夏休みは期間が長いぶん宿題も多くなります。たくさんの課題のなかでも、多くの中学生が頭を悩ませるのが、自由研究ではないでしょうか? そこで、実験教室「サイエンス・ラボ」で子どもたちに理科を教える倉橋修先生に、中学生向けの自由研究テーマ例を解説していただきました。苦手な学生が多い理科の単元や、中学理科のなかで重要な部分にも関わる内容となっているので、夏休みの自由研究だけでなく、今後の理科の学習にも役立ちますよ! 実像と虚像がわかる「コップレンズ」、電流と磁界を扱う「コイルモーター」、生物の体の仕組みを知るための「魚とイカの解剖」のほか、自由研究テーマとしてオリジナリティを出すための応用やまとめ方などのアドバイスもご紹介します。
サイエンス・ラボ 代表
名古屋市で小学生を対象とした実験教室サイエンス・ラボを主宰。
慶応義塾大学卒。一般企業で勤務した後、約25年間、河合塾で理科を教え、独立。中日新聞「こどもウィークリー」の理科ワンダーランドを2013年まで執筆。
YouTubeで、理科の実験と授業を融合させた動画を配信中。視聴回数1,100万回、チャンネル登録者52,000名。多くの中学受験生の理科勉強のバイブル動画になっている。現在は、オンラインでも理科教室を開催。理科の全単元を実験動画にし、中学受験の理科勉強を短時間で楽しくできるようにしている。
サイエンス・ラボ:http://science-labo.com/
実験教室「サイエンス・ラボ」代表の倉橋修です。私は大手進学塾で20年以上にわたって受験指導に携わり、実験教室で理科を教え始めてからは15年になります。夏休みの自由研究は、テーマ選びが悩みどころですよね。中学生ともなると、小学生のころより求められるレベルが上がってきますし、おっくうに感じる方も少なくないでしょう。今回は、私が理科の実験教室で培った経験をもとに、中学生向けの自由研究テーマを解説したいと思います。多くの中学生が苦手とする理科の単元や、学んでおくと役立つ内容を盛り込んでいますから、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.【中学生向けの理科実験】夏休みの自由研究テーマ例①水の入ったコップは、どんなレンズ?
2.【中学生向けの理科実験】夏休みの自由研究テーマ例②コイルモーター
3.【中学生向けの理科実験】夏休みの自由研究テーマ例③魚とイカの解剖
4.中学生の自由研究テーマ例&オススメ実験3選 まとめ
【中学生向けの理科実験】夏休みの自由研究テーマ例①水の入ったコップは、どんなレンズ?
最初にオススメする自由研究テーマは「水の入ったコップは、どんなレンズ?」です。中学1年生の理科で学ぶ光の性質や凸レンズに関する内容になります。光やレンズによる実像と虚像について、「なんとなく覚えて、なんとなくわかったつもりでいる」学生は少なくありません。そこで、しっかりとその仕組みを理解するための実験を解説します。実験を通して身近な光の不思議を解明し、光の性質をマスターしましょう!
水の入ったコップ(ペットボトル)の後ろにものを置くと……
水が入った円柱型のコップ、またはペットボトルの後ろにものを置くと大きく見えます。ものが拡大されるということは、虫眼鏡などのレンズと同じ働きだと言えるのでしょうか? 実はちょっと違う原理なんですよ。水がつくる凸レンズは、光の屈折を利用して“焦点の内側”に置いたものは大きな像(虚像)に見えて、“焦点より遠く”に置いたものは反対向きの像(実像)に見えるようにできています。
たとえば水を入れたコップの後ろに、文字を書いた紙などを置いてみると、上記の【図1】のように見えます。虫眼鏡で見ると全体が拡大するのに対して、水を入れたコップの場合は横に伸びるんですね。また、虫眼鏡を遠ざけながら文字を見ると、途中で文字が上下左右に反転するのですが、コップだと【図2】のように左右にのみ反転します。つまり、水がつくる凸レンズは、虫眼鏡のようなレンズとは違う働きをしているわけです。
こうした見え方の違いは、なぜ起こるのか? 動画ではその仕組みについても解説していますので、見てヒントを得ても良いですし、まずは自分自身で考えてみるのも良いと思います。仕組みを理解したうえで、実験結果をまとめてみましょう。
水を入れるコップの細さを変えたり、ペットボトルなら500ミリリットルと1.5リットルそれぞれのサイズで比較してみたりと、アレンジも自在。水の代わりに油や砂糖水を使うと屈折率が違ってくるので、そういった結果もまとめると、充実した自由研究になると思います。
見える? 見えない? コップの底の10円玉
