家族で過ごすおうち時間、ときには昔ながらの遊び「あやとり」を楽しんでみてはいかがでしょう? 紐が1本あるだけで始められるあやとりは、手軽で楽しいだけでなく、実は知育効果もあるそうです。そこで、国際あやとり協会の加藤直樹さんと服部知明さんに、あやとりの起源や歴史、知育効果などのメリット、あやとり紐の作り方や適切な長さ、さらに子どもにもできて簡単な初心者向けの技も教えていただきました。全体の流れの動画と写真によるポイント解説がありますので、ぜひやってみてくださいね。
世界各国のあやとり愛好家が集まる団体。主に雑誌などの出版物の刊行、あやとり講習会・検定の開催、各種イベントでのあやとり指導などを行う。国際あやとり協会の日本語ホームページでは、あやとりに関わる話題を随時更新中。
国際あやとり協会(日本):https://www.isfa-jp.org/
加藤直樹
国際あやとり協会会員 あやとり教室指導員認定証取得
京都で毎年開催しているあやとり講習会「ゆびはまほうつかい」にて講師を担当。主婦の友社出版「改訂版あやとり大全集」(野口とも 著)のモデル・実演を担当。2021年に「あやとりの記号表記法および展開図法」の題で、海外のあやとり情報を国内に持ち込んだ日本最古の人物・史料に関する文献を協会誌に投稿し、国内外で販売されている。
服部知明
国際あやとり協会会員 あやとり教室指導員認定証取得
東京で毎年数回開催しているあやとり講習会・検定「野口廣記念あやとり講習会・検定」にて講師・検定員を担当。主婦の友社出版「改訂版あやとり大全集」(野口とも 著)のモデル・実演を担当。2020年に検定上級あやとり30種全て制覇、創作したあやとりの総数は100種類以上にのぼる。地元近くの児童館や公園などで定期的にあやとり教室を開いており、のべ参加人数は5000人以上の規模となっている。
国際あやとり協会の加藤と服部です。2022年9月1日時点で、世界37カ国、約260人の会員からなる国際あやとり協会では、愛好家たちが新しい技へのチャレンジやオリジナル作品の創作を楽しんでいます。あやとりは日本固有の遊びだと思われがちですが、実は世界中で古くから親しまれているんですよ。奥が深いあやとりの世界、まずはその歴史からお伝えします。
目次
1.世界中で愛されるあやとり! その起源や歴史と魅力とは?
2.幼児でも始められる? あやとりの対象年齢と知育効果
3.100均で買える? ベストな長さは? あやとりに使う紐
4.初心者でも簡単! あやとり入門編①ひとりあやとり「お星さま」
5.初心者でも簡単! あやとり入門編②ふたりあやとり「つり橋からの田んぼ」
6.親子であやとり入門 まとめ
世界中で愛されるあやとり! その起源や歴史と魅力とは?
