お家でできるハウスダスト対策! 健康を守る「松本式お掃除術」とは?

掃除とは、目に見える汚れを取り除き、その場所をキレイにすること。そう思っている方がほとんどだと思います。しかし、お家には目に見えない汚れが多く存在し、それらは体内に入って健康を害する可能性もあるそうです。では、「健康を害する恐れのある目に見えない汚れ」を除去するには、どうすれば良いのでしょうか? 健康を守るお掃除のスペシャリスト・松本忠男さんに伺いました。

松本忠男さん
松本忠男さん

医療環境管理士
(株)プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング(株)代表取締役社長

フロレンス・ナイチンゲールの著書「看護覚え書」に共感し、33年間、病院の環境衛生に携わる。亀田総合病院では100人近く、横浜市立市民病院では約40人の清掃スタッフを指導・育成し、これまで現場で育ててきた清掃スタッフの総数は700人以上。現場で体得したコツやノウハウを、多くの医療施設や高齢者施設、店舗、家庭などに発信する。

2019年1月からは、中国の深圳市宝安区婦幼保健院(1000床病院)の環境整備を指導するなど、活動の場は海外にも広がる。

医療環境管理士の松本忠男です。「人の住む環境を整えることは、人のいのちを守ることである」。この信念のもと、私は健康を守るお掃除士として医療現場の清掃と環境整備に取り組んできました。私が科学的エビデンスをもとに確立した、ハウスダストや病原体を効果的に減らすための「松本式お掃除術」は、医療現場だけでなく、一般のご家庭でも応用できるものです。今回は「松本式お掃除術」のポイントや活用法をご紹介し、より多くの方に健康を守るお掃除術を知っていただきたいと思います。

ハウスダストや病原ホコリを効果的に除去する「松本式お掃除術」とは?

ハウスダストや病原ホコリを効果的に除去する「松本式お掃除術」とは?

一般的な掃除というのは、目に見える汚れをなくすことが主な目的で、見た目がキレイであれば良いという考え方だと思います。しかし、私が提唱する「松本式お掃除術」は、健康を守るために汚れを減らしていくことを目的にしています。病気やアレルギーの原因になり得るハウスダストや病原ホコリなどの汚れが、人間の体の中に入ることを防ぐ。そのためには、それらが多くたまっている場所を把握し、重点的に掃除することが大切です。

「病原ホコリ」とは、病気や健康被害の要因となり得るホコリのことです。ホコリといえば、服の繊維などによって生まれる灰色のふわふわしたものを思い浮かべるかと思いますが、顕微鏡を通して見てみると、人間の皮膚が剥がれ落ちたものだとか、さまざまなものが混在しています。それらを餌としてダニやカビ、細菌などが徐々に増殖するため、単なるホコリだと思って放置してしまうと、健康被害を招くリスクが高まります。また、病原ホコリを含むハウスダストは、一定量たまれば肉眼でも確認できますが、少量だと目に見えません。ですが、たとえ少量でも健康を害する恐れがあるため、たまる前に取り除くことが重要になるわけです。

病院清掃の経験から生み出された科学的掃除法

病院清掃の経験から生み出された科学的掃除法

私は33年ほど前から現在に至るまで病院清掃に携わってきました。医療施設では、感染対策を織り込んだ掃除というのは当たり前の考え方ですが、それを独自の掃除法として組み立てたのが、健康を守る「松本式お掃除術」です。

この掃除法を確立するにあたり、レーザー光線や微粒子可視化カメラなどを用いて、肉眼では見えないホコリや花粉などの動きを可視化。さらに流体力学や熱力学を学び、室内での風の動きや温湿度の変化による身体への影響を把握しました。そうすることで、目には見えないハウスダストや病原ホコリなどがお家のどこにたまりやすいか、どうすれば効果的に除去できるかが分かったわけです。

以前に、喘息やアレルギー症状を持つお子様が住むお家の「環境改善」に取り組んだことがあります。そのご家庭に「松本式お掃除術」を実践していただいたところ、とても効果があったと連絡を受けました。もちろん薬や治療による効果もあるので、症状の改善すべてが環境改善によるものではありませんが、喘息やアレルギーを引き起こす一因を減らすことはできたのではないかと思います。

