前回は「ペットと快適に過ごすための主な対策」をご紹介しましたが、ペットの種類や習性などによってすべきことは変わります。中でも多くの人が飼っている犬や猫と一緒に暮らすにあたり、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。
愛犬が落ち着いて過ごせる空間をつくるために
愛犬も家族の一員だと考えている方であれば誰しも「快適な住まいを用意してあげたい」と感じていることでしょう。しかし“人間にとって快適な空間”と犬のそれとは、必ずしも同じではありません。愛犬の犬種や住環境に応じた工夫が必要です。
自宅の庭でのびのびと遊ばせたい。でも、注意事項あり!
昨今は、室内飼いの犬が増えていますが、一戸建てであれば「庭先で遊ばせたい」と考える人も多いのではないでしょうか。小さくてもドッグランを設けることができれば最高ですし、立水栓を設置できれば散歩帰りに足を洗ったり、水遊びをしたりできて便利です。更に、脱走防止用のフェンスも忘れずに設置しましょう。
ガーデニングも注意が必要です。人間にとって害はなくても、犬にとっては危険な植物がいくつもあります。「玉ねぎや長ねぎを食べさせてはいけない」という話を聞いたことがある方は多いと思いますが、その他にもユリやチューリップ、シクラメン、ベゴニアなど球根のある植物は犬にとって危険です。
また、サトイモ科の植物には中毒症状の原因となるシュウ酸カルシウムが含まれているため、カラーやスパティフィラムといった植物も要注意です。
「外で遊ばせたいものの、ちょっと心配。」そんな方は、リビングの延長線上にウッドデッキを設けてみてはいかがでしょうか。室内と同様の環境で外のように活発に過ごせます。リビングとウッドデッキの間に段差ができないように配慮すると尚良いでしょう。
犬は階段から落ちやすい!? 安全性を高めるための対策とは?
人間に合わせて作られた段差の昇降が、犬にとっては重労働で、足腰に負担がかかります。チワワのような小型犬や、ダックスフンドのように胴長の犬などは特に、椎間板ヘルニアになるリスクが高いと言われていますし、老犬も注意が必要です。
少しでもリスクを軽減するため、部屋はできるだけフラットに、階段はできるだけ緩やかな段差にするなど配慮しましょう。コルクやラグを貼るなど、滑りにくい加工を施す工夫も必要です。
また、ソファなどお気に入りのスポットがある場合は、無理なくアプローチできるように専用のステップを設けてあげると良いでしょう。人間と比べて視覚も劣るため、識別しやすい色にすることもポイントです。
一般的に、青や黄色は認識しやすく、赤は識別が難しいと言われています。
愛犬が快適に暮らせる場所はどこ? 温度管理も重要!
犬を飼っている方の多くが、ケージを利用していると思います。ケージ内にトイレを設置している方も多いのではないでしょうか。しかし、犬は寝る場所の近くには排泄をしない習慣があります。トイレは、愛犬が落ち着けるように奥まっている場所に設置しましょう。
脱衣室や浴室の近くなら、粗相をしてもすぐに洗えるため、清潔な状態を保ちやすいでしょう。
ケージは、リビングなど家族の目が届きやすいところに設置したいところ。ただし、音に敏感な犬を騒音のストレスから守るため、音響機器の近くは避けましょう。日当たりや風通しの良いところがベストです。
温度管理も重要です。犬種によりますが、犬は基本的に暑がりです。愛犬が長い時間を過ごす場所、ケージを設置するスペースは、冷房が効きやすい場所にすると良いでしょう。外から遠隔操作で冷房を作動させるシステムを導入すれば、家を空けなければならない日も安心です。 また、寒さにはある程度強いものの、ケージの位置が窓に近いと隙間風で体を冷やしてしまうことも。犬を飼う前提で家を建てるのであれば、事前にケージのベストポジションを決めておきましょう。合わせて、ペットを見守ることができるセンサーカメラを設置しておけば、トラブルや異変がないか外出先からチェックできてより安心です。
犬を飼う人が減少する一方、猫の飼育数が安定している理由は?
