空き巣、放火、ネット詐欺……私たちの生活のすぐそばで、さまざまな犯罪が起こっています。これらの犯罪被害に合わないためには、どのような対策が必要なのでしょうか? 防犯のスペシャリストである防犯住宅診断士の瀬尾さちこさんに、日常生活で意識したい防犯の心得やオススメ防犯グッズについて伺いました。
日本防犯住宅協会認定 防犯住宅診断士・認定特定非営利活動法人日本防災士機構認定・防災士・整理収納コンサルタント
広告代理店、デザイン事務所、旅行代理店での勤務を経て結婚後、2010年に整理収納アドバイザーとして開業。その後、防犯住宅診断士、防災士の認定資格も取得し、現在は主に製造現場のコンサルティングのほか、ウェブサイトを中心に防犯・防災・整理収納に関する記事の監修・執筆や、講演などを行なっている。また、愛知県内・岐阜県内のコミュニティエフエムでラジオパーソナリティとしても活動している。
ホームページ:くらしの取扱説明書
防犯住宅診断士の瀬尾さちこです。インターネットの普及や新しい技術の誕生により生活が便利になる一方で、個人情報の流出など新たな危険が身近に潜むようになりました。空き巣や性犯罪などは依然として多発し、新しい手口が次々と生まれているのが現状です。そのなかで身近で起こりうる犯罪をいくつか取り上げ、すぐにできる対策や防犯グッズの活用方法などをお話していきたいと思います。
空き巣に狙われないための防犯対策とオススメ防犯グッズ
空き巣は、留守の間に侵入して金品を盗む泥棒です。空き巣に狙われないために何より大切なのは、日ごろから鍵をかける習慣付けをすること。「鍵をかけるなんて当たり前」と思われたかもしれませんが、空き巣の手口で一番多いのは“鍵がかかっていない場所からの侵入”なんです。玄関や勝手口のドアはもちろん、高いところにある小さい窓でも、油断せずにすべて施錠しましょう。在宅時でも、誰もいない部屋の鍵はかけておくことが重要です。一戸建てでもマンションなどの集合住宅でも同様で、補助錠を含めて付いている鍵を全部かけることが防犯対策のスタートとなります。さらに門扉がある場合は必ず閉めるようにしてください。最近はマンションにも設置されていることがありますね。門扉があれば中に入った時点で不法侵入となるので、しっかりと閉めて敷地をはっきりさせておくことは、効果的な空き巣対策となります。一方で、郵便受けに新聞や郵便物をためるのは、長期不在や生活の乱れを空き巣に教えてしまいますし、個人情報が盗まれる危険性もあるので控えましょう。鍵付きの郵便受けも活用し、しっかりと防犯してくださいね。
空き巣は留守を狙う犯罪のため、“洗濯物”にも注意が必要です。外が暗くなっているにも関わらず、洗濯物を干しっぱなしにしておくことは、空き巣に不在だと知らせるようなもの。帰宅が遅くなる場合、洗濯物は外から見えないように部屋干しするのが良いですね。これから一戸建てを建てるなら、ランドリー室や乾燥機の検討を、もし物干し竿を設置するのなら、“外から見えにくい位置”へ設置しましょう。この対策はベランダに干す場合も有効なので、腰壁に隠れるような位置に物干し竿を置いてください。不在時間をわかりにくくするには、お家の中の電気を点けっぱなしにするのも有効です。夜になると窓から明かりが漏れて、在宅のようにカモフラージュすることができます。
一戸建ての場合は、庭をきれいにしておくことも重要です。空き巣は侵入する前にじっくりと下見をして狙いを定めるのですが、たとえば枯れたプランターが放置してあったら、手入れだけでなく防犯に関しても無頓着という印象を与えてしまいます。植栽が伸び放題だったら周囲からの目隠しとなり、空き巣に侵入されやすくなるということも覚えておきましょう。また、スコップやマイナスドライバーなどの先が尖ったものが出しっぱなしになっていたら窓を割る道具に、ホウキなどの長いものは面格子を外す道具になりかねません。こういった手入れが行き届いていないお家は、ターゲットにされやすいと言えます。
上層階も要注意! マンション・アパートの空き巣対策と防犯の心得
空き巣はマンションやアパートでは低層階しか狙わないかと思いきや、実は上層階への侵入も多いんです。エントランスがオートロックの建物だと油断しがちですが、ベランダや屋上から忍び込み、雨樋を伝って上層階に侵入するケースもあります。上層階だから大丈夫だろうと、夏の暑い日に窓を開けっ放しにして寝るなどは危険なので、階数に関わらず施錠はしっかりとしましょう。
空き巣からお家を守る防犯グッズとは?
