疑心暗鬼になりやすい?

業務外のコミュニケーションが取りにくいリモートワークは疑心暗鬼になりやすい?

たとえばチームで仕事をしているとき、ある同僚が自分の意見にあまり賛同してくれなかったとします。職場で一緒に働いているときは、普段の相手の様子が視覚情報として入ってきたり、挨拶などの業務外のコミュニケーションを取れたりするので、「相手にはこういう背景があるから、あんな表現になったんだな」と相手の思考や意図を比較的冷静に理解しやすくなります。これが、内面情報が交換できている状態です。

しかし、内面情報の交換ができていないリモートワークでは、「なんであんな言い方をするんだろう。もしかしたら自分のことを嫌っているのかな……」とだんだんネガティブな方向で考えやすくなり、次第に同僚が敵に見えてきます。この疑心暗鬼の状態になってしまうと、ともに働く仲間にマイナスの感情を向けることが多くなり、関係がギクシャクするだけでなく、業務に集中しづらくなって効率も落ちてしまうのです。

自衛隊でも実践! 内面情報の交換方法

リモートワークで人間関係を保つコツは、相互に不必要な不安を与えないようにすることです。雑談をしてチーム内で内面情報の交換をするというのは、疑心暗鬼になるのを防いで人間関係を円滑にするだけでなく、仕事を効率良く進めるためにも、とても重要な要素になります。

陸上自衛隊本部のメンタルへルス担当として勤めていたころから、隊員たちのメンタルを正常に保つためには、内面情報の交換が必要だということに気づいていました。自衛隊では、大変ショックな出来事があったとき、つらさを克服するために開く「ディブリーフィング」というミーティングがあるのですが、私はショックな出来事がなかったとしても毎日やるべきだと考えていました。

その考えから生み出したのが、任務のことばかり聞くのではなく、隊員の内面情報も聞き出せる「任務解除ミーティング」です。これは、お互いがどのくらい大変な任務だったか、今何を困っているのか、どんなことを明日からしていこうと思っているのか、などの個人的な感想を話すミーティングです。体調や悩みなども話せます。しかし、一人ひとりの情報を聞くには、ある程度まとまった時間(ひとり2分程度×人数)がかかるという問題もありました。

リモートワークで良好な人間関係を保つには、内面情報を交換して疑心暗鬼になるのを防ぐ

そこからさらに改良し、一般企業に勤めている方でも活用できるようにしたのが、「こころ電池とからだ電池」という方法です。「あなたのこころの充電は何パーセントですか?」「からだの充電は何パーセントですか?」という感じで、現在のその人の内面情報を大きなイメージとして聞くわけです。

表現された数値で、スクリーニング(評価)をするものではありません。たとえば、こころが100パーセントで、からだが1パーセントという極端な数値であっても、それだけで危険と判断すべきものではありません。大切なのは、その人が「そんな感じ」だという全体イメージを共有することです。普通の人間関係であれば、そのあとに、「どうして1%しかないの? 」などと自然な交流が生まれます。具体的な話が聞けなくても、とにかく今日その人は、心の元気がないんだなということがみんなの共通認識になります。

リモートワークでWeb会議をするときは、ついつい業務の話ばかりになってしまい、雑談、つまり内面情報の交換がおろそかになりがちです。普段なら「最近疲れがたまっている」ということを気軽に話せたとしても、Web会議ではなかなか話せませんよね。そういった自分の内面を話せない、相手の内面が分からない状況が続くと、疑心暗鬼に陥ってしまうのです。

また、内面情報の交換をするのに「こころ電池とからだ電池」というやり方にこだわる必要も、実はありません。あくまで雑談をするための“きっかけづくり”と考えてください。実際にやってみてスムーズに運用できるなら続ければ良いし、みんなが飽きたらほかの方法に変えれば良いのです。私の場合でしたら、忙しいときは「こころ電池とからだ電池」を聞くようにして、時間があるときには「昨日あった出来事で、良かったことを3つ、悪かったことをひとつ、その悪かったことから改善策をひとつ言いましょう」という昨日の振り返りをすることがありますね。いろいろと試してみて、ぜひ自分たちに合った方法で内面情報の交換をしてみてください。

リモートワークで上司・部下の円満な関係を保つには?

