内閣府の「令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、10歳から17歳までのインターネット利用率は98.5%。ほぼすべての10代がインターネットを利用していることがわかります。便利で楽しいインターネットのなかでも、今回はSNSについて考えてみましょう。友達と日常を共有したり、インフルエンサーや推しの投稿を楽しんだり、趣味の情報を探したり……世界中とつながれるのがSNSの魅力ですが、同時にさまざまな危険も潜んでいます。スマートフォンの普及などによって、SNS経由での犯罪被害は年々増加しており、10代の若者の被害も深刻なのだそうです。
そこで、SNS・ネット利用の実態やトラブルに詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんに、小中高生のSNS事情とトラブル対策などを伺いました。LINE・Twitter(現X)・Instagram(インスタ)・TikTokなどSNSでのトラブル事例や対策、一生残ってしまうかもしれないデジタルタトゥーを残さないための注意点、“ネットの友だち”との接し方など、自分を守るためのネットリテラシーをご紹介します。
Tジャーナリスト。成蹊大学客員教授。SNSや情報リテラシー等が専門。SNS、10代のネット利用実態とトラブル、スマホ&インターネット関連事件等をテーマとして、NHK『あさイチ』、NHK『クローズアップ 現代+』などメディア出演多数。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など 著作多数。
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ITジャーナリストの高橋暁子です。SNSやネットリテラシー教育を専門としており、小中学校や高校でも10代のネットトラブルに関する講演などをしています。今の10代と言えば“スマホネイティブ”であり“SNSネイティブ”で、早い子なら小学校からスマホを持ち、インターネットを使い、SNSにも触れていることでしょう。しかし、同時にインターネット上で未成年が被害者となる事件が多発していることも問題視されています。では、SNS上でのトラブルや犯罪被害を避けるためには、どんなことに気を付けたら良いのでしょうか? 10代の皆さんに向けて、SNS利用の注意点やトラブルに巻き込まれないための対策など、自分を守るためのネットリテラシーについてお話していきます。
目次
1.小学生も使っている? 未成年のSNS利用の現状
2.SNSトラブル対策の第一歩! LINEを始める前に“文章のやり取り”を練習しよう
3.個人情報の特定、投稿の炎上……SNSで犯罪やトラブルに巻き込まれないための注意点と身バレ防止対策
4.【Twitter(現X)】犯罪被害の件数は最多! なりすましアカウントにも注意
5.【Instagram(インスタ)】写真から身バレしないためのチェックポイント
6.【TikTok】安全な設定で犯罪被害やトラブル・誹謗中傷から自分を守る
7.デジタルタトゥーや法律違反になることも! 友達・カップル間でも写真のやり取りは要注意
8.SNSやオンラインゲームで知り合った人との接し方
9.小中学生・高校生のSNSトラブル対策を専門家が解説 まとめ
小学生も使っている? 未成年のSNS利用の現状
Twitter(現X)やInstagramなど、主要なSNSでアカウントを作成できるのは「13歳以上」で、年齢制限は各サービスの規約で定められています。もともと年齢制限のなかったLINEも、2020年からは「青少年保護のため」と、利用推奨年齢が12歳以上に引き上げられました。ただ、実際には小学生からSNSを使っているケースは多く、とくにTikTokは小学生にも大人気です。
年齢制限のあるSNSは、13歳以下の生年月日を入力すると登録できません。どうしても自分のアカウントを持ちたいと思ったら、年齢を偽って登録する必要があります。しかし、そこで考えてほしいのが“どうして年齢制限があるのか?”ということ。SNSは、インターネットを通して多くの人とつながることができるツールです。楽しさやメリットもありますが、知り合った人との間でトラブルが起きたり、見知らぬ人から誹謗中傷を受けたりするリスクがあるツールでもあります。
また、人生経験を積んだ大人であれば見抜ける悪意や詐欺行為も、小学生や中学生だったら見抜けるでしょうか? 残念ながら悪い大人に目を付けられ、トラブルや犯罪被害に巻き込まれるケースが後を絶ちません。多くのSNSに年齢制限が設けられているのは、子どもをトラブルや犯罪から守るためなのだと覚えておきましょう。