一般社団法人 ペットフード協会が発表した、2018年の「全国犬猫飼育実態調査※」によると、犬の飼育頭数は年々減少傾向にある一方、猫はほぼ横ばい。2017年以降は猫の飼育頭数が、犬を上回っています。背景には、猫が散歩やしつけの手間が掛からず室内飼いしやすいこと、狭小住宅でも留守がちな家庭でも比較的飼いやすい事情があると考えられます。
しかし、室内飼いの猫は運動不足になりがち。猫の習性である爪とぎも家の中で行うことになるため、それらに配慮した家づくりをしたいところです。
愛猫の運動不足やストレス解消に「キャットウォーク」
限られたスペースでも伸び伸びと過ごし、運動不足やそれにともなうストレスを解消するために、猫が好きな高いところへ行ける動線を作りましょう。キャットウォークやキャットタワーの設置がおすすめです。置き型のキャットタワーを購入したり、DIYで製作したりすることもできますが、猫が飛び乗っても安全に着地できる強度を保てるか、注意が必要です。
設置位置や動線も重要です。人の手も届かない位置にキャットウォークを設置してしまうと、汚れた際に掃除をするのが大変ですし、万が一の際に助けてあげることも難しくなります。愛猫にとってステップの間隔は適切か、行き止まることなく走り回れるか、脱走してしまう恐れはないかシミュレーションした上で作りましょう。
愛猫が自由に行き来できる「キャットドア」
好奇心旺盛な猫は、家のあちこちを動き回りたいはず。移動する度にドアを開けてあげるのは大変ですし、そもそも猫は夜行性ですから、人が寝静まっている間に移動したくなることも少なくありません。ドアを開けっぱなしにしておけば冷暖房効率の低下にも繋がりますし、ドアが閉まっていれば体当たりしたり、引っかいて大きな音を立てたり、ドアに傷をつけたりするかもしれません。
そこで是非取り入れたいのが「キャットドア」。最近はロックを掛けることができるタイプも増えていますので、状況に応じて出入りを制御することができて便利です。
ただし、玄関ドアに設置する場合、飼い猫以外の猫が侵入してしまう恐れがあります。最近は首輪などで飼い猫を判断する、センサーを備えたキャットドアも増えていますので、利用を検討すると良いでしょう。また、愛猫にとってドアが重いとなかなか開けてくれない、開閉音がうるさくて気になるといった事例や、体型によってはスムーズに通り抜けできないことも。
愛猫が活用できそうか、よく検討の上で取り入れましょう。
爪とぎやトイレのスペースは、どこに設けたらいい?
猫は縄張りを示すため、爪とぎをしてアピールします。放っておけば家がボロボロになってしまう可能性もあるため、猫の目につきやすい場所に麻紐を巻く、腰壁を設けるといった対処が必要です。決まった場所で爪とぎをしてくれるように誘導することも忘れずに。
犬を飼う場合と同様、猫もトイレスペースが必要です。食事をとる場所から距離をとり、静かに過ごせる場所を確保してあげましょう。狭くて暗いところや、人が見えないところを好みますが、健康管理のために排泄の様子はチェックすることをおすすめします。猫砂の種類も重要です。 例えば一般的な紙のタイプですと、トイレに流すことができて取り扱いはラクですが、軽いため埃が舞いやすい傾向があります。材質ごとの特徴を踏まえて選ぶとお世話の手間を軽減できます。
まとめ
どんなペットと暮らすかによって、家づくりの際に注意することや工夫したいことが変わってきます。「これから家を建てる」という方は是非、ペットとの生活を踏まえた家づくりにチャレンジしてください!
【参照】
※) 一般社団法人 ペットフード協会 2018年「全国犬猫飼育実態調査」
ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。