防災アドバイザーが教える! 家族と家を守るための家庭でできる地震対策

わたしたちの住む日本は、世界のなかでも地震が多く起きる島国です。気象庁の発表によると、2018年の日本国内における震度1以上の地震は2179回にのぼり、震度5以上の大きな地震も11回発生しています。そんな地震大国に住むわたしたちが、万が一の事態に陥ったとき、命と生活を守るためにできることとは……?
防災アドバイザーの高荷智也さんにお話を伺いました。

高荷智也(たかに ともや)
ソナエルワークス代表|備え・防災アドバイザー

「自分と家族が死なないための防災対策」のポイントをロジックで解説するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく実践的に伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。

公式サイト
備える.jp
https://sonaeru.jp

こんにちは、防災アドバイザーの高荷です。地震は事前対策の有無がそのまま生死に直結しますが、しっかりと対策をしておけば、確実に被害を抑えることができる災害です。今回はそのポイントをお話させていただきます。

自分が避難するべき災害がわかる「ハザードマップ」の重要性

※出典:東京都港区公式ホームページ

防災対策としてまずやっていただきたいのはハザードマップの確認です。ハザードマップとは、災害の種類別にどこでどのような被害が生じるかを地図上に示したものです。災害の種類ごとの避難場所も掲載されているので、自分が逃げるべき災害は何か、どこに逃げるべきかを災害が起こる前に知ることができます。

地震にともなう被害としては津波や地震火災、土砂災害などに注意が必要です。津波のマップなら沿岸部、地震火災のマップなら古い木造住宅が密集した下町などの地域が危険区域になっています。火災は発生に気づいてからでは避難が間に合わない可能性が高いので、ハザードマップが示す危険な地域に住んでいる場合は、大きな揺れがおさまった時点で河川敷や広い公園などに避難を開始したほうがいいですね。

※出典:ハザードマップポータルサイト

国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)」では「重ねるハザードマップ」という、全国のハザードマップを重ねて表示できるコンテンツがあります。たとえば、津波と土砂災害と洪水のマップを重ねたりして、自宅の周りの危険度をチェックできるわけです。避難所などの情報は、各自治体のより細かいハザードマップで調べておくといいでしょう。これから家を建てられる方には、土地選びにハザードマップを必ず確認することを強くオススメしたいですね。

【一戸建て住宅の地震対策】注意点と備えるべきポイントは?

地震対策は、家が揺れたときに「どうしたら怪我をしないか」、「何をしておけば自分や家族の命が守れるか」という考えのもと、取り組んでいきましょう。室内での対策は、転倒したら危険な家具などをすべて固定することが挙げられます。落下したり、倒れてぶつかったりすると怪我をするような家具は壁や床にしっかり固定します。

また、一戸建て住宅に数多くある窓ガラスも、割れるととても危険です。割れることを完全に防ぐのは難しいですが、ガラスの内側に飛散防止用のフィルムを貼っておくと割れたガラスが飛び散らず、怪我を防ぐことができます。もちろんこれは台風対策にも有効です。食器棚やガラスでできたアクアリウムなどにもフィルムを貼っておくといいですね。この場合は部屋に飛び散らないよう、外側に貼りましょう。
飛散防止フィルムは貼りたいサイズにカッティングするのが一番大変な作業なのですが、最近はネットショップでサイズを指定してオーダー発注することもできるので、ぜひ活用してみてください。

ほかにも、地震にともなう火災対策が必要です。もちろん家から火が出ないように気をつけることは重要ですが、もしも自宅に火災が発生した場合に対応するため、住宅用の消火器を用意することをオススメしています。さまざまな消火用防災グッズがありますが、火災に対する能力が圧倒的に優れているのは消火器です。
とは言え、真っ赤な消火器をイメージして「アレを置かなきゃいけないの?」と思われるかもしれませんが、実は業務用の消火器は法律上の制約で「赤色」の面積などが決まっているため、あのデザインなのです。住宅用消火器は色などの制約がないため、オシャレなものやかわいいもの、キャラクターの消火器なども販売されているので、自宅に合ったデザインのものが選べます。消火器を一度も使ったことがない方は、自治体や地域の防災訓練に参加して、実際に触ってみるのもいいでしょう。

【マンションの地震対策】注意点と備えるべきポイントは?

