注文住宅を建てる際、ネットや雑誌だけでは分かりにくい“生の雰囲気”を確かめるため、モデルハウスを内覧しに行く、という方は多いと思います。では、モデルハウスや実際に建てられた住宅を見学するには、どうすればいいのでしょう? 住生活ジャーナリストとして活躍中の田中直輝さんに伺いました。
住生活ジャーナリスト
昭和45年(1970)、福岡県生まれ。早稲田大学教育学部を卒業。約10年間にわたって住宅業界専門紙に勤務。主に大手ハウスメーカーを担当、取材活動を行う。その後、独立し、現在は東洋経済オンライン、オールアバウトなどで執筆している。
住生活ジャーナリストの田中直輝です。今回は建設中、完成後の住宅やモデルハウスなどを内覧、見学できる場所についてご紹介します。内覧や見学を行えるのは大きく分けて「住宅展示場」、「内覧会」、「現場見学会」の3つ。それぞれどういった住宅が建っていて、どのようなメリットがあるのかを解説します。
住宅展示場とは
住宅展示場は、ハウスメーカーがその地域の特徴(都市部か郊外かなど)やニーズに合わせたモデルハウスを内覧できる場所です。展示場のなかには完成された実棟がたくさん並んでいるので、ネットや雑誌などだけではイメージを掴みづらい、建材や建具などの素材感や空間デザイン、設備などについて理解を深めることができます。
住宅展示場には大きく分けて「総合住宅展示場」と「単独住宅展示場」の2種類があることをご存知でしょうか?どちらもモデルハウスの内覧ができるということに変わりはないのですが、目的や家探しの進み具合によって、訪れるべき展示場が変わってくることもポイントです。
また、住宅展示場には各ハウスメーカーの分譲住宅(建売住宅)、土地についての情報も多く揃っています。なかにはネットや雑誌などに掲載されていない情報もあるので、自分の理想に近いお家が見つかったら、分譲住宅の購入を検討してみるのもいいでしょう。すでに完成したものがほとんどであるため、契約から入居までの期間が短いというメリットもあります。
総合住宅展示場は各ハウスメーカーのモデルハウスを内覧できる
総合住宅展示場にはひとつの敷地内に複数のハウスメーカーのモデルハウスが並んでいます。さまざまなタイプの住宅を内覧しながら、比較と検討をすることができるので、マイホーム購入を考え始めたばかりの方が理想の暮らしをイメージするのに最適でしょう。展示されているモデルハウスは内覧専用なので、その住宅そのものを購入することはできません。しかし、ハウスメーカーごとの特色や強みなどを、一ヵ所で比較しながら知ることができるのは、大きなメリットと言えます。
また、休日にヒーローショーやワークショップ、住宅相談会といったイベントが開催されるのも特徴で、ご家族と一緒にレジャー感覚で利用することも可能です。
単独住宅展示場はマイホーム計画が進んだ方にオススメ
単独住宅展示場は、ひとつのハウスメーカーが単独で運営している展示場のことです。営業所を併設しているものから街中に実棟を建てて展示しているものなど、さまざまな形態があります。
単独住宅展示場に行くメリットは、ハウスメーカーについての理解をより深めることができるという点です。総合住宅展示場でもハウスメーカーの営業マンからお家の仕様などについて説明してもらえますが、単独住宅展示場の方がより具体的な話を聞くことができます。マイホーム建築を依頼したいハウスメーカーが見つかった場合には、訪れてみるのもいいでしょう。
また、総合住宅展示場と違って、各地域にさまざまな規模のものが点在しているのも特徴です。検討初期の段階で近場にあるなら、とりあえず行ってみるというのもアリですね。ちなみに、単独住宅展示場の場合、実際に購入可能な分譲モデルハウスが建てられることもあります。ハウスメーカーによっては、実棟を取り壊す際に掛かる諸経費を削減するため、そのまま販売するケースがあるのです。立地条件がご家庭のライフスタイルに適した上で、理想的な建物であると判断された場合は、購入を検討してみるのもいいでしょう(営業戦略上、販売されないケースもあります)。