ついついやってしまう!? 掃除のNG習慣

ここからは「松本式お掃除術」におけるNG例をご紹介します。健康を害する汚れを取り除いたり、ウイルスを除去したりするには、正しい方法を知ることがとても重要です。

ホコリを水拭きする

水拭きは乾拭きでホコリをとった後に行う

知らずにやってしまいがちですが、床や壁、インテリアをいきなり水拭きしてはいけません。病原ホコリやハウスダストなどの汚れは乾いているため、それらを濡れた雑巾やタオルで拭いたとしても、効果的に取り除くことができないからです。それどころか、ホコリに潜むウイルスなどを広範囲に広げてしまう恐れがありますので、まずは乾拭きをしましょう。 また、前後や左右に往復してゴシゴシ拭くこともNG行動のひとつ。これをやってしまうと、たとえ乾拭きでも取れた汚れがもとの場所に戻ってしまいます。拭き掃除の際は、1方向に向かって乾拭きするのが前提です。もちろん、しっかり乾拭きをした後であれば、水拭きしてもOKです。

汚れを取り除く前に消毒

ドアノブは乾拭きで手の脂や汚れをとってからアルコール消毒する

最近はコロナ禍の影響で、ドアノブやテーブルなど、手が頻繁に触れる場所をアルコール消毒する方が増えていますね。しかし、消毒したい場所にアルコールを吹きつける際には注意が必要です。まずは乾拭きをして、ウイルスの“隠れ蓑”である汚れを取り除かないと、消毒効果のある成分がウイルスまで届かないからです。 また、アルコールは溶剤でもあるため、ドアノブなどに付いていた手の脂を溶かします。そうすると、溶けた手の脂が乾いたウイルスをコーティングしてしまい、逆に落ちにくい汚れとなってしまうので要注意です。アルコール消毒をする前には、必ず乾拭きをして、ウイルスや汚れを減らすことを覚えておきましょう。

換気をしながら掃除

掃除中の換気はNG

室内の汚れた空気と外の新鮮な空気を入れ替えることは、健康のためにとても重要です。しかし、掃除中に換気をしてはいけません。目には見えないハウスダストなどは、風に乗って動きます。掃除でホコリなどを集めて取り除いたつもりでも、目に見えていないものは風に飛ばされて、どこにいったのか分からなくなってしまうからです。同様の理由で、エアコンも掃除中は電源を切っておきます。 風がない状態だと、見えないホコリは見えるホコリの近く、もしくは壁や部屋の隅にあると予想できるので、まずはその周辺をしっかり掃除し、30分くらいたってから換気をしましょう。

掃除中に“風”を起こす

掃除中に風を起こすのはNG

「掃除中の換気はNG」と紹介しましたが、その理由は風が起こるからです。しかし、換気をしていなくても「人の移動」で風は起きてしまいます。掃除機や拭き掃除など、掃除中はどうしても動かなくてはいけませんが、速く動いたり、大きな動きを繰り返したりすると、強い風が発生します。これから集めようとしていた目に見えないホコリなどを飛ばしてしまっては元も子もないので、掃除は急がずゆっくりとした動きで、丁寧に行うように心掛けましょう。

ハウスダストや病原ホコリがたまりやすい場所とは? 正しい掃除法と対策をプロが解説

目に見えないほど小さいハウスダストや病原ホコリは、人の移動やエアコンの風などによって飛ばされます。それらの多くは、屋内の壁に貼り付いたり、部屋や廊下の“隅”へたまったりすることを覚えておきましょう。