日本の歴史において、あやとりが記載された最古の文献は17世紀・江戸時代に遡ります。当時はふたりで紐をとり合う「ふたりあやとり」が主流で、ひとりで遊ぶ「ひとりあやとり」が日本の史料に登場するのは明治時代以降です。日本以外にも、17世紀の中国や18世紀の欧米であやとりが存在したことがわかっています。
19世紀に入ってから文化人類学者が世界中を調査したところ、あやとり文化はオセアニアや南北アメリカ、極北圏からアフリカまで多くの地域で見られることがわかりました。しかもその多くは、子どもの遊びとしてではなく、共有すべき知識や歴史を“文字以外の方法”で次世代に伝えるための手段として、文字をもたない社会のなかで伝承されてきたものだったのです。
日本や欧米では子どもの遊びだと考えられていたあやとりが、地域によっては大きな意味をもつものだったと言えるでしょう。いまだにあやとりの発祥地は不明ですが、学者たちの調査から一定の場所で生まれて広まったのではなく、大昔に自然発生的に世界各地で生まれたと考えられるようになりました。
そうした学者たちの文献からも触発され、愛好家たちが古来のあやとり作品を本にまとめて出版したり、新たな作品が生み出されたりしています。今では3000種類ほどの伝承あやとり作品が収集・保存されていると言われてますね。そのうち、日本で収集された伝承あやとり作品は約200種類。これからも多くのあやとり作品が生まれ、歴史に刻まれていくことが期待されます。
国際あやとり協会に聞くあやとりの魅力
私があやとりを始めたきっかけは、あやとりの本が幼稚園にあったからです。4~5歳ごろには夢中で遊んでいたのを覚えていますね。失敗しても紐をほどけばすぐに再チャレンジできるところや、紐で幾何学的な模様が容易につくられるからこそ“自由な想像”ができるところが、あやとりの楽しさであり魅力だと思います。(加藤直樹)
私があやとりを始めたのは小学校1年生の秋でした。病院の待ち時間用にあやとりの本を買ったのがきっかけで、本や動画のお手本通り再現できたときの達成感に魅力を感じましたね。途中でうっかりミスして“別の何か”ができることもたまにありますが、そこから新しいオリジナル作品が生まれる楽しさもあります。さらに、あやとりをほかの人に教えて、しっかりと伝わったときもとてもうれしいんですよ。(服部知明)
幼児でも始められる? あやとりの対象年齢と知育効果
あやとりを始められる年齢に、明確な基準はありません。しかし、あやとりのように各指をそれぞれコントロールする指の分化、とくに薬指や小指の分化がはっきりするのは4歳ごろから。両手の親指と小指に紐をかけて、手のひらの紐を中指でとり合う「中指のかまえ」は、5歳ごろからできるようになる子どもが増えるという研究結果もあります[1]。
幼いころから楽しめるあやとりですが、小さなお子様は紐が首に絡まってしまうこともあるので、親御さんがしっかり見守ってあげましょう。
あやとりは大人ももちろん楽しめます。国際あやとり協会には、代表をはじめ年配の会員も多く在籍していますね。皆さん熱心に取り組まれていて、検定試験を受けたり指導員の資格を取ったりと、新しいことにチャレンジされる方がとても多いです。あやとりは指を細かく動かすためか、年齢を重ねてもハツラツとしたエネルギッシュさが保たれるのかもしれませんね。
集中力アップ&脳の活性化! あやとりの知育効果
あやとりは楽しく遊べるだけでなく、子どもの知育効果も期待できるでしょう。手順を覚えて紐をとることは記憶力の向上につながり、作品を完成させたときに得られる達成感は、脳内で記憶をつかさどる「海馬」を活性させると言われています[2]。
常に一定の形を保ち続けながら紐をとっていくあやとりは、集中力が上がるという発育発達学的な研究結果も報告されていますね。より難易度の高い作品にチャレンジすることで、いっそう集中力が増すようです。[3][4]。
また、お子様にあやとりを教えたり、逆にお子様から教わったりすることで、コミュニケーション能力の発育・発達にもつながることでしょう。
100均で買える? ベストな長さは? あやとりに使う紐
あやとりに使う紐は、大人なら「160センチの太い紐」と「190センチの細い紐」、子どもなら「140センチの太い紐」と「170センチの細い紐」を用意しましょう。長さはピッタリではなく、だいたいでOKです。これらの紐があれば、ほとんどの作品をつくることができますよ。
