寄せ植えは、ひとつの鉢を小さな庭に見立てて楽しめることから「ミニュチュアガーデン」とも呼ばれています。好みに合わせて自由につくることができるので根強い人気がありますが、その一方で「難しそう」という声もあるようです。そこで、ガーデンキュレーターの小島理恵さんに、ガーデニング初心者の方でも気軽に始められる玄関の寄せ植えのつくり方を教えていただきました。寄せ植えづくりのコツや植物の選び方、寄せ植えにオススメの多年草15種などもご紹介します。
株式会社Q-GARDEN代表
信州大学農学部森林科学科卒業後、大手造園会社に入社。その後、独立し、2011年に株式会社Q-GARDENを設立。庭づくりに関わる多方面の関係者と同時に双方向の調整・仲介をおこない、お客様の理想により近いお庭の提供を目指す日本初のガーデンキュレーターとして活躍中。
2023年2月、著書『はじめてのオーガニックな庭づくり ~植物の力を引き出すガーデニング術』を家の光協会より出版。
ガーデンキュレーターの小島理恵です。寄せ植えは、言わば“小さな庭”。どの植物を選ぶかによって、水やりや手入れの頻度が変わってきます。植物の選び方を知らないと、うまく育てられなかったり枯らしてしまったりするので、ガーデニング初心者の方には難しいと感じるかもしれません。しかし、植物の性質を知り、環境に合わせた植物を選べば、誰でも寄せ植えを楽しむことができるんですよ。まずは寄せ植えをつくる前に押さえておきたいポイントから解説いたします。
目次
1.植物を枯らさずに育てるには? 寄せ植えづくりのコツ
2.初心者でも育てやすい! 多年草(宿根草)でつくるロングライフ&ローメンテナンスの寄せ植え
3.玄関の寄せ植えにオススメ! 葉っぱの色や形が魅力的な多年草(宿根草)9種
4.長期間花を咲かせる! 玄関の寄せ植えにオススメの多年草(宿根草)6種
5.多年草でつくる玄関の寄せ植えのコツ まとめ
植物を枯らさずに育てるには? 寄せ植えづくりのコツ
寄せ植えは、“植物の性質を合わせる”ことが重要です。植物は、日なたを好んだり日陰や半日陰でも育ったり、暑さに強い、乾燥に弱いなど、さまざまな性質をもっています。では、異なる性質の植物をひとつの鉢に植えてしまうと、どうなるでしょうか? 毎日水やりが必要な植物と、乾燥を好む植物を一緒に植えれば、うまく育たないことが想像できると思います。植物の性質を知るためには、売られている苗のラベル裏をチェックしましょう。性質のほかにも、生育環境や育て方など必要な情報が入手できるので、必ず目を通してください。育苗メーカーや生産者によって記載されている内容にばらつきがあるため、情報が不足している場合は「植物名 育て方」などでインターネットを検索すると良いでしょう。
玄関の環境を知り、環境に合った植物を選ぶ
寄せ植えを置く場所、玄関の環境を知ることも重要なポイントです。日当たりや風通しなどを把握したうえで、環境に適した植物を植えましょう。似た環境で生育している品種はうまく育つ確率が高いので、近隣のお家や公園に何が植えられているのかを観察するのもオススメです。
環境に合った植物を選ぶには、原産地のチェックも欠かせません。お住まいの地域と原産地の気候が近ければ、生育に適した環境だと言えるでしょう。
寄せ植えに適したプランター・鉢の選び方
寄せ植えに適しているのは、大きめのプランターです。底が浅いと土が乾きやすく、水やりの回数が増えて大変ですから、できれば深めのものを選ぶようにしてください。材質は、吸水性と通気性が高い「素焼き」がオススメですが、重くて割れやすいので要注意。素焼き以外のプランターを選ぶ際は、「水抜き穴」をチェックしましょう。鉢植えでうまく育てる最重要ポイントは「水はけ」なので、水抜き穴がひとつしかないものや小さくて水が抜けにくいものは、避けるのが無難です。どうしても使いたい容器に水抜き穴がなければ、ドリルを使って開けてください。私もブリキ缶などを用いるときは自分で開けて使っています。プランターのデザインは好みで選んで良いのですが、植物のために水抜き穴は適度につくってあげましょう。
