【コロナ禍の住宅ローン】返済ができなくなるとどうなる? 乗り切る対策は?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年4月に緊急事態宣言がなされ私たちの日常生活は大きく変わりました。仕事の面においては、毎日出勤する代わりに在宅勤務へ切り替えとなって残業代が入らなくなった人、経営する店を通常通り営業できなくなってしまった人、受注がなく実質休業状態の人など、大幅な収入減が避けられない状況です。住宅ローンを利用していれば「これまで通りに返済できるのか」不安を抱く家庭も多いのではないでしょうか。

住宅ローンの返済が厳しく、延滞するとどうなる?

給与や収入が減れば、必然的に住宅ローンの返済が厳しくなるでしょう。しかし、住宅ローンの返済が滞ってしまうとさまざまな問題が生じます。具体的にどのような問題があるのか見ていきましょう。

住宅ローンの優遇金利制度が利用できなくなる

住宅ローンを延滞すると、優遇金利制度が利用できなくなる

住宅ローン借り入れ中の方の多くが「優遇金利制度」の適用を受けています。変動金利の「基準金利(店頭金利)」は、2009年以降2.475%を維持していますが、この金利は定価にあたる金利で実際には金融機関ごとに定めた優遇金利を差し引いた金利が適用されます。ある銀行を例に挙げると、2.475%から1.85%の優遇金利を差し引き、実際には0.625%の金利が適用されます。 しかし、住宅ローンの優遇金利は一度でも延滞してしまうと適用対象外となる決まりがあります。コロナ禍の現在では、交渉次第で支払いの猶予など柔軟な対応をしてくれる金融機関が多いでしょうが、何ヶ月も延滞を続けていれば優遇金利適用対象外となる事態を避けられません。前述の例の場合は今後の返済は2.475%の金利が適用されることになり、返済額が大幅に増えて今まで以上に家計が火の車となります。優遇金利は、一度解除されると基本的には元に戻りませんので注意しましょう。

団体信用保険の保険金が支払われない可能性がある

住宅ローンを延滞すると、団体信用保険の保険金が支払われない可能性がある

住宅ローンの借り入れとセットで、ほとんどの方が団体信用生命保険(以下団信)に加入していると思います。団信の保険料は住宅ローン金利に含まれるケースが一般的なので、住宅ローンの返済が滞ってしまった場合は自動的に団信の保険料も支払っていない状態となることが多いのです。万が一住宅ローンを延滞しているときに、債務者に何かがあっても「団信の契約が失効しているので保険金が支払われない」という事態も起こり得ます。

高金利な遅延損害金が発生する

住宅ローンを延滞すると、高金利な遅延損害金が発生する

ローンを期限までに返済することができなければ「遅延損害金」が発生します。住宅ローンの場合、標準的な遅延損害金利率は年14.6%です。ただでさえ返済が難しく資金繰りに苦労しているなか、遅延損害金の負担が加われば今まで以上に返済が難しくなることは想像に難くないでしょう。

「ブラックリスト」に登録される可能性もある

住宅ローンを延滞すると、「ブラックリスト」に登録される可能性もある

住宅ローンをはじめとする各種ローンやクレジットカードの支払いなどを延滞すると、延滞の履歴が個人信用情報照会機関に記録されます。これが俗に「ブラックリストに載る」と言われる状況です。一度延滞情報が登録されてしまうと、その後に支払いをしても5年以上の間記録が残ってしまうと言われており、各種ローン契約やクレジットカードの利用などができなくなります。

住宅ローン返済が苦しくなったときの救済策は?

住宅ローンの返済を続けることが厳しいと感じたら、少しでも早く対策を講じる必要があります。引き落とし日が来る前に借り入れ先へ連絡し、延滞せずにすむ方法を考えましょう。主な延滞回避策を以下でご紹介します。

返済計画を見直す

住宅購入後の暮らしを想像した資金計画を

住宅ローンの返済が継続できないと感じたら、まずは借り入れ先の金融機関に相談しましょう。「返済を一時的にストップし当面は利息のみ支払う」、「現状で無理のない返済額に減額してもらう」といった返済条件の緩和に応じて貰える可能性があります。ただし、住宅ローンの返済猶予は一時的な措置であり、借り入れ分は必ず返済しなければならないことに変わりはありません。条件によっては総返済額が増え返済期間が長期化するリスクがあること、返済猶予を適用するにあたり金融機関による再審査が行われることを踏まえたうえで決断しましょう。

なお、【フラット35】を利用している場合、新型コロナウイルス感染症の影響で返済が困難な方を対象として以下1~3の要件すべてに当てはまれば、返済期間を最長15年間延長できます。

1.離職や病気等の事情により返済が困難となっている方
2.以下の収入基準のいずれかを満たす方
 ・年収が年間総返済額の4倍以下
 ・月収が世帯の人数×64,000円以下
 ・住宅ローンの返済負担率が以下を超え、収入減少が20%以上

年収返済負担率
300万円未満30%
300万円以上 400万円未満35%
400万円以上 700万円未満40%
700万円以上45%

3.返済方法の変更により、今後の返済を継続できる方
詳しくは、住宅金融支援機構の発表(リンク:https://www.jhf.go.jp/files/400352693.pdf)をご確認ください。

借り換えを実施する

借り換えを実施する

金利が高い時期に住宅ローン契約を結んだ方は、借り換えをすることで月々の返済額を抑えることもできます。ただし、初期に数十万円のまとまった資金が必要になるため、その費用を捻出できるかが焦点となります。また、融資手数料や印紙税、登録費用といった諸費用がかかることを踏まえたうえで借り換えメリットがあるのかどうかを慎重に見極めることが大切です。

任意売却を行う

任意売却を行う

どうしても住宅ローンの返済が困難な場合、自宅を手放すしかありません。返済ができないからといって放置してしまうと、一定期間を経て住宅ローン契約が解除され一括返済を求められます。一括返済ができないとなると自宅を「競売」にかけられ、第三者が入札して代金が支払われた時点で自宅の所有権が無くなり、退去を命じられます。

競売で売却された場合、市場価格と比べて抑えた価格で取り引きされるケースが一般的です。これに対し、金融機関や保証会社と交渉して一般的な不動産取引として売却できる「任意売却」であれば、一般的な不動産の売却と遜色ない価格で売却ができるので、手元に多少のお金が残る可能性や引っ越し費用を捻出できる可能性がでてきます。競売のように情報が公になることがなく、近所の人に事情を知られずに済む可能性が高いこともメリットと言えるでしょう。

まとめ

住宅ローンの返済が厳しくなった際の対応方法はいくつかありますが、いずれの場合もスピーディな対応と決断が大切です。時間の経過とともに状況は悪化しますので、最悪の事態となる前に早期解決を目指して対策を講じましょう。

住宅ライター 斎藤 若菜
住宅ライター 斎藤 若菜

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。

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