一戸建てを新築する大きな魅力のひとつが、外観のデザインに自分の好みを反映できることではないでしょうか。外観の見た目を左右する要素はいくつかありますが、最も大きな面積を占めているのが「外壁」です。外壁にどのような素材を使用するかにより、外観の印象はもちろん、かかるコストやメンテナンスのしやすさも変わってきます。外壁の素材にはどのような種類があり、どんな基準で選べばよいのでしょうか。
外壁の素材を選ぶポイント
外壁にはさまざまな素材があります。まずはどのような外観にしたいのか、素材により何が異なるのか等をふまえた上で、ご家族での優先順位を考え、希望に合う素材を選ぶことが大切です。
デザイン
外観の大部分を占める外壁の素材に何を選ぶか、どのような色にするかで、外観の印象が大きく変わります。好みの色や素材を選ぶだけでなく、植栽や玄関まわりも合わせてトータルでコーディネイトすること、周辺環境と調和するデザインも大切です。オンリーワンの外観にこだわるあまり、奇抜な色や素材を選んで後悔することのないようにしましょう。
機能
外壁の素材を考える際は外観デザインに気を取られがちですが、家を守るためにも外壁が重要な役割を果たします。家は常に、紫外線や風雨などに晒され続け、時には地震などの自然災害にも見舞われます。火災の被害に遭う可能性もあります。そうしたときに、外壁の耐水性や耐火性、耐久性などを高めれば、家の経年劣化を軽減し、災害などから家を守ることができます。断熱性能が高ければ、室内を快適な温度に保ちやすいでしょう。
また、外壁材の塗料により機能を付加することもできます。例えば、紫外線の力で汚れを分解し、雨が降る度に汚れを自然と洗い流す「セルフクリーニング機能」を備えていれば、長く美しい外観を保つことができます。
コスト
外壁にかかるコストを考える際は、新築時の初期コストだけでなく、新築後のメンテナンス費用も予測しながら素材を決める必要があります。初期コストが低くても、頻繁にメンテナンスの必要があれば、後々に費用と手間がかかります。反対に、初期コストが高くても、住み始めてからメンテナンスがあまり必要ない素材もあります。長期的な視野に立ち、目的に合った素材を選ぶ必要があります。
外壁の種類
外壁にはさまざまな種類があります。ここでは、主な外壁材の特徴を紹介します。
窯業系サイディング
「サイディング」とは、板状に形成した外壁材のことで、セメントを主原料とした窯業系をはじめ、金属や木質、樹脂といった種類があります。中でも多くの一戸建てで採用されているのが、セメントに繊維質などを混ぜて成型した「窯業系サイディング」です。一般社団法人日本窯業外装材協会の調査によると、外壁の素材として76.8%の方が「窯業系サイディング」を選んでいます。
人気の理由は、デザインもカラーバリエーションも豊富でタイル調や石調、木目調など好みの外観デザインを選べること。紫外線による劣化を軽減する塗料が使用された製品やセルフクリーニングなど機能に特化した製品も出ています。加えて、施工もメンテナンスも比較的容易なため、初期費用もメンテナンスコストも抑えやすいことも魅力です。
水に弱い性質があり、表面をコーティングすることにより水のしみ込みや汚れの付着を抑えています。そのため、10年に1度程度の塗り替えが必要です。合わせて、目地から水が浸入することを防ぐコ―キング材の打ち替えや、サイディングを固定する釘やビスのチェックも行いましょう。
金属サイディング
「金属サイディング」とは、金属の板材と断熱効果のある裏打材を合わせて成型した外壁材で、ガルバリウム鋼鈑(アルミ亜鉛合金めっき鋼板)がよく使用されます。シンプルかつスタイリッシュな外観になる上、ガルバリウム鋼鈑であれば軽量で施工しやすく、リフォーム時の外壁材としても人気です。軽いため家屋に負担をかけず耐震性が高いこと、表面が金属の板で、重ね合わせるように施工するため水が入りにくく、耐水性が高いことも特徴です。
塗料が劣化すると耐水性が落ち、サビの原因となります。ガルバリウム鋼鈑は比較的錆びにくい素材ですが、可能であれば定期的に洗浄をすると、サビの発生を抑えることができます。また、10~15年に1度は状態を点検し、塗り替えを行いましょう。
ALCパネル
ALCは「autoclaved lightweight aerated concrete」の略で、軽量気泡コンクリートのことを指します。「ALCパネル」は、珪石・セメント・生石灰・発泡剤などを原料としています。無数の細かい気泡により通常のコンクリートよりとても軽い特徴があり、気泡が空気の層を作ることから熱伝導率が低く断熱性に優れていること、気泡には音を吸収する効果もあり遮音性が高いこと、不燃材料なので火に強いこともポイント。機能性が高い壁材です。
ただし、サイディングなどと比べて高額な壁材なので、どうしても初期コストが嵩みます。吸水性が高い素材なので、表面を防水塗料で定期的に保護しなければ、膨張やひび割れの恐れがあります。また、目地が多いので、シーリング材を注入した部分の定期的なメンテナンスも必要。5~10年おきにメンテナンスさえすれば、耐用年数が長い壁材です。
タイル
土や石などを原料とし、高温で焼き固めて作られる「タイル」は、高級感があり意匠性が高いことが最大の魅力です。また、耐火性や耐水性に優れていること、傷がつきにくく経年劣化しにくいのでメンテナンスがあまり必要ないことも特徴です。
メンテナンスコストは低いタイルですが、サイディングなどと比べて初期費用は高額です。長い目で見たコストパフォーマンスを重視する方におすすめです。また、タイルは他の素材のように塗り直しなどの必要はありませんが、下地のコーキング材やタイルの接着部分が剥離することがあり、その場合はメンテナンスが必要です。
塗り壁
1980年代まで、日本の一戸建ての外壁はモルタルによる「塗り壁」が主流でした。モルタルは砂と水とセメントを混ぜた壁材で、左官職人が手作業で仕上げていく、昔ながらの外壁です。コテや刷毛などの使い方次第でさまざまな表情を生み出すことができ、オンリーワンの外観にすることができること、継ぎ目が見えにくいことも特徴です。モルタル以外に、自然素材の漆喰や土壁なども人気です。
職人の経験や知識、技術が反映されやすいため、職人の腕により仕上がりに差が出やすいこと、手作業で手間がかかる分、工事価格が高くなりがちなこと、ひび割れがしやすいこと、汚れが付きやすいことに注意が必要です。立地条件などによりますが、5~10年に1度程度、塗り直しやひび割れの補修を行いましょう。
まとめ
外壁の素材を選ぶ際は、デザインだけでなく、機能性やコストなどをトータルで考えることが大切です。素材によってメンテナンスの方法や頻度が異なりますが、定期的な点検と適切な補修を欠かさず行うことで、きれいな外観を長く維持できます。外壁の素材ごとの特徴を把握し、後悔のない選択をしてくださいね。
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