空き巣や強盗被害のニュースが頻繁に流れたり、自分の知っている場所に泥棒が入ったりすると、「わが家の防犯・セキュリティ対策は大丈夫かな……」と不安になってしまうものです。日本では住まいの防犯対策をしていない方は6割以上とも言われ、その理由の半数以上が「具体的にどのような防犯・セキュリティ対策をしたら良いかわからないから」というデータもあります。一戸建て・一軒家では、具体的に何をすれば防犯・セキュリティ対策になるのでしょうか? 防犯住宅診断士の瀬尾さちこさんに、一戸建て住宅・一軒家の防犯対策について伺いました。
日本防犯住宅協会認定 防犯住宅診断士・認定特定非営利活動法人日本防災士機構認定・防災士・整理収納コンサルタント
広告代理店、デザイン事務所、旅行代理店での勤務を経て結婚後、2010年に整理収納アドバイザーとして開業。その後、防犯住宅診断士、防災士の認定資格も取得し、現在は主に製造現場のコンサルティングのほか、ウェブサイトを中心に防犯・防災・整理収納に関する記事の監修・執筆や、講演などを行なっている。また、愛知県内・岐阜県内のコミュニティエフエムでラジオパーソナリティとしても活動している。
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防犯住宅診断士の瀬尾さちこです。厳重に防犯対策をしているお家は、実は過去に被害に遭っているケースが非常に多いんですね。しかし、何より大切なのは被害に遭う前から対策をして、被害を未然に防ぐことです。住まいを狙った犯罪にはいくつかありますが、とくに多いのは一戸建て住宅の空き巣と言われています。まずは被害の傾向を解説しますので、この機会にどんな対策が有効なのかも考えてみましょう。
目次
1.空き巣がチェックするポイントは? 狙われやすいお家の特徴と一戸建ての防犯対策
2.防犯ガラス・シャッター・防犯ブザー……何が有効? 窓の防犯対策
3.鍵は多いほうが安全? 玄関の防犯対策
4.一戸建て住宅・一軒家の防犯対策 まとめ
空き巣がチェックするポイントは? 狙われやすいお家の特徴と一戸建ての防犯対策
2020年の警視庁のデータを見てみると、侵入窃盗の被害は一戸建て住宅が37.0%と一番多くなっています。侵入窃盗とはいわゆる泥棒のことで、「空き巣」「忍込み」「居空き」といった手口があり、空き巣は留守中に入る泥棒、忍込みは就寝したころに入る泥棒、居空きは住人の在宅時に入る泥棒を指します。
では、泥棒、とくに手口の3割以上を占める空き巣は、お家の何をチェックして狙いを定めているのでしょうか? 対策と合わせて紹介します。
●留守(不在時間)
空き巣は留守を狙って犯行に及ぶため、住人の不在時間帯を知るために何度も下見に来ます。日が暮れても洗濯物が干してあると不在だと教えていることになるので、取り込むのが遅くなるような日は室内干しにするのが良いでしょう。また、帰宅が遅くなるような日は電気を点けっぱなしにしておくと、夜間に外出中でも在宅であるように見せかけることができます。
●入りやすくて逃げやすいか
侵入窃盗を行う犯罪者は「侵入しやすさ」と「逃走しやすさ」もチェックします。侵入経路に階数は関係なく、1階も2階も同じように気を付けなければいけません。足場となるようなものがあればどこからでも侵入されてしまうので、エアコンの室外機やエコキュート、物置などは、窓の下やベランダに登れるような位置に設置するのは避けましょう。また、ガーデニングなどで使ったスコップや掃除用のホウキを出しっぱなしにするのも良くありません。とくに空き巣は侵入用の道具を現地調達することが多いので、足場になったり窓を割る道具になったりするようなものは必ず片付けましょう。
一方で、安易に侵入させないためには門扉を付けるのが有効です。門扉の中に入った時点で不法侵入となるので、敷地をしっかりと区切るためにも設置をオススメしています。さらに防犯砂利を敷くのも良いですね。人が歩くとかなり大きな音がするので効果的です。傍目にもわかりやすい防犯対策をしていると、空き巣は侵入しにくいお家だと思うので、ターゲットにされにくくなりますよ。
●隣近所からの見通し
塀は高いほうが安全に感じるかもしれませんが、実は防犯上あまりよろしくありません。外からお家の中の様子が見えないと、泥棒に侵入されてもまわりが気付きにくいんですね。庭木が茂っているお家も死角が増えるので狙われやすい傾向にあります。周囲が異変に気付けるよう、塀は低めにして庭木は定期的にメンテナンスをしておきましょう。外からの視線を遮断しすぎないようなフェンスを外構にするのも有効です。