マンションと一戸建て住宅の大きな違いは脱出できるルートです。一戸建ての場合は窓が四方にあるため逃げ道を確保しやすいのですが、マンションは玄関とベランダの2ヶ所しかないケースが多く、高層階の場合、玄関がゆがんでしまうことで、閉じ込められてしまう恐れがあります。そういった事態の対策として、バール・ジャッキ・軍手の救助道具セットを準備することをオススメしています。また、玄関からの脱出が困難になった場合を想定して、ベランダから逃げる際のルートも把握しておきましょう。

災害時にはライフラインの停止にも悩まされますよね。とくにマンションは停電や断水が起きていなくても、配管チェックが終わるまで配水禁止というところもあり、そうなるとトイレが使えなくなってしまいます。そこで役に立つのが非常用トイレですが、なかでもオススメしたいのがクリロン化成のBOSシリーズです。 通常の非常用トイレは凝固剤と袋のセットですが、このBOSシリーズはそこにもうひとつ防臭用の袋が入っています。クリロン化成は、もともと介護や赤ちゃんのおむつ処理用の防臭袋をつくっている会社なので、しっかりと臭い対策がされた非常用トイレになっています。トイレットペーパーと合わせて、こちらを備えておくといいでしょう。

家具の転倒を防ぐには「L字金具」と「耐震ジェルマット」がオススメ

地震発生時、大きな家具が転倒すれば自分や家族の怪我につながりかねません。背の高い家具や上部が重くなっている家具は、床や壁にしっかりと固定しておく必要があります。転倒して直撃した場合に負傷する恐れがある家具については、すべて固定しておきましょう。家具の固定にはL字金具とねじを使用する方法がベストですね。L字金具はホームセンターで購入できますし、ひとつ数百円程度なのでコストがかからず頑丈な固定が可能です。

ただ、金具を取り付けたい壁が石膏ボードなどでネジを固定できない場合、賃貸住宅などで壁にねじを通せない場合は、粘着式の固定器具がオススメです。価格帯としては安いものから高いものまでありますが、家具ひとつにつき2,000円~3,000円ほどがスタンダードですね。また、冷蔵庫やテレビなど、壁から離して設置する家電などは、ベルトやチェーンなどを使った固定器具もあります。冷蔵庫はベルトを通す穴などが開いていますので、それを利用し、テレビは背面についているネジ穴を利用して固定することができます。
キャスター付きの家具に関しては、普段から移動させて使いたいものは車輪をロックすることで対応し、日常生活で動かさないのであれば、キャスターを外してしまうか、床に固定するタイプの固定器具を使ってください。

背の高い家具の固定にはつっぱり棒を使用できますが、天井との距離が離れすぎていると家が揺れた際に外れてしまう可能性があるので、距離が近い場合のみ使用するようにしましょう。天井の強度によっては地震の際につっぱり棒が天井を突き破ることがあるので、使用したい部分にしっかり下地が入っているか、棒で押したときにたるまないかは確認してくださいね。

「MY HOME MARKET」が扱っている規格住宅のなかには、オプションで造り付け家具を設置できる家もあったので、そちらもオススメです。家具の転倒防止対策は、引っ越し時が一番やりやすいので、その際にまとめておこなうといいでしょう。

通電火災による被害拡大を防ぐためにやるべきこと

地震の防災対策はもちろんですが、被害の拡大を防ぐことも大切です。被害拡大要因のひとつとしてよく挙げられるのが通電火災。避難をしているときに停電から復旧し、誰もいない家から火が出てしまうケースですね。通電火災を避けるためには、避難時に家のコンセントに刺さっているプラグをすべて抜く必要がありますが、緊急避難時には間に合わないため、ブレーカーを落としてから逃げるようにしましょう。

また、地震によって家が倒壊してしまうと、火災が拡大する大きな要因となってしまいます。家をつぶさないよう耐震補強をすることは、自分や家族の命を守るだけでなく、被害の拡大防止にもつながるのです。木造住宅に関しては、2000年6月1日に改正された建築基準法の耐震基準が最新で、これ以降に「建築確認申請」を受けた建物である場合、地震に対する強化が進んでいますね。さらに近年ではさまざまな災害が起こるたびに、家が倒壊しないことはもちろん、その後も生活していけるように、地震に襲われても中破・小破しない耐震技術が盛り込まれた家も作られるようになっています。

2000年以前の大きな耐震基準の改正は1981年6月1日となりますが、これより前に建てられたいわゆる「旧耐震基準」の建物は震度6強の大地震の直撃で倒壊する可能性が非常に高いです。持ち家の場合は耐震リフォームをおこなうか建て替えることが被害拡大防止の最善策であり、最大の防災ともいえますね。賃貸の場合でも、新しく安全な家に引っ越しすることをオススメしたいです。

地震対策のまとめ

自然災害は、それ自体が起こってしまうことからは逃げられません。しかし、できるかぎりの対策をし、いざというときに素早く避難できるような心構えでいれば、実際の災害時に「命を守る」ための行動がとれるのではないでしょうか。まずは自分の住んでいる地域のことを理解するために、ハザードマップをチェックすることからはじめてみましょう。