透明な空のコップの下に10円玉を置くと、10円玉は透けて見えます。でも、そのコップに水を注ぐと10円玉は見えなくなる。どうしてこのような現象が起きるのでしょうか? これは光の性質「全反射」によるものです。
全反射は、光の入射角と屈折角の大きさによって起こります。この実験を通して全反射の仕組みを理解できたら、さらにいろいろなことを試してみましょう。たとえば横からは見えない10円玉が真上からだと見えたり、コップの底が濡れていると見えたりします。これらの状態はすべて理屈があるので、まずは自分で考えて、そこから調べて仕組みを解明していくと、すごく面白い自由研究になると思いますね。
さらに応用するなら、水槽のメダカや金魚の観察もオススメの自由研究テーマです。全反射によって、水槽を見る角度で中の生き物の見え方が変わってくるんですね。上記の図のように、1匹のメダカを【目A】から見ると2匹に見えるのですが、【目B】から見ると、2匹かつ上のメダカは背を下にしているように見えるんです。いろいろな角度から見た写真や図解を用いて、光によって起きるこの現象を解説できると、さらにレベルアップした自由研究になりますよ。
【中学生向けの理科実験】夏休みの自由研究テーマ例②コイルモーター
クリップを使った「コイルモーター」は、材料が揃えやすく、うまくできたときの「回った!」という達成感は格別。私の実験教室でも、子どもたちは夢中でつくりますね。電流と磁界、電磁石などの学習にも役立つので、ぜひ挑戦してみてください。
●用意するもの
・エナメル線(0.4ミリ) 40〜50センチ ※コイルと導線用
・単3マンガン電池 1個
・クリップ 2個
・円形磁石 1個
・紙やすり
・テープ
・ラジオペンチ
電池はアルカリでも回るんですが、マンガンがオススメ。と言うのも、アルカリ電池は実験中に熱くなってしまうからです。機能としては問題ないのですが、安全性を考えるとマンガン電池を使うのが良いでしょう。
コイルモーターのつくり方と注意点
まずはクリップの形をそれぞれ整えます。これは回転するコイルを支えるパーツです。
その後、乾電池にエナメル線を巻いて、コイルをつくっていきます。このとき、コイルの両端は指1本分、だいたい5センチほど残しておきましょう。余らせた部分が長い場合は切れば良いのですが、短すぎるとやり直しになってしまうので気を付けてください。エナメル線を巻く回数は6〜7回ほどでOK。
エナメル線を巻いてつくったコイルを乾電池から外すときは、形が崩れないよう慎重にやりましょう。外したら導線をコイルに2回巻きます。そのあとは図のように片側のエナメルを全面はがし、もう片側は半面だけはがしていきます。
導線のエナメルをはがす工程は、力を加えすぎないように注意。また、コイルの形が崩れないように円の部分を持って、紙やすりを使うと良いですね。
片側のエナメルをすべてはがしたら、次はもう片側を“半面だけ”はがします。この“半面”とは、円形コイルを縦にして見たときの半分です。うまくはがすためには机を使うのがオススメですが、紙やすりで机を傷つけないよう、紙を敷いて保護しましょう。仮にコイルを縦ではなく横にしてエナメルをはがしてしまったとしても、ペンチで90度ひねるとリカバリーできますよ。
また、最近のエナメル線は、皮膜塗料の色が薄いものが多いので、エナメルがはがれているのか、わかりにくい場合もあります。透明な樹脂を塗った「ホルマル線」は非常にわかりづらいです。そのため、あらかじめエナメルをはがす部分に油性マジックで色を塗っておくと、作業がしやすいと思います。
最後は、テープで乾電池にクリップを取り付けて磁石を乗せ、そのうえにコイルを設置します。コイルモーターが回らなかったら、少し前後にゆすってみると良いでしょう。
それでもうまく回らない場合は、コイルのバランスが悪かったり、エナメルのはがし方が不十分だったりといった理由が考えられます。そのほか、半面はがしの導線の角度がずれている可能性もあるので、回るように微調整していきましょう。
コイルモーターの自由研究のまとめ方と応用
コイルモーターの実験が成功したら、自由研究としてまとめます。どうして回るのか、その原理をしっかりと説明することが大切ですね。電流や磁界などの仕組みを解説するために、コイルモーターの設計図などを自作するのもオススメ。さらに、もっと大きなモーターをつくったり、回転数を上げる方法を考えたりと、内容を発展させていくとより充実した自由研究になるでしょう。回転数を上げるには磁力がポイントになりますから、強力な「ネオジム磁石」を使って比較してみるのも面白いんじゃないでしょうか。コイルモーターの仕組みを知れば知るほど、「こうやったらもっと回転するのでは?」というひらめきが生まれるかもしれません。試行錯誤してみて、自分なりの最強コイルモーターをつくるのも良いですね。