初心者でも育てやすい! 多年草(宿根草)でつくるロングライフ&ローメンテナンスの寄せ植え
植物は大きく分けると「木」と「草」から成り、草は「一年草」と「多年草(宿根草)」に分類することができます。一年草は、芽が出てから枯れるまでが約1年、種で次のシーズンにつなぎます。多年草は、生育期が終わると地上部を枯らすものもありますが、株は地中で残っていて、翌年の生育期になると再び花を咲かせるため、毎年楽しむことができます。
多年草を使った寄せ植えは、忙しい方や植物の手入れがそれほど得意でない方にもオススメできます。一年草は限られた期間で開花・受粉し種を付けるので、咲き終えた花を摘む花がら摘みなどこまめな手入れが必要ですが、多年草は期間が長いぶん生長がゆっくりで、それほど手入れを必要としません。植える場所の環境に合った品種を選んであげれば病気になりにくいので、さらに育てやすくなります。
ロングライフ&ローメンテナンスな多年草の庭は、世界的なトレンドにもなっていることをご存知でしょうか? 「イングリッシュガーデン」と言えばバラを思い浮かべる方が少なくないと思いますが、近年は多年草へと移行されています。多年草は頻繫に植え替える必要がないので長く楽しめますし、費用を抑えられるという点でも魅力的です。
玄関の寄せ植えにオススメ! 葉っぱの色や形が魅力的な多年草(宿根草)9種
多年草は、花が咲く期間が短くても、葉に魅力をもつ植物が多くあります。形や色など特徴はさまざまで、花が咲かない時期でも十分楽しむことができます。花のない時期は花がら摘みの必要はなく、ローメンテナンスなのも魅力的。ここからは、多年草(宿根草)のなかから寄せ植えにオススメな植物をピックアップしてご紹介します。
寄せ植えにオススメの多年草①ツルニチニチソウ
【開花期】春〜初夏(3月下旬~6月上旬ごろ)
【花 色】紫、白、青
【原産地】南ヨーロッパ
【最低温度】約−5℃
【生育環境】日なた、半日陰
「ツルニチニチソウ」は、その名の通り長いつるを伸ばして育ち、ニチニチソウに似た花を咲かせる多年草です。葉に斑の入る品種を選ぶと暗い空間でも明るく演出することができます。乾燥や寒さに強いので、育てやすいと思います。
寄せ植えにオススメの多年草②カレックス
【開花期】春〜初夏(4月~6月ごろ)
【花 色】茶、白
【原産地】全世界
【最低温度】約−15℃
【生育環境】日なた、半日陰
「カレックス」はイネ科の多年草で、細長い葉を特徴としており、黄色に緑の美しいコントラストを年中楽しむことができます。栽培は簡単で、暑さにも寒さにも強いのですが、品種によって湿った場所を好むものや乾燥を好むものまでさまざま。性質をよく確認して植えるようにしましょう。
寄せ植えにオススメの多年草③ニシキシダ
【原産地】日本
【最低温度】−15℃~−25℃
【生育環境】半日陰
「ニシキシダ」は日本全国に分布する夏緑性のシダで、日本庭園でも良く用いられています。花は咲かせませんが、葉模様が美しいのが特徴。葉が白っぽく発色する「シルバーフォールズ」や、新葉に赤みが強く出る「バーガンディレース」など、さまざまな品種があります。直射日光には弱いものの、半日陰に植えれば育てやすく、病害虫の心配はほとんどありません。
寄せ植えにオススメの多年草④タイム
【開花期】晩春〜初夏(5月~6月上旬ごろ)
【花 色】赤、ピンク、白、淡紫
【原産地】南ヨーロッパ
【最低温度】約−20℃
【生育環境】日なた