●窓のクレセント
空き巣の侵入手口で多いのは、外からクレセント錠周りの窓ガラスを割り、鍵を開けて入り込むケースです。お家を建てる際には、クレセント錠が開けられにくい場所に窓を設置するようにしましょう。手を伸ばしても届かなかったり、人目に付きやすかったりする場所が有効です。そして防犯対策として忘れてはならないのは、鍵をしっかり閉めるということ。2階や3階の窓だからと油断せず、クレセント錠は補助錠も含めて全部施錠するようにしてください。
正しく使うと効果アリ! 防犯カメラの設置場所と注意点
防犯対策として防犯カメラは効果的なのか? しばしば論争になる話題ですが、私は正しく使えば効果があると考えています。使用する場合は掃き出し窓、出窓、腰高窓、勝手口などの侵入口になりそうな場所に、“目立つ”ようにおくと犯罪抑止につながるでしょう。侵入や逃走に使われそうな抜け道や隙間、潜まれそうな場所など、人の目が届きにくい場所にもあるとより安心です。玄関に設置する場合は門扉や玄関ドア付近が良いですね。また、空き巣は下見の際にインターホンを鳴らして留守を確認することがあるので、できればインターホンも録画機能付きを選びましょう。
防犯カメラを導入する際、専門業者に依頼すればあなたのお家を見たうえで適切な設置をしてくれますが、ホームセンターで購入した場合は基本的にこちらから設置場所を指示する必要があります。ご自身で取り付ける場合は、屋内用と屋外用を間違えて設置してしまうことも考えられますね。誤ったものを設置すると防犯知識の低さを露呈することになってしまい、逆に狙われやすくなるので、できれば専門業者に依頼するほうが良いと思います。
防犯カメラのタイプは、暗いところでも鮮明に映すことができて、数日分のデータがSDカードなどに記録できるものがオススメですね。しかし、いきなり取り付けるとご近所トラブルになりかねないので、周りのお家には事前に説明してから設置しましょう。
センサーライトで防犯対策! オススメのタイプは?
センサーライトは人感センサーよりも防犯性が高い「明暗センサー」タイプがオススメです。人感センサーライトは、範囲内に近づいたら自動点灯して住人や近隣に人がいることを気付かせてくれるライトですが、空き巣はどこに何が設置されているか下見してから犯行に及ぶので、人感センサーだと避けて侵入される可能性があります。一方で明暗センサーライトは、暗くなると自動的に周囲を明るく照らしてくれるライトです。心理効果として、常に明るい場所では悪いことがしにくいので、明暗センサーライトの方が防犯性は高いと言えますね。
設置場所は人目につきにくい場所や門の近くが良くて、光ったらお家の中からでも気付けるところに置きましょう。しかし、夜間は常に点灯した状態になるので、ご近所さんに前もって相談してから設置すると良いですね。近隣の迷惑になるような場所、とくに寝室付近を避けるなどの配慮が必要です。明暗センサーのスイッチは常に入れておくことが重要で、電球は球切れしないように定期的にチェックしましょう。また降雪地域にお住まいの場合は、ライトに雪が積もらないような形状を選ぶようにします。
防犯ガラス・シャッター・防犯ブザー……何が有効? 窓の防犯対策
一戸建ての窃盗被害において、侵入経路の半数以上が「窓」となっています。では、窓からの侵入を防ぐためにはどうすれば良いのか? 最も大切なのは、先ほども述べた通りしっかりと施錠することです。鍵をかけるのは当たり前のことなのですが、実は空き巣が犯行に及ぶのは鍵をかけていない「無締り」の状態が一番多いんですね。施錠はクレセント錠だけでなく、背面のロックや補助錠も含めて窓に付いている鍵はすべてかけてください。施錠されているかどうかは外から見えますので、鍵をすべてかける習慣を身に付けましょう。在宅中でも居空きを防ぐために、トイレやお風呂場なども含めて、誰もいない部屋の施錠は忘れずに。
無締りの次に多いのが「ガラス破り」。クレセント錠付近のガラスを割って、鍵を開けて侵入する手口です。窓のサイズはかなり狭くても、意外と人が通れてしまうので要注意。侵入されるサイズの目安は次の通りです。
● 400ミリ×250ミリの長方形
● 長径400ミリ、短径300ミリの長円形
● 直径350ミリの丸窓
リビングの掃き出し窓のような大きな窓はもちろん、トイレの小窓くらいからでも侵入されてしまいます。これから家を建てるなら窓ガラスは割られにくい防犯ガラス、とくに「CPマーク」が付いたものを選ぶようにしましょう。
