全世界で感染拡大が続く新型コロナウイルス。私たちは今後、どのようなことに気をつけて生活を行えばいいのでしょうか。今回は防災アドバイザーで感染症パンデミック時における家庭の防災対策にも見識を持つ高荷智也さんに、各家庭で行うべき新型コロナウイルスへの対策や備え、この状況下で自然災害が起きた際の対策方法について伺いました。
ソナエルワークス代表|備え・防災アドバイザー
「自分と家族が死なないための防災対策」のポイントをロジックで解説するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく実践的に伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。
公式サイト
「備える.jp」
https://sonaeru.jp
防災アドバイザーの高荷智也です。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために大切なことは、感染する方法を知り、そのルートを潰すことです。現在、確認されている「飛沫感染」と「接触感染」、これら二つの感染経路を避けるためには、どのようなことに気をつけて生活すればいいのかをご紹介します。
外出時に注意すべきことは? お家の外での新型コロナウイルス対策
「目・鼻・口」に触らないことが重要
不要不急の外出自粛が要請されていますが、やむを得ず外出しなければならないということはあるかと思います。その際は、とにかく「目・鼻・口」を不用意に触らないよう、注意しましょう。新型コロナウイルスが付着した手で粘膜に触れてしまうと、感染リスクは飛躍的に高まってしまいます。今のところ、手にウイルスが付着しただけでは感染しないとされていますが、外出時は不特定多数の人が触る可能性のあるものに極力触れない、触れたとしても消毒や手洗いをするまでは、顔に触れない、ということが重要になります。
外出時はマスクの着用を習慣化することで、無意識に顔に触れることを避けるようにします。コンタクトレンズを使用している場合は、感染が収束するまでの期間、外出時はメガネに切り替えたほうがいいでしょう。無意識に目の周辺を触ろうとしても、メガネがガードしてくれますし、飛沫感染のリスクもある程度は軽減できます。ただし、メガネにウイルスが付着している可能性があるので、帰宅後は必ず消毒や洗浄をするようにしてください。
「3密」を避けた行動を心がける
政府も推奨しているとおり、外出時は「密閉」・「密集」・「密接」の3密を避けた行動を意識しましょう。なかには外出自粛のストレス解消として散歩に行きたいという方もいらっしゃると思います。その際は、誰もいない場所を歩くよう心がけます。できる限り人通りの少ない時間を選ぶことも重要ですね。これらの心構えは、買い物時にも有効です。場所と時間を工夫して、できる限り人との接触は控えましょう。
新型コロナウイルスの家庭内感染を防ぐために覚えておきたいポイント
上着は玄関に収納してウイルスの飛散を防ぐ
帰宅後は手だけでなく、着ていた服にも注意を払いましょう。一番の理想は、帰宅後すぐに服を洗濯し、お風呂に直行することです。それが難しい場合は、アウターやズボンなど、一番外側に着ていた服に消毒殺菌スプレーを吹きかけ、玄関でハンガー収納を行います。消毒スプレーがないのであれば、ファブリーズなどの除菌消臭スプレーを使用しましょう。ウイルスが付着している可能性のある衣類を身にまとった状態で家中を歩き回ることは、それだけウイルスが飛散するリスクを高めることにつながります。
ドアノブやスイッチはこまめに消毒が必要
外からウイルスを持ち込まない努力をするのが大前提ですが、自分でも気付かずうちに持ち込んでしまったケースを想定して感染リスクを軽減する対策を行いましょう。例えば、ドアノブやスイッチ、リモコンなど、家族間で頻繁に触れられるものはこまめに消毒します。アルコールもしくは次亜塩素酸ナトリウム希釈液を使用するのが有効です。
なお、衣服以外の消毒を行う際は、スプレーで直接噴射する方法は控えましょう。スプレータイプの場合ですと、吹きかけたとき、ものに付着したウイルスが巻き散らされてしまい、かえって部屋中にウイルスを散布させてしまう恐れがあります。消毒する際は、必ずアルコールなどを染み込ませた布で拭くようにしてください。
※注釈)また、次亜塩素酸ナトリウムについては使用方法に注意が必要です。詳しい使用法についてはこちらをご参照ください。
家庭内に新型コロナウイルス感染者が出た場合の注意点
万が一、家庭内に感染者が出た場合は、最終的に全員が罹患するとしても時間差を設けることが重要です。感染者との生活環境をできる限り分け、トイレや脱衣所などの共用施設は頻繁に換気を行い、使用するタオル類は感染者とそれ以外の方とで分けるようにします。使い終わったタオルなどはこまめに洗濯し、ドアノブやスイッチなどの消毒は徹底しましょう。
新型コロナウイルス感染の意外な落とし穴
宅配便を受け取るときの注意点
対人接触をなるべく避けているつもりでも、日常には新型コロナウイルス感染のリスクが多く潜んでいます。例えば、宅配便の受け取り時などがそうです。