「タイム」は、独特な香りで楽しませてくれるハーブとしても有名な植物です。品種によってスパイシーな香りがするものや、柑橘系や甘い匂いのするものなどがあります。日当たりと風通しの良い場所が適していて、育てる際は葉が蒸れないようにするのがポイント。生長が早いので、適度に切って使うと良いでしょう。葉が斑のものを選ぶと寄せ植えのアクセントになると思います。
寄せ植えにオススメの多年草⑤ツワブキ
【開花期】秋〜冬(10月〜12月ごろ)
【花 色】黄、白、オレンジ
【原産地】日本、中国、朝鮮半島
【最低温度】約−10℃
【生育環境】日なた
「ツワブキ」は、艶があるハート型の葉が特徴で、葉っぱに斑が入ったり、フチが波打ったりなど、一年を通して変化を楽しむことができます。秋になるとキクに似た花を10~30輪ほど咲かせるのも魅力的。日なた、もしくは明るい日陰を好み、それほど水を与えなくても元気に育ちます。
寄せ植えにオススメの多年草⑥ラミウム
【開花期】晩春〜初夏(5月~7月ごろ)
【花 色】紫、白、ピンク、黄など
【原産地】ヨーロッパ、アフリカ北部、アジアの温帯地域
【最低温度】約−10℃
【生育環境】半日陰
「ラミウム」は、丸みのある三角形の葉が美しい多年草で、葉に白や銀白色の斑が入った品種もあります。過湿が苦手で、カビが原因の「斑点病」になることがあるので、水やりは葉に水がかからないように注意しましょう。花はサルビアのように花穂を伸ばして咲きます。
寄せ植えにオススメの多年草⑦ヒューケラ
【開花期】晩春〜初夏(5月~7月中旬ごろ)
【花 色】赤、白、ピンク、緑
【原産地】北米、メキシコ
【最低温度】約−20℃
【生育環境】半日陰
「ヒューケラ」と言えば、なんといってもカラフルな葉が人気。黄色・オレンジ・赤・紫・シルバーなど多色で、ヒューケラだけで寄せ植えをつくる方もいるほどです。丈夫で耐暑性や耐寒性も高いため、ローメンテナンスで育てることができます。
寄せ植えにオススメの多年草⑧アイビー(ヘデラ)
【開花期】秋〜冬(10月〜12月ごろ)
【花 色】黄緑
【原産地】北アフリカ、ヨーロッパ、アジア
【最低温度】約0℃
【生育環境】日なた、半日陰
「アイビー」は、星型やハート型、カール型などさまざまな形の葉が人気のかわいらしい植物です。アイビーは繁殖力が旺盛でどんどん伸びますが、刈り込みにも強いのが特徴。伸びすぎてしまったときや、伸びてほしくない方向に伸びてしまったときは、剪定をしましょう。
長期間花を咲かせる! 玄関の寄せ植えにオススメの多年草(宿根草)6種
多年草(宿根草)のなかには、一年に何度も花を咲かせるものがあります。花がら摘みや切り戻し(冬剪定)などの手入れは必要ですが、一度植えれば繰り返し楽しめるのが魅力。花の色や形は多くのバリエーションがあるため、寄せ植えに1株でも入れると良いアクセントになるはずです。
寄せ植えにオススメの多年草⑨ヘレボルス
【開花期】冬〜早春(12月~3月ごろ)
【花 色】紫、ピンク、赤、白、黄色、黒、複合色など
【原産地】ヨーロッパ、コーカサス、中国西部
【最低温度】約−15℃
【生育環境】日なた、半日陰
「クリスマスローズ」として親しまれているヘレボルスは、大まかにクリスマスの時期に咲く「ニゲル」、早春に咲く「オリエンタリス」に分かれます。さまざまな品種があり、色や形のバリエーションも豊富でコレクションしている方もいるほどです。花に見える部分は、実は萼片(がくへん)で、この萼片が長く残ることで、お花のように長い期間楽しめるというわけです。
寄せ植えにオススメの多年草⑩ゼラニウム
【開花期】早春〜晩秋(4月〜6月/9月〜11月ごろ)
【花 色】赤、ピンク、白、黄色、オレンジなど
【原産地】南アフリカ
【最低温度】約−3℃(品種による)
【生育環境】日なた、半日陰
