一戸建てを建てるなら、使いやすい、居心地が良いなどの機能面はもちろんのこと、目に入るものも好きなものにこだわりたいですよね。一戸建てを見るとき、初めに目に入る「シンボルツリー」は、その名の通りお家の象徴として重視したいポイント。しかし、ひとくちにシンボルツリーと言っても、数多くの樹種から何を選べば良いのか迷ってしまいますよね。そこで、ガーデンキュレーターの小島理恵さんにシンボルツリーの選び方や、手入れの負担が少ない樹種について伺いました。シンボルツリーにオススメの樹種10種もご紹介します。庭づくりのプロの視点からのアドバイスは必見ですよ!
株式会社Q-GARDEN代表
信州大学農学部森林科学科卒業後、大手造園会社に入社。その後、独立し、2011年に株式会社Q-GARDENを設立。庭づくりに関わる多方面の関係者と同時に双方向の調整・仲介をおこない、お客様の理想により近いお庭の提供を目指す日本初のガーデンキュレーターとして活躍中。
2023年2月、著書『はじめてのオーガニックな庭づくり ~植物の力を引き出すガーデニング術』を家の光協会より出版。
ガーデンキュレーターの小島理恵です。個人宅の庭や公園、ミュージアムなどの植栽を手掛けるほか、ガーデニングの講座などもおこなっています。シンボルツリーは、多くのご家庭で植えられているものです。しかし、庭づくりに携わっていると、シンボルツリー選びに失敗したという悩みを伺うこともあります。では、どのような基準でシンボルツリーを選べば良いのか? 選び方のポイントと、育てやすい樹種について解説したいと思います。
目次
1.シンボルツリーの選び方を庭づくりのプロが解説
2.手入れに負担がかからない樹種は? オススメのシンボルツリー
3.手入れがしやすく太陽の日差しに強い! シンボルツリーの新トレンド「オージープランツ」
4.子どもも喜ぶシンボルツリー 食べられる実がなる樹種
5.【おまけ】病気や害虫に注意! 手間暇かけて育てるこだわりの樹種
6.後悔しないシンボルツリーの選び方とオススメの樹種 まとめ
シンボルツリーの選び方を庭づくりのプロが解説
シンボルツリーとは、一般的に“住まいの象徴”と言われる樹木です。その基準は、お家の庭で最も背が高い木であるということ。仮に庭木を背の低いものだけにしても、そのなかで一番大きく目立つ木がシンボルツリーとなります。ご家庭によっては一面を芝生にして木を植えないケースもありますが、多くの方は「家を建てる記念に木を植えたい」「せっかくの新築だからシンボルになる木が欲しい」などの理由から何かしらの木を植えていますね。
では、どのような樹種を選べば良いのでしょうか? まず念頭に置いていただきたいのは“10年後の木の大きさ”です。木は高さに応じて低木・中木・高木などに分けられます。成長すると5メートル以上にもなる高木を植える場合、ある程度の広さの庭が必要ですし、大きくなりすぎないように剪定をしなければいけません。庭で桜を眺めたいという理由で「ソメイヨシノ」を植えたところ、想像以上に成長して困ったというケースもありますから、将来的なサイズ感や毎年の剪定にかかる予算は想定しておきましょう。
また、木が大きくなりすぎた場合、隣家の敷地まで枝が伸びたり、落ち葉が散らかったりしてトラブルになりかねません。成木の大きさを把握するとともに、大きく育つ樹種なら庭の中心に植えるなどの工夫も必要です。
「木が大きくなりすぎた」という困りごとがある一方で、思ったように成長しなかった事例もあります。たとえば、広いテラスの真ん中に植え込みスペースをつくって木を植えたものの、あまり大きくならなかったケース。原因は土の範囲と深さが足りず、根がしっかりと張れなかったことでした。木は根の生育範囲が足りなければ枝も張っていくことができません。植えた空間に対して、最終的にどんなふうに枝が広がって、どれくらい大きくなってほしいのかを想定して樹種を選び、植えるスペースを確保しましょう。
お家の環境に合った樹種の選び方
木だけに限らず、植物を健康に育てるためには環境が重要です。その土地の気候や土壌に合ったものを植えなければ、うまく育てることはできません。まずはお住まいの地域がどのような環境なのかを調べてみましょう。植物を育てるうえで知っておきたいのは年間の最低気温です。木や草花が健全に生育するには、冬を越せるかがカギになります。そこで役立つのが「日本ハーディネスゾーンマップ」です。日本各地の年間最低気温をもとにつくられた地図で、その土地に合った植物を調べることができます。
住んでいる地域のハーディネスゾーンの区分がわかったら、さらに近隣の住宅街や公園、神社などもチェックしましょう。庭に植えたいと思った木やよく育っている木などがあれば、Googleレンズで樹種を確認してみてください。何の木かわかるだけでなく性質が近い樹種なども調べられますから、いろいろな情報をもとに植えたい木を選ぶと良いですね。
