夏休みの自由研究テーマにもなる! 流星群と星の観察方法を理科の倉橋先生が解説

きらきらと星が輝く夜空。流れ星を見つけてうれしくなるのは、大人も子どもも同じでしょう。星空を眺めながら「あの星はどのくらい遠くにあるのかな?」「流れ星は一体どこからやってくるんだろう?」などと考えたことはありませんか? 理科実験教室「サイエンス・ラボ」主宰の倉橋修さんによると、理科は実際に自分の目で見て、考えたり調べたりすることでどんどん理解が深まり、楽しくなるそうです。小学校では「月と星」を習ったり、中学校では「地球と宇宙」や「太陽系の天体」などを学んだりと、星と理科は密接に関わっています。天体観察をきっかけに理科が好きになれたら、学校の授業も楽しく受けれるかもしれませんね。そこで、倉橋先生に流星群の仕組みや星空の観察方法などを解説していただきました。夏休みの自由研究のまとめ方もご紹介します。1年で最も長い休暇である夏休みを利用して、親子で星空観察をしてみましょう。中学受験にもよく出る内容ですから、受験生はとくに必見ですよ!

理科 教育のプロ・倉橋修のプロフィール/中学受験理科
倉橋修 プロフィール
サイエンス・ラボ 代表


名古屋市で小学生を対象とした実験教室サイエンス・ラボを主宰。
慶応義塾大学卒。一般企業で勤務した後、約25年間、河合塾で理科を教え、独立。中日新聞「こどもウィークリー」の理科ワンダーランドを2013年まで執筆。
YouTubeで、理科の実験と授業を融合させた動画を配信中。視聴回数1,100万回、チャンネル登録者52,000名。多くの中学受験生の理科勉強のバイブル動画になっている。現在は、オンラインでも理科教室を開催。理科の全単元を実験動画にし、中学受験の理科勉強を短時間で楽しくできるようにしている。

サイエンス・ラボ:http://science-labo.com/

実験教室「サイエンス・ラボ」代表の倉橋修です。進学塾での講師に始まり現在に至るまで、40年ほど理科を教えています。難しいと思われがちな理科ですが、実際に見たり触れたりすると好奇心がどんどん膨らみ、理解力もグンと高まる科目です。夏休みには、三大流星群のひとつ「ペルセウス座流星群」がやってくるので、星空観察の絶好のチャンス。いつもより夜更かしをして、親子で壮大な天体ショーを見ませんか? 流星群と同時に観察できる星・惑星などについても解説しますので、興味が湧いたらぜひ観察してみてください。

目次
1.流れ星はどこからやってくる? 流星群の仕組みを学ぼう
2.2024年は8月が見頃! 三大流星群のひとつ「ペルセウス座流星群」を観察しよう
3.冬に見える三大流星群「しぶんぎ流星群」と「ふたご座流星群」も観察しよう!
4.【おまけ】「太陽フレア」とは? 日本でもオーロラが観測できる!?
5.流星群と星の観察方法を理科の倉橋先生が解説 まとめ

流れ星はどこからやってくる? 流星群の仕組みを学ぼう

日本で見られる主な流星群は10を超えます。よく「流星群がやってくる」という表現を耳にしますが、実際はやってきません(笑)。しかも、流星とか流れ星と言いながら、実は星でもないんです。授業をしていると、生徒たちから「流星群ってなんですか?」「どこからやってくるんですか?」「どういう風に星が飛ぶんですか?」といった質問をよく受けます。流星群は理屈がわかっているからこそ、より楽しめるものだと思いますので、詳しく解説していきますね。

流れ星の正体とは?

流れ星の正体とは?

流れ星とは、いったい何なのでしょうか? 空にある星が落ちて流れ星になると思っている方がいますが、それは間違いです。輝き続ける星たちはものすごく大きくて太陽のように燃えているので、もし落ちてきたら大変なことになります。流れ星のもとは、宇宙のチリ = 岩石のかけらです。チリが地球の周りを覆っている大気に入り、摩擦で燃えつきるまでの様子が、地上にいる私たちには星が降ってくるように見えるんですね。

小さなチリである流れ星が肉眼で見えるのは、私たちと距離が近いからです。一般的に、地表から100キロメートルを超えた先が宇宙と呼ばれています。地表との距離は、スペースX社の小型衛星「スターリンク」が約550キロメートル、気象衛星「ひまわり」はなんと約35,800キロメートルも離れているのに対し、流れ星は100キロ程度。非常に近い距離で激しく燃えているので、肉眼でも大きく見えるというわけです。