上司が部下に厳しく指導した場合、友好な関係が崩れると思って対応する

上司が部下の仕事に意見したり厳しく指導したりした場合は、それまで友好な関係であったとしても、その関係が一度崩れると思っていてください。平たく言うと、指導された方はどんな正当な指導でも多少は傷つく部分があるということです。とくにリモートワークでは内面情報の交換がしにくいので、指導をきっかけに部下の内面で疑心暗鬼が進む可能性もあります。職場で働いていたときは、あまり意識しなくても、指導後のフォローができていたと思いますが、リモートワークでは意識して行動を起こさないとフォローすることができません。上の立場の人間からチャットでも電話でも良いので、先に声をかけて関係を戻すのが鉄則です。

どんなに正しいことでも、どんな軽い指導でも、部下は傷つきやすいものだということを忘れないようにしましょう。フォローを入れずに部下の疑心暗鬼が育つとエネルギーの消耗となり、不眠になってしまう恐れもあります。さらに状態が悪くなると、気力が低下し、思考も回らなくなり、いつもは普通にこなせる仕事ができなくなる、それでまた指導される……といった負のスパイラルが起こりかねません。部下のメンタルやモチベーションを管理するのも上司の大事な務めです。とは言え、「部下のせいで余計な仕事をさせられている」と思ってしまうとモチベーションが下がるので、それも自分の仕事のひとつだと考えるのが良いのではないでしょうか。それでも改善が難しいようであれば、時には人事的な措置をすることもお互いのために必要だと思います。

人間関係を円滑にするWeb会議のコツ

人間関係を円滑にするWeb会議のコツ

Web会議で円滑なコミュニケーションをするコツは、“音声がちゃんと聞こえているか”という基本的なことをおさえたうえで、“表情を大きく豊か”にすることです。先ほどもお話しましたが、相手に内面情報が伝わらないと疑心暗鬼になりやすくなるので、画面越しのやり取りではとくに表情などの視覚情報を大切にしてください。

たとえば、私がカウンセリングをするときも、やむを得ない場合を除いて自分の映像は点けるようにしています。視覚情報である表情を相手に見せて、安心してもらいたいからです。まったく同じトーンで同じ言葉を伝えたとしても、表情の有り無しで与える印象がまるで違うということを覚えておきましょう。

在宅勤務で「オン/オフ」を切り替えるには環境を変える

在宅勤務で「オン/オフ」を切り替えるには環境を変える

リモートワークで同僚と円滑なコミュニケーションをするためには、自分自身が正常なメンタルでいる必要があります。しかし、在宅勤務では仕事と休みのメリハリがつきにくいので、こころとからだが休まらない可能性もあるのです。出社時は通勤、つまり物理的な移動がオンオフの切り替えになっていることが多いので、できる方は“移動”をしてみましょう。仕事と休みを「考え方」で切り替えるのは誰だって難しいので、「環境」で切り替えるという方法も試してみてください。

一番簡単なのは、部屋を移動して仕事モードから休みモードに切り替えることですが、ワンルームや仕事部屋のないご家庭ではそれも難しいと思います。そんな方は、視覚や聴覚、嗅覚などを利用して環境を変えてみましょう。たとえば、仕事が終わったら音楽をかける、仕事が終わったら部屋にお気に入りのポスターを張る、お香をたく、などなど。仕事と休みで自分の向いている方向を変えるのも良いかもしれませんし、少し散歩をするのも有りだと思います。私の提案したことはあくまで一例にすぎないので、それで切り替えができなかったとしても落ち込む必要はまったくありません。環境を変える以外でも、自分に合った方法は必ずあるはずなので、しっくりくる方法を探してみることが大切です。

リモートワークでのコミュニケーションのコツ まとめ

リモートワークで職場の人間関係を円滑にするコツは、“疑心暗鬼”を防ぐため、積極的に“内面情報の交換”をすることです。雑談と聞くと、時間の無駄だと感じてしまう方もいらっしゃるかと思いますが、普段何気なくしている雑談こそが内面情報の交換であり、特に対面の機会が少ないコロナ禍においては、とても大切なことだと私は思っています。

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