太い紐は摩擦が多く、細い紐は摩擦が少ないので、工程が多くて指をたくさん使う作品では、長くて細い紐が良いでしょう。一方で、太くて短い紐には形を整えやすいというメリットがあるので、作品によって使い分けるのがオススメです。素材は、何度か使うだけであれば毛糸でも良いのですが、長く愛用するなら丈夫なアクリル紐を用意すると良いでしょう。
あやとり紐のつくり方
紐はホームセンターや手芸店、100円ショップなどで手軽に購入できるので、必要な長さにカットしてあやとり紐をつくります。すぐに遊びたいときには、切った紐を2〜3回ほど固結びすればOK。もし継ぎ目を目立たなくしたいのであれば、紐の断面に木工ボンドやアロンアルファなどを塗って接着し、固まるまでしばらく待ちましょう。キレイな輪っかのあやとり紐ができます。手づくりしなくてもあやとりの本に付いている紐を使ったり、ネット通販で専用の紐を買ったりするのも良いですね。
あやとりの紐を短くしたいときは「二重」にしよう
あやとりに適した紐の長さを紹介しましたが、一部の作品では少し長すぎる場合があります。そんなときには、紐を二重にして使いましょう。紐を二重にする作業は単純なように感じられますが、小さな子どもには難しい場合も。講座などであやとりを教えていると、紐が絡まってうまく二重にできない子が意外と多いんです。
大きな輪っかの片方を掴んで、半回転させてできた小さな輪っか同士を重ねるイメージなので、動画を見ながらお子様とやってみてくださいね。これから紹介するあやとり「お星さま」も、長い紐だとキレイな星の形にならないので、紐を二重にしてから挑戦すると良いですよ。
初心者でも簡単! あやとり入門編①ひとりあやとり「お星さま」
国際あやとり協会会員の野口とも様がとり方を考案された創作あやとり「お星さま」は、工程が少なく、完成形がシンプルでキレイなのが特徴。星をモチーフにした作品はいろいろな本に載っていますが、なかでもこの作品は覚えやすく、初めてのチャレンジにうってつけです。完成したものをそっと机に置けばキレイな形を維持できるので、写真で撮るのも良いでしょう。
「お星さま」のポイント●小指で上からとる
「お星さま」のポイントは動画0:28〜の工程です。左手にかかる紐をとるとき“上から”小指を入れましょう。ここで下から指を入れてしまうと、最後に星の形にならないので気を付けてください。
先ほどの工程でしっかり上からとると、図のように小指に掛かる紐がひねった状態になります。
初心者でも簡単! あやとり入門編②ふたりあやとり「つり橋からの田んぼ」
「お星さま」と同じくシンプルでポピュラー、それでいて立体から平面に変身するところが魅力です。世界中で親しまれている、ふたりあやとりの基本とも言えるものなので、親子で楽しむ初めてのあやとりにぴったりだと思います。まずはお子様が難易度の低い「つり橋」を担当すると良いでしょう。慣れてきたら「つり橋」と「田んぼ」を交代して遊んでみてください。
「つり橋」のポイント●手首に掛ける
「つり橋」のポイントは、最初に両手首に紐を掛けるところ。このとき、輪をつくる向きは左右どちらでもOKです。
「田んぼ」のポイント●指を奥に入れて押さえる
「田んぼ」のポイントは、0:49〜の工程です。「つり橋」の紐がクロスされた部分を引っぱる際、指を奥に入れてしっかり押さえましょう。指先で軽くつまんでしまうと、外れてしまうときがあるので注意してください。
親子であやとり入門 まとめ
あやとりは気軽に始められますが、突き詰めるととても奥が深く、長く楽しめる遊びです。今回ご紹介した「お星さま」や「つり橋からの田んぼ」から挑戦して、どんどん魅力を知っていただければうれしく思います。あやとりを楽しみ、親子で過ごす時間を楽しんでくださいね。
【参考文献】
[1] 丸山尚子、久米隆子『幼児の手の労働に関する発達心理学的研究(Ⅰ):とくに幼児の手の発達の法則をもとめて』(1979年,心理科学,2巻1号,p.27〜37)
[2] 野口廣監修、主婦の友社編『大人のあやとり:ひも1本で脳力活性! 家族みんなで遊べる!』(2008年出版,主婦の友社)
[3] 野田さとみ、佐久間春夫『「あやとり」「折り紙」の学習過程における脳波及び心理的変化』(2010年,バイオフィードバック研究,37巻1号,p.29〜36)
[4] 野田さとみ、佐久間春夫『手指の運動を伴う遊びにおける脳波および覚醒度・快感度の変化について』(2009年,バイオフィードバック研究,36 巻,1号,p.41〜46)
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