流星群の仕組みと星の飛び方

流星群の仕組みと星の飛び方

では、流星群はどのようにできるのでしょうか? 地球のように太陽の周りをぐるぐると公転しているのは、水星・金星・火星・木星・土星・天王星・海王星以外に彗星などの天体があります。彗星はほとんどが氷でできていますが、ガスやチリも混ざっていて、太陽の近くを通ると熱で氷が溶け、残ったチリが流星群のもとになります。

地球の公転軌道上に残されたチリが大気との摩擦で燃える現象が流星群

そして、地球の公転軌道上に残されたチリの中を地球が通り抜けるとき、たくさんのチリが大気との摩擦で燃えます。この現象こそが、私たちが流星群と呼ぶものの正体です。「〇〇座流星群」と呼ばれるのは、ちょうど地球の進行方向にある星を中心(放射点)として、放射状にチリが燃えるからですね。「ペルセウス座流星群」と言っても、遠く離れたペルセウス座から星が飛んできているわけではありません。あくまでも地球の進行方向、そのはるか先にペルセウス座が見えるだけです。また、流星群はなんとなく飛んでいるのではなく、ペルセウス座やふたご座などの放射点を中心に四方八方に流れていきます。

流星群は放射点を中心として四方八方に流れる

流星群は、地球がチリのある宇宙空間に突入することで起こるので、私は流星群を見ると「ああ、今地球が宇宙空間を放射点の方向に突き進んでいるんだな」と感じます。地球という大きな乗り物に乗って、暗黒の宇宙空間に向かっているなんてすごいと思いませんか? 見るたびに「地球はすごいぞ!」と地球愛が芽生えますね。

ちなみに流れ星は、ひとつだけ見えるときもあれば、たくさん見えるときもあるのですが、流星群に属する流れ星を「群流星」と言い、流星群ではない流れ星を「散在流星」と言います。散在流星は、「あっ! 流れ星だ」とときどき見えるもので、まとまって出現しないため放射点もありません。大昔に地球の近くを通った彗星や、公転周期の長い彗星たちが残したチリが宇宙に散らばったものだと考えられます。流星群を観察していると、群流星のなかに散在流星が流れることもあるので、探してみると面白いかもしれません。

2024年は8月が見頃! 三大流星群のひとつ「ペルセウス座流星群」を観察しよう

2024年は8月が見頃! 三大流星群のひとつ「ペルセウス座流星群」を観察しよう
©国立天文台

流星群の基礎知識を学んだら、実際に観察してみましょう。毎年7月~8月になると「ペルセウス座流星群」が見えるのですが、国立天文台によると2024年のピークは8月12日の23時頃。放射点はもちろんペルセウス座で、ペルセウス座流星群のもととなる彗星(母天体)は「スイフト・タットル彗星」です。地球は太陽の周りを1年で1周するのに対して、スイフト・タットル彗星は約133年かけて1周しています。ペルセウス座流星群は、30年ほど前に地球の公転軌道を通過したスイフト・タットル彗星のチリが燃えると言われているんですよ。宇宙って壮大ですね。

それでは、ペルセウス座流星群の観察のコツについてお話していきます。

ペルセウス座流星群を観察するコツ

ペルセウス座流星群を観察するコツ
©国立天文台:2024年8月13日午前3時の東京の夜空

ペルセウス座流星群は、8月12日〜13日にかけて北東の方角に出現すると予想されています。2024年8月12日の月は、22時頃に沈むので、見頃は23時〜3時頃。しかし、23時頃は放射点が地平線に近いため、翌13日の3時頃に最も多く見ることができるでしょう。もし天候が悪かったり、見逃してしまったりした場合は、前後の日でも観察できますよ。

星の観察は時間がかかるので、映画を観るような感覚で臨みましょう。お家から北東側の空が見やすい場合は、部屋から眺めても良いと思います。屋外で観察するなら、公園や川の近くなど、なるべく暗くて開けた場所がオススメ。その時期はお盆シーズンということもあり、帰省や旅行をする際は、事前に良さそうな場所を探しておくとスムーズですね。楽な姿勢をキープできるようにレジャーシートや椅子、蚊などに刺されないように虫よけも準備しましょう。長丁場になりますから、おやつや飲み物もあると良いですよ。