空き巣被害を防ぐには、窓や玄関ドアなど侵入口となりそうな箇所をチェックし、重点的に対策するのも重要です。窓には割られにくく、侵入されるのに時間がかかる「防犯ガラス」を導入するのがオススメ。今住んでいるお家が防犯ガラスでない場合は、「防犯フィルム」という特殊なフィルムを施工業者に依頼して貼ってもらうと良いでしょう。防火ガラスの場合は性能上の理由でフィルムを貼ることができないので、防犯と防火、両方の機能を持ち合わせたガラスに交換する必要があります。
玄関扉には補助錠を付けると良いですね。なかでも外からこじ開けられにくい「面付け箱錠」がオススメです。空き巣は侵入に時間がかかると諦めやすいというデータがありますので、今ある内鍵を全部使ったうえで、さらに防犯性を高めるために補助錠を付けるのが効果的です。
ただし、防犯フィルムや補助錠などの防犯グッズを購入する際は、「CPマーク」が付いているかを確認してください。CPマークは、警視庁などの省庁と民間企業団体が連携して行なう性能試験をクリアした認可製品の証です。最近は100円ショップにも補助錠などが売られていますが防犯効果は薄いので、効果が実証されているCPマークの防犯グッズを選ぶようにしてくださいね。
また、マンションを含めた賃貸物件で、補助錠や防犯フィルムを取り付ける際は、事前に大家さんや管理会社に必ず相談しましょう。穴を開けたり専門業者を呼んでの大掛かりな作業になったりするので、施工前に許可を得ていないとトラブルになりかねません。とは言え、建物の防犯性が高まるので、理由を伝えればおそらくOKをもらえると思いますよ。
ガレージも狙われる? 車の防犯対策
車上荒らしを防ぐため、車の鍵はしっかりかけて、ガレージがある場合は出入り口の施錠も忘れないようにしましょう。車の鍵は家の鍵よりも簡単に開けられてしまうため、お家の敷地内にとめていても狙われるケースが意外と多いんですよ。車上荒らしに遭わないためには、車の中にものを置かないことも基本になります。買い物用のエコバッグやCD、携帯音楽プレーヤーなどをどうしても車内に置いておきたい場合は、ダッシュボードに入れるなど、外から覗き込んでも見えないようにしておきましょう。ガレージではない駐車場はとくに注意が必要です。車にカバーを掛ける場合は、すぐに外せるようでは防犯対策にならないので、留め具はしっかりかけておくことを忘れずに。カバーは放火対策も見据えて防炎品のものがオススメです。
そのほか駐車場が暗かったり、人目に付きにくかったりすると狙われるリスクが高くなるので、必要に応じて明暗センサーライトや防犯カメラを設置すると良いですね。設置前には、必ずご近所さんへ相談しましょう。ご近所トラブルを避けられるだけでなく、周辺の防犯意識が上がり地域の防犯性を高めることにつながりますよ。また、車そのものが盗まれるケースもありますので、スマートキーは玄関付近に置かないなど、キーの管理も注意してください。
ゴミの出しっ放しに注意! 放火対策
出典:「令和3年版 消防白書」(消防庁)
2020年に起こった火災の原因は、たばこやたき火、コンロといった火の不始末によるものが上位を占めますが、次いで多いのが「放火」です。放火は、疑いを含めると火災の原因で一番多いと言われており、年間約4,000件にものぼります。万が一に備えて、燃えやすいものは外に置かないようにしましょう。ゴミは収集日まで外に出さず、物置やガレージなどに仮置する場合は忘れずに鍵をかけておきます。門扉があるなら、門扉にも鍵をかけましょう。また、枯れ葉や枯れ草はためずに、すぐ処分するようにしてください。自転車のカバーに放火されるケースもあるので、消防庁の認定マークが付いた防炎品を選ぶと良いですね。そして、放火犯は人目に付かない場所で犯行に及ぶので、お家の周りで潜めそうなところや暗がりには明暗センサーライトや防犯カメラを設置すると有効です。被害にあったときに備えて住宅用消化器は常備しておき、避難経路の確保もしておきましょう。
大人も防犯ブザーは必要? 外出時の防犯対策と防犯グッズ
