【初心者向け】苔栽培のプロが解説!苔テラリウム(クローズド型)の作り方と育て方

室内で観賞用の苔を育てる「苔テラリウム」をご存知でしょうか? “小瓶の中の小さな世界”とも呼ばれており、観葉植物とはまた違った癒しを与えてくれるインテリアとして注目されています。これからのシーズン、おうち時間を利用して、苔の育成にチャレンジするのも良さそうです。そこで、苔の生産販売やワークショップを行っている「苔むすび」の園田純寛さんに、苔テラリウムの魅力と初心者でもできる苔テラリウムの作り方や育て方を解説していただきました。

苔むすび・園田純寛のプロフィール
園田純寛 プロフィール

苔むすび合同会社 代表

北海道大学大学院卒業(農学修士)。大学では苔を含む植物の生理生態、微生物との関係を研究。メーカーで研究開発に従事した後、独立。「苔むすび」として活動を始める。著書「はじめての苔テラリウム」(成美堂出版)

苔むすびの園田純寛です。苔テラリウムの魅力はたくさんありますが、そのうちのひとつは室内で気軽に育てられることです。苔はジメジメした場所が好きだから、水やりも大変なのでは? とイメージされる方もいますが、実は育て方によっては1ヶ月に1回程度の水やりでもすくすくと育つのです。さらに、気温が下がり始める秋から冬にかけては苔栽培にピッタリな時期。見て、触れて癒される苔の魅力、ぜひ多くの方に体験していただきたいですね。今回は、初心者の方でも簡単に育てられるクローズド型テラリウムでの育て方をご紹介します。

クローズド型苔テラリウムが初心者にオススメの理由とは?

クローズド型苔テラリウムが初心者にオススメの理由とは?

苔テラリウムで使う容器は、大きく分けて3種類のものがあります。蓋付きの容器で完全に密閉する「クローズド型」、少しだけ隙間がある「セミオープン型」、蓋の無い容器で育てる「オープン型」の3種で、その中でも初心者の方にオススメなのがクローズド型です。

苔テラリウム容器の種類

クローズド型の特徴は、とにかく手入れが楽で失敗しにくいということ。密閉された容器で育てるので湿度が維持されやすく、水をあげる目安は1ヶ月に1回ほど。環境に気を付ければ半年間ほったらかしでも大丈夫だったりします。さらに苔を適当に植え付けても育つんですね。ほかの種類の容器だと、苔をしっかりと土に植え付けなければ、土の水分を得ることができず、徐々に元気を失います。しかし、クローズドの場合、容器全体が高湿度なので、土に置くくらいの感覚で植えても十分に育つわけです。

ただ、注意が必要なのは苔の選び方。苔の種類によっては、ヒョロヒョロと伸びてしまったり、ボサボサした感じで粗く伸びたりして、見栄えが悪くなってしまうんですね。クローズド型で失敗するパターンとして圧倒的に多いのが、適していない苔を選んだことが原因なので、特に注意しましょう。

選び方に注意! クローズド型テラリウムで育てやすい苔の種類と特徴

これからご紹介する4種類の苔は、クローズド型でも比較的キレイに育てることができるのでオススメです。単独で育てても良いですし、混ぜて一緒に育ててもOK。この4種だけでも、見て楽しい、育てて楽しい苔テラリウムの魅力は十分に味わうことができます。

ヒノキゴケ

クローズド型テラリウムで育てやすい苔①ヒノキゴケ

森林に生える苔の一種で、暑さや寒さに強く、扱いやすい苔です。育ってくると、動物の毛並みのようなフサフサとした感じになるので、とてもかわいいですよ。見ているだけで癒されると思います。

タマゴケ

クローズド型テラリウムで育てやすい苔②タマゴケ

鮮やかな蛍光グリーンに近い色合いで、秋から春にかけて育てるのに適しています。植え付けた最初の年には、「蒴(さく)」という黄緑色の“実”のようなものが出てくることもあり、観察を続けると面白いですよ。

オオシラガゴケ

クローズド型テラリウムで育てやすい苔③オオシラガゴケ

白みがかったミントグリーンが特徴的な美しい苔。他の種類の苔と一緒に植えてあげることで、色合いに変化が出ます。

ツルチョウチンゴケ

クローズド型テラリウムで育てやすい苔④ツルチョウチンゴケ

みずみずしくて透明感のある緑色が印象的です。這うように育つのが特徴で、石などを入れておけば自然の神秘を感じさせる世界観が生み出されていきます。

クローズド型の苔テラリウムを始めるために必要なものは?