まだSNSを始めていない小学生の皆さんは、年齢制限についてよく考えて、できれば13歳になってから使うようにしてくださいね。どうしてもSNSを使いたいときは、お母さんやお父さんのアカウントで親子一緒に見るのがオススメです。
SNSトラブル対策の第一歩! LINEを始める前に“文章のやり取り”を練習しよう
LINEは連絡手段として必要になるケースが多いため、大半の子どもたちにとって初めて“使う”SNSになるでしょう。親世代は何か連絡が必要なときに使うことが多いですが、小中学生などの間ではちょっとしたコミュニケーションとして、頻繁に利用されています。
LINEは友達同士で楽しくリアルタイムでコミュニケーションできる半面、いじめやトラブルにつながりやすいSNSでもあるんですね。その理由のひとつは、主に文章でのやり取りになるから。子ども同士のやり取りでは、「はぁ?」「むかつく!」など、強い言葉をそのまま書き込んでしまいがちです。面と向かって話しているときなら冗談だと理解できたり、その場の雰囲気で流せたりするような言葉ですが、文字で見るとすごく攻撃的に感じるんですよ。
文章だけで気持ちを伝えるのは、大人でも難しいことです。トラブルを避けるために、まずは「LINEの練習」をしてみましょう。お父さん・お母さんとLINEのやり取りをしてみて、言葉選びや伝え方に問題がないかチェックしてもらうわけです。慣れてきたら、とくに親しい友だちとやり取りしてみてください。そうして文章や言葉の使い方を練習し、気持ちの伝わり方がわかってから、いろいろな人とコミュニケーションするのが良いですね。
個人情報の特定、投稿の炎上……SNSで犯罪やトラブルに巻き込まれないための注意点と身バレ防止対策
SNSは、インターネットを通じて世界中とつながることができる場です。つまり、SNSへの投稿はほとんどの場合、不特定多数の人に見られている、ということを覚えておきましょう。鍵付きアカウントを使って親しい人とだけやり取りしているつもりでも、知らない人が見ていたり、危険な人とつながったりする可能性は十分にあります。
まず気を付けてほしいのが、個人情報です。本名や顔写真、住んでいる市区町村や通っている学校など、個人が特定できる情報は明かさないようにしましょう。これらの個人情報を載せていると、空き巣被害やストーカー被害などの犯罪リスクが高くなります。基本的には“知らない人に教えても良いこと”だけを投稿するのが安全です。
また、個人情報を載せていなくても、ちょっとした投稿から身バレにつながるケースもあります。たとえば「明日のマラソン大会やだなぁ」といった学校行事についての投稿や、行きつけのお店の話なども、住んでいる地域を知られる材料になりかねません。ネット上には複数の投稿からわかる情報を掛け合わせて、個人情報を特定する犯罪者もいるので、ひとつひとつの投稿内容に注意しましょう。
“先生に見られても良い投稿”を心掛けてSNSトラブル対策
近年、若者の投稿した写真や動画が炎上するトラブルが多発しています。飲食店や公共施設での問題行動などは、警察が介入したり裁判になったりするケースも少なくありません。そもそも、人に迷惑の掛かることや禁止されているようなことをやってはいけませんが、それをSNSに投稿することで、問題が大きくなっています。
自分のアカウントは友達としかつながっていないから、フォロワーが少ないから、すぐ消える投稿だから……と思っていても、誰が見ているかはわかりません。
とくに最近では、問題行動の動画や画像を拡散するインフルエンサーも大勢います。そういった悪意ある大人は、常にターゲットを探していますし、相手が小中学生だとしても容赦しません。非常に悪質な存在ではありますが、インターネットやSNSを利用するうえで、それが現実であることをしっかりと理解してほしいと思います。
炎上トラブルに巻き込まれないためには、普段から投稿内容に気を付けることが大切です。では、どんな内容ならOKなのか? わかりやすい目安は、“先生に見られても良い内容”です。自分を指導する立場にある先生、その先生が見ても注意されないような投稿を意識して、SNSを使ってみましょう。遊びのつもりで行き過ぎた投稿をしてしまったり、トラブルを起こしてしまったりすることも防げるはずですよ。
ここからは、主要なSNSの使い方や注意すべきポイントをお話していきます。
【Twitter(現X)】犯罪被害の件数は最多! なりすましアカウントにも注意
Twitter(現X)は、犯罪被害の窓口となることが最も多いSNSです。警察庁が発表した「SNSに起因する事犯の被害状況」によると、令和4年の被害児童は1732人。そのうち625人がTwitter経由で犯人と知り合っていることがわかっています。誹謗中傷トラブルも多く起きていますし、最近では「闇バイト」の入り口にもなっていました。