2024年8月13日午前3時の東京の夜空
©国立天文台:2024年8月13日午前3時の東京の夜空

ペルセウス座流星群を探すには、まずぎょしゃ座の「カペラ」を探しましょう。北東の空のカシオペア座とカペラの間が放射点ですが、カシオペア座は見えにくいかもしれないので、一番光って見えるカペラを目印にすると良いですね。ペルセウス座はそんなに明るい星ではありませんから、肉眼では見えない可能性が高いです。カペラがどうしても見つからないときは、見ている範囲を広げましょう。私の理科実験教室でも星空観察をしますが、意外と狭い範囲ばかりを見てて、見つけられない子が多いんですよ。また、視力が低いと見えにくいので、必要に応じてメガネなどの矯正器具を装着し、しっかり見える状態で観察してください。

事前にペルセウス座流星群が現れる北東の方角を確認しておくのも良いですね。星の観察中は、目を暗闇に慣らすことが重要です。星座早見盤を見ようとして観察中にライトを点けると星が見えにくくなってしまうので、星座早見盤も観察前に確認しておくようにします。スマホなどの星座アプリも同様ですね。事前に方角さえわかっていれば、ペルセウス座流星群の放射点の目印となるカペラを見つけられるはずですよ。

ペルセウス座流星群と同時に観察できる星・天体

ペルセウス座流星群と同時に観察できる星・天体
©国立天文台:2024年8月13日午前3時の東京の夜空

ペルセウス座流星群とあわせて、夏の大三角や秋の四辺形、木星・火星・土星といった惑星も探してみましょう。夏の大三角は、天頂から西に見える3つの星です。1等星なので見つけやすく、暗さに目が慣れると白鳥の形も見えてくるはず。ちなみに、夏の大三角と「北極星」で、細長いひし形ができます。北極星は真北に一年中ずっと輝いている星ですので、ぜひ探してみてくださいね。

天体望遠鏡で木星のガリレオ衛星の観察にチャレンジ

天体望遠鏡があれば見てもらいたいのが、木星のガリレオ衛星です。キラキラしてとても美しいんですよ。連日観察すると、衛星の位置が変わっていく様子から、ガリレオが「地球は太陽の周りを回っている」と確信した理由がわかります。天体望遠鏡は三脚付きで持ち運びできて、ある程度レンズが大きいものがオススメ。私が使っている「ラプトル60」は初心者向けながら機能面も十分です。オプションでアダプタを購入すれば、スマホのカメラをつなげてかなりキレイに撮影できるので、星空の記録にもってこいですよ。また、ペルセウス座流星群の観察時期は、火星と木星が接近します。2024年の夏は白く輝く木星と赤い火星が隣り合うのも見どころですね。

夏の午前4時頃には東の空から昇ってきたばかりの「オリオン座」観察できる

さらに、午前4時頃には東の空から昇ってきたばかりの「オリオン座」を見ることができます。オリオン座は冬の星座のイメージですが、時間帯によっては夏でも見えるので、ぜひ探してみてください。東の地平線が明るくなる前がチャンスです。オリオン座以外にも、冬のダイヤモンドや「すばる」も観察できます。これらの星は夏の終わり頃のほうがよく見えるので、ペルセウス座流星群で星空に興味を持ったら、日をあらためて観察するのも良いでしょう。

星と星座は中学入試に出題されることも多く、実物を見たのと見ていないのとでは、理解度に大きく差が出ます。とくに中学受験を控えている子は、夏の大三角や秋の四辺形、オリオン座などは夏休みを利用して自分の目で確かめておくと良いですね。

星空観察の手順はコチラ

興味が湧いたら調べてみよう! 夏休みの自由研究のまとめ方

興味が湧いたら調べてみよう! 夏休みの自由研究のまとめ方

ペルセウス座流星群や夏の大三角、惑星などを観察して星空に興味が湧いたらどんどん調べてみましょう。宇宙に浮かぶ天体は、夏休みの自由研究テーマにもぴったりです。惑星の順番も興味深いですし、星に関する伝説や物語を知ると天体がもっと好きになるはず。はくちょう座の頭に当たる星「アルビレオ」は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも出てくる「サファイア(青宝玉)とトパース(黄玉)」の星ですね。理科からさまざまな科目に派生するのも面白いと思います。