苔むすびの苔テラリウム制作キット
苔むすびの苔テラリウム制作キット

クローズド型苔テラリウムの場合、実は専門的な道具はほとんど必要ありません。身の回りにあるものが使えることも多いですし、揃えようと思えば100円ショップや雑貨屋さんで購入することもできます。ものを選んで買うべきなのは、苔と土くらいでしょうか。手軽に始めたいという方は、必要なものが一式揃った「制作キット」を苔むすびで扱っていますので、良かったら検討してみてください。

苔テラリウムのツール

●容器

苔テラリウムのツール・容器

クローズド型の容器は密閉性が大事なんですが、蓋にパッキンが付いているタイプは密閉しすぎて曇りやすくなるので注意しましょう。傷が目立ちにくいガラス製容器がオススメで、その中でも無色透明なものを選ぶと良いですよ。

●ピンセット

苔テラリウムのツール・ピンセット

ピンセットは苔を植えるときに使います。クローズド型の場合、苔をしっかり土に植え込まなくても育ちますが、雑に植えると見栄えがあまり良くありません。自分の狙ったところに苔を持っていくためにも用意しましょう。

●はさみ

苔テラリウムのツール・はさみ

植える苔を適切な長さにカットするときとメンテナンスに使います。クローズド型で育てた苔は、ヒョロヒョロと細長い形状に育つことが多いので、はさみだけは専門的なものを用意した方が良いかもしれません。オススメは、刃が細くて先が曲がっているタイプです。

●スプーン

苔テラリウムのツール・スプーン

土や化粧砂を容器に入れるときに使用します。お家にあるものでも十分ですが、大小2つのサイズを用意し、入れるものに応じて使い分けると良いでしょう。写真のような理科学用スプーンもオススメです。

●木の丸棒

苔テラリウムのツール・木の丸棒

容器に入れた土を整え、しっかりとした土台にするために使用します。土をトントンと軽く押さえることができれば良いので、割り箸でも代用可能です。

●水差し

苔テラリウムのツール・水差し

土をしっかり湿らせるときや苔テラリウム制作時の土台固めなどに使用します。

●霧吹き

苔テラリウムのツール・霧吹き

水をあげるときや制作時の仕上げに使います。クローズドタイプの水やりは霧吹きがオススメです。

苔テラリウムの素材

●土

苔テラリウムの素材・土

専門店などで売っているものを選びましょう。苔むすびでも苔育成用の土を取り扱っています。外から採ってきた土には雑菌が紛れていて、高湿度の容器の中に入れておくとカビが発生することがあるので要注意。

●石

苔テラリウムの素材・石

苔との相性がとても良く、世界観を演出するのに使います。専門店やネット通販では、さまざまな色・形のものが売られているので、自分が生み出したい世界観に合ったものを選びましょう。外で採ってきた石を使うのも良いですが、その際は土や汚れをしっかりと洗い流すことが大切です。

●化粧砂

苔テラリウムの素材・化粧砂

こちらも苔と相性抜群で、テラリウム制作時に仕上げとして容器に入れます。小瓶の中の小さな世界では、石は“山”に、化粧砂は“岩”や“川”にもなるので、ぜひその奥深さにふれてみてください。

クローズド型苔テラリウムの作り方

ここからは苔テラリウムの作り方をご紹介します。工程は大きくわけて、土台作り・苔の植え付け・仕上げの三つ。作業自体は簡単ですが、世界観作りにこだわるとあっという間に時間が過ぎていきます(笑)。ですがこの作業も苔テラリウムの魅力のひとつ。ぜひ楽しみながら自分好みの世界を作ってみてください!

工程①土台作り

クローズド型苔テラリウムの作り方①土台作り・大きいスプーンを使って容器に土を入れる

まず、大きいスプーンを使って容器に土を入れます。どのくらいの土を入れるか、勾配をどのような角度にするかは自由です。ただし、あまりに土が少ないと苔が植えにくいので、2センチくらいの深さは確保してください。その後、大きめの石を入れます。

クローズド型苔テラリウムの作り方②土台作り・石を配置したら再び土を入れて固定する

石を配置したら、再び土を入れて固定しましょう。石の後ろ部分に土を足し、坂のようにするとしっかり固定されて見栄えも良いのでオススメです。

クローズド型苔テラリウムの作り方③土台作り・水差しで水を入れて土を固める

石の配置や坂の角度が決まったら、水差しで水を入れます。水を入れて1分ほど待つと土が固まるのですが、たまにやわらかい部分が残っていることがあるので、木の丸棒で軽く突っついて確認しましょう。フワフワとした感触だったら要注意。このままでは苔が植え付けにくいので、木の丸棒や割り箸の裏側を使ってトントンと軽く押さえ、固めましょう。