CPマークは警察庁、国土交通省、経済産業省、民間団体で構成された官民合同会議で性能試験をクリアした認可製品の目印です。空き巣などの犯罪において、侵入に5分かかったら約7割の犯人は諦めると言われており、この5分を耐えることができる建物部品にCPマークが貼られているわけですね。
現在住んでいるお家の窓がCPマーク付きの防犯ガラスでないのなら、防犯フィルムを貼るのも有効な手段です。防犯フィルムは特殊なので貼るのが難しく、専門業者に依頼する必要がありますが、侵入までの時間を稼いでくれます。ちなみに格子やシャッターは災害用が多く、防犯効果のないものがほとんどだと覚えておきましょう。格子やシャッターで防犯対策をするなら、必ずCPマークが付いているものを選ぶ必要があります。
また、トイレやお風呂などは人目を避ける場所につくられることが多いので、防犯対策が必要な場所と言えます。トイレやお風呂にはルーバー窓が採用されているのをよく見かけますが、これからお家を建てるなら避けたほうが良いでしょう。ルーバー窓は、外からガラスを1枚ずつ外すことができるので、狙われやすい窓です。もし、現在住んでいるお家にある場合は、室内側に取り付ける「室内面格子」や防犯ブザーを付けるなどの対策をしてください。
窓用の防犯ブザーは“振動で鳴る”タイプがオススメ
窓からの侵入を防ぐためには防犯ブザーを設置するのも良いですね。なかでも振動に反応するタイプがオススメで、窓が割られる前に警報を鳴らしてくれます。一方で、窓が壊されてから反応するタイプだと、侵入直前に鳴るので手遅れになりかねません。ブザーの設置場所は手が届きにくい窓の上部、なるべくクレセント錠から遠いところが良くて、鳴ったときに壊されて止められにくくなります。
ちなみに振動に反応するタイプの防犯ブザーは、日常生活のなかで鳴ってしまうこともあります。窓を開け締めしたり、お子様がぶつかったりしたときですね。あまりに頻繫に鳴ってしまうようなら、在宅中はスイッチを切っておくことも検討しましょう。ですがその場合、就寝時や出掛ける前には必ずスイッチを入れるようにしてくださいね。
鍵は多いほうが安全? 玄関の防犯対策
窓の次に多い侵入口は「表出入り口」、つまり玄関です。玄関も窓と同様に、すべての鍵をしっかりかけることが最も重要です。最近の玄関扉は2箇所の鍵とドアガードのスリーロックが主流で、それらをすべて使えば防犯性が高まるのですが、意外なことに3つの鍵のうち1箇所しかかけていないご家庭が多いんですね。
ドアを開けるのに時間がかかるほど空き巣は侵入を諦める傾向にあるので、鍵は多いほうが良いと思います。しかし、たくさん鍵を取り付けても使わなければ意味がありませんので、鍵を増やす前にまずはスリーロックすべてをかける習慣付けをしましょう。また、ドアのタイプ別で防犯性を判断するなら、引き戸やスライディングは外からはずすことができるので、理論上はオーソドックスな開き戸タイプが一番防犯性は高いと言えます。しかし、覗き穴があるタイプは外して針金を入れる、郵便受けが鍵穴の近くにある場合はバールなどで壊せる、扉に飾りガラスがあるなら割って解錠、といった危険性はつきまとうので、扉も玄関自体もできるだけシンプルなつくりにすることが防犯の観点では一番良いですね。
後付け補助錠は「面付け箱錠」がオススメ
玄関扉がスリーロックではない、あるいはスリーロックだけどさらにセキュリティを強化したい場合には、「面付け箱錠」での補強がオススメです。面付け箱錠は、デッドボルトという貫抜部分が外から見えないので、バールなどを差し込んでこじ開けることがしにくい構造なんですね。通常の開き戸タイプのドアにプラスすることで、防犯性を高めることができますよ。
一戸建て住宅・一軒家の防犯対策 まとめ
防犯対策のポイントは「光」「音」「人の目」だと言われています。まずはご自宅の現状を把握し、適切な場所にセンサーライトや防犯カメラ、防犯砂利などのセキュリティを高める適切な防犯対策をするようにしましょう。しっかり防犯対策していることを空き巣にアピールできれば、空き巣も嫌がるので狙われる危険も少なくなります。さらにご近所さんとのコミュニケーションも立派な防犯・セキュリティ対策のひとつ。いつもは見ない人や車がいたら誰かしらが気づくようなたくさんの「人の目」が光っている地域は、狙われにくい防犯性の高い地域となるので、ぜひ良好な関係を築くようにしてくださいね。
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