スイフト・タットル彗星のような小惑星など太陽を公転している惑星にも注目

スイフト・タットル彗星のような小惑星など、太陽を公転しているさまざまな惑星にも注目してみましょう。流星群の母天体となる彗星は、地球の公転軌道上にチリを残していきますが、きれいな円で回っているわけではありません。しかも、スピードを変えて動いています。太陽に近いところでは速く、遠いところでは遅くなるんですね。これは「ケプラーの法則」と言い、天文学者のガリレオやコペルニクスが火星の動きをいくら計算しても合わなかったことから、天文学者のケプラーが導き出したものです。学校で習うのは高校生以降ですが、疑問に感じたことはどんどん調べてみましょう。興味が湧いたタイミングで、自分なりに知識や理解を深めて楽しむことが何より大切です。観察したことや調べた内容をまとめあげて、世界でひとつだけの夏休みの自由研究にしてください。

冬に見える三大流星群「しぶんぎ流星群」と「ふたご座流星群」も観察しよう!

冬に見える三大流星群「しぶんぎ流星群」と「ふたご座流星群」も観察しよう!

毎年安定してたくさんの流れ星が出現する流星群は3つあり、「三大流星群」と呼ばれています。「ペルセウス座流星群」と「ふたご座流星群」、「しぶんぎ座流星群」のことですね。夏のペルセウス座流星群を観察できたら、冬のふたご座流星群としぶんぎ座流星群も観察してみましょう。

2024年のふたご座流星群のピークは、12月14日の午後10時頃と予想されています。ふたご座は午後8時以降に空高く見えるので、すぐに見つけることができると思いますが、今年は12月15日が満月で、14日も月が明るすぎるため条件があまり良くありません。星を探しやすいように、月とは反対の空を見るなどして、目を暗さに慣らしてから観察してみてください。

しぶんぎ座流星群は2025年1月4日午前4時頃に極大を迎えるようです。放射点は、北東の方角に見える北斗七星の“ひしゃくの取っ手”あたり。冬の大三角や冬のダイヤモンド、「すばる」も最高に美しく、うしかい座の1等星「アークトゥルス」もギラギラと輝いて見えます。南の空には接近中の真っ赤な火星、西側には木星と、流星群も星もたくさん見えて最高ですよ。

観察方法は、ペルセウス座流星群と同じです。冬は星がとてもキレイに見える季節なので、しっかり防寒対策をして楽しんでくださいね。

【おまけ】「太陽フレア」とは? 日本でもオーロラが観測できる!?

「太陽フレア」とは? 日本でもオーロラが観測できる!?
©国立天文台:科学衛星「ひので」でX線撮影した2024年5月1日の太陽の様子

2024年の5月8日〜11日にかけて、大規模な「太陽フレア」が発生したのは記憶に新しいですね。日本でオーロラが観測されたことをニュースやSNSで知った方も多いのではないでしょうか。太陽フレアとは、太陽の表面で起こる爆発のことです。しばらくは太陽の活動が低下して黒点が減少していると騒がれていたのですが、近年は元気に活発化しているようですね。

太陽フレアが起こると、猛烈な磁気嵐が発生します。磁気嵐の影響で、日本国内でも低緯度オーロラが観測されたわけですが、アメリカなどでは電力供給システムやインターネットに障害が起こったケースもあり、良いことばかりではありません。太陽は約11年周期で活動していて来年2025年に活動のピークを迎えるので、太陽の仕組みや地球に及ぼす影響などを調べてみるのも面白いと思いますよ。

流星群と星の観察方法を理科の倉橋先生が解説 まとめ

夏休みに観察できる「ペルセウス座流星群」を中心に、流星群のしくみや観察のコツなどを解説しました。理科は、机の上でどれだけ頑張ってもイメージが湧きにくいので、難しく感じる子が少なくありません。星に関して苦手意識が強い子の多くは、実際に星や星座を見る経験が足りていないように思うんですね。私の理科実験教室だけでなく、各地の観測所などでもさまざまなイベントを開催しているので、参加してみるのも良いでしょう。自分の目で見て実態が掴めると、自然と理解が深まるのはもちろん、元気になります。生きているといろんなことがありますよね。でも、大きな宇宙を見ていると、今考えたり悩んだりしていることがちっぽけに感じるんです。星がわかるようになると人生が豊かになり、一生夜空を楽しめるようになると思いますから、まずは夏休みを利用してペルセウス座流星群などの星空観察をしてみてくださいね。

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