工程②苔の植え付け

クローズド型苔テラリウムの作り方④苔の植え付け・ピンセットで苔を土に挿す

土台を作ったら、いよいよピンセットで苔を植え付けます。クローズド型の場合、しっかりと植え付けなくても育ちはしますが、見栄えを良くするために1センチくらいは土に挿しましょう。ポイントは、ピンセットと苔が平行になるよう、それぞれの先端を合わせること。ピンセットと苔を垂直に立たせるイメージで、その垂直を保ったまま、土に挿します。

工程③仕上げ

クローズド型苔テラリウムの作り方⑤仕上げ・小石や化粧砂を入れていく

苔を植えたら小さいスプーンを使って、小石や化粧砂を入れていきます。上から落とすように入れるのではなく、容器を傾け、そっとスプーンを近づけて入れましょう。最後に霧吹きを使って容器についた土を落とし、水気をティッシュなどで拭き取ったら完成です。

初心者でも簡単! クローズド型テラリウムで苔を育てる方法

苔テラリウムは置き場所に注意

苔テラリウムの置き場所は北側の窓辺がオススメ

苔は光を浴びることによって成長します。しかし、苔テラリウムはとにかく直射日光に弱いので要注意です。特にクローズド型の容器は湿度や温度を維持しやすいので、直射日光に当ててしまったらサウナのような状態となり、苔が死んでしまうので絶対に避けてください。

では、どうすれば良いのか? オススメは北側の窓辺に置くことです。ここなら直射日光が当たらず、苔が喜ぶ強さの光を与えることができます。北側以外の窓辺に置く際は、インテリアなどで日差しが遮られている“日陰”が良いでしょう。

照明で育てる場合は、1000〜5000ルクス程度の光を1日8時間ほど当てます。目安となる光量は、読書ができるくらいの明るさですね。部屋に備え付けられた照明では暗いことが多いので、キレイに成長させたいなら、スタンドライトやクリップライトなどでピンポイントに光を当ててあげましょう。

水やりの頻度

クローズド型容器で育てる場合、水やりはほとんど必要ない

クローズド型容器で育てる場合、水やりはほとんど必要ありません。季節や気温に関係なく、容器の密閉具合によっては半年間くらい水気が持つからです。苔むすびで取り扱っている容器では、目安として1ヶ月に1回程度、霧吹きで水をあげるとは伝えていますが、あくまで目安に過ぎません。何よりも重要なのは土の乾き具合を見極めて、水をあげることです。

土の乾き具合を見極め、②〜③の状態を維持

上記画像で説明すると、①は水気でびしょびしょの状態、④は乾き過ぎの状態です。定期的な霧吹きをすることで、②〜③のような状態を維持できると良いのですが、水やりが足らずに④の状態のように乾いてしまったときは、水差しでしっかり水をあげましょう。逆にあげすぎて①のようにぐしょぐしょ状態になってしまった場合は、ティッシュで水を何度も染み込ませて水を抜いてあげます。

また、霧吹きで水やりすると容器の内側に水滴が付きやすいので、ティッシュなどで拭き取ると水垢がガラス面にたまらず、長くキレイに楽しめますよ。

クローズド型容器で苔をうまく育てるには?

クローズド型の場合、苔はヒョロヒョロに伸びてしまったり、ボサボサに生えたりしやすいので、見た目がかわいくなくなってきた……と感じたら、メンテナンスをしてあげましょう。ハサミで“土の際の部分”を切り、切り取った部分を土に挿し直すことで、伸びすぎた苔を整えることができます。土に植えている状態の苔の“先端”をカットしたほうが作業的には楽なのですが、苔って先端の方が、緑が鮮やかで見た目も良いんですね。慣れないうちは面倒に感じるかもしれませんが、できるだけキレイな状態を残してあげるようにしましょう。

【初心者向け】苔栽培のプロが解説!苔テラリウム(クローズド型)の作り方と育て方 まとめ

道端や公園に何気なく生えている苔。普段はあまり気にならない存在かもしれませんが、近くで見てみると繊細でとてもキレイなんですね。大げさな言い方ですが、苔の魅力を知ることは、ものの見方を変えるきっかけにもなります。日常の中で見逃しがちなミクロの美しさに気付きやすくなるわけです。たくさんの魅力が詰まった苔テラリウム。興味を持たれたら、ぜひこの機会に育ててみてください。

苔むすび

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