壁の正しい掃除法

壁掃除には化繊はたきを使う

壁の病原ホコリを含むハウスダストは、化繊はたきを使用して除去します。パタパタ動かすと風が起きてしまうので、ゆっくりと一方向に動かしましょう。化繊はたきは基本的に静電気でホコリなどを取っているため、使う前に“はたき”の部分をこすり、静電気を強くして使用するのがオススメです。 また、使用後の化繊はたきをそのまま持って移動すると、せっかく取ったホコリが飛んで行ってしまう可能性があるため、ビニール袋に入れて持ち歩くと良いですね。使い終わった後は、シャワーで洗い流します。横から水を当てると、はたきの中に汚れを押し込んでしまうので、上から洗い流すイメージで縦に水を当てましょう。しっかりと汚れが落ちやすくなります。

部屋や廊下・階段の隅の正しい掃除法

ゴム部分に切り込みを入れた「松本式スクイージー」

部屋や廊下、階段の隅の掃除は、風を起こさないようにすることが基本です。なので、掃除機を使う場合は、排気口が上にあるスティックタイプのものが良いでしょう。また、隅を掃除する際の便利アイテムとして「松本式スクイージー」というものがあります。これは、市販のスクイージーのゴム部分に約5mm間隔で切り込みを入れたものです。隅に沿ってそっと動かすことで、風を起こさずにホコリをしっかり取れます。スクイージー自体は100円均一でも購入できるので、ぜひ作ってみてください。

マイクロファイバークロスを突っ張り棒に巻き付けて使うのもオススメ

そのほか、100円均一で売っている突っ張り棒に、マイクロファイバークロスを巻き付けたものもオススメです。こちらも隅に沿って、ゆっくり動かして使います。

キッチンやカーペットも要注意! ハウスダスト除去のコツ

キッチン掃除のコツ

キッチンのベタついたホコリは重曹水などで分解させる

キッチンは火を使う場所なので、室温が上がりやすく、上昇気流の働きでホコリなどが上に向かいやすくなります。そのため、他の部屋に比べると床よりも壁の上の方にホコリが多く付着しているわけです。さらに、空気と一緒に油も上にのぼっていくため、冷蔵庫の上や電気の傘などのホコリがベタついているのもキッチンの汚れの特徴です。このような汚れは、乾拭きや化繊はたきでは取れないため、重曹水などを活用して油を分解させる作業が必要になってきます。キッチンとリビングがつながっているお家では、リビングでも壁の上の方を重点的に掃除すると良いでしょう。

子ども部屋掃除のコツ

カビが発生しないようにおもちゃは定期的に水洗いし、よく乾かす

お子様が部屋の中を元気に駆け回ったり、よだれをたらしたりしてしまうと、どうしても汚れは増えてしまいます。なので、他の部屋よりもこまめに壁や隅を掃除してあげましょう。 また、子ども部屋で注意していただきたいのがおもちゃ箱の中。小さなブロックなどをお子様が舐めてしまって、唾液の付いたものが風通しの悪い箱の中で混在してしまうと、カビの発生につながります。小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、おもちゃ箱やその中身も定期的に水洗いし、よく乾かしてから遊ばせるようにしてください。

カーペット掃除のコツ

カーペット掃除には回転ブラシ機能が付いた掃除機がオススメ

健康を守るという面で、カーペットの掃除はとても大切です。繊維の中に病原ホコリを含むハウスダストが入ってしまいますし、毛が長いカーペットほど、汚れを取り込む表面積は大きくなります。さらに、カーペットの中に汚れが大量に含まれていると、それらを栄養源にカビや細菌、ダニも増えてしまうわけです。 カーペット掃除は、なるべく回転ブラシの機能が付いた掃除機を使いましょう。国内の主要メーカー掃除機の回転ブラシは前回転のものが多いので、掃除の際にはゆっくりと後ろに引くことがポイントです。そうすることで、より効率的に汚れを取ることができます。カーペットはこまめに、しっかりと掃除機をかけることが重要ですが、アレルギー症状や喘息持ちの方がご家族にいらっしゃる場合は、カーペットをお家に置かないという選択も有効だと思います。

ハウスダストや病原ホコリを効果的に除去する「松本式お掃除術」 まとめ

目に見える汚れをキレイにすることはもちろん大切ですが、見えない汚れを減らすことも意識してみましょう。病原ホコリやハウスダストが多くたまる場所を把握し、効率的に掃除することで健康被害のリスクを減らすことができます。