手入れに負担がかからない樹種は? オススメのシンボルツリー
ここからは、忙しい方や園芸初心者の方でも育てやすいシンボルツリーをご紹介したいと思います。日本では地域によって気候が異なるため、東京・大阪・名古屋に共通するハーディネスゾーンのナンバー「9a」「9b」で育てられる樹種を選びました。また、シンボルツリーの選び方のポイントとして挙げた大きさについて、樹高によって分類される低木・中木・高木の基準は以下になります。
●低木:1〜2メートル以下
●中木:5メートル未満
●高木:5メートル以上
日本の一般的な住宅で植えるシンボルツリーを想定すると、屋根より高くならない中木がちょうど良いように思います。ただ、住まいの大きさや植えるスペースの広さによって合うサイズ感も変わりますし、個人の好みもあるので、低木から高木までいろいろな樹種をご紹介します。
オススメのシンボルツリー①【低中木】常緑ヤマボウシ
【樹高】2〜5メートル
【原産地】中国
【植え付け場所】日なた(半日陰も可)
「常緑ヤマボウシ」は、落葉樹のヤマボウシと比べてコンパクトに育ち、落葉も少ないのでシンボルツリーにオススメの樹種です。初夏には白い花が咲き、秋は赤い実を付け、秋から冬にかけて紅葉も楽しめます。実は食べることもできますよ。
オススメのシンボルツリー②【低中木】品種改良されたサルスベリ(樹高を低く抑えた矮性品種)
【樹高】1.5~3.5メートル
【原産地】中国(原種)
【植え付け場所】日なた
原種の「サルスベリ」は、剪定しないと6〜7メートルほどにも成長する木です。さらに大きなものでは10メートルにもなり、2階建て住宅より高くなることも。しかし、近年では品種改良によってコンパクトに収まる新種が登場しています。人気の「サルスベリ ブラックパール」は2メートルほどの高さになり、濃い色の葉と鮮やかな花のコントラストが美しい木です。
オススメのシンボルツリー③【中高木】トネリコ
【樹高】3〜10メートル
【原産地】日本の本州など
【植え付け場所】日なた、半日陰
「トネリコ」は日本を原産地とする落葉樹。枝が斜めに大きく伸びて、最大で10メートルほどに成長する中高木ですが、適切に剪定していれば5メートル程度に保つことができます。病害虫の影響が少なく、土壌を選ばない強い樹種なので、手入れにあまり時間を掛けられない方でも育てやすいでしょう。新しい葉に生え変わる5月ごろに小さな白い花が円錐状になって咲きます。
オススメのシンボルツリー④【中高木】アオダモ
【樹高】3〜10メートル
【原産地】日本、朝鮮半島など
【植え付け場所】日なた
「アオダモ」は同じモクセイ科トネリコ属のトネリコとよく似ていますが、緩やかなペースで成長する樹種です。大きく育てると10メートルほどにもなりますが、成長を止めたい場合は適切な時期に剪定しましょう。トネリコ同様に暑さ・寒さに強いですが、強い日差しは苦手です。植える環境が合っていれば、少ない手入れでも育てることができます。
オススメのシンボルツリー⑤【高木】イロハモミジ
【樹高】5〜10メートル
【原産地】日本(福島以南、四国、九州)、朝鮮半島、中国など
【植え付け場所】日なた(日陰も可)、西日は避ける
春から夏にかけての時期は新緑を、秋には紅葉を楽しめる「イロハモミジ」もシンボルツリーとして人気があります。4月〜5月になると小さな花も咲き、暑さ・寒さにも強く、剪定もほとんど必要ないので育てやすい樹種だと言えますね。日なたを好むものの西日には弱いため、葉焼けを起こさないよう西日が当たらない場所に植えましょう。
(小見出し)オススメのシンボルツリー⑥【高木】ソヨゴ
【樹高】3~10メートル
【原産地】中国、日本(本州中部、四国、九州)など
【植え付け場所】日なた、明るい日陰、西日は避ける、適湿な場所
「ソヨゴ」は1年を通して緑の葉を付ける常緑樹です。葉が美しいだけでなく、5月ごろに咲く白い花や10月〜11月ごろの赤い実も庭を彩るアクセントになってくれます。生育が遅くて比較的病害虫も少なく、落ち葉もあまり出ないので、手入れや掃除の手間はそれほど掛からない樹種です。また、暑さ・寒さに強く日陰でも育てられるところも魅力のひとつですね。
手入れがしやすく太陽の日差しに強い! シンボルツリーの新トレンド「オージープランツ」