宅配を受け取る際は密接に近い状態となりますので、きちんとマスクをして受け取るようにしてください。もし、可能であればインターフォン越しに対応を行い、荷物を玄関のドア前に置いてもらいましょう。そうすることで、宅配屋さんの感染リスクを軽減することにもつながります。また、受け取った荷物は先ほどの衣類同様、ウイルスが屋内に飛散することを防ぐため、できる限り玄関で開封して中身だけを室内へ運ぶようにするといいでしょう。
エコバッグや商品にウイルスが付着している可能性も
スーパーなどへ買い物に行く際、人混みを避けるようにしているという方は多いと思いますが、実は意外なところにも感染の落とし穴があります。それは荷物を持ち帰る際に使用されるエコバッグです。外出時、エコバッグにウイルスが付着するかもしれないので、感染の拡大が終息するまでは、毎回洗濯するようにしましょう。洗濯することが難しいのであれば、この時期だけはレジ袋を使用するのもいいでしょう。
また、買ってきた商品にウイルスが付着している可能性もゼロではありません。すべてのものを消毒することは難しいですが、外袋を捨てても問題ない商品ならば、中身だけを屋内に持ち込むようにしましょう。玄関にゴミ箱を設置し、レジ袋や外袋を屋内に持ち込まないよう意識することが大切です。
スマホ画面の消毒も忘れずに
外出中にスマホを操作することで、画面にウイルスが付着してしまう可能性も十分に考えられます。スマホは自宅、出先問わず頻繁に触っているもの。帰宅したときは必ず消毒を行いましょう。方法については、少量の消毒用アルコールが含まれたシートや布で優しく拭くようにしてください。ただしアルコールの成分やスマホの機種によっては、液晶画面に不具合が生じたり、本体の印刷が消えたりといった現象が起きることもあるので、少しでも問題を感じたらタオルなどを使った水拭きに切り替えましょう。
新型コロナウイルスの最新情報を調べる際に見ておきたい3つのサイト
新型コロナウイルス関連の最新情報を調べるとき、私は以下の3サイトを見るようにしています。
米国)ジョンズ・ホプキンズ大学 コロナウイルスマップ
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
こちらのサイトでは全世界の新型コロナウイルスの感染者数、死亡者数、回復者数の最新情報を知ることができます。なかでも注意してみていただきたいのが「致死率」(死亡者数÷感染者数)についてです。現在(2020年4月後半)のところ、2003年頃に流行した「SARS」の致死率である約10%に近い、約7%の致死率が新型コロナウイルスによって出ています。これは正直、人類の危機レベルと言っても過言ではありません。今後、大規模な抗体検査などの実施で隠れ感染者が大量に見つかれば、致死率が大きく下がってきますが、どのように感染が広がるかについて、より理解を深めたいという方は継続的に見ておくといいでしょう。
日本)日本経済新聞 新型コロナウイルス感染 世界マップ
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-world-map/
日本経済新聞さんのこちらのサイトは、上記でご紹介したジョンズ・ホプキンズ大学 コロナウイルスマップの日本語版と考えていただくとわかりやすいです。どちらも、確認できる数値やデータは同じですので、見やすい方を活用してみてください。
日本)東洋経済オンライン 新型コロナウイルス 国内感染の状況
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
東洋経済オンラインさんのこちらのサイトでは、都道府県別の感染者状況と世代別感染者数を確認できます。なかでも注意してみていただきたいのが、「年齢別の感染者数」です。現在のところ、死亡者の割合は70〜80代に集中していますが、これから20〜60代の死亡者数が増えてきてしまうと、日本における新型コロナウイルスの致死率も飛躍的に高まってしまいます。もしそうなってしまったら、緊急事態宣言の長期化も現実的になりますので、今この時、一人ひとりが感染拡大防止に努めることが非常に重要なのです。
パンデミック時に自然災害が起きてしまったら……
あまり考えたくはありませんが、新型コロナウイルスの渦中で自然災害が起きる可能性はゼロではありません。 万が一、自然災害が起きたときに、もっとも大切なことは「避難しない準備」を心掛けることです。お住まいの地域のハザードマップを確認し、どんな災害が起きたら避難が必要な立地なのか、把握しておくようにしましょう。もし、浸水や土砂災害などが生じない避難不要な地域に住んでいる場合は、居住区域全域に避難勧告が出ていても、在宅避難という選択を行なっていただいて構いません。
一方、避難が必須な地域に住んでいる方は、避難先を確保しておくことが大切です。仮に、この状況下で自治体の指定した避難所に避難してしまうと、わずかな安全場所に大勢が集まってしまい、感染爆発の火種になる可能性があるでしょう。なので、親戚・知人宅やホテルなどの避難先をあらかじめ想定しておくことが重要と言えます。早めに手を打っておかなければ手遅れになる問題ですので、まだ緊急時の明確な避難先がない場合は、この機会に準備を進めておきましょう。
新型コロナウイルスへの対策と備え まとめ
新型コロナウイルス感染拡大を食い止めるために、もっとも重要なことは一人ひとりが感染への予防を徹底することです。日常のいたるところに感染のきっかけとなるウイルスは潜んでいます。手洗い、消毒をこまめに行い、できる限りウイルスから身を守る行動を心がけましょう。