マイホームの購入と不妊治療は両立できる? 不妊治療にかかる費用や注意点を解説

国立社会保障・人口問題研究所が2015年に公表した「第15回出生動向基本調査」によると、不妊を心配した経験がある夫婦は35.0%で、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は18.2%にのぼります。 晩婚化が進む中、不妊治療は多くの人にとって身近な問題となっています。出産や子育てを目指している家庭にとって「マイホームの購入」もかなえたい目標のひとつですよね。どちらもまとまったお金がかかりますが、両立するにはどのような資金計画が必要なのでしょうか。

不妊治療にはどれくらいの費用がかかる?

はじめに不妊治療にかかる費用を確認してみましょう。厚生労働省が公表した「不妊治療の実態に関する調査研究」によると、人工授精の費用は1回平均で3万166円(中央値2万5,000円)、体外受精は平均50万1,284円(中央値50万円) となっています。不妊治療にかかる費用の総額は、治療内容によって大きく異なることがわかります。また、治療が長期に及ぶほど経済的な負担が大きくなり、100万円単位の治療費を費やすケースも珍しくありません。

保険が適用されることになった治療法

出典:厚生労働省「不妊治療に関するリーフレット」

しかし、2022年4月からは基本的な不妊治療が保険適用となりました。これまで保険が適用されるのはタイミング法や排卵誘発法といった「一般不妊治療」の一部のみでした。その先の治療法である人工授精や、一般不妊治療で妊娠できなかった場合に行う体外受精や顕微授精といった「高度不妊治療」に関しては保険が適用されなかったため高額な費用がかかっていました。条件はありますが、これらの治療法にも保険が適用されることになり、3割の自己負担額を支払えばよいことになりました。(体外受精は「治療開始時に43歳未満」という年齢制限や、「40歳未満は子ども1人につき6回、40〜43歳未満までは3回まで」という回数制限があります)。これまで経済的な負担が理由で不妊治療の継続を躊躇していた人も、不妊治療が受けやすくなったのではないでしょうか。詳しくは厚生労働省に関するリーフレットを確認してください。

なお、治療1回につき30万円(採卵を伴わない凍結胚移植などは1回10万円)、男性不妊治療を行った場合は別途30万円の助成金が給付される「特定不妊治療費助成制度」に関しては、2022年5月現在、保険適用の円滑な移行にむけた経過措置が取られています。また、お住まいの市区町村で独自の助成制度を設けているケースもあります。まずは最寄りの自治体に確認することをおすすめします。

不妊治療中にマイホームを購入する場合の注意点

保険が適用されるようになったとはいえ、体外受精や顕微授精といった高度不妊治療を行うことになればまとまった費用がかかります。また、保険適用外の治療が必要になるかもしれません。すぐに結果が出ればよいのですが、いつ結果が出るかはわかりません。いつまで続くか分からない治療を行いながら、マイホームを購入するには、どのような点に注意をしたらよいのでしょうか。

不妊治療の予算を決めておく
不妊治療が順調であればよいのですが、なかなか結果が出ない場合、あらゆる治療方法を模索したくなるものです。「どのくらいの期間」「どの程度のお金をかけて」治療をするのか、あらかじめ目安を決めておきましょう。期間や金額だけでなく、体外受精を行う場合の回数や年齢のリミットを考えておくと、ライフプランを立てやすくなりますし、子どもを授かることができてもできなくても、次のステップに進みやすいでしょう。 なお、不妊治療にかかる費用が年間10万円を超えた場合、医療費控除の対象となります。治療を開始したら、領収書を忘れずに保管しましょう。治療費だけでなく、治療に必要な薬代や通院にかかった公共交通機関の交通費も医療費控除の対象となります。

収入がダウンすることを想定しておく
不妊治療中は仕事をしながら通院することになり、状況に応じて仕事を休む日が出てくるでしょう。治療により体調を崩すこともあり、場合によっては一旦休職、もしくは退職せざるを得ないこともあります。また、子どもを授かることができれば、妊娠・出産にともない産休や育休を取得することになります。こうした収入減となる可能性を考慮した上で、住宅購入の予算を組みましょう。

マイホームの立地や間取りは先々を見据えて
不妊治療をしている段階で住宅を購入してしまった方が、夫婦2人身軽な状態で引っ越しができますし、住環境がととのった中で出産準備や子育てができます。 とはいえ、子どもを授かるかどうか分からない時点でマイホームを購入することに不安を抱く方もいるかもしれません。子どもの有無や家族の人数が流動的な状態の住宅購入となりますので、間取りや部屋数はフレキシブルに対応できるように計画しましょう。不妊治療や子育てを支援する制度がある街を選ぶとなおよいでしょう。

夫婦で住宅ローンの返済を考えている場合は要注意
共働きの家庭では、夫婦の収入を合わせてひとつのローンを組む「収入合算」や、夫婦それぞれがローンを組む「ペアローン」の利用を検討している方も多いのではないでしょうか。前述の通り、不妊治療に合わせて仕事をセーブすることになれば、住宅ローン審査が通らない可能性が高まります。住宅ローンの借り入れ金額は、単独の収入で借り入れ可能な範囲内にすると安心です。

住宅購入前にある程度の自己資金を用意
頭金の準備がほとんどなくても住宅ローンの借り入れは可能なケースが多いですが、不妊治療費という不確定要素がある以上、ある程度自由に使えるお金の準備が必要です。頭金や諸費用のために住宅購入価格の2割程度のお金と1年分の不妊治療費、収入減を想定した備えもあれば万全です。頭金は入れ過ぎず、手元に現金を残しておきましょう。

団信の加入を前提として保険を見直す
住宅ローンを利用してマイホームを購入する場合、主な金融機関では団信(団体信用生命保険)の加入が義務付けられています。団信とは、住宅ローンの返済中に契約者が死亡または高度障害になった場合、住宅ローン残高が保険会社から金融機関に支払われ、住宅ローンが完済となる制度です。 現在加入している生命保険と、団信の内容が重複している可能性があります。生命保険料が家計を圧迫しているのであれば、団信を代わりと考え、保険の解約もしくは内容の見直しを検討しましょう。

まとめ

「住宅購入は不妊治療が落ち着いてから」と考えがちですが、住宅ローンを完済する年齢を考えれば、早めに購入したほうが良いでしょう。不妊治療も年齢が進むにつれて成功率が下がりますし、体外受精の保険適用や多くの助成制度も対象年齢を設けているため、可能性があるうちにやっておきたいですね。国や自治体の制度はもちろん、勤務先に不妊治療のための休暇制度などがある場合はそれらも活用し、経済的な負担を軽減しながら住宅購入と不妊治療の両立を目指しましょう。

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