内覧会とは
各ハウスメーカーが施工したフルオーダー設計の注文住宅や分譲住宅(建売住宅)を見学できるのが内覧会です。実際に住むことを前提とした住宅を見られるので、より自分たちの暮らしをリアルにイメージしながらマイホーム計画を進めることが可能です。注文住宅の場合、参加するには基本的に事前申し込みが必要なケースが多いですね。内覧会は大きく分けて、人が住み始める前の住宅で行われる「完成住宅見学会」と、住み始めたあとに行われる「オーナー住宅見学会」があります。
完成住宅見学会では物件購入が可能なケースも
完成住宅見学会では、施工が終わった直後の分譲住宅や注文住宅を内覧することができます。通常は内覧のみとなりますが、買い手が決まっていない分譲住宅なら、土地とセットでの購入が可能です。その場合、「内覧即売会」という名称で開催されることもあります。
また、分譲住宅はハウスメーカーの所有している土地に建てられているので、比較的、リーズナブルな価格で購入できるケースがあるのです。予算とともに立地条件を重視する方は、マイホーム計画の選択肢に入れてみてもいいでしょう。
オーナー住宅見学会ではリアルな体験談を聞くことができる
オーナー住宅見学会はその名の通り、すでにオーナーが住まわれているお家を見学することができます。どの程度の期間住んでいるかはケースバイケースで、入居直後のときもあれば、20年以上住み続けている場合もありますが、最大のメリットはリアルな体験談を聞けることですね。
例えば入居直後であれば、思い描いていた理想とのギャップがないか、長年住み続けたあとであれば、経年劣化の様子やアフターサービスの善し悪し、ライフスタイルの変化に対応できているか、などを知ることができるでしょう。見学の際は事前申し込みが必要ですが、マイホーム計画を進めるうえで参考となる情報が聞けるので、ぜひ参加してみましょう。
現場見学会とは
現場見学会ではハウスメーカーが住宅を施工している様子を見学することができます。見学できる施工段階はまちまちですが、多くの場合、営業マンや設計担当者が住宅の構造や基礎などを見ながら、どのような施工を行っているかを丁寧に説明してくれるので、住宅についての理解を深めることができるわけです。
また、現場見学会はハウスメーカーの信頼度を見極める絶好の機会でもあります。実際に作業している様子を見て、施工を依頼するに値するか否か、ご家庭内でよく相談しましょう。ちなみに私の場合、キレイに整理整頓されているか、作業員がきちんとヘルメットを着用しているかどうかなどを見ます。規律のとれたメーカーであるならば、安全対策を徹底しているのは当然のことですからね。こちらも事前申し込みが必要ですが、お目当てのハウスメーカーが見つかったなら、参加を検討してみてください。
施工過程にもこだわるなら工場見学会に行くのもオススメ
住宅内覧とは少し違いますが、さらに住まいづくりの過程にもこだわるなら工場見学会に行ってみるのもいいでしょう。工場見学会はプレハブ系ハウスメーカーの工場に行って、部材を加工している様子などを実際に見ることができるイベントのことで、それぞれの会社の特徴をより深く理解できます。
ハウスメーカーによっては「バス見学会」と称して、工場見学会とともに、前述した完成住宅見学会や現場見学会などを1日で周れるツアーを開催している場合があります。工場見学会もバス見学会も事前申し込みが必要ですが、ハウスメーカー選びをするうえでとても参考になりますので、ご都合が合えば参加されることをオススメしています。
内覧・見学についてのまとめ
実際に建てられた住宅を内覧するのは、ハウスメーカーを選ぶうえでとても重要となります。フルオーダー設計の注文住宅を建てる場合でも分譲住宅を購入する場合でも、必ず一度は何かしらの内覧や見学をするようにしましょう。今では住宅を内覧する方法も多様化しています。ご自身の目的に合った場所におもむくことで、マイホーム計画がより立てやすくなることでしょう。