ひとりきりの徒歩での移動、とくに夜道には危険が潜んでいますので、できるだけ人通りの多い道を選びましょう。帰宅ルート上にある交番や24時間営業のコンビニなど逃げ込める場所を事前に把握しておき、いざというときにはためらわずに助けを求めることも大切です。防犯対策として、携帯電話で通話しながら歩く方もいますが、話に意識が向いていると不審者が近づいてきたとき、気付くのが遅れる危険性もあるので、私はオススメしておりません。同じ理由で、イヤホンで音楽を聞くのも控えたほうが良いですね。ときどき後ろを振り返るなど周囲を警戒しつつ、手に防犯ブザーを握りしめておくくらいの心構えで歩きましょう。危険を感じたらタクシーを使っても良いと思います。夜道以外でも、エレベーターや駐輪場、マンションの共用部分などで見知らぬ人と二人きりにならないよう、人がいるか確認してから入るとより安全ですね。
毎日身に着けたくなる防犯グッズを活用
外出時には、大人でも防犯ブザーを持つことをオススメします。通勤などで日常的に夜道を歩くのならば必携ですね。防犯ブザーを選ぶときには、肌身離さず持てて緊急時にすぐ使えるように首から下げられるものが良いでしょう。ブザーのほか、ペンダントタイプのホイッスルなども防犯グッズとして有効です。最近はアクセサリーのように見えるオシャレな防犯グッズも多いので、毎日身に着けたくなるようなデザインのものを選ぶと良いですよ。一見すると防犯用だとわかりにくいものでも、犯罪者は防犯グッズだと把握しているケースが多いので、目に付くところに身に着けることが抑止効果となります。人気のない道などを歩くときには、いつでも使えるようにしておきましょう。
ネット上の詐欺が増加中……サイバー犯罪の対策は?
日常生活のなかでも欠かせないものとなったインターネット。便利にはなりましたが、ネット上でのトラブルが年々増加傾向にあります。コロナ禍ではマスクや消毒液の違法転売、市役所の職員を名乗ったワクチン接種に関する詐欺などの被害が相次ぎました。ほかにも、見覚えのないサイト利用の高額請求や楽天やAmazonなどの大手企業を名乗ってメールやSMSを送りつけ、本物そっくりなサイトで個人情報を抜き取ろうとするフィッシング詐欺など、犯罪者は巧妙な手口で次々と罠を仕掛けてきます。偶然、正規ルートで商品を注文した直後に、詐欺のメールが届くこともあり得ますので、メール内のリンクは絶対にクリックしてはいけません。本物か偽物かを確認しないならドメインや本文の内容などをネットで検索し、複数のサイトから情報を集めるようにしましょう。何かあったらひとりで抱え込まず、お金を振り込む前に家族など身近な人に相談することも大切ですね。
身近に相談できる人がいない場合や、被害に遭ってしまった可能性のある時には、消費者庁がすすめている「消費者ホットライン188番」に相談を。3桁の電話番号「188」をダイヤルすると、地方公共団体が設置している最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口に案内されます。悪質商法については、警察にも全国共通の短縮ダイヤル「#9110」があります。#9110に電話をかけると、最寄りの警察本部・警察署の悪質商法担当係につながります。
さらにインターネット通販で注文した品物が届かないといった詐欺もあります。目安ではありますが、発送元がはっきりしない通販は使わない、実店舗のある販売店を選ぶなど、よく検討してから購入しましょう。犯罪者は次々と新しい手口を編みだすので絶対に安全とは言えませんが、ある程度の対策にはなると思います。
また、FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSを使うなら、ネットリテラシーが求められます。お子様や近所の写真からでも犯罪者は技術を駆使し、個人を特定して悪事を働きます。投稿は全世界に公開されていて、犯罪者にも見られる可能性があることを警戒しておきましょう。
日常生活で意識したい防犯の心得とオススメ防犯グッズ まとめ
防犯対策は日ごろから意識して行なうことが大切であり、防犯グッズは買っただけで安心せず、しっかり防犯意識を持って活用するからこそ意味をなします。どれだけ対策をしても犯罪被害を100%防ぐことはできませんが、家族全員が同じ心構えだからこそ防御できることもあるはずです。防犯について今一度、家族と話し合ってみてはいかがでしょうか。
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