ペットとともに快適に暮らすには? 気をつけたい4つのポイント

一般社団法人 ペットフード協会が発表した、2018年の「全国犬猫飼育実態調査(※1)」によると、犬を飼育しているのは約715.4万世帯、猫を飼育しているのは約553.9万世帯。その中で、犬は32.5%、猫は78.3%が室内のみで飼育されています。
室内でペットと一緒に暮らせるように「ペット可のマンションに引っ越した」「一戸建ての購入を検討している」という方も少なくないようです。今回は、人もペットも快適に暮らすための家づくりや注意点を考えてみましょう。

肉球を守るために配慮したい、床材選びのポイント

肉球を守るために配慮したい、床材選びのポイント

犬も猫も、ぷにぷにとした肉球は見ているだけで愛らしく、チャームポイントと言えるでしょう。しかし、肉球には飼い主を魅了するだけでなく、様々な役割があります。例えば、足への衝撃を和らげる「クッション効果」により、裸足であちこちを歩き回ってもケガをしにくいのです。 また、健康な肉球は湿っており、これにより「滑り止め」の効果を発揮します。さらに猫の場合は、顔のお手入れ道具としても欠かせませんね。

ペットとともに暮らす際は、大切な肉球が傷つかないような床材を選びたいところ。ペットも年齢を重ねるとともに体が衰え、肉球も乾燥しがちになるため滑りやすいフローリングの床では転んで怪我をしてしまうこともあります。フローリングに滑り止め効果があるコーティング剤を使用する、毛足が短いカーペットを敷くといった対応で大切なペットを守りましょう。 ただしカーペットは、ボロボロになることを想定し敷き替えやすいタイプを選ぶことも大切です。また、元々やわらかい無垢材やコルクなどを床材にする方法もおすすめ。爪痕などで傷がつきやすいため「傷も味わいのうち」と思える方には向いています。

傷や汚れ、ニオイにも配慮したい。壁材はどうする?

傷や汚れ、ニオイにも配慮したい。壁材はどうする?

ペットとともに暮らすうえで、劣化しやすいのが壁材です。賃貸住宅の場合、猫が爪を研いだり、犬がかじったりして壁をボロボロにしてしまい、退居時に高額の修繕費用を請求されることも少なくありません。賃貸住宅の場合は、入居時に剥がせるシール状の壁紙を貼るくらいしか対策がありませんが、ペットと暮らす前提で家を建てるのであれば、始めから傷に強い壁紙を選びたいところ。 「表面強化」などと表記されたタイプを選ぶと良いでしょう。また、防汚タイプ撥水タイプの壁紙なら、ペットが壁を汚してしまっても掃除がしやすく、きれいな状態を保ちやすいでしょう。ニオイが気になる場合は、消臭効果のある壁紙がおすすめ。消臭効果のある機能壁材や、珪藻土・漆喰といった自然素材も効果があります。 特に珪藻土や漆喰は、上から塗り重ねて部分補修が可能で、メンテナンスをしやすい特徴があります。

メンテナンスフリーを狙うなら、腰壁で傷や汚れが付きやすい部分をガードする方法も。板材などを貼ればペット対策としても、空間のアクセントとしても有効です。合わせて、コンセントを通常よりも上の位置に設置する、コンセントカバーを設置するといった工夫で、いたずらによる破損や感電を防止することができます。

家じゅうを毛が舞う事態を避けるために。掃除がしやすい環境づくり

家じゅうを毛が舞う事態を避けるために。掃除がしやすい環境づくり

犬や猫は、全身が毛で覆われています。夏は暑さを和らげるために毛が抜け、冬は寒さをしのぐために毛が生えてくることで体温を調節しているのです。また、外部の刺激から身を守るためにも、毛が重要な役割を果たしています。 犬・猫ともに、被毛は「シングルコート」と「ダブルコート」に分類でき、シングルコートは換毛期がありませんが、ダブルコートは春や秋に毛が生え替わるため、毛が抜け落ちやすい特徴があります。例えば犬なら柴犬やポメラニアン、猫ならアメリカンショートヘアやロシアンブルーがダブルコートです。

被毛の種類により差はありますし、毎日のブラッシングである程度の抜け毛を取り除くことができますが、毛が抜け落ちることを完全に防ぐことは不可能です。新築時からペットとの暮らしを想定しているのであれば、できるだけフラットな床にすることで、掃除機をかけやすいようにすると良いでしょう。 床にできるだけ物を置かない方が、ロボット掃除機を作動させやすくペットも快適に過ごせます。空間にぴったりと収まる造り付け家具を採用すれば、室内をよりすっきりとさせることができます。また、床材の色によっては落ちた毛がとても目立つため、ベージュやグレーなどの床材を選ぶのも手です。

近所からの苦情を避けるために。鳴き声対策も必要!

近所からの苦情を避けるために。鳴き声対策も必要!

環境省の「騒音に係る環境基準について(※2)」によると、居住用の地域で人間が快適に過ごせる騒音レベルは、昼間が55デシベル以下・夜間が45デシベル以下とのこと。同じく環境省が発表している「生活騒音の現状と今後の課題(※3)」によれば、犬の鳴き声は88~100デシベル。 家族にとっては気にならない鳴き声でも、隣近所にとっては「騒音」になりかねません。犬の遠吠えや猫の発情期、夜鳴きなどによるご近所トラブルを防ぐために、夜間は雨戸を閉める、防音カーテンや吸音材を設置するといった対策が必要です。
新築時やリフォーム時であれば、音が漏れやすい窓を防音性能が高い二重窓にすると良いでしょう。シャッターの設置も効果的です。また、一戸建ての場合は大抵、壁の中にグラスウールやセルロースファイバーなどの断熱材を施工します。いずれも吸音材として機能するため、断熱材を隙間なく施工することで外部に漏れる音を軽減できます。
また、マンションの場合は下のフロアに足音や飛び降りたときの衝撃音が響いている可能性もあります。ペットの足を守るだけでなく、振動対策としても床材に気を配りたいところ。前述のカーペットやコルク材などがおすすめです。

まとめ

今回は、ペットと快適に過ごすための主な対策をご紹介しました。この他にも、ペットの生活動線を考えた間取りや自然換気しやすい窓の位置など、大切なペットのためにできることはたくさんあります。次回は、犬と猫、それぞれに特化した家づくりのコツをご紹介します。お楽しみに!


【参照】
※1) 一般社団法人 ペットフード協会 2018年「全国犬猫飼育実態調査」
※2) 環境省「騒音に係る環境基準について」
※3) 環境省「生活騒音の現状と今後の課題」

住宅ライター 斎藤 若菜
住宅ライター 斎藤 若菜

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。

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