温暖化の影響で気温の上昇が続くなか、ビルやマンションなどコンクリートの照り返しも強くなっており、山間部などに自生する樹種には厳しい環境だと言えます。そのような環境の変化にともない、都市部を中心に流行しているのがオーストラリアやニュージーランドなどの南半球を原産とする「オージープランツ」です。太陽の日差しや乾燥に強いので、都会の環境でも育てやすいです。日本に自生する樹種とは異なる見た目をしており、おしゃれなシンボルツリーとして人気が高まっています。
オススメのシンボルツリー⑦【中高木】ミモザ〜ギンヨウアカシアなどのアカシア類
【樹高】3〜10メートル
【原産地】オーストラリア
【植え付け場所】日なた
ふわふわとした黄色のかわいい花が特徴のアカシア類は、オーストラリア原産のオージープランツの一種です。日本では「ミモザ」として定着していますね。生育が早く、放っておくとどんどん大きくなるので毎年の剪定は必須ですが、アバウトに切っても樹形が自然と整う樹種なので、プロに頼まなくてもご自身で手入れができるでしょう。
子どもも喜ぶシンボルツリー 食べられる実がなる樹種
お子様のいるご家庭なら、食べられる実がなる樹種を植えるのも良いでしょう。苗から育てた実を食べる達成感が得られますし、野鳥が訪れるようになるので観察もできます。
オススメのシンボルツリー⑧【低中木】ブルーベリー
【樹高】1〜5メートル
【原産地】北米など
【植え付け場所】日なた(半日陰も可)
ブルーベリーは実がおいしいのはもちろん、かわいらしい釣り鐘型の花や秋の紅葉など、目でも楽しめる木です。大きく育つ品種でも5メートルほどなので、木を植えるスペースが広くとれない場合にもオススメです。
オススメのシンボルツリー⑨【中木】ジューンベリー
【樹高】3〜5メートル
【原産地】北米など
【植え付け場所】日なた(半日陰も可)、適湿な場所
ジューンベリーはバラ科の落葉樹で、ブルーベリー同様に実だけでなく花や紅葉も楽しめます。実が赤いうちは酸味が強く、黒っぽくなってくると甘みが出てきますよ。湿った土地でも育ち、乾燥にも比較的強いうえに病害虫もつきにくいので、園芸初心者の方でも育てやすい木です。
オススメのシンボルツリー⑩【中高木】レモン
【樹高】2〜8メートル
【原産地】インド、イタリア、ポルトガルなど
【植え付け場所】日なた
レモンは比較的温暖な気候を好むため、イタリアなどで多く栽培されています。日当たりが良く、水はけの良い場所に植えましょう。上手に育てるとたくさんの実を付けてくれます。
【おまけ】病気や害虫に注意! 手間暇かけて育てるこだわりの樹種
木を植えると少なからず虫は来るものですが、なかでも病害虫が発生しやすい樹種があります。忙しくて庭の手入れに時間を割けない方にはオススメできませんが、手間暇かけてシンボルツリーを育てたい方向けにいくつかご紹介しましょう。
病気や虫の被害が多い樹種として挙げられるのが、「サクラ」や「ウメ」、「スモモ」などバラ科の木です。コスカシバやコウモリガといった穿孔性害虫など、さまざまな害虫が発生するほか、近年では外来害虫のクビアカツヤカミキリの被害報告が増えています。
「ツバキ」や「サザンカ」、「ヒメシャラ」などお茶の木の仲間も病害虫には要注意な樹種です。もともと「チャノキ」につく害虫だったチャドクガ(茶毒蛾)と呼ばれる害虫が発生します。チャドクガの幼虫は食欲旺盛でどんどん葉を食べてしまい、花が咲かなくなる場合もあるんですよ。さらに毒針毛と呼ばれる毛が生えており、触れてしまうと皮膚炎を引き起こしてしまいます。庭木の手入れ中に刺される被害が後を絶たないため、お家に植える際には気を付けていただきたい樹種です。
病気になりやすい木や虫がつきやすい木は、生育途中でのトラブルも多く手入れも大変です。しかし、バラ科の木やツバキ、サザンカなどは、美しい花を咲かせる魅力的な木でもあります。適切な手入れができれば、毎年庭で美しい景色を楽しめるでしょう。植えたい木にどんな病害虫が発生するのか、どのような対策が必要なのかをよく調べたうえでシンボルツリーを選んでくださいね。
後悔しないシンボルツリーの選び方とオススメ樹種 まとめ
シンボルツリーの選び方やオススメ樹種についてお話ししました。樹木に限らず、植物を育てるときには環境がとても重要です。日なたが好きな木もあれば、日陰で育つものもあり、乾燥に強かったり湿地を好んだりと、品種によって相性の良い環境はさまざま。地域の気候だけでなく、お家の敷地内でも環境は異なるので、植えたい場所の環境と木の性質をよく理解して樹種を選びましょう。また、大きくなりすぎた、思ったように成長しないということがないように、成木の大きさや適切な剪定について調べることも重要です。今回ご紹介した選び方のポイントやオススメの樹種を参考に、大切な住まいに合うシンボルツリーを見つけて大事に育ててくださいね。
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