「ゼラニウム」は色鮮やかな花が特徴です。過湿が苦手で、土が湿っていると根腐れを起こしてしまうので、乾燥に強い植物と一緒に植えるようにしましょう。花が咲き終わった房を花茎の付け根で切り取れば、病害虫を予防できます。
寄せ植えにオススメの多年草⑪スーパーアリッサム
【開花期】一年中
【花 色】白
【原産地】地中海沿岸
【最低温度】約−5℃
【生育環境】日なた
日本の暑い夏を越せるように品種改良された「スーパーアリッサム」は、1年を通して花を咲かせるため、玄関の寄せ植えを華やかに演出できます。開花の全盛期は3月〜6月と9月〜12月で、こんもりとしたかわいらしい姿を見せてくれることでしょう。
寄せ植えにオススメの多年草⑫アガスターシェ
【開花期】初夏〜秋(5月〜10月ごろ)
【花 色】オレンジ、赤、黄色、紫
【原産地】中南米
【最低温度】約−10℃
【生育環境】日なた、半日陰
「アガスターシェ」は、花の色も草丈も品種によってさまざまで、寄せ植えにぴったりの植物です。初夏から晩秋までたくさんの花を咲かせるので見応えがあります。日当たりが良いと花数が多くなるので、風通しの良い日なたで育てましょう。花が終わったら花茎を切っておくと、また花が咲きますよ。
寄せ植えにオススメの多年草⑬宿根バーベナ
【開花期】春〜晩秋(4月〜11月ごろ)
【花 色】紫、赤、ピンク、白など
【原産地】南北アメリカ
【最低温度】約−10℃
【生育環境】日なた
「バーベナ」には一年草タイプと宿根草タイプがありますが、長く楽しみたいなら宿根草タイプを選びましょう。開花に日光を必要とし、密集した花を咲かせるので、日当たりと風通しが良い場所が適しています。過湿を嫌うので、毎日水やりをする必要はありません。咲き終わった花を切ると、新しい芽が出てきますよ。
寄せ植えにオススメの多年草⑭マーガレット
【開花期】春〜冬(3月〜6月ごろ/10月〜12月中旬ごろ)
【花 色】白、ピンク、赤、クリーム、黄、薄いオレンジ
【原産地】スペイン領カナリア諸島
【最低温度】約0℃
【生育環境】日なた、半日陰
「マーガレット」は白だけでなく、ピンク・クリーム色など様々な品種があるので、玄関やプランターの雰囲気に合わせてコーディネートできます。高温多湿が苦手なので、風通しの良い場所で乾燥気味に育てましょう。マーガレットは“落ちない花”として合格祈願の縁起担ぎに良いと言われる花で、咲き終わっても自然には落ちません。茎の付け根から切り取ってあげると、翌シーズンにも花が咲きやすくなります。
寄せ植えにオススメの多年草⑮宿根ネメシア
【開花期】春〜晩秋(3月~5月/9月下旬〜11月ごろ)
【花 色】紫、ピンク、白、複合色など
【原産地】南アフリカ
【最低温度】約−7℃
【生育環境】日なた、半日陰
通常の「ネメシア」は一年草扱いなので、長く楽しむ場合は「宿根ネメシア」がオススメ。日光が常によく当たる場所や、午前中は日なたで午後は日陰になるような半日陰が適しています。高温多湿を苦手とするので、花が咲き終わったらこまめに花がら摘みをしてあげてください。風通しが良くなり、病気を防ぐことができます。
多年草でつくる玄関の寄せ植えのコツ まとめ
玄関に寄せ植えがあると、植物の生長を眺めたり、水やりをしてパワーをもらったりなど、生活のアクセントになります。玄関の環境を把握し、植物の性質を合わせたうえで、自分好みの寄せ植えをつくってみましょう。多年草はロングライフ&ローメンテナンス、そのうえローコストなのが魅力的で、ガーデニング初心者の方が取り組む寄せ植えに向いています。植物に見送られ、出迎えてもらうと心も癒やされるので、ぜひ多くの方に楽しんでほしいと思います。
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