ちなみに、モーターの回転は早く、目視では回転数がわからないと思いますので、スマホのカメラで撮影して確認してみましょう。無料の動画編集アプリでもスロー再生ができますので、回転数をカウントしてみてください。
【中学生向けの理科実験】夏休みの自由研究テーマ例③魚とイカの解剖
昭和のころには当たり前におこなわれていた「カエルの解剖」。今でも理科の教科書には掲載されているものの、実施している学校はほとんどなくなっています。カエルが手に入りにくくなったことや、授業のために生き物を解剖することについての問題など、さまざまな事情からだと思われますね。
しかし、解剖は生物を知るためには重要な勉強のひとつ。そこで私が提案するのが「魚の解剖」です。人間は魚から進化した生き物なので、魚の体を調べることは自分の体を調べることと似ています。魚屋さんやスーパーに行けば手軽に魚が手に入りますから、生物の体の仕組みを学ぶべく、解剖に挑戦してみましょう。
生物の体の仕組みがわかるアジの解剖
この動画は、私の理科実験教室でオンライン配信したアジの解剖の授業です。最初は魚の体の仕組みを解説しており、解剖が始まるのは29:00~。血液循環のはたらきを持つえらと心臓、食道、胃、幽門垂腸、腸の消化器官、肝臓などを取り出して調べています。卵巣や精巣、浮袋なんかも確認できますね。頭部には脳や脊髄、目にいたってはレンズや網膜、視神経なども観察できますよ。生物の体の仕組みをより深く理解できるので、動画も参考にしてみてください。
アジの解剖の注意点
動画で使用しているアジの場合、肛門付近にトゲがあります。ちょっと触っただけで怪我するようなものではありませんが、刺さると痛いので注意しましょう。衛生面も考慮すると、解剖のときには手袋があると良いですね。私の教室でも、手にピッタリとフィットする手袋を使用しています。
魚の解剖にはアジがオススメですが、イワシも比較的やりやすい魚です。アジやイワシなら解剖したあと、調理して食べることもできますね。ただし、イワシは内臓がすぐにドロドロになるので、すばやく解剖する必要があります。一方で、コイ・フナ・トビウオなどは胃がない「無胃魚(むいぎょ)」なので、体の仕組みを理解するには不適切かもしれません。
魚の解剖から発展させる調べ学習
解剖して体の仕組みなどをまとめたら、さらに魚についての調べ学習を発展させましょう。たとえば野菜は食塩水に漬けると塩辛い漬物になりますが、海に住む魚の肉は塩辛くなりません。理由は、えらのはたらきが関係しているからで、調べてみると面白いですよ。「魚の耳はどこにある?」「魚の鼻の穴は4つあるのに、なぜ人間は2つになった?」など、魚の体や生態、そして人間との関連性についても深く掘り下げていくと、内容の濃い自由研究になるでしょう。
イカの解剖
解剖は魚だけでなく、イカもオススメです。上の動画では24:00~イカの解説をしており、解剖し始めるのは34:00くらいから。イカも手に入りやすいですし、さばくのが難しくないんですよ。比較的キレイに解剖できるので、終わったら焼いて食べるのも良いと思います。私の教室でも、コロナ禍以前は解剖したイカに醤油を付けて焼いてましたね(笑)。
イカの体は、上から腹・頭・足の順になっていて、見た目は魚と違うものの、臓器はほぼ同じです。えら周辺の青い血液やイカ墨の袋、脚の長さの違い、吸盤や口の様子など観察すべき見どころがたくさんあります。イカは胃が大きく、食べたものが残っていることも多いので、内容物を調べても面白いですね。体の仕組みだけでなく、泳ぎ方などを調べてみるのも面白いと思います。
中学生の自由研究テーマ例&オススメ理科実験3選 まとめ
中学生向けの自由研究テーマとしてオススメな理科実験、光と凸レンズの実像虚像、クリップを使ったコイルモーター、生物の体の仕組みを調べる魚の解剖の3つをご紹介しました。一日で終わる簡単な自由研究からより発展させた応用の実験と調べ学習、まとめ方も紹介しましたのでぜひ参考にしていただければと思います。実際にやってみて「これはなんだろう?」「今の現象はなんで起きたんだろう?」といった疑問が生まれたら、さらに考えて調べてみましょう。理科とは、身近なものを少し深く考えて、そこから疑問を解明していく学問。そして、ひとつの謎を解き明かしたと思ったら、また次の「なぜ?」が生まれてくる面白さがあります。ただの課題で終わらせるのではなく、この自由研究をきっかけに理科の面白さを知ることができたら、きっとこれからの勉強も楽しくなっていきますよ!
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