在宅ワークの普及で住宅需要が変化。都心の駅近から郊外の一戸建てへ

新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちのライフスタイルは大きく変化しました。家を一歩出ればマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを保つよう配慮する毎日が続いています。また、多くの企業でテレワークの導入を進め、現在も在宅勤務を続けている人がたくさんいます。こうした状況下で、自宅は「寝るために帰る場所」ではなく「仕事もプライベートも兼ねる場所」となりました。これから住宅購入を考えている人にとって、どのような住まいがベストな選択なのでしょうか?

「職住近接」から「職住融合」へ。郊外の一戸建てに注目

「職住近接」から「職住融合」へ。郊外の一戸建てに注目

これまでは、都市部で働く共働き世帯を中心として職場の近くに住まいを構える「職住近接」のライフスタイルに注目が集まっていました。通勤時間が短縮されることで、空き時間を有効に使えるようになり満員電車に揺られるストレスも軽減され、育児中の家庭であれば時短勤務の必要がなくなるというメリットもありました。
しかし、新型コロナウイルスの影響により外出を控えるようになってからは、在宅勤務を推奨する企業が増えたことにより住まいが勤務先や最寄り駅に近いことが必ずしも重要ではなくなってきました。自宅と職場が融合した「職住融合」を実践するのであれば、無理をして都心の物件に高い家賃を支払ったり窮屈な空間で我慢をしたりするよりも、限られた予算で住空間をととのえやすい「郊外の一戸建て」で暮らす方が良いのではないかと考えるのは自然な流れと言えるでしょう。

郊外へ引っ越すニーズが増加。背景に外出自粛やテレワークの浸透か

郊外へ引っ越すニーズが増加。背景に外出自粛やテレワークの浸透か

株式会社すむたす「コロナ禍における『住まい選び』に関する意識調査」の詳細はこちら

株式会社すむたすの調査によると、約半数にあたる48.4%の人が今後の引っ越し先として郊外の物件も選択肢になり得ると回答しています。また、現在は都市部に住んでいる人のうち29.6%が、郊外に引っ越しても良いと考えていることがわかりました。郊外から都市部へ引っ越したい人の20.6%を上回っていることから、外出自粛やテレワークの浸透により郊外へ引っ越すニーズが増えたことがうかがえます。

郊外の一戸建てで暮らすメリットとデメリットは?

                 
郊外の一戸建てで暮らすメリットとデメリット
メリットデメリット
都心と比べて購入価格が安い通勤に時間がかかる
物価も安い車社会であることが多い
住環境をととのえやすい都市部に比べて資産価値が落ちやすい

職場への通勤アクセスよりも住み心地を重視し、郊外の一戸建てを購入しようと考えている方もいるでしょう。都心から少し離れたエリアで暮らすことで、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

大きなメリットとしては、土地価格が安い郊外エリアであれば、都心と比べて購入価格が安いことが挙げられます。無理のない価格で土地を購入できれば、建物にお金をかけることができるので十分な広さやガーデニングを楽しめる環境、希望する台数分の駐車場、充実した設備といった様々な希望を実現出来るかもしれません。住宅費用そのものを抑えれば、住宅ローンの借入金額を抑えて早期に完済することも可能です。
郊外は土地価格が安いだけでなく物価も安いので、日々の生活費も抑えることができます。経済的な余裕が生まれやすい環境といえるでしょう。
また住環境をととのえやすいこともポイントです。広い公園など自然を間近に感じられるスポットが多い傾向にあり、学校のグラウンドなども広々としています。伸び伸びとした環境で子育てができるでしょう。静かな環境で暮らしたい人にも、郊外での暮らしが合っています。交通量の多い道路沿いを避けて、隣家との距離もゆとりをもって建てやすく、閑静な環境でストレスのない毎日を送ることができるでしょう。

一方、デメリットとしては通勤に時間がかかることが挙げられます。いくらテレワークを推奨する企業が増えているとはいえ、すべての業務を在宅で行うことは難しく多くの業種である程度は出勤が必要になるでしょう。満員電車に長時間揺られて通勤することは、ストレスの原因にもなります。
更に郊外は車社会であることが多いため、公共交通機関が整備されていないエリアであれば日常的な移動の足としてマイカーが必須となります。今までマイカーを所有せずに生活していた人であれば、様々な維持費も生じることが負担に感じるかもしれません。
また、郊外の物件は都市部に比べて資産価値が落ちやすいこともデメリットです。将来的に住み替えを考えている人であれば、「都心・駅近」の物件に比べて思うような価格で売却できない可能性があります。

郊外の一戸建てで暮らす生活が向いているのはこんな人!

郊外の一戸建てで暮らす生活が向いているのはこんな人!

郊外の一戸建てで暮らすという選択は、万人に向いているわけではありません。デメリットよりもメリットをより享受できるのはどのような人たちなのでしょうか。
まずは、テレワークである程度の業務を行える職種であること。通勤する日が多いほど、家が会社から遠いことが負担になってしまいます。
子育て中の人にとっても郊外の一戸建ては魅力的です。子どもをのびのびと育てやすいですし、繁華街が近い都市部と比べて治安がいいエリアを見つけやすいでしょう。子どもの人数が多い場合も、都市部と比べて同じ予算で大きな家を建てやすいので、部屋数の確保や子どもが音を立てても近隣に迷惑をかけない環境を作りやすいと言えます。
都市部でマイカーを所有している人は、郊外の一戸建てに引っ越すことで駐車場代を抑えることができます。車の出し入れが容易な駐車場を確保しやすいこともポイントです。
また、前述の通り都市部の物件と比べて売却時の価格が下がってしまうリスクがあるので、転勤など転居の予定がないことも確認しておくべきでしょう。

まとめ

都市部の家を選ぶか郊外で家を建てるか、どちらが正解ということはありません。家族構成や勤務先の就業スタイル、他にも日々の過ごし方など様々な面から考えて自身や家族にとってベストな選択をしたいものですね。

住宅ライター 斎藤 若菜
住宅ライター 斎藤 若菜

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。

新築一戸建て注文住宅購入者へのインタビュー記事はこちら

新築一戸建て注文住宅購入者のインタビュー記事
新築一戸建て注文住宅購入者のインタビュー記事