赤ちゃんや子どもを災害から守るには? プロが教える家庭でできる防災対策

赤ちゃんや子どもを災害から守るには? プロが教える家庭でできる防災対策

赤ちゃんや小さなお子様は、自分自身で防災対策をすることはできません。だからこそ、大人が代わりに備えなければならないのですが、毎日の忙しさに追われて防災のことを考える余裕がない……という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、防災のプロである防災アドバイザーの高荷智也さんに“赤ちゃんや子どものための防災対策”について、伺いました。

高荷智也(たかに ともや)
ソナエルワークス代表|備え・防災アドバイザー

「自分と家族が死なないための防災対策」のポイントをロジックで解説するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく実践的に伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。

公式サイト
備える.jp
https://sonaeru.jp


こんにちは。防災アドバイザーの高荷です。日ごろから環境を整え、いざというときの心構えをしておけば、赤ちゃんやお子様を災害から守りやすくなります。災害時に子どもの安全を守ることができるかどうかは、事前準備で全て定まりますので、周りの大人がしっかりとフォローするようにしていきましょう。

転倒物や落下物に注意! 赤ちゃん用の安全なスペースをつくる

赤ちゃんや小さなお子様の命を守るには、まず環境を整えることが大切です。たとえば、地震が起こった際、大人ならば自主的に逃げることができますが、赤ちゃんだとそうはいきません。なので、ベビーベッドや普段いるスペースの安全を確保する必要があります。

具体的には、赤ちゃんのいるスペースの近くに地震で倒れそうなものを置かない。置いたとしても、しっかり固定する。棚などの場合、倒れなかったとしても収納しているものが飛び出して当たることがあるので、別の場所に設置したほうがいいでしょう。家具の上に置いていたものが落ちて当たるケースもあるので、しまえるものはしまったほうが安全です。また、ガラスが割れて飛散すると危険なので、窓やガラス棚の近くもオススメできません。また、地震でも火事でも災害が起こったら、赤ちゃんがいるところまですばやく移動しなければならないので、廊下など移動経路の導線はしっかりと確保しておきます。

ものが倒れない・降ってこないというポイントをおさえておけば、赤ちゃんを地震から守る環境としては十分でしょう。地震の対策ができていれば、そのまま台風対策にもなるので、日ごろから周囲の環境をできるだけ安全にしておくことが大切になります。

赤ちゃんを連れての避難は危険! 避難せずにすむ方法を考える

※出典:東京都港区公式ホームページ

地震や台風の際、赤ちゃんや小さなお子様を連れての避難は、とても危険な行為になりますので、基本的には避難しないですむ方法を考えましょう。
まずは土地選びですね。家を建てるときも借りるときも、各自治体が公開しているハザードマップを確認し、浸水や津波、土砂災害や地震火災の心配がない地域に住むようにするといいでしょう。逃げなくてもいい場所に住むということが、一番重要になります。自宅の耐震基準も合わせてチェックしてみてください。木造住宅の場合は2000年の6月1日以降に建築確認申請を受けて建てられたものであれば、地震に対する強化が進んでいるので、より安全です。

浸水害については、そもそも浸水が生じない地域に住んでいるのであれば、台風や大雨の際にも避難は不要となります。地域全体に避難勧告や避難指示が出た場合も、屋外へ出るより自宅にとどまった方が安全ですので、土地選びは重要です。ただし、ライフラインが停止する恐れはあるため、電気・ガス・水道が止まった場合に備えて、赤ちゃんと生活ができるような準備をしておきましょう。

どうしても避難が必要な場合に備えて「非常用持ち出し袋」を用意する

赤ちゃんや小さなお子様がいるご家庭では、できるかぎり避難しないですむような対策が前提となります。しかし、どうしても家を出なければならない緊急事態に備えて、準備はしっかりとしておきましょう。
まず、浸水や土砂災害に巻き込まれる危険がある地域にお住まいの場合は、災害の影響が弱い段階で逃げる、ということが重要になります。台風ならば、事前にくる場所と時間がある程度わかるので、大雨や強風が襲ってくる前に避難所や親戚・知人宅に移動するといいでしょう。

また、普段使っているマザーズバッグとは別に、赤ちゃん用の「非常用持ち出し袋」を用意してください。非常用持ち出し袋はその名のとおり、緊急避難時に備えて、雨具やLEDライト、大人用の食料や水、モバイルバッテリーやポケットラジオなどを入れておくものです。自宅をすばやく飛び出すための準備として必要になります。

赤ちゃんがいる家庭向けの備蓄品としてオススメしたいのが、「カセットコンロとガスボンベ」です。これらと水があれば、どこでもお湯を沸かすことができるので、沐浴をさせることも、ミルクをつくることも可能です。ほかにも、お湯をペットボトルに入れればカイロ代わりになるので、災害時の頼れる万能ツールと言えるでしょう。

非常食として便利なのは「液体ミルク」ですね。お湯がなくても、そのまま飲ませられる長期保管用のミルクが、最近の法整備で販売されるようになりました。あとは月齢に合ったベビーフードも入れておきましょう。普段から食べているものを2、3個多めに買い置きしておくと、非常時にとても役立ちます。

「おしりふき」も普段より多めに買って、準備しておいてください。おしりふきはウェットティッシュとして使えますので、水が止まってしまったときに手をきれいにしたり、食器を拭いたり、怪我をしたときに傷口を拭いたりすることもできます。災害時の感染症や食中毒は命取りとなるので、衛生管理もしっかりとしましょう。

また、普段は使っていなくても、おんぶひもやベビースリング(抱っこひも)を入れておくと、避難時に便利です。特に徒歩避難の際は、両手を空けることが安全の確保に繋がるので、必須と言えるでしょう。

自分の非常用持ち出し袋に入れるべきものは?

非常用持ち出し袋は、赤ちゃん用だけでなく、自分のものも用意しておきましょう。赤ちゃんの命を守るためには、自分の命も守る必要があります。自分の非常用持ち出し袋に最優先で入れていただきたいものは、“身体の一部”となるものです。眼鏡をかけている方だったら、予備の眼鏡や1DAYのコンタクト。お薬を飲んでいる方でしたら、予備の薬やお薬手帳のコピーですね。

次に入れるのは、行動の手助けとなる雨具とライトです。手がふさがる傘や懐中電灯ではなく、雨ガッパとヘッドライトをオススメしています。事前避難ができる災害であれば、明るいうちにおこなうのが前提ですが、夜中に地震が発生するケースもあります。夜中避難するときに停電していたら、明かりがないと一歩も歩けなくなりますので、非常に重要ですね。雨ガッパはいざというときに防寒具や着替えの代わりにも使えます。また、避難時には切り傷を負うケースも多いので、キズパッドや大きい絆創膏を用意しておくのもいいでしょう。

あとは、情報収集道具。避難時に誤って危険な地域に行かないよう、ハザードマップは用意しておきます。携帯電話用のモバイルバッテリーも重要で、これは充電式より電池式のほうが、自然放電しないのでオススメですね。合わせて乾電池も何個か入れておいた方がいいと思います。また、携帯電話が使えなくなった場合は、ラジオが唯一の情報源になりますので、余裕があればポケットラジオも入れておきましょう。

赤ちゃんや子どものための防災対策 まとめ

災害から大切な赤ちゃんやお子様を守る一番の方法は、安全な環境をつくることです。引っ越しや建て替えは簡単にできるものではありませんが、転倒物や落下物の対策ならば、ご家庭内でもおこなうことができるはず。非常時の備えもご家族の命を守ることにつながりますので、ご自身のペースで準備を進めてみてください。

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