犯罪やSNSトラブルに巻き込まれないためには、Twitterで知らない人とやり取りするのは極力控えましょう。年齢や性別を偽って、子どもに近づこうとする危険な人が存在するからです。同年代だと思っていた人や、趣味の合う同性の友達だと信じていた人が実は悪い人で、裸や下着姿の写真を送って悪用されるというケースがあります。DM機能で闇バイトに誘われる事例も増えてきました。実際に会ってみたら思っていた人と違い、性被害に遭ってしまったという事件も起きています。SNS上だけで良い人・悪い人を見極めるのはとても難しいことです。Twitterの投稿を見たいときは、まずは保護者のアカウントを使って一緒に見るようにしましょう。扱いに慣れてきたら自分のアカウントをつくり、顔見知りの友達とだけつながる鍵付きの非公開設定から始めるのが良いでしょう。
【Instagram(インスタ)】写真から身バレしないためのチェックポイント
Instagramは、画像がメインとなるSNSです。写真は1枚でたくさんの情報量が伝わるものなので、とくに個人情報が流出しないように注意しましょう。プロフィール欄や投稿で、学校名や住んでいる地域を書き込まなくても、うっかり写真で伝わってしまうことは多々あります。
まず注意すべきは、お家の外観が映っている写真を投稿しないこと。そして、自宅の周り2〜3キロ以内の写真も投稿しないことです。少し映り込んだ看板などから、住んでいる地域を絞り込まれる可能性があるからです。よく行くお店やローカルスポットの写真も、住所や学校を特定する要素になりやすいので、載せないようにしましょうね。ほかにも、投稿時に位置情報をオンにしていると、写真に投稿場所の位置情報が付与されることがあります。観光スポットなど位置情報を公開しても問題ない場所以外は、投稿時の位置情報はオフにするのがオススメです。
また、Instagramには24時間で消える「ストーリーズ」の投稿機能があります。24時間で消えるからと内容に気を付けず投稿する方もいますが、これも危険です。フォロワーの誰かが保存やシェアをしていたり、悪意を持った人に拡散されたりする可能性は大いにあります。実際にニュースで取り上げられるほど炎上した問題行動の投稿も、ストーリーズで投稿されていたことがありました。たとえ消えることがわかっているストーリーズであっても、不特定多数の人に見られていることを意識し、節度ある投稿を心掛けてくださいね。
【TikTok】安全な設定で犯罪被害やトラブル・誹謗中傷から自分を守る
ショート動画の投稿や閲覧を楽しめるTikTok。ダンス動画やリップシンク(口パク)動画が人気で、顔出し投稿をしている未成年も多いSNSです。基本的には動画コンテンツとなるため、Instagram同様にお家、近所、学校などの映り込みには気を付けましょう。これはYouTubeでの事例ですが、動画の背景に映り込んだゴミ収集カレンダーによって、小学生YouTuberの学校や住所が特定される事件もありました。そうした少しの映り込みで個人情報が知られる可能性もありますし、自室の窓から風景が見えるような撮り方も危険です。撮影する場合は、個人を特定する情報の少ない無地の壁の前などが良いですね。
また、TikTokに動画を投稿すると、拡散されなくてもランダムで表示される「おすすめ」に載って、不特定多数の目に届いてしまうことがあります。TikTokユーザーのなかには、未成年に近づこうとする危険なアカウントも多く、実際に小学生女児の動画には、たくさんの成人男性からのコメントが見つかります。そういったユーザーに見つかるリスクを避けるためには、設定欄の「プライバシー」から「非公開アカウント」を「オン」にしておきましょう。自分が承認したユーザーだけが投稿を見られるようになります。
あわせてコメントやメッセージを「オフ」にしておけば、誹謗中傷やコメント欄での個人情報の公開などを避けることもできます。自分にメッセージを送信できる相手も、「メッセージング」から「オフ」、または「相互フォローしている友達」を選ぶと安心です。もうひとつオススメしたい設定は「自分の動画をダウンロードできる人」を「オフ」にすること。この設定にしておくと、投稿した動画の悪用を防ぐことができますよ。
デジタルタトゥーや法律違反になることも! 友達・カップル間でも写真のやり取りは要注意
人に見られたくない写真や動画がインターネット上に流出してしまうケースは、必ずしも第三者によるものとは限りません。恋人と付き合っているときに撮った裸の写真などが、別れた後にリベンジポルノとして晒されたり、友達とのLINEや鍵アカウントでやり取りしたつもりの際どい写真が、だんだんと広まってしまったり……撮ったとき、送ったときには思ってもみないところに流出してしまうケースは意外と存在します。
さらに未成年者の性的コンテンツはすべて「児童ポルノ法」に違反するため、写真を撮ることも所持していることも処罰の対象になり、場合によっては罰金や少年院送致となることも。もちろんSNSへの投稿も罪に問われますし、投稿をシェアするだけでも違反行為です。そのことがあまり知られていないのも相まって、児童ポルノ法違反者のうち約4割が、実は10代の青少年なんですね。原因としてはスマホやSNSの普及もあると考えられています。軽い気持ちで撮った性的な写真がデジタルタトゥーになってしまったり、犯罪につながったりしないよう、くれぐれも注意しましょう。
SNSやオンラインゲームで知り合った人との接し方
今どきの小中学生・高校生にとって、“ネットの友だち”は決して珍しい存在ではありません。実際に、中学生では3割弱、高校生では4割強が「ネットだけの友達がいる」というNHK放送文化研究所の調査結果もあります。SNSやオンラインゲーム上のみで交流している子たちもいれば、会ったことがあるという話も耳にしますし、「会ったことはないけど、会いたいと思っている」という子も多いですね。しかし“ネット上で知り合った人と会うこと”は、犯罪被害やトラブルに巻き込まれる可能性も考えなければなりません。
ネット上には自分のプロフィールを偽っているユーザーがとても多いのが現状です。警察庁の調べによれば、未成年の性被害における加害者の4割は、性別や年齢、職業を偽って被害者に近付いたそうです。そうした“なりすまし”アカウントは見分けることが難しいうえに、知り合った当初はとても優しくしてくれるんですね。
とくにオンラインゲームは敵味方にわかれて戦うゲームが流行しており、味方として自分を守ってくれたり、協力して勝利したりするうちに、ついつい信じてしまうこともあるでしょう。SNS上でのやり取りでも、親身になって相談に乗ってくれたり、励ましてくれたりしたら、心を開きたくなるのは理解できます。しかし、その人がもし悪意のある犯罪者だった場合、親しくなってから付け込んで騙す算段なのです。「もう1年以上やり取りしているから大丈夫」と思っても、年単位で騙すような悪い人もいますから、決して安心はできません。
ネット上で知り合った人と会うのは、控えるのが無難です。でも、どうしても会いたい場合は、「いつ・どこで・どのアカウントの人と会うか」を、親御さんやご家族など、事前に信頼できる人に伝えておきましょう。相手が年齢や性別を偽っていないかを確認するために、ビデオ通話することもオススメですね。その際は、親御さんと一緒にビデオ通話するとより安心です。
また、実際に会うときは日中の明るい時間帯で、人が多い場所を指定しましょう。人目に付く場所であれば、怪しいと思ったらすぐ逃げられますし、助けを求めることもできます。逆に相手の指定する場所に行ったり、車に乗り込んだりするのは避けましょう。そして、実際に会ってその場では問題が起こらなくても、決して自分の住所などの個人情報は渡さないこと。後日、危険な人だとわかっても、個人情報を知られていると連絡を絶って逃げることができなくなるからです。
繰り返しになりますが、SNSやオンラインゲームで知り合った人と会って、危険な目に遭う事例は数多く存在します。親に相談するとダメって言われるからと、自分だけの判断で会いに行って、犯罪に巻き込まれるケースも後を絶ちません。どうしても会いたいと思ったら、必ず誰かに相談して、対策をしたうえで会うようにしましょう。
小中学生・高校生のSNSトラブル対策を専門家が解説 まとめ
小中学生や高校生が気を付けたいさまざまなSNSで起こり得るトラブルと、注意点についてお話しました。SNSを利用した犯罪は、増えていると同時にとても巧妙になってきています。残念ながら、あの手この手で若者や子どもを騙そうとする“悪い大人”はたくさんいます。今回お話したように、個人情報の扱いにはくれぐれも注意して、投稿内容や公開範囲、どんな人とつながるかも、よく考えながらSNSを使ってくださいね。そして、もしも不安なこと、困ったことがあったら、親御さんや先生に相談しましょう。「怒られちゃう」「スマホを取り上げられるかも」と迷っているうちに状況が悪化する可能性もあるので、できる限り早く助けを求めることが大切です。周りの人はきっとあなたを守ってくれますから、自分だけでなんとかしようとせず、信頼できる